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オリジナル小説のダストボックス

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 ラボに入ると、エドは真っ直ぐ、ある部屋にソウたちを案内した。
「――ここが、『巨大戦闘ロボット開発プロジェクトチーム』の部屋です」
 そう言われて入ると、なるほどそれっぽく、かなり広い部屋だが、コンピューターや何かの機械の配線で、足の踏み場も無い感じになっていた。
 その奥の方で、ジョルジュと、もうひとりが何やら大きな機械に向き合っていた。
「ドクター!それにジョルジュ、おはようございまっす。今日は、プロデューサーを連れて来ましたぜ」
「よぉ、エド。――ちょうど今、エレクトロエンスファログラフのテストをしてたところなんだ。実験台になってくれないか」
 ――なるほど、こんなややこしい単語を早口で言われては、理解ができない。
「俺はイヤだ。だって、前から何回もやってるけど、一度だって起動した試しがないんだぜ?」
「だから、もっと感度を上げて、脳波を増幅させて機械の神経に伝えやすいように、調整をしてるんじゃないか」
 もうひとりの人物――ディケイルよりもひどいボサボサ頭に、分厚いメガネをしていて、昔のマンガに出て来る「博士」の典型みたいな人だ――が、顔だけをこちらに向けた。
「ドクター、紹介しておきます。この人が、ウェイニー元帥、それから、ナカムラ参謀長。――で、……そういえば、ドクターの名前、俺知らないや」
「名前など、研究に必要かね?『ドクター』の呼び名で個人の識別ができるのならば、それ以上の名は必要ないだろう」
 ――どうやら、外見からのイメージ通り、かなり偏屈な人物でもあるようだ。
「じゃあドクター、俺がその実験台になる」
 ディケイルが言うと、ドクターはメガネの越しに胡散臭そうな目を向けた。
「あんた、ゴリアテの操縦経験はあるのかね?」
「無い。が、問題あるのか?」
「まぁいい。たまには別の人間で実験してみたいと思ってたところだ。――やる気があるのなら、さっさとここに座れ」
 ――先程、「元帥」という立場であるとエドが紹介したハズだが、完全に無視してドクターは横柄すぎる態度でディケイルを導いた。……いや、横柄とかそういうレベルの問題では無く、研究以外の事に全く興味が無いから、他人への接し方など、どうでもいいのだろう。
 ディケイルは言われた通り、座席が置かれた狭い空間の中に入った。――まるで、何かの操縦席のようだ。周囲にはコードが無数に垂れ下がっていて、中に入ると、ディケイルの姿が半ば隠れてしまった。
「――じゃあ、今からゴーグルをしてもらいます。ゴーグルといっても、ここ、座席のヘッドの部分と一体化してるんです。しばらく頭は動かせないですけど、いいですか?」
 そう言いながら、ジョルジュが中で何やら操作していた。そして、
「――準備OKです!」
と、ドクターに向かって合図を送り、自分もモニターの前に駆け足でスタンバイした。
「じゃあ、テストを開始する。――あんたは今、ロボットの操縦席に居る。ロボットを起動させるように、イメージしてくれ」
 ……そんな事を急に言われても、操縦経験の無い人間に、そんなイメージなんてできるのか?だから先程、ゴリアテの操縦経験があるのかと質問していたのだろう。
 だが、すぐにジョルジュが声を上げた。
「――ドクター!数値が上がっています!……起動レベルに達しました!すごいです!!」
 ソウには何がすごいのか全く分からなかったが、ドクターも真剣な顔でモニターを見入っているので、きっとすごいのだろう。
「――第一関門は突破した。ロボットはあんたの意識圏内に入った。あんたの手足を動かす要領で、ロボットを動かす事ができる。……まず、右腕を上げてくれ」
 コードの下からそっと覗いてみるが、ディケイルには動きは無い。しかし、ドクターは満足したように肯いた。
「よし。次は脚だ。歩くイメージをしてくれ。前へ、前へ……」
 すると、ジョルジュが急に「わっ!」と声を上げて床に転がった。
「元帥に蹴られました!――ちょっと、遊ばないでください!」
「俺に余計な金を使わせた仕返しだ」
 ――意味が分からないので、ソウはジョルジュが見ていたモニターに目をやった。……すると、そこには、ロボットの画像が映し出されていた。恐らく、ディケイルが脳内でイメージしている動作を、機械を通してモニターで見られるようにしてあるのだろう。その他にも、複雑な波形やら数列やらも流れているが、やはり、リアルなロボットの動きに目がいく。
 ……ディケイルは完全に遊んでいるようだ。歩くどころか、カンフーのような動きでこちらにキックを飛ばしてきた。3D映像だから、顔をくっつけるくらいの距離で見ていたジョルジュは、鼻先を蹴られたような感覚になってもおかしくない。
「……ところで、実験は成功なのか?失敗なのか?どっちだ」
 ディケイルが装置から顔を出した。
「成功だ。――だが、やはり被験体が別の人間では、脳波計の機能が向上したのか、あんたが特別なのか分からん。――エド、交代だ」
「何だよ、ッたく……」
 ――渋々装置の中に入ったエドだったが、モニターの中のロボットは、ピクリとも動かなかった。
「………だから言っただろ?俺は脳波には自信があるって」
 ディケイルが近くの机に腰を下ろして腕を組んだ。それを、ドクターがジロリと見た。
「何十年と脳波操縦の研究をしてきたが、これほどまでに適合率が高い人間は初めてだ。――あんた、特殊な訓練を受けた事があるだろう?」
「勘違いするな。たまたまだ」
 ディケイルはそう言ったが、一瞬目を逸らしたのをソウは見逃さなかった。――やはり、過去に何かありそうだ。だが、何も聞かないと決めた以上、ソウは口を挟むのをやめた。
「正直、適合者が現れなかったら、これ以上研究を続けても意味が無い、そろそろ潮時かもしれん、と思っていたところだ。あんたのおかげで、希望が出てきたよ」
「あぁ、このまま研究は続けてくれ。――これが、今後の戦況を、大きく左右する事は間違い無い」
「だけどさ。操縦できる人間が元帥だけって、それ、意味なくないですか?」
 不機嫌そうな顔で、エドが装置から出て来た。
「大丈夫だ。少なくとももうひとりは、操縦できそうなヤツの心当たりがある」
「じゃ、早く連れて来てくださいよ。俺が実験台になるより、そいつに合わせて機械を調整したほうが、効率的だろうし」
「あいにく、今はダメだ」
「何でですか?――もしかして、火星のコレとか」
 エドは小指を立てて見せた。――やはり、ディケイルが火星と親しいのは、周知になっているようだ。
「バカ言え。……ガニメデに居る。だが、誰だかは言えない」
「…………」
 エドは不満そうな顔をしたが、ドクターに呼ばれて部屋の奥へと入って行った。まだ、他に用事があるのだろう。
 
