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 昨日の夜から、何だかマタルの様子がおかしい。
 いつもなら、ソウが帰って来る頃までは、テレビを見て騒いでいるのだが、昨日は、すんなり寝てしまった。
 ――何かあったのだろうか……。
 レイは、マタルの意識だけは、覗いた事が無い。――家族以上の存在、決して離れたくない存在。だからこそ、その心を覗くのが怖かった。知ってしまったら、今まで通りではいられなくなる、そんな気がした。
 カティに対しても同じだ。――壊したくないから触れられない。大切にしたいから踏み込めない。女の子だからという点もあるが、レイには理解できないところも多かった。
 ――マタルのヤツ、悩み事か何かあるんだったら、相談してくれればいいのに。遠慮するような仲じゃないだろう。
 
 学校に復帰してから、レイはバスケットボールクラブに入った。身体を動かす事なら何でも良かったのだが、やってみると、自分には合っている気がした。しかし、今日はクラブ活動も休みなので、病院に寄ってから家に帰ろうと思った。――多分、痛みで弱っている姿を見られたくないのだろう、あまり来なくていいとは言われている。しかし、被保護者という立場である以上、たまには顔を出さないと。
 
 レイは、病院に向かった。――病室に入ると、なぜか、ソウが居た。……こんな時間に、どうしたんだろう?
「参謀長、何だか、疲れてませんか?」
「ん?――あ、いや……」
 呆然とした様子で椅子に座っていたが、レイが声を掛けると、顔を上げた。
 何となく違和感を感じて、レイはソウの意識を覗いてみた。――いや、覗かなくとも、何か隠している雰囲気は伝わって来た。そして、その内容を知って、レイは愕然とした。
 
 ――元帥が、自殺未遂……!?
 
 そういえば、今朝起きたらソウは居なかった。テーブルに食べかけの夕食がそのままになっていたので、昨夜、遅く帰ってきてから、また出掛けたのだろう。顔を合わせるタイミングも無かったが、たとえ、話す機会があったとしても、レイたちに心配を掛けないように、ソウは黙っていただろう。面倒事はひとりで抱え込んでしまう、参謀長はそういう人だ。
 ……しかし、隠しているのはそれだけでは無いようだ。
 レイはベッドを見てみた。ディケイルはベッドに横になっていた。
 布団の隙間から覗いた手首には、拘束具が巻かれ、ベッドの柵に固定されていた。
 
 呆然とそれを見るレイの様子にハッとした様子で、ソウは慌ててレイを病室の外へ連れ出した。
「せっかく来てくれたところ悪いけど、今日は、帰ってもらえないか。――ディケイルの事なら大丈夫。俺が見てるから」
「でも………」
 ソウだって、他の仕事で忙しいはずだ。僕に何かできる事があれば……。
 そう言おうとしたが、ソウの暗い顔を見てやめた。――ここは、子供らしく、素直に言う事を聞いておくべきかもしれない。
 
 病室を後にし、エレベーターに向かいながら、レイは思った。
 ――元帥の中で、何かが起きている。
 その原因を探り、解決できるのは、恐らく、僕だけだ。
 
 
 
 ソウは参っていた。
 
 今朝、病院から軍本部へ戻った直後、また病院からの呼び出しの電話が来た。今度は何だ!?と、再び病院へ戻ると……。
 カムイが頭に包帯を巻かれて、廊下に座っていた。その姿を見ただけで、ソウは事情を察した。最悪の状況を想定しながらも、ソウはカムイに声を掛けた。
「………どうしたんだ?」
「あ、参謀長さん……」
 カムイは、ソウが日本の出身だと知ってから、やけに親しげな態度を見せて来る。正直、それがウザったいが、口に出しては言えない。
「あの、ここんところまともに寝て無かったんで、ついウトウトッとしてしまったんです。――そしたら、急に、突き飛ばされまして……」
「ディケイルに、か?」
「はい。――で、壁の角に頭を打って、こんな感じになりました」
「…………」
 やはり。以前にもあった。病院で急に暴れ出した事が。――医師の言う通り、精神不安定になっているのが自殺未遂の原因だとしたら、その延長線上で、また暴れる事があるのではないか、と、想像はしていた。――しかし、今回は相手が悪い。医師や看護師相手なら、頭を下げて賠償金を払えば済むが、相手は報道カメラマン。そして、その相方は、あのスージーだ。黙って引き下がらないだろう。
 
