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オリジナル小説のダストボックス

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 寮のチェックを済ませると、後はマックに任せ、事務所に戻ったが、ここでもまだ大仕事が残っていた。
 ――引っ越しだ。
 というのも、工事中だった「ガニメデ要塞」のうち、事務棟が完成したため、事務所を仮施設からそちらへ移転させるのだ。――でないと、この場所が使えないため、建設計画が進まない。
 ……誰が決めたか知らないが、こうも同じ日にいろいろ予定を入れなくてもいいだろう……。心の中でブツブツと文句を言いながら、ソウは段ボール箱に引き出しの中身を移していた。
 そして、こんな時に限り、ディケイルはラボへ行ってしまっている。結局、「エレクト方式」を動かせるのは、現在、ディケイルしか居ないので、ドクターの実験台になっているようだ。……というのは名目で、引っ越しのゴタゴタから逃げたかっただけだろう。結局、ディケイルの荷物整理をするのは、ソウの役目ってコトになる。脚も治ったんだし、いい加減にしてもらいたい。
 
 「――あれ?参謀長、意外と読書家なんですか?」
 引き出しの向こうに落ちてしまったファイルを取ろうと、デスクの奥に手を伸ばしている時、誰かに聞かれ、イライラした頭でソウは答えた。
「もらったんだよ。実は、まだ読んでない」
「―――もらったって、誰に?」
「ニーナだよ」
「…………」
 ……相手が無言になったので、ハッとしてソウは顔を上げた。――ソウの視線の先には、エドが居た。真新しい文庫本を手に、呆然と突っ立っている。
「………あ、……えと………」
 ――しまった!!何という余計な事を言ったんだ、俺は!!
「……ぐ、軍に入隊した記念に、って、もらったんだよ。ただ、それだけで……」
 慌てて言い訳したが、時は既に遅かった。
「――ニーナが軍に入隊した頃って、確か、サン・ジョルディの……」
「え?そ、そうなのか?――たまたまだろう」
 ……ダメだ。もう何を言っても、見え透いたごまかしにしかならない。エドは文庫本の表紙に目を向けたまま固まっている。――最悪だ!ソウは、周囲の時間が凍り付いたように感じた。
 永遠とも思えたその気まずい時間のネジを再び動かしたのは、エドだった。しばらくしてから、ククク……と笑い出した。
「――参謀長のことだから、サン・ジョルディの日の事、知らなかったんでしょ?で、これをもらっても、それが告白だって気付かなかった」
「…………」
「――俺、そんな鈍感な男に負ける気はありませんから」
 エドは、本をデスクの上に戻しながら、ソウを見てニヤリとした。
「恋のライバルが参謀長だとは、ちょっと驚きですね。――でも、ライバルが居ない恋なんて、燃えませんから。今まで、敵は死んだ元彼だと思ってたから、どうすればいいか、正直分からなかったんです。でも、相手が参謀長となれば、対抗策も練れます」
 エドは、上着のポケットに手を突っ込んだ。
「ですから、参謀長も遠慮しないでください。僕に遠慮して、この恋を諦めるとか、そんな事は考えちゃダメですよ。そんな事されたら、俺も萎えますから。
 ――人生、こうでなくちゃ楽しくない!」
 そう言うと、エドは行ってしまった。ソウは、ポカンとその後ろ姿を見送るしかなかった。
 ――お、俺が、エドの恋敵、ってコトになるのか……?
 全く実感すら無いばかりか、そんな気すら無い。が、そう思われても仕方ない、のか……。
 