 その後、ジョルジュに案内されて、試験機が保管されている倉庫へと向かった。
 試験機の巨体は、巨大な空間の中で、壁に立て掛けられるように並んでいた。それぞれ、デザインが異なっている。
「――えと、手前側から、アナログ方式、エレクトロエンスファログラフ方式、そして、ハイブリッド方式です。やっぱり、僕のイチオシはハイブリッド方式ですね。なんてったって……」
 ジョルジュが得意気に語り出したが、ディケイルはあっさりと遮った。
「何だ?あの頭のツノみたいなのは」
「あ、あれですか。どうです?カッコいいでしょ。『鋼の操縦士』のC62-999改をイメージして……」
「で、何に使うんだ?」
「ただの飾りです」
「…………」
 ディケイルはジョルジュに白い目を向けた。
「そんな余計なモン、取れ。そこに引っ掛かって身動きが取れなくなるような事があったら、目も当てられん」
「えー。イチオシのポイントだったのになぁ」
「あのなぁ……」
 ――しかし、「アス会戦」に試験機も参戦していたというのに、初めて見るような顔をしている。確認もせずに参加させたのか……?ソウはある意味呆れた。
 いつの間にか、周囲に開発チームのメンバーらしい技術者連中が集まってきていた。彼らに向かって、ディケイルは言った。
「見た目なんかどうでもいいんだよ。乗ってる人間を殺さない機体を作ってくれ」
「そう言われましても、見た目もモチベーションのうちかと……」
 技術者のひとりが言うと、ジョルジュが猛賛成した。
「そうですよ!やっぱカッコよくないと……」
「じゃあ、余計なモノを付けないでカッコいいのを作れ」
「例えば、アルカディア初号機みたいなのとか……?」
「いや、エメラルダス式のがソレっぽくないか?」
 ……何だかよく分からないが、とにかく、ラボの連中はジョルジュに似た趣味を持つ人が多い事は分かった。ジョルジュだけが例外ではないらしい。
「――プロメシューム・ゼロでいいと思う」
 ディケイルがポツリと言って、その場を去って行った。メンバーたちは互いに顔を見合わせ、妙に納得したように肯き合った。
 ……本当にこんなんで大丈夫か?
 いささか不安になりながら、ソウはディケイルと共に事務所へ戻った。
 
