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41.  記憶
 
 
 ソウは未だ、ディケイルの部屋で暮らしていた。
 もう、第1コロニーの部屋は空け渡していいんじゃないか……、とも思えてくるが、ディケイルが退院してきたら、ここを出なければならないので、一応キープはしておかないといけない。
 子供たちは既に寝ていた。――いつもなら、早く寝るよう注意するところだが、今日はやけに早いな。
 シャワーを浴びて、遅い夕食を摂ろうとしていた時だった。
 電話が鳴り、出てみると、病院からだった。その内容を聞いて、ソウは硬直した。
「――で、ディケイルが、自殺未遂……!!」
 
 取るものもとりあえず、ソウは病院に急行した。
 病室の前に行くと、看護師に呼ばれ、面談室に案内された。
 そこには医師と、スージーとかいう女性記者が座っていた。――なんでこんなところに居るんだ?
「……で、あの………」
 あまりに慌てていたから、息切れがして言葉が出て来ない。医師はソウに椅子を勧め、話し出した。
「ハサミで手首を切られたようです。――ハサミは、担当の看護師が病室に忘れていったものでした。この件に関しましては、お詫びのしようもございません」
「そ、それはともかく、あいつは……」
「命に別条はありません。しかし、もう少し発見が遅れれば、危険なところでした。――この方が見付けてくださらなかったら……」
 それで察した。――恐らく、ソウが何も言って来ないから、業を煮やして、病室にまで押し掛けたのだろう。……しかし、今はそれを責める場面ではない。むしろ、礼を言わなければならない、が……。
「――な、なんで、自殺なんかを……」
「それは、意識が戻り次第、本人に話を聞いてみないと分かりません。当方の落ち度もございますが、どなたか、付き添いをお願いできると……」
 
 仕方ないので、今晩は、ソウが泊まり込む事にした。
 病室をそっと覗いてみる。点滴の袋がいくつもぶら下がった下で、ディケイルは眠っていた。
「――あの、大丈夫なんでしょうか?」
 後ろから、スージーが話し掛けて来た。
「まだ居たのか」
「まだ居たのか、ってねぇ……。――自分で言うのもナンですけど、私、命の恩人ですよ?」
「病人に突撃取材をしようなんてヤツが言えた義理か」
「それは、あなたが中途半端な返事しかしてくれないからでしょ?」
「…………」
 ここで言い争っていても仕方ないので、廊下の突き当たりのソファーに向かった。――眠っているようだし、少しの時間なら大丈夫だろう。
 自販機でコーヒーを買って、それをスージーに渡しながら言った。
「――分かってると思うが、この事は、秘密にしておいてくれ」
「その口止め料が、コーヒー1杯ですか?」
「……分かったよ。後から金を……」
「GMなんて要りませんよ。火星に持って行ったところで、一般には換金もできませんから」
「じゃあ、どうしたら……」
「情報をください」
「…………」
「まず、あの、ディケイル・ウェイニーという方は、どういう人なんですか?
 いろいろ調べさせてもらいました。ホームレスから独立戦争の主導者となり、国家元首となる。しかし、薬物中毒の疑惑を報道され、国家代表の座を去る。その後、宇宙空軍の司令官としてカムバック。戦艦1隻で艦隊を破る、と……。
 普通の人にできる事じゃありませんね」
「あぁ、そう思う。……あいつが何者なのか、俺が知りたいくらいだ」
「………え?」
 スージーはキョトンとした。
「俺も、あいつの過去は知らない。他のみんなも同じだと思う」
「――じ、じゃあ、何で、そんな人を信用して、ここまでついて来たんですか?」
「さぁな。――強いて言えば、死線を渡って来た連帯感、とでも言うのかな」
「…………」
 スージーは意味が分からないという風に首を振って見せた。
「――やっぱり、口止め料はお金でもらいます。もう少し、ガニメデでゆっくりして行く事にしますから」
 名刺の裏に、滞在しているホテルの名前を書いてソウに渡し、スージーは去って行った。
 
 病室へ戻り、その名刺を眺めながら、ソウは考えた。
 過去、か――。
 ソウの過去は、誰にも言った事は無い。別に隠しているワケじゃない。聞かれもしないから、言いもしない。それだけ、ありきたりなものなのだ。それが、今のソウを通じて、他の人にも伝わるのだろう。ごく普通の、ありきたりな過去を背負っているから、ありきたりな人間が出来上がる。
 しかし、現在、ありきたりで無い人間の場合は、ありきたりでない過去が地盤としてあるハズだ。誰だって、そんな事は分かる。
 ――ディケイルの場合、それがどんなものだったのだろうか……?
 以前、聞き出そうとした時、チラリと言っていた。
「――地獄の囚人をしていた」
 それはどういう意味なのだろう?
 だが、間違いなく、恐ろしく暗いものである事は想像できた。……それを追求すれば、本人が傷付くかもしれない。しかし、そうでなくとも、こんな事態が起きている。一体どうすれば……。
 