 「……あれ?何かあったんですか?」
 また声を掛けられ、見ると、今度はスージーが立っていた。――ここのところ、頻繁に事務所に顔を出すのだが、ディケイルが徹底的に逃げ回っているので、未だに対面は果たされていないらしい。
「今、忙しいんだ。後にしてくれないか?」
「そう言われて、もう1カ月以上過ぎましたけど」
「…………」
「まぁ、その間、適当に取材はさせてもらってますけどね。――だんだん、ガニメデが居心地良くなってきました」
 ――ソウとしては、そろそろ諦めて火星に帰ってくれないと困るのだが、スージーにそんな様子は見えない。
「ガニメデ要塞へお引っ越しなんですか?要塞内部の取材許可は、申請してもよろしいでしょうか?」
「いいワケ無いだろ!……とにかく、今は手が離せないんだ。また……」
「そんなに邪魔者にしなくてもいいでしょ?――せっかく、今日はいい『お土産』を持ってきたっていうのに」
「…………」
 仕方なく、ソウはスージーを休憩室へ案内した。自販機でコーヒーを買って差し出すと、スージーはそれを受け取り、一口飲んでフゥと息を吐いた。
「ガニメデのコーヒーって、火星産のはずなのに、何だろう、味がまろやかっていうか、違うんですよね」
「――それより、『お土産』ってのは?」
 ソウがベンチに腰を下ろしながら急かすと、スージーはソウに顔を向けてニコリとした。
「『お土産』のお返しを、お約束していただけるのなら、言います」
「…………」
 ソウは頭を掻いた。
「お返しは、ディケイルとの面会じゃなきゃダメなのか?他のヤツじゃ……」
「『アス会戦』の現場に居て、その真相をお話していただける方で、ある程度の立場のある方なら」
 ――結局、ディケイルしか居ないじゃないか!
「分かったよ、何とか説得する。――これでいいだろ?」
「約束ですよ?これを守ってくれなかったら、今度こそ、あのロボットの写真を持って、地球に売り込みに行きますから」
「………で、話とは?」
「――『第2コロニー駅爆破テロ事件』の事です」
「…………!!」
 暇に任せて、そんな事まで調べていたのか……!しかし、ソウとしては、食い付く以外に無い話題だ。
「カミラという主婦が実行犯で、真犯人はハイドロ・テラーって事で終わりましたよね?」
「あぁ」
「――しかし、その裏に、もうひとり、黒幕が居たとしたら……」
 
 それは、当時から、ディケイルも言っていた事だ。――キャサリン・ギルバート黒幕説。だが、結局、その証拠らしきものは何ひとつ見付けられなかった。
 ソウが火星に滞在していた時も、いろいろ調べてはみた。――だが、自由に出歩く事が出来ない状況で得られる情報は限られていて、結局、フォンシェに頼んで調べてもらった。――しかし、地球に居た当時はエリート社員をしていたが、結婚後、契約社員となって夫婦でガニメデに来たという、何でもない情報以外、新たな手掛かりなどは何一つ得られなかった。それは、ディケイルにも伝えたが、
「あんたを火星に行かせる名目として、調査を頼んだだけだから、新しい情報を得られるとか、考えてもいないから安心しろ」
と言われただけだった。
 
 ――それを、スージーが探り当てたとでも言うのか?
 ソウの懐疑的な目を見返して、スージーは言った。
「私、キャサリン・ギルバート法務大臣に助けられたっていう子供に取材をしたんです。――そしたら、思わぬ証言が取れました」
 ……確かに、そこには、ディケイルもソウも目を向けていなかった。
「その子、母親と一緒に、第2コロニーの駅前ビルで買い物をしていたそうです。その途中で迷子になってしまい、母親を探して事件現場を彷徨っている時、事件に巻き込まれた」
 スージーはもったいぶらせるように、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。
「――事件後のパニックの中でも、母親を探す事しか出来なかったその子は、それらしい女性を見かけると、片っ端から声を掛けて回っていたようなんです。その時、ギルバート大臣を見掛けた。
 しかし、ギルバート大臣は、その時はそのままどこかへ行ってしまった。――しかし、しばらくしてまた戻って来て、その子を連れて、救助隊の人のところへ預けに行った、と。
 ――問題は、その時、ギルバート議員が持っていたもの」
 スージーは、黙って聞いているソウの顔を確認するように一瞥してから、続けた。
 