 案の定、しばらくしてスージーがやって来た。
「――参謀長さん、カムイから話は聞きました。ウェイニー元帥に殴られて怪我をしたと。……こちらとしては、許可を頂いて付き添いのお手伝いをしていただけです。それなのに、これは、どういう事でしょうか?」
 ソウは、周囲に人気が無いか確認した後、ディケイルの病室へふたりを招いた。――さすがにここなら他に人目も無いし、大声を出される事も無いだろう。
 だが、すぐにソウは後悔した。――ディケイルの手足が、拘束具でベッドに固定されている。本人は眠っているようだが、……こんなところを見られたら、スキャンダルになりかねない。
 だが、スージーはその姿を見ても、食い付いてくる様子は無く、息を呑んで見ているだけだった。
「――あ、説明すると、僕がその椅子で寝てて、急に突き飛ばされて、ここの壁、ほら、壁紙に跡が付いてるでしょ?ここに頭を打ったんです。それで、頭から血が出て慌ててたら、看護師さんたちがやって来て、暴れる元帥さんを注射で眠らせて……。で、こんな感じです」
 ジャーナリストとは思えない、適当過ぎる説明だったが、ソウにはその状況が理解できた。
「頭、2針縫ったんですよ。そこんとこだけ、髪の毛剃られて、ちょっとしたハゲができちゃいましたよ」
「……参謀長、あなたは、ウェイニー元帥が精神疾患を患っている事を知っていた。それなのに、軍の指揮官という立場で居る事を黙認していた。――違いますか?」
 カムイの言葉を完全に無視して、スージーがソウに向き直った。
「他の軍の幹部の方々は、どうなんでしょうか?それに、これは、以前報道された薬物中毒の件と、関係はあるのでしょうか?」
 ――やっぱり。スージーは最も痛いところを遠慮無く突いて来た。
「………それに対して俺がする答えは、記事にするのか?」
「内容次第です。しかし、これは市民を欺く行為である事には違いありません。あなたの返答によっては、ジャーナリストとして、真実を明らかにする義務があると思っています」
 
 ソウはガクリと椅子に腰を下ろした。そのまま膝に肘をつき、顔を両手で覆った。
 しばらく考えたが、どうしても、ソウとしては一番言いたくないセリフしか、頭に思い浮かばなかった。
「―――いくら欲しい?」
 ……人間同士の対話の内容として、最も卑劣なものである事は承知していた。金で人の行動を縛る行為。――アース・コーポレーションのやり方と同じではないか。
 昨日も、似たような話はした。だが、それは、向こうから言ってきた事だ。しかし、今回は、自らの意思でその交渉をしている。
 案の定、スージーは冷たい視線をソウに落とした。
「――私を、金で動くような女だとお思いですか?バカにするのもいい加減にしてください。
 私は、純粋なジャーナリズム精神から、質問させてもらっているだけです。公正な報道こそ、正義だと考えています」
「………正義?他人の知られたくない過去を暴露する事が正義なら、ディケイルのやってきた事は何なんだ?」
 顔を手で覆ったまま、ソウは呟いた。
「誰が、ガニメデに自由をもたらした?誰が、ガニメデに居る20万人の命を救った?誰なら、アース・コーポレーションのやり方に異を唱える事ができた?――そして、これから、誰がガニメデを守る?
 ……あなたの視点から見れば、これは『悪』であるかもしれない。けれども、ガニメデを守るために、彼は必要な人間だ。彼を守るためなら、俺はどんな手段だって使う」
 
 ソウはゆっくりと顔を上げた。相変わらず、スージーはソウに目を向けていたが、その表情は、先程とは違い、いくらか和らいだものに見えた。
「――あなたとウェイニー元帥の関係って、何なんですか?」
 思わぬ質問を受けて、ソウは戸惑った。少し考えた末、ソウは答えた。
「……憧れ、だと思う。彼は、俺が持ち合わせていないものを持っている。非常識なくらいの行動力、抜群の発想力、それから、自由さ。……俺が欲しいと思っても、何かに囚われて得られなかったものを、彼は全部備えている。
 ――陳腐な回答だけど、そんな感じだと思う」
「で、ウェイニー元帥にとっては、自分の持っていない常識的な思考や気配りを、あなたが補っている、と」
「そんな大それたモンじゃない。ただ、やらなくちゃいけないと思った事をやってる、それだけだ」
「―――羨ましいですね」
 スージーはニコリとした。
「互いに何も知らないのに、信じ合える関係って。……私には、ちょっと想像できないわ」
 スージーの横で、カムイが自分をアピールするように、顔に指を指していたが、それには気付かない様子で、スージーは言った。
「先程の話ですけど、それじゃ、遠慮無くお金は頂きます。
 ……それと、ひとつお願いを聞いてもらえませんか?」
 スージーは、形の良い脚を軽く開き、腕組みをした。
「今度、地球が攻めてくるような事があったら、ドミニオンに、私たちも同行させてください」
 
 ――当然、その申し出は拒否したが、スージーはどうしても引き下がらず、渋々、肯いてしまった。
 ……勝手にこんな事を決めて、ディケイルに、いや、マッド・テイラーや議会にも、何と言われるか……。
 
 ソウは、隣で眠るディケイルを見た。
 ――以前、錯乱したディケイルがマックに暴力を振るった事も、誰にも言わないでいる。マックにも、そう頼んでおいた。――今回の事も、ソウだけの胸に収めておくと決めた。
 レイやマタルにも、何と言われようと、黙っておこう。先程レイが来た時に、「手」を見てしまったかもしれないが、何とか誤魔化して押し通そう。
 
 スージーの言う通り、これが一般市民に知れたら、また、ディケイルが軍に居られなくなる騒ぎになるだろう。そうなったら、――今度こそ、ガニメデは終わりだ。
 ただでさえ、自由すぎる行動から、ディケイルはマスコミから非難を受ける事がある。「アス会戦」後、ガニメデに帰還した時だって、ディケイルの一存で、祝勝パレードは取り止めになった。そして、即入院してしまって、スージー以外のマスコミの取材も、一切受けていない。それが批判の対象になっている事も、ソウは知っていた。
 ……そんな世間の好奇の目に、ディケイルが潰される事があってはいけない。
 そのための「盾」になり得るのは、ソウしか居ないだろう。
 
 ソウは、ポケットから携帯端末を取り出した。――フォンシェに預かって、ディケイルに渡すはずだったものだ。ドミニオンの中で渡そうとしたのだが、
「あれは忘れて来たんじゃない。フォンシェに返したんだ」
と言い張って、受け取ってくれなかった。だから、何となく、ソウが持っていた。
 ――フォンシェなら、ディケイルの過去を知っているだろうか?
 ふと、そんな事を思った。
 
 「盾」になるのはいいが、何も知らない今の状態で、どこまでディケイルの事を信じ切れるのか、ソウには自信が無かった。せめて、なぜ、このような不可解な行動を起こしたのか、過去の経歴から知る事はできないだろうか……?
 ソウは携帯端末を操作し、登録名簿を開いてみた。――そこには1件のみ、無記名のアドレスだけが登録されている。……間違いない、これがフォンシェへの直通アドレスだろう。
 
 ――しかし、その発信ボタンを、ソウは押せなかった。
 知ってしまったら、今まで通りではいられなくなる、そんな気がした。
 それに、知ったところで、ソウに、どうにかできるものでもない。ただの自己満足だ。
 ソウは、しばらく携帯の画面を見つめた後、画面を閉じた。
 
 ソウは決意した。
 ……もう、何も聞かないでおこう。
 過去などどうでもいい。必要なのは、現在、そして、未来だ。
 
 
 
 目を開くと、眩しい光が目に飛び込んできて、顔を覆いたくなった。
 しかし、手が何かに固定されていて、動かせない。――見ると、ベルトのようなもので、ベッドの枠に繋がれているようだった。
 ――また、何かしでかしたらしい。
 しかし、やはり、何も覚えていない。傷口が痛くなって、看護師を呼ぼうとして、それから……。
 
 「……目が覚めたのか」
 声がして、そちらに顔を向けると、ソウだった。
「……俺、今度は何をしたんだ?」
 疲れ切ったソウの顔を見ると、申し訳無くなって、ディケイルは目を逸らした。
「あの、押し掛けて来てたカメラマンを突き飛ばしただけだ。問題は無い」
 ――無いハズないだろう。もし、問題が無いのなら、ソウがこんな顔をしている事は無い。
 嫌な予感がした。……この調子で、ディケイルの中の「何者か」に意識を乗っ取られるような事があれば、そのうち、「あいつ」が出て来るだろう。そうなったら……。
 
 「ソウ」
「――ん?」
「この拘束具は、外さない方がいい。それと……
 ――もし、次に俺が暴れ出して、これでも抑え切れないようだったら、遠慮は要らない。
 殺してくれ」


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