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オリジナル小説のダストボックス

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44.  ポルターガイスト
 
 
 士官学校に入学してから1週間。
 レイの日常は、大幅に変わった。
 
 まず、食事の準備をしなくてもいい。これはラクなようではあるが、一面、自分のその時の気分に合ったものが出て来るとは限らない。自分で作っていれば、少なくとも自分が食べられないものは作らない。手元の材料の都合はあるが、それでも、その時に食べたい系統にはできる。
 しかし、みんなで利用する食堂のメニューは、そうはいかない。選べない。
 この日も、レイはとトレイの上の食事を前に、ため息をついた。メニューは、チキンのフライにサラダ、コーンスープにパン。ごくありきたりで、若い少年たちを対象とするなら好き嫌いの少ない無難なメニューだ。けれども、今のレイの気分ではなかった。今の体調からすると、もっと、さっぱりとしたものが食べたかった。
 このところ、レイは全く眠れていない。枕が変わったから、とか、そんな理由ではないと思う。だって、孤児院が無くなって、ドミニオンに仮住まいを移した時も、ディケイルと一緒に第1コロニーの官舎に住み始めた時も、こんな事は無かった。――何だか、妙な声が聞こえる気がするのだ。
 夜、訓練で疲れているので、みんな早く寝てしまう。テレビも各部屋には無く、1階の娯楽室にしか無いので、特に見たいサッカーの中継とかでもなければ、わざわざそこで見るのも面倒だし、消灯時間が過ぎてそんな事をしていれば、怒られてしまう。だから、寝る準備と明日の用意だけ済ませたら、さっさとベッドに入るのだが……。
 みんなが寝静まり、それでも眠れずにイライラし始める頃。時計を見ると、2時過ぎくらいになると、「声」がするのだ。――女の子のような甲高い声で、笑っているのか、泣いているのか……。とにかく、そんな声が、上の階から聞こえてくるのだ。
 確かに、同じ宿舎の学生の中には、女の子も居る。しかし、そんな夜中に階下にまで届くような声を出していれば、監督官の人が気付かないハズが無い。それに、他のみんなにしても、そんな「声」の事など気にも留めていないのか、全く話にも出ない。――もしかして、僕にしか聞こえていないのだろうか……。レイにとっては、そんな事など不思議でも何でも無いが、気味が悪いし、現実、眠れないのは参っている。
 
 「……おい、どうしたんだよ、ボケッとしちゃって。早くしないと、食事の時間、終わるぞ?」
 前の席に座ったブライアンが、レイの顔を覗きこんで来た。
「食欲無いんだ」
「でも、食べなきゃ怒られるぜ?」
「分かってる」
 仕方なく、レイはフォークでチキンを突き刺した。――そして、思い切って、ブライアンに聞いてみた。
「――なぁ。夜中に変な声、しないか?」
「………は?」
 案の定、ブライアンはキョトンとした顔をした。
「宿舎に入ってから、ずっと、そのせいで眠れないんだ」
「ふぅん……」
 ブライアンは、最後に残しておいたのか、サラダのトッピングのオレンジをかじりながら、レイを見た。
「おまえ、霊感とか、あるの?」
 ――果たして、レイの持つ「能力」が霊感と呼べるものなのか?それは疑問だったが、詳しい説明をする訳にもいかないので、レイはコクリと肯いた。
「――マジかよ……」
 ブライアンは大きく目を見開いた。
「で、どんな声がするんだ?」
「女の子の声」
「どこから?」
「上の階から」
 すると、ブライアンはオレンジの皮を皿に置き、腕組みをした。
「――確かに、可能性はあるな」
「……どういうこと?」
 すると、少し得意気な様子で、ブライアンは話し出した。
「この建物、元はといえば、鉱山従業員が使ってた宿舎だろ?……で、誰も住む人が居なくなったから、改築して、士官学校の宿舎になってる。
 ……でも、改築したのは、9階建ての建物のうち、下の3階だけで、上の6階は、廃墟同然らしいぜ」
「…………」
「僕、父さんがあぁいう仕事をしてただろ?だから、結構、建物が今どうなってるとか、そういうの、詳しいんだ」
 確かに、ブライアンの父、マルコーコロニー長なら、コロニー内の建物の状況を把握していなければならない立場だったから、その話を家庭内でしていてもおかしくはない。
「この建物は、一見、綺麗に見えるけど、ガニメデコロニーが出来たのとほぼ同じ時期から建ってるから、実は、築90年くらいにはなるんだ。だから、何人か死んでても、おかしくは無い」
「――ちょ、ちょっと待てよ……」
 レイは寒気がしてきて、話を遮ったが、ブライアンは構わず話を続けた。
「それに、実は建て替える予定があって、少なくともここ十年くらいは、手入れも何もされずに、空き家のまま放置されてたんだよ。――それっぽくないか?」
 ブライアンが妙に楽しそうなので、逆にレイは引いてしまった。
「……おまえ、ホラーとかお化けとか、好きなのか?」
「あぁ、好きだよ。――というより、そんなモン、居る訳ないから、楽しめるんだけどな」
「………え?」
「だから、レイの声が聞こえるってのも、気のせいさ。何なら、今晩、本当に聞こえるか、付き合ってもいいぜ?」
 レイは、どう返事をしていいのか分からなくなった。
 