 「最初に見た時は、確かに大きな金属製のアタッシュケースを持っていたのに、次に連れに来た時には、手ぶらだった……」
 
 ―――こ、これは!とんでもない情報だ!!キャサリン・ギルバートが第2の爆発の実行犯である証拠になるのではないか!
「その子、気にはなってたけど、言ったところで信じてもらえないだろうと、今まで黙ってたみたいなんです。確かに、5歳の子供の証言じゃ、正式な場に出しても、どこまで信用してもらえるか分からない。物証でもあれば別ですけど。……それに、それが何の証拠になるのかも、まだ分からないですしね」
 ……確かに、スージーの言う通りだ。爆弾が2個使用された事実が伏せられている以上、それをひっくり返す根拠としては弱い。しかし、ディケイルの推理が当たっている裏付けの、ひとつにはなるだろう。
 ソウは居ても立ってもいられなくなり、ベンチから立ち上がった。
「この事は、まだ、誰にも言わない方がいい。――命が惜しければ、な」
「分かってますよ。私は長生きしたいんです。……で、元帥への取材の件は?」
「今から会いに行って、アポを取って来る」
 
 スージーを帰して、とりあえず事務所に戻ると、既におおかた片付いてしまっており、残すはソウの荷物を残すだけになっていた。仕方ないが、それを新事務所へ運ぶ方を先にしなければならないだろう。段ボールを抱えて、新設の要塞へ、初めて足を踏み入れた。
 真新しい建物独特の臭いがする。無機質な素材で覆われた廊下を進み、エレベーターで教えられた階へ向かう。そして、『参謀本部室』と書かれた部屋へ入った。
 今までは、事務所はひとつで、総司令官から末端の事務員までが、同じ空間を共有していたが、今度からは、部門ごとに分かれた部屋になる。
 ――『参謀本部』と言えば聞こえはいいが、今までは、参謀本部長のソウが、事務職のまとめ役をしてたに過ぎない。これからも、その方針は大して変わらないだろうが……。
 それでも、人数は増えるようだ。ソウが部屋に入ると、既に何人かが居て、室内に並んだデスクや棚に向かって、それぞれ荷物の整理をしていた。
「これから、よろしくお願いします!参謀本部長!」
 あまり見掛けない顔の男が、ソウに敬礼をした。――きっと、募集に応募してきたうちのひとりだろう。
「よろしく。――あ、あまりかしこまらないでね」
 荷物で両手が塞がっているため、礼を返せないから、そんな言い訳をして、ソウは一番奥の机に向かった。――これからは、ここが俺の「居場所」になる。椅子に座ってみると、何となく、居心地が悪い。……この雰囲気に慣れるまでに、時間がかかりそうだ。
 
 すると、ひとりの女性がソウに紙袋を渡してきた。――その女性は、見慣れない服装をしている。デザインから、何かの制服のようだが……。
「これが、新しい軍の制服です。こちらが、参謀長の分ですので」
「………はぁ」
 言われて、ソウはその女性の服装をまじまじと見た。
 ――白いジャケットに、グレーのスカート。
 ジャケットはレザーっぽい素材で、襟が大きく立っていて、前合わせが深く、シャープなシルエットのデザイン。胸に付けられた階級章と、左袖のエンブレムのオレンジ色が、アクセントになっている。スカートは、ごく普通の形だが、脇に入ったラインが斬新な感じがする。
 ――正直、軍服らしくない。
「このデザインは、軍の女性たちが集まって考えたんですよ。――軍服って言ったら、普通、迷彩色でしょ?迷彩色は、周囲と同化して目立ちにくくするためのものですよね。だから、氷で覆われたガニメデで同化する色っていったら、『白』かな、ってコトになって」
 いつの間にか、部屋に居た他の人たちも、彼女の周囲に集まっていた。その中で、彼女はファッションショーよろしく、くるりと回って見せた。
「なかなかいいんでないの?」
「斬新だね」
「特に、この襟のとことか。デザイナーズブランドっぽい感じがするよ」
 ――ソウ以外の人々には、かなり好評なようだ。
「みなさんの分は、総務部に行けばもらえますよ」
 女性が言うと、他の面々も我先にと部屋を出て行った。
「――お、俺も、元帥の分をもらって、そのまま、ちょっとラボまで届けて来るよ……」
 女性とふたりだけで部屋に残されるのは何となく避けたくて、ソウもそそくさと部屋から退散した。


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