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 総務部へ寄って、ディケイルの分の制服を受け取り、その足でラボに向かう。
 その途中、宇宙空軍の建物の脇を通った。
 ――「宇宙空軍」は、ソウの所属する「ガニメデ独立支援軍本部」とは別棟になっている。それは、いざ攻撃を受けた場合、建物を分けておく事で、隔壁によって遮断して、被害を最小限に食い止める事ができるように、という理由らしい。他にも、宿舎棟や訓練施設なども、まだ工事中だが、渡り廊下と地下通路で繋がった別棟に設けられている。コロニー外の建物であるから、建物が損傷を受けた場合の対策まで、考慮されているのだ。
 ……ほとんどが事務所の本部とは違い、宇宙空軍の建物は、いかにも「要塞」といった趣だ。工事中のシートを被っているが、空へ向けて伸びる砲台らしきものも見えた。
 ソウは、それを見ながら先程のエドの話を思い出した。
 エドは、戦闘ロボットのパイロットだから、宇宙空軍の所属になる。そして、宇宙戦艦の整備士のニーナもまた、宇宙空軍の配下だ。――やはり、ソウには圧倒的不利な状況だ。
 ……いや、何を考えてる。そもそも、ニーナの告白を無視したような俺に、ニーナにアタックする資格など無い。エドはああ言うが、ソウにはエドのライバルになり得る程の素質すら無いじゃないか。
 
 間もなく、車はラボに到着し、ソウはドクターの研究室へ向かった。
 ――案の定、ディケイルはジョルジュたちと一緒に、モニターを眺めていた。……何だか楽しそうで、ソウは無性に腹が立った。
「おい!制服を届けに来てやったぞ!」
 すると、ようやく気付いたように、ディケイルはこちらに顔を向けた。
「お、サンキュ……、――って、まさか、それが新しい制服とか?」
「その通りだ」
 ――一応、来る前にロッカールームに寄って着替えて来たのだ。鏡でその格好をチェックしてみたが、お世辞にも、似合うとは言えない。
「……なんか、チーム・エメラルダスのコスチュームみたいで、カッコいいですね!」
 ジョルジュがよく分からない例えで褒めてきた。だが、ソウの今の心境は、そんな言葉で慰められるモノじゃなかった。
「おい、ディケイル!今日は何の日か知ってるか?」
「メイストームデー。バレンタインに付き合い出したカップルが、そろそろ別れ話を切り出す日」
「………いい加減にしろよ」
 ディケイルの言葉が、ソウの心のモヤモヤした燻りに油を注いだ。
「今日は、士官学校の入学式に、事務所の引っ越し!――これだけみんな駆け回ってるのに、おまえ、何して遊んでるんだ?」
 すると、ソウをこれ以上怒らせるのはまずいと思ったのか、ディケイルは両膝を抱えたまま、椅子を回してこちらを向いた。
「別に、遊んでるワケじゃない。前から言ってるだろ、エレクト方式の実験台が、俺しか居ないから……」
「あ、もうとっくにテストは終わってますから、どうぞ、仕事に戻ってもらって……」
 空気の読めない発言をするジョルジュを、ディケイルは思い切り睨みつけた。
「だそうだ。――それに、おまえしか乗れない機種を作って、何の役に立つんだ?」
「だから言っただろ。少なくとももうひとりは、これを扱える人間に心当たりがある」
「じゃあ、そいつを実験に参加させればいいだろ?――おまえ、軍の司令官という自覚はあるのか?」
 そう言うと、ディケイルは口を尖らせて膝に顔を埋めた。
「……今は、戦闘ロボットの開発を極秘にしているから、地球よりもこちらに部があると思うが、それが通用するのも1回キリで、その後は、地球の開発力には敵わないだろう。そんなヤツらが数で攻めて来たら、普通にやってたんじゃ、とてもじゃないが敵わない。ヤツらにはできない方式で、対抗するしか無いんだ。――例えひとりでも、それに対抗できるヤツが居れば、相手にとって脅威にはなる」
「だから、そのもうひとりは誰なんだ?」
 ソウが詰め寄ると、ディケイルは複雑な表情で目を伏せた。言いたく無さそうだったが、やがて、諦めたようにその名を口にした。
「―――レイ・マグアドル」
「……え……!!」
 ――まさか、あんな子供を、戦場の、しかも最前線へ出す気なのか!?
「もちろん、レイをこんなモノに乗せたくは無い。そうならない事が理想だ。――だが、そうしなければならなくなるのは、目に見えている。……だから、あいつが士官学校に入りたいと言った時、反対しなかった。……できなかった」
 ソウの手はほとんど無意識に、ディケイルの襟元を掴まえていた。それでも顔を上げようとしないディケイルに、ソウは言った。
「――おまえ、それでも保護者か?自分の都合で、命の危険にすら晒される場面へ子供を放り込む、これが、責任ある大人のやる事か!?」
 横で、ジョルジュがギョッとした顔つきで事の成り行きを見ているのが分かった。そのジョルジュの肩を、空気を読んだ他の技術者が叩き、引っ張るように部屋を出て行った。
 室内に、ソウとふたりきりになった事を確認して、ディケイルは言った。
「……あんたには言った事があるよな。レイは、普通の子供と違う。トランセンダーだ。――そういう立場に生まれてきたヤツの気持ち、あんたに分かるか?
 自分は、何のために存在するのか。平凡に生まれてきたのなら、そんな疑問もすぐに消えてなくなる。他の者と同化してしまえばいいのだから。だが、それができない人間は、ずっとそれを追求し続けなければならない。……レイのそんな気持ち、あんたに分かるか?」
 気付くと、長い前髪の隙間から、グレーの瞳が、冷淡な光を湛えてソウを見上げていた。
「常識的な発言は、誰にだってできる。これは人間としてやってはいけません、そんな事は分かってる。――しかし、そんな『常識』の枠ではおさまり切らない以上、その枠を外してやる事が、本人にとっての『救い』だったりする。
 ……殴りたきゃ殴れ。だが、俺は後悔していない」
 