 ――が、とりあえず、ひとりで眠れない夜を過ごすよりは、と、ブライアンに付き合ってもらう事にした。しかし、とりあえずは、各部屋の見回りに来る監督官をやり過ごさなければいけない。時間になったら起こすという約束で、レイはベッドに入った。
 正直、クタクタだ。一応、クラブ活動でバスケットボールをしていたし、身体を動かす事は苦にならないと思っていた。しかし、体力づくりの基礎訓練というのを、ここ1週間、毎日やっているが、相当キツい。訓練施設の周囲を1時間もの間、ずっとジョギングしたり、柔軟や筋トレや、格闘技の基礎を習ったり……。
 格闘技の先生はマックなのだが、普段は優しいマックも、訓練となれば厳しい。どこで習ったのか知らないが、精神統一とか言って、床に一列に座って瞑想したり、ひたすら中腰の姿勢で静止してみたり、よく分からない訓練もある。だが、一見楽そうだが、これがなかなかにキツい。だいぶ慣れたが、初めの頃は、腿がひどい筋肉痛になった。
 ……そんなんで、体は疲れ切っているのだが、それでも、やはり眠れない。まだ声はしないが、いつ声が聞こえて来るのか、気になって仕方が無い。二段ベッドの上段だから、かなり近い位置に見える天井の、白い壁紙に映る影ですら、薄気味悪く感じる。心地良さそうな隣の寝息が恨めしく思えた。
 
 消灯時間が過ぎ、かなり経った。――連日の不眠で、頭が痛くなってきた。このままでは、そのうち倒れそうだ。……いや、この頭痛は、疲れのせいじゃない。……何かを感じる。何か……。
 その少し後、やはり、「声」がしてきた。笑っているのか泣いているのか、言葉になっていない「声」。
 枕元の時計を見ると、ちょうど午前2時。
 レイは起き上がり、音を立てないように注意しながら、ベッドのハシゴを降りた。
 下のベッドでは、ブライアンが向こうを向いて寝入っていた。
「――なぁ、ブライアン、……聞こえるんだ」
 小声で言いながら、そっと肩を揺らしてみる。……が、起きる気配は無い。
 ――何だよ、自分で言っておきながら……。
 しかし、このままベッドに戻る気にもなれなかった。もう限界だ。とにかく、原因を探らないと気が済まない。
 ……しかし、ブライアンの話が本当なら、「声」のする上階は、改築されていない廃墟のような場所という事になる。――そんな場所に、こんな夜中にひとりで行くのか?さすがにそれは厳しい。……ディケイルを呼びに行けば、付き合ってくれるだろうか?こんな話、理解してくれそうなのはディケイルくらいしか思い付かない。――いや、何を考えてるんだ。自立するために士官学校に来たのだろう。こんな事で頼ってはいけない。
 しばらく悩んだが、やはり「声」は収まらない。レイは息を大きく吐いて決意した。
 ――ひとりでもいい。探検に行こう。
 レイはベッドの脇のロッカーをそっと開け、そこから懐中電灯を出した。そして、足音が響かないように室内用の靴に履き替え、忍び足で部屋を出ようとした。
 
 「……おい、どこに行くんだ?」
 急に呼び止められ、レイは、飛び上がらんばかりに驚いた。振り向くと、ボビーがベッドから顔を出していた。
「ちょっと、トイレへ……」
「トイレに懐中電灯を持って行くのか?」
「…………」
 どうやら、誤魔化せないようだ。レイは仕方なく、ボビーに「声」の話をした。
 すると、予想外に、ボビーは真剣に話を聞いてくれた。そして、
「おまえ、シャーマンの素質があるんじゃね?」
と言い出した。
「――シャーマン?」
「俺の故郷、ケニアなんだけど、俺たちの住んでた村には、シャーマンが居てな。森の精霊と会話ができるんだ」
「……へぇ………」
「そういう能力を持ったヤツが、100人にひとりくらい生まれるんだ。おまえ、その才能があるんだよ、きっと!」
 そう言って、ボビーがベッドから出てきた。
「『声』が聞こえるんなら、きっと、おまえに何かお告げを伝えたいに違いない。見に行くべきだよ!」
 ボビーはレイの肩を掴んで、熱心に語っている。――他の人が起きないか心配になったが、どうやら、起きる気配は無さそうだ。
「でも、やっぱり怖いし……」
 先程まで決意していたハズなのに、いざ誰かに見付かると、気分が萎えてきた。しかし、ボビーは、
「じゃあ、俺も付き合うからさ!」
と行く気満々になっている。
「…………」
 どう返答しようか迷っていると、ボビーは一旦ベッドに戻り、すぐに戻って来た。そして、レイに何やら渡してきた。
「じゃあ、これやるよ」
 ――見ると、木彫りの小さな人形だった。目が異様に大きくて、ちょっと不気味だ。
「これ、俺の村に伝わる、魔除け人形なんだ。親父の形見と自分用と、2個持ってたからさ、俺のヤツ、おまえにやるよ」
「―――いいの?」
「あぁ。……これで心配は無くなったな。さぁ、行くぜ!」
 ボビーが自分の懐中電灯をポケットに突っ込み、ゆっくりとドアを引いた。そして、