忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 43.  ライバル
 
 
 5月13日。
 士官学校の入学式の日だ。
 名目ばかりの簡単な式典が終わり、レイ・マグアドルは荷物を手に宿舎に向かっていた。
 
 入学試験の結果は、87名中トップだった。――そんなことはどうだっていい。
 マタルも、やはり試験に来ていた。
 ……本当は、マタルには、来て欲しくなかった。
 そのため、レイはソウに嘘をついた。――「士官学校に入る事を元帥が猛反対している」と。実際は、レイが希望を伝えた時、ディケイルは「好きにすればいい」と言っただけだった。……参謀長が反対してくれれば、マタルも思い直してくれるかもしれない、そう思ったのだが、うまくいかなかったようだ。
 
 なぜ、マタルが士官学校に入る事がイヤだったのか。
 ――やはり、マタルには危険な目に遭ってほしくない。……いや、それは建前で、本当のところは、レイ自身もマタルから距離を置きたかっただけかもしれない。
 マタルが急に冷たくなった原因――。それは、未だに分からない。しかし、避けられている相手にフレンドリーに接しられるほど、レイの心は強く無かった。……何となく、自分からも距離を置く感じになってしまった。
 ……あんなに仲良しだったのに。家族以上の絆で繋がっていると信じていたのに。
 せめて、理由だけでも知りたいが、それを知る事も怖かった。だから、こうしてズルズルと、それぞれの道を歩く感じになっている。――同じように共同生活をしていく以上、いつか、どこかで関わり合う事になるに違いないが、その時は、どんな顔をして接すればいいのだろう?
 
 しかし、その時は唐突にやってきた。
 宿舎の廊下の向こうから、マタルがやってきたのだ。お互い、荷物を抱えているので、気付かないフリをして通り過ぎてしまおうか……。――いや、それはあまりにも悲し過ぎる行動だ。じゃあ……。
 レイは伏せ目がちに足を止めた。すると、意外にも、マタルの方から離し掛けてきた。
「――よぉ、レイ。試験、首席だったってな」
「うん……」
 レイは、目を合わせられなかった。しかし、マタルはいつもの闊達な口調で続けた。
「今日から、またよろしくな。お互い、頑張っていこうぜ」
 極力明るく普通に話しているが、言葉の裏に、トゲが込められているのが分かった。
「――俺は、レイなんかに負ける気はないから。これからはライバルだ。前みたいに『一緒に』とか、そんな事、もう止めるからな。そこだけは勘違いしないでくれよ」
 マタルはそう言って、通り過ぎて行った。
 その言葉ひとつひとつのトゲが、レイの心臓にチクチクと突き刺さった。
 ―――なんで?どうして?僕が何をしたんだ?
 マタルの背中に向けて、そう問いただしたかった。しかし、言葉は喉の奥に引っ掛かって出て来ず、結局、その姿を見送る事しか出来なかった。
 
 大きくため息をついて、レイは歩き出そうとした。
 すると、目の前に誰かが立ち塞がって、その足を止められた。
「――レイ、これからよろしくな」
 顔を上げて見ると、――ブライアン・マルコーだった。
「……君も、志願してたんだ」
「そうだよ。――普通に学校に行ってても、つまらないから。
 それに、現実、僕、保護者が居ないだろ?だから、こうでもしなきゃ自立できない。いつまでも難民施設に住んでるわけにもいかなくなってきたしな。士官学校に入れば、衣食住はタダだし」
「…………」
 確かに、天涯孤独の身となったブライアンにとっては、士官学校の寮生活が、最も生活しやすい環境なのかもしれない。
「おまえ、どこの部屋だよ?」
「207号室」
「……マジで!?僕と一緒じゃないか」
「…………」
 部屋割りは、くじ引きで決められた。受験者は87名居たが、実際に入学したのは50名足らず。――その中で、ブライアンと同室に当たるとは……。
 レイは、ブライアンと肩を並べて部屋に向かった。
 部屋は4人部屋で、両側の壁に二段ベッドが並んでいるだけの簡素なものだった。
「――どのベッドにするか、早い者勝ちでいいよな?」
 ブライアンはそう言って、右側の下のベッドにドカリと座り、荷物の整理を始めた。だけど、4人部屋なんだし、あとふたり来るはずじゃないか……。
 そう思っていると、すぐに他のふたりもやって来た。――ふたりとも、レイたちよりはいくらか年上のようだ。
「よっ!初めまして。俺、ボビー・ジェイコブ。ボビーと呼んでくれ」
 ヒョロリと背の高い黒人の少年が、やたら親しげに言ってきた。
「――俺は、ケビン。ケビン・オードリー。よろしく」
 ボビーの隣の、赤毛にそばかす面の少年が、神経質そうな目を室内に向けた。
「……古い建物だから、衛生面が心配だったけど、改修や掃除は、まぁまぁ行き届いていそうだな。これから、このメンバーで共同生活をするんだ。最低限のマナーは守ってもらわないと困る」
 そう言って、部屋の中へ入って来た。
 レイとブライアンも挨拶をした。ケビンのほうは「よろしく」と返しただけだったが、ボビーがオーバーアクションに驚いて見せた。
「ブライアン・マルコーて、この前、テレビに出てた……?」
「君、それは失礼な態度だじゃないか。士官学校に入った以上、同じ立場で訓練に臨むべきだ。たとえ、過去に何があろうと、そんな事をいちいち口に出すものじゃない」
 ケビンにジロリを睨まれて、ボビーは肩を竦めた。
「――それより、君、マグアドル君と言ったな。司令長官の被保護者だからといって、自分は特別だと思わないほうがいい。実際の戦場では、親の身分や立場など、何の役にも立たない。実力だけが全てだ」
 ――何も言っていないのに、いちいちそんな事を念押ししてくる。要するにケビンは、自分はブライアンの事もレイの事も知っている、と言いたいのだろう。
 それから、何となくベッドの位置が決まった。レイは、右側のブライアンの上、左側の上段をケビン、下段をボビーが使う事になった。
 荷物を片付けながらも、ずっとボビーは何やらしゃべっていた。――おまえら、年いくつ?10歳で軍を目指すのか?もっと遊びたい年頃じゃないのか?今流行ってるゲーム知ってるか?などなど……。
 そんなボビーをケビンが苦々しい目で睨んでいたが、ボビーはそんな事には気付きもしない。
 ――何だか、面倒臭そうなメンバーが揃ってしまった。いろんな意味で、前途多難だな、レイはため息をついた。
 