 ディケイルの視線をまともに受け、ソウはゾッとした。――元々、ディケイルと俺は、根本的にレベルの違う人間なのだ。それなのに俺は、ディケイルが自分の「常識」内で動くのが当たり前とでも思っていたのか?……そんなものは、俺の「奢り」でしか無い。
 ――こんな事に、今頃になって気付くとは……!!
 
 ソウは、ゆっくりと手を離した。それからは、ディケイルに顔を向ける事もできなかった。元々、個人的なイライラをディケイルにぶつけていたに過ぎない。それに、士官学校入学を止められなかったのは、俺だって同じだ。自覚が無かったのは、俺の方だ。
 急に黙り込んだソウの様子を心配したのか、ディケイルが動揺したようにソウの顔を覗きこんだ。
「―――大丈夫か?」
 しかし、ソウはそれに返事もできなかった。とにかく恥ずかしくて、この場から消えて無くなりたい気分だった。
 
 すると、部屋に誰かが入って来た。――ドクターだ。ドクターは、部屋の空気になど構いもせず、言った。
「おい。そろそろ、あのロボットにも名前を付けないか?『ロボット』じゃ味気無いし、『ゴリアテ』では作業用のゴリアテと区別が付かん。何か、それっぽい呼び名を考えてくれ」
 すると、ディケイルはすぐさま返事を返した。
「『イザナギ』ってのはどうだ?地球のとある国の神様の名前だ。混沌を矛で掻き回して、その国を作り出したそうだ。――どうだ?ソレっぽくないか?」
 ――急に何を言い出すかと思えば……。ソウは驚いた。
 「イザナギ」は、日本の神様の名前だ。宗教とかには興味が無いソウでも、何となくその話は知っている。……まさか、ソウの機嫌を取るつもりで、そんな事を言っているのか?しかし、神様なら、世界にはもっとたくさん存在する。もっとカッコいい名前の方がいいと、反対されるのがオチだろう。
 だが、ソウの予測とは反対に、ドクターは満足げに腕組みをした。
「悪くはないな」
「いいと思います!何だかエキゾチックな感じで……」
「『天使のヒエラルキー』に対抗して、マイナー神話の神様ですか。いいんじゃないですか」
 いつの間にか、部屋に戻って来ていたジョルジュたちも、賛成のようだった。
「……しかし………」
「確かに、ミカエルのネーミングセンスは気に入らなかったんだ。ついでに、『ドミニオン』も改名しよう。――イザナギの相方なら、『イザナミ』かな」
 ソウの思いとは裏腹に、話はトントン拍子に進んでいった。そのついでに、現在フォボスで修理中の「プリンシパリティ」は、『アマテラス』という名前になったようだ。
「――本当に、こんなんでいいのか?」
 そんな中、戸惑っているのはソウだけのようだった。
「何が?不都合でもあるのか?」
「いや、そういう訳じゃ……」
 すると、ディケイルはソウを見てニコリとした。
「もっと、自分や、自分の故郷に自信を持て。――日本人の悪いクセだぞ」
 そう言って、椅子から立ち上がり、ソウの肩を叩いた。
「――さっきは言い過ぎた。……俺が言ってるのは、いつも言い訳だ。それを黙って聞いてくれる人が、俺には必要なんだ」


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