忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 4月23日。
 昨日、ディケイルの義足を埋め込む手術があったらしいが、ソウは見舞いに行く余裕も無かった。
 とにかく、人手が足りない。
 コロニー全体では、経済活動を行う上に於いて、人手不足という事態にはなっていない。むしろ、人が余っている。空港や要塞の建設で、相当な臨時雇用はあるものの、それが終わった後を考えると、不安になってくる。
 それはともかく、今、人が足りないのは軍部だ。
 元々、ホームレスやら鉱山労働者やらの寄せ集めだ。軍隊の訓練を受けているのは、元守衛隊のマッド・テイラーとその部下たち、あと、「アス会戦」降参組。……だが、さすがに地球から亡命したての軍人たちを、すぐに雇用して武器を渡すわけにはいかない。
 「軍」としての体裁を整える必要が、今まで以上に出て来るのが分かっている以上、それは即刻対応しなければならない問題だった。――ディケイルが言っていた事は、あくまで推測であって、何かが起きれば、事態はどう転ぶか分からない。いつ地球が攻めて来ても、対応できるようにしておかなければ……。
 
 ソウは数日前、人員募集の告知を出した。
『やる気と元気のある人、募集! ガニメデ独立支援軍』
「――相変わらずセンスないですね。もう少し、捻りのあるフレーズは無いんですか?」
 土産に買って来た、「火星へようこそ!」と書かれたペナントと見比べながら、マタルには突っ込まれたが……。
 それでも、そのチラシを街じゅうに貼ったところ、かなりの数の応募が来た。
 中でも一番驚いたのは、ニーナが応募してきた事だった。
「本日より、宇宙空軍整備部隊に配属となりました、ニーナ・パルネラ中尉であります。よろしくお願いします!」
 事務所で書類整理をしていると、ニーナがやってきて、ソウに敬礼して見せた。
「よ、よろしく……。――あの、空港は辞めたの?」
「辞めちゃいました。空港長に辞表を持って行ったら、頑張って来いって、送り出してくれました」
「そ、そう……」
「他にも何人か、管制塔の人とか宇宙船の操縦士の人とかも、一緒に応募してますよ。――空港は基本ヒマだから、大丈夫ですよ」
 そう言うと、ニーナはバッグから何やら取り出した。
「――アタシが軍に入った記念に、ご挨拶代わりのプレゼントです」
 それは、文庫本のようだった。タイトルに、『Titanic』とある。
「昔、映画にもなったお話です。アタシ、その映画が大好きで、何回も見てます。昔の映画って、独特な感じがあって、好きなんですよね。でも今日は、敢えて本で。……ではっ!」
 ニーナは行ってしまった。――何だろう?よく分からないが、とりあえず、引き出しにしまっておいた。
 
 
 
 マタルは、屋上でソワソワしていた。
 その手には、赤いバラが一輪。……火照った手の温度で、しおれてしまわないか心配になってくる。
 マタルは人を待っていた。できるだけ、人の目が無い場所で、ふたりきりで会いたかった。放課後の学校の屋上は、それには最適な場所だった。
 
 マックの家でパーティーがあった時、エドが教えてくれた。
「サン・ジョルディの日?あぁ、昔からの記念日みたいなモンで、男が女に赤いバラを、女は男に本を贈って、愛の告白をする日だ。――大きくなって彼女ができたら、こういう記念日は忘れるんじゃないぞ?」
 
 ――だから今日、授業が終わってから慌てて花屋に走ってバラを買って、学校に戻って来たのだ。待ち合わせの相手には、昼間、クラブ活動が終わったら屋上に来てくれるように伝えてある。
 チャイムの音が響いた。……そろそろだ。
 
 それから間もなく、待ち合わせの相手が屋上に現れた。――カティだ。
 
 カティの事は、ずっと好きだった。
 でも、これまでは、家族みたいなもので、それが「恋愛感情」なのだと、気付きもしなかった。しかし、離れて暮らすようになってから、頭からずっとカティの事が離れなくて、苦しくて仕方が無かった。ソウやレイには、いつも通りのフリをして誤魔化してはいたが、ふとひとりになると、どうしようもなく切なくなった。――初恋だった。
 ……その思いを、今から、カティに伝える。
 
 「――どうしたの?ふたりきりで話したい事があるなんて」
 カティは不思議そうにマタルを見た。マタルは、背中に隠したバラに気付かれないよう、正面を向いた。
「よ、よぉ。――たまには、こうやって話をするのもいいかな、と思ってさ」
「何よ、改めて。……ヘンなの」
 とりあえず、並んでベンチに座ってみた。――だが、かしこまってしまうと、言葉が出て来ない。
「……話って、何?」
「う、うん……」
 暑い。全身から汗が噴き出している。顔はきっと真っ赤になっているだろう。
「あ、あのさ……」
「あ、レイだわ」
 カティが立ち上がり、フェンス越しに下を見た。――バスケットボールクラブが、練習試合をしているようだ。レイは、アルビノだから遠くから見てもよく分かる。ドリブルをしながら数人のディフェンスをかいくぐり、見事、シュートを決めた。
「――レイって、変わったわよね。前は、ずっと部屋に引きこもったきりだったのに、今は、ほら、あんな楽しそうにしてる。……元帥サンに会ったおかげかしら」
「……う、うん……」
「初め見た時は、元帥サン、ちょっとヘンな人だと思ってたの。でも、レイの話を聞くと、優しくて、ちょっと子供っぽくて、面白い人みたいね。――レイがあんなに信じてるんだもん、きっと、いい人よ」
「…………」
 カティは振り返って、フェンスに背を預けた。
「それで、話って……」
「―――ううん、いいんだ」
「……え?」
「ごめん、時間取らせちゃったね」
 不思議そうな顔をするカティを残して、マタルは駆け足で屋上を出た。
 