 すると、来客が待っていた。
 その人物は、ディケイルの顔を見ると、満面の笑みを浮かべ、名刺を差し出した。
「戦場ジャーナリストのスージー・クーリンと申します。退院されたとお聞きしまして、早速取材のお願いに上がりました」
「……いや、まだ退院してない。――何だか足が痛くなってきた。病院へ戻らないと……」
 ディケイルは名刺を受け取りもせず、そそくさと出て行ってしまった。
「ちょっと……!――あぁ、もう!」
 スージーはピンヒールのブーツで近くの椅子を蹴ると、
「次会った時は、絶対に逃がさないから」
と吐き捨て、靴音高く事務所を後にした。
「………何だ?」
 マッド・テイラーが呆然と、その後ろ姿を見送った。
 
 
 
 「――CEO、テオドア・カゼリ様がお越しになりました」
 ケリーの言葉を聞いて、ミカエルは目を丸くした。……まさか、高性能アンドロイドのケリーが故障するとも思えない。――という事は……!
 
 ケリーの背後から、ひとりの人物が部屋に入って来た。――長いコートを着て背中を丸めているので、体型はよく分からないが、コートから出ている部分、頭や顔や手などは、全て包帯とガーゼで覆われていた。――まるで、透明人間かゾンビだ。
 その人物は、かすれ切った声で言った。
「――ミカエル様、無事、任務を果たし、帰還いたしました」
 ひどくくぐもって、誰の声だかも判別できない。しかし、包帯の隙間からわずかに見えるヘーゼルの瞳が、辛うじてテオドア本人である事を証明していた。
 
 ――生きていたのか!
 16日ほど前、アス会戦の帰還組が乗った駆逐艦が、重力圏内で衝突事故を起こし、海へ墜落した、というニュースは見た。大気圏内で大方燃え尽き、残骸すらもほとんど見付からなかったという情報だったが……。――どうやって生き残った?
 
 「――輸送艦に救難ボートを乗せておいてくださるなんて、ミカエル様のお優しいご配慮のおかげで、こうして戻る事ができました。感謝の次第もございません」
 ……しまった!救難ボートを下ろしておけと言うのを忘れていた。――しかし、いちいちそこまで指示しなければ分からない人間たちばかりなのか、私の部下どもは!
 ――しかし、テオドアのヤツ、こんな姿になってまで戻って来て、どうするつもりだ?……私に復讐でもしようというのか?
 少し警戒したが、テオドアはそのような様子は見せず、床に膝をついた。
「そのお優しいお心にすがる思いで、こうして戻ってまいりました。
 ―――どうか、私に、もう一度だけチャンスを……!」
 テオドアは、体液の染みた包帯で包まれた手を床につき、頭を下げた。
「どうか、どうか、もう一度だけ……」
 
 さすがのミカエルも、ここまでされれば、それ以上突き放す事はできなかった。――あの状況から生き残るとは、さすが、私の見込んだトランセンダーだけの事はある。チャンスを与えてやれば、今度こそ、何かやってくれるかもしれない。
 ミカエルは、アイスブルーの瞳を包帯に包まれた頭に落として言った。
「――分かった。チャンスをやる。――ただし、今すぐは無理だ。おまえなら分かるだろう。あれだけの惨敗の後だ。世論もガニメデ討伐に否定的になっている。
 理由ができるまで、少し待て。――その間に、その傷を癒せ」
 すると、テオドアは光の無い瞳でミカエルを見上げた。
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがと……」
 そして、そのままゆっくりと床に倒れた。
「――ケリー。この男を医者に診せてやってくれ」
「かしこまりました」
 ケリーの通信で、すぐさま警備員がやって来て、テオドアを担架に乗せて運んで行った。
 
 ――しばらくは動けない。こればかりはどうしようもない。
 何か、ガニメデに罠を張ろうかとも思ったが、今はミカエルとしても痛手を負っている。ヘタに何か仕掛けて逆手に取られれば、逆に致命傷になりかねない。
 ……まぁいい。数か月も待てば、世論も変わってくるはずだ。それまでに、軍備を増強し、ガニメデを倒す「理由」を、確かなものにしておかなければならない。
 そうしているうちに、テオドアの火傷も癒えるだろう。
 
 ミカエルは腕を組んで窓の外を見た。澄んだ夜空には、満点の星が輝いている。そのうちのひとつ、ひと際大きく輝く惑星――木星に視点を合わせ、思った。
 ――今度からは、私も本気でいく。次は、間違ってもおまえに勝ちは無い。


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