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42.  針路
 
 
 それから1週間。
 ディケイルの様子は落ち着いてきた。
 今となっては、なぜ、あのような状態になったのか、不思議で仕方が無い。
 医師の話通り、手術から数日後には、コネクタの埋設による痛みも治まったようで、今は、実際に義足を付けてのリハビリの段階へと進んでいる。
 自殺未遂後の経過観察も、数日で終わった。その間、ソウが付き添いをしようと思っていたのだが、レイがどうしてもと言うので、交代で行う事にした。
 ――しかし、その数日間、何のトラブルも無く過ぎた。それどころか、あれほど嫌がっていた注射や薬を大人しく受け入れるようになり、付き添う側としては、非常にありがたい状況だった。
 医師と相談の上、付き添い生活から解放され、ソウは正直、ホッとしていた。ロクに眠れない生活が続いていたので、これでやっと家に帰れる……、と、大きく伸びをした。
 「次に暴れ出した時には殺してくれ」などと言われた時には、本当にどうなる事かと思った。だが、この調子なら何とかなるだろう。――そう思わないと、やってられない。
 
 今日は何と言われようと寝てやる!ソウは久し振りに家に帰り、あれ?と思った。
 ……何だか、荷物が片付いている気がする。気のせいだろうか……?
 気にはなったが、睡魔には抗えず寝てしまった。――目が覚めたのは、すっかり日が落ちてからだった。
 レイがキッチンで、夕食の準備をしていた。――マタルは居ない。
「……あれ?マタルは?」
「あまり家を空けるのも良くないって、元の家に戻ってます」
 ――そういうレイの様子に、何となく影があるようで、ソウは気になった。
「……何かあったのか?」
「いえ、特に」
 ………明らかにおかしい。レイは、ソウと目を合わせないように、鍋をかき混ぜている。ケンカでもしたのだろうか?
 ソウは夕食後、第1コロニーの自宅へ向かった。
 
 そこに、マタルは居た。
「……どうしたんだ?――レイと何かあったのか?」
 部屋の片付けをしていたマタルは、ソウを見ると、目を伏せた。
「別に、何もありません。……ただ、少し、ひとりになりたかったんです。いけませんか?」
 ――マタルがこんな事を言い出すなんて……。言葉とは裏腹に、何かあったに違いない。
「じゃあ、俺がここに泊まっていくのも邪魔かな?」
「……いいえ、そんな事は……。参謀長の家なんだし……」
 マタルはしばらく戸惑ったようにモジモジとしていたが、やがて諦めたように、片付けを再開した。
 ソウはソファーにゴロリと寝転がった。眠い訳では無い。昼間、しっかり寝てしまったので、逆に目が冴えている。何となく、マタルが片付けをしている様子を眺めていて、ふと思った。――自分の身の回りの整理をしているように見える。まるで、引っ越し準備のように……。
 ソウの視線に気付いたのか、マタルが作業の手を止めた。
「――士官学校に入ろうと思うんです」
「…………」
 
 そういえば、マッド・テイラーとエドが中心となって、将来、軍を目指す子供たちを集めて、専門の教育をしようという計画がある。
 というのも、「アス会戦」では、エドとエトウ・パルネラが「巨大戦闘ロボット」に乗ったが、それは、とてもじゃないが何の訓練も無しに扱えるシロモノでは無かった。ゴリアテをベースに改造しているとはいえ、毎日乗って慣れているはずのエドでさえ、その取り扱いに苦労しているらしい。
 開発計画が始まってすぐから、パイロットの養成を行ってはいたが、現時点で、試作機を何とか動かせるのは、エドとエトウしか居ない。しかし、ただ動かせればいいという訳では無い。「アス会戦」の時は、寝そべって射撃体勢だけをしていれば良かったが、いざ戦闘となれば、パイロットの能力も大きく問われてくる。
 そこで、適応能力が高い子供のうちから、専門的な訓練をさせよう、というのだ。
 個別の住居は満員状態だが、共同住宅はさすがに不人気で、まだ空きがある。そこを使い、全寮制として、宇宙戦艦などで出撃した場合必須となってくる、共同生活にも慣れさせる、そんな話も聞いてはいた。
 確かに、そろそろ候補生の募集を始めるらしいが……。
 