 ――気付いてしまった。
 カティは、レイの事が好きなんだ。
 
 レイを見ているカティの顔が、すごく嬉しそうに見えた。
 ……そりゃ、レイは頭もいいし、運動もできるし、顔だってカッコいい。マタルとは全然違う。―――クソっ!!
 マタルは、手に持ったバラの花をくしゃくしゃに丸めた。トゲが手のひらを刺して痛かった。しかしそれよりも、心の傷の方がもっと痛かった。
 それを、階段の踊り場の窓から、校庭に向けて投げた。花びらを散らしながら、バラはゆっくりと地面に向かって落ちて行った。――その向こうに、レイの姿が見えた。
 
 「――あの、マタル、くん……?」
 振り向くと、レイチェルが居た。何かを抱えて、俯いている。
「何?」
 つい冷たい言い方になってしまう。今はひとりにしておいてほしいんだ。俺に構わないでくれ!
 だが、レイチェルはモジモジとして、何も言わずにそこに立っている。
 ――マックが家族をガニメデに呼んでから、この学校に通うようになったから、レイチェルは転校生って事になる。でも、ガニメデはこれまでも人の出入りが激しい地域だったから、転校生など珍しくも無い。けれどレイチェルは、両親とは対照的に引っ込み思案な性格で、クラスメイトともあまり馴染めていないようだった。いつも、ひとりで本を読んでいた。
 ……そのレイチェルが、何の用だよ?
「俺、忙しいんだ。――もう行くよ」
 レイチェルの煮え切らない様子にイライラしてきて、マタルはその場を離れようとした。――その時、肩が当たって、レイチェルは抱えていたものを落とした。――それは本だったが、マタルは気にも留めずに階段を駆け下りて行った。
 
 
 
 「――はい、バラ」
 カムイが赤いバラを一輪差し出した。
「………はぁ?」
「今日、何の日だか分かる?――サン・ジョルディの日だよ」
「何だソレ」
「男性が女性にバラを贈って、女性は男性に本をプレゼントする。そうやって、『愛の告白』をする日なんだよ」
「バカか、テメェ」
 スージーはカムイを思い切り睨み付けた。
「ンな義理なんかいらねぇんだよ!そんなヒマがあったら、何か情報持ってこい!」
 カムイはギョッとして、部屋から出て行こうとした。――その途中、ふと足を止め、こちらに戻って来ると、恐る恐るテーブルにバラを置いて、駆け足で去って行った。
 
 ――ガニメデに来てから、もう2週間近くになるが、未だ、ディケイル・ウェイニーへの取材は出来ていない。……恐らく、引き延ばすだけ引き延ばして、諦めて帰るのを待っているのだろう。
 ――そうはいくか。こっちには人生が懸ってるんだ。諦めてたまるか!
 ここは、第1コロニーの駅前のビジネスホテルだ。地球の投降者たちとは違い、さすがに軍の施設を提供してはくれなかった。シングル2部屋にしたかったのだが、金が無いので、シングル1部屋を2人で利用している。スージーがベッド、カムイがソファーか床で寝る。――間違っても、カムイがオレを襲ってくる事なんか無い。スージーはそう確信していた。
 
 しかし、いつまでもこうしていても仕方が無い。スージーは伸びをした。窓の外を見る。コロニー内の照明すっかりは落ち、「夜」の時間帯になっている事を示していた。
 ――ディケイル・ウェイニーは入院中だと聞いている。……ちょいと、病院まで偵察に行って来るか。
 スージーは手荷物だけを持って、部屋を出た。
 
 ガニメデ総合病院は、ホテルの目と鼻の先だった。
 急患入口から入り、見舞客を装って、受付に病室を尋ねる。――すると、「面会時間はあと30分ですよ」とだけ忠告されたが、あっさり教えてくれた。……こんなんでいいのか?
 エレベーターを上がり、ナースセンターの前を通り、教えられた病室の前に来た。
 ――どうしようか?
 少し迷ったが、突撃してみる事にした。
 そっと、扉を開く。
 
 室内は薄暗く、照明も落ちていて、物音もしなかった。――眠っているのだろうか?
 足音を立てないように気を配りながら、ゆっくりと奥へと進む。
 カーテンの隙間から、向こうを覗いて、スージーは固まった。
 
 ディケイル・ウェイニーはベッドで寝ていた。
 ベッドの向こう側には点滴台があり、外からの薄明かりに照らされて、透明な液体が規則正しく落ちているのが見えた。
 ……そして、手前側の布団の下から、ベッドの外にだらんと手が垂れていた。
 その指先から、ポツン、ポツンと血が滴っている。
 その落ちた先には、血溜まりが広がり、その中にハサミが転がっていた。


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/