 
 
 一応、参謀本部長という立場であるから、ソウも入学式には出席した。
 他にも、マッド・テイラーやらマックやらも居たが、堅苦しい式典みたいなのが苦手な連中ばかりだったので、校長であるマックの挨拶と、学生代表のレイの挨拶だけで終わった。
 
 ――マックが防衛隊長官から士官学校の校長に転任したのは、本人の希望だった。
「……俺、子供は好きだから。そこらへんは任せとけ!」
 マックは胸を張って宣言したが、防衛隊では、部下の連中がしっかりやっているため、形骸的な立場になっていた、というのが大きな理由だろう。
 それに、マックは何気に、武道の心得もあるらしい。
「昔、俺が住んでた村に、日本人の留学生が来ててな。そいつに教えてもらったんだ」
 本人曰く、「二刀流剣法」と「合気道」は完璧にマスターしているらしい。
「日本の武道ってのは、ただ、技術だけじゃないんだな。『礼儀』ってのを重んじるって言って、そいつに、悪い事をした時の謝り方とか、仕込まれたモンさ」
 ――ソウはふと思い出した。空港で奥さんのマリーを出迎えた時、マックは土下座をしていた。……少しオーバーな謝り方だとは思うが、まぁ、使い方としては間違ってはいない。
 
 それはともかく、式典の後、ソウは今回入学した学生の名簿を持って、寮の部屋割りの確認をして回っていた。なぜ俺が?という気もしないでも無かったが、とにかく人手不足なのだ。文句は言えない。――しかし、誰が考えたか知らないが、部屋割りをくじ引きにするのなら、誰がどの部屋になるかくらいは、チェックしてから入室させて欲しかった。まるっきり二度手間じゃないか。――まぁ、俺たちらしい、といえばそれまでだが。
 1階は、食堂や浴室など、共用スペースになっているので、居住スペースは2階からになる。見て回っているうちに、レイとブライアン・マルコーが同室になったと知って、驚いた。レイにこっそりと、
「――おい、大丈夫か?何なら、部屋割りを変えてもいいぞ?寮生活では、部屋単位の行動が基本になる。同室のメンバーに何かトラブルがあれば、連帯責任になるからな」
と言ってみたが、本人は
「大丈夫です。――それに、元帥の被保護者だからって優遇されてると思われてもいけませんし、ブライアンは友達ですから。知らない人ばかりよりは、ずっと安心です」
と、ソウを見てニコリとした。……ソウが持っている10歳の少年のイメージより、ずっと大人な返答だ。マタルもだが、あの年で士官学校を目指そうなんて、ソウの少年時代を思うと、とてもじゃないが考えられない。
 結局、マタルの士官学校入りも、ソウには阻止できなかった。――こうなったら、そっと見守るしかない、が……。
 3階のマタルの部屋へ行った時、つい言ってしまった。
「何か困った事があれば、いつでも言ってくれ。できる限りサポートはするから」
 しかし、マタルもレイと同じだった。
「参謀長の被保護者だからって、ヒイキされてると思われるのはイヤです。……他の人からそういう風に思われないように、さっさと確認を済ませてください」
と言い、ソウは部屋から追い出された。
 
 ――何だか、妙な寂しさが残るが、しかし、ここは、子供たちが成長したと喜ぶべきところだろう。
 甘えていたのは、俺の方かもしれない。


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/