 「――おい、ソウ」
 名前を呼ばれて、ソウはビクッと顔を上げた。いつの間にか居眠りをしていたようだ。窓の外は、既に明るくなっている。
「なんであんたが居る?」
 見ると、ディケイルがキョトンとした顔でこちらを見ていた。
「なんでって……、それは俺のセリフだ!」
 ソウは立ち上がり、ディケイルの顔を正面から見た。
「なんで、手首を切ったりしたんだ?」
 すると、ディケイルはさらに訝しげな表情をした。
「―――は?何の話だ?」
 今度はソウが眉をひそめる番だった。
「……お、おまえ、覚えて無いのか?」
「覚えてるも何も、そんな事は身に覚えが無い。他のヤツと勘違いしてねぇか?」
「…………」
 ソウはそっと左手首を確認した。――確かに、しっかりと包帯が巻かれている。こんな事、間違いようが無いじゃないか。
「―――なんだコレ?」
 しかし、ディケイルはその包帯を不思議そうに眺めるだけだった。
 ――待てよ?もしかして、自殺未遂では無く、「殺人未遂」……!?
 慌ててそれを確認してみたが、ディケイルは首を横に振った。
「さすがに、殺されそうになって、黙って見てるのはあり得ない。抵抗する。――第一、ハサミで手首を切るなんて方法、人を殺す手段として使うか?どうしても殺したければ、ナイフで心臓を刺したほうが、早いし確実だ」
 それはそうだ。となると……。
「……おまえ、大丈夫か?」
 ――考えられるのはただひとつ。―――記憶喪失!?
「自分の名前、言えるか?年齢は?住所は?」
「……おい、俺をバカにしてんのか?」
 ディケイルは細い目でソウを睨んだ。
 
 ……とにかく、意味が分からず、ソウは医師を呼んだ。
 一通り診察を終え、医師は面談室にソウを呼んだ。
「――検査してみましたが、特に異常はありませんでした」
「………え?」
「念のため、脳の画像も撮ってみましたけど、ごく普通です。強いて言えば、若干、標準よりもサイズが大きいくらいで、至って正常です」
「じ、じゃあ、なぜ、あんな事を……」
 医師は難しい顔でカルテを見詰めた。
「考えられるとすれば、一時的な記憶障害でしょうか?」
「はぁ……」
「ひどい怪我をした後や強い精神的ショックがあった後などに、稀に起こる事があります。状況的に、そのようなものでしょう」
「では、自殺未遂の理由は……?」
「恐らく、その辺から起因しているのではないでしょうか?無意識かつ衝動的に、そのような行動に走ってしまった、と……」
 ……何となく納得いかない気はしたが、医者が言う事だ。信じる他無い。
 
 ソウが病室に戻ると、すぐさま
「おい!こいつは誰だ?」
という声が飛んで来た。――見ると、あの、カムイ・ミウラとかいうカメラマンが立っていた。
「……ちょっと、あんた!他人の病室に勝手に入られては困る!」
 すると、カムイは首を竦め、上目づかいにソウを見た。
「付き添いが要るんでしょう?……おまえが付き添いのお手伝いをしろと、スージーに言われて来ました」
「…………」
「しゅ、取材はしませんから、ここに居させてください。――でないと、居る場所が無いんです」
 ソウはため息をついた。……あの女性記者に追い出されて来たのか。
「――どうする、ディケイル?」
「勝手にしろ」
「あ、ありがとうございます!」
 カムイはペコリと頭を下げて、ベッドの横の椅子に座った。……こう見えて、図々しいところもあるようだ。
 後はカムイに任せる事にして、ソウは病室を出た。……妙な姿勢で眠ったせいか、首が痛い。しかし、休むワケにもいかない。まだまだやらなければならない事は山ほどある。
 ソウはその足で、軍本部へ向かった。
 
 
 
 ソウが帰った後、カムイとかいう男はすぐさまコックリコックリ居眠りしだした。――まぁいい。ヘタに起きてて話し掛けられでもしたら、その方が鬱陶しい。
 ――しかし、これは一体……?
 ディケイルは左手首の包帯を見た。――全く、記憶に無い。しかし、ピリピリと痛むから、実際に傷はあるのだろう。
 それから、今度は右手の手首を見てみる。
 ―――そこにも、古い傷ではあるが、無数の傷跡が、バーコードのように白く残っていた。
 誰にも見せていない。医師や看護師は知っているだろうが、「昔、自傷癖があったが今は完治した」と言っておいた。ソウには言わないで欲しいと頼んだ。
 ――これも、ディケイルの記憶には一切無いのだ。
 ………自分の中に、抑制の効かない何者かが存在する。
 時折、感じる事がある。しかし、このところ、それが姿を現す事は無かった。
 ……ひょっとして、そいつの仕業だろうか……?
 
 ふと気付くと、痛み止めが切れてきたらしい、右脚に電流が走るような激痛が走った。そこを起点に、全身に電流が駆け巡る。――まだ、義足を付ける準備段階だが、これほどのものだとは知らなかった。とても耐えられる苦痛じゃない。
 ――しかし、薬はイヤだ。ギリギリまで我慢して……。
 そういえば、昨日も痛くなった。あまりの痛みに意識を失った。その後……。
 
 ディケイルはハッとした。
 この苦痛が、俺の中の「何者か」を呼び覚ます!
 
 慌ててナースコールを取ろうとするが、ギリギリ手が届かない位置だ。身体を動かそうとすれば、さらに痛みが増す。
 ディケイルの意識が遠のいた。


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