 ソウは起き上がり、マタルにきっぱりと言った。
「駄目だ」
「何でですか?」
 ソウの返事が予想外だったようで、マタルは目を丸くした。
「参謀長だって、軍で頑張ってるじゃないですか。軍は、ガニメデの自由を守る、とても大切な仕事をしてるんです。俺だって、そんな、誰かの役に立つ仕事をしたい」
「誰かの役に立つ仕事なら、軍なんかより、医者とか農業プラントの技師とか、他にいくらでもあるだろう?」
「じゃあ、軍を選んだって同じじゃないですか。なんで、軍がいけないんですか?」
 ソウはマタルの目を見つめた。
「軍は、『人を殺す』事を生業とする職業だからだ」
「…………」
 マタルは、しばらくソウの顔を見返していたが、やがて顔を伏せた。
「――じゃあ、なんで、参謀長は軍人をしているんですか?」
「…………」
 ――そう言われると、痛い。ソウは少し考えて、答えた。
「俺は、好きで軍人をしてるんじゃない。人を殺した事も無い。逆に、殺されたくも無い。
 ――みんな、内心では俺と同じ気持ちだと思う。
 戦争というのは、そんな、人間として当たり前の心までも殺す、最悪の行為なんだ。
 だから、早くそんな争いを終わらせて、次の世代には平和を残したい。――だから、今、軍人をしている。……いや、俺なんて、軍人なんて名乗る資格も無い。ただの手伝いだ」
「でも、それなら、なんで戦争なんて始めたんですか?今ほどの自由は無かったけど、とりあえず、平和だったんでしょ?それなのに……」
「いや、この戦争は、誰かがやらなければならなかった。ディケイルがやらなけりゃ、誰か他の人がやっていただろう。ここは、地球から遥かに離れたガニメデだから、まだこれだけの被害で済んでいるが、それが地球上で起こったとして、考えてみろ。――もっと大きな犠牲が出ているはずだ。……だから、ディケイルは、最も被害が少なく済む方法を考えて、ガニメデを選んだんだ」
 マタルは床を見たまま言った。
「――分かりません。参謀長の言ってる事が。
 戦争を最悪だと言っておきながら、戦争を認めている。俺には分かりません」
「…………」
「やっぱり、軍も戦争も、世の中のためには必要だって事じゃないですか。なら、僕が士官学校に入る事も、反対しないでください」
「いや、それは駄目だ。認めない」
「なぜですか!?」
「マタルが、人を殺すところも殺されるところも、俺は見たくない」
 マタルはゆっくりと顔を上げた。
「……じゃあ、他の子供ならいいんですか?俺はダメだけれど、他の子供なら、士官学校に入って軍人になって、戦争に行ってもいいんですか?それだから、募集してるわけでしょ?
 おかしいですよ、そんなの」
 ――マタルの言う事は正論だ。いくら反論しても、言い訳にしかならない。ソウは頭を掻いた。
「――分かった。だが、おまえが15歳になってからだ。それから……」
「イヤです。募集が始まったら、すぐに応募します」
「――おまえ、まだ10歳だろ?なんでそんなに急ぐんだ?」
「士官学校の募集要項に、年齢制限は無かったはずです。試験に合格さえすれば、年齢は問わない、って。
 ……それに、僕は11歳です。もうすぐ12歳になります。レイよりも大人なんです」
 
 ――ガニメデに住んでいる人は全員が移民で、独立前は人の出入りも激しかった。学校への転入転出も頻繁なため、教育の公正を期すため、年齢では無く、就学期間により学年の振り分けが決められている。同じ学年だからといって、同じ年齢であるとは限らないのだ。ヘタすると、5歳以上の年齢差がある場合もあると聞く。
 だから、マタルとレイに年齢差がある事も、考えてみれば不思議では無い。今まで、特に意識した事は無かったが……。
 
 「――やっぱり、レイと何かあったんだな?」
 ソウが言うと、マタルがキッと顔を上げた。
「何もないって言ってるじゃないですか!……もういいです。ひとりにしてください」
 マタルは自分の部屋へ引き込み、ドアを閉めてしまった。
 
 ソウは再びソファーに寝そべり、天井を見上げた。
 ――マタルも、そろそろ反抗期とやらの年齢に差し掛かったのかもしれない。孤児院育ちで、生活態度はしっかりしているが、やはり、こういうところはまだまだ子供だ。
 しかし……。――このままいけば、本当にマタルを士官学校へ入れる事になるのかもしれない。それは仕方の無い事なのか……?
 そうだ、レイはどうするのだろう?マタルと一緒に士官学校へ入ると言い出さないだろうか?
 そうなると、果たして、ディケイルは賛成するのだろうか……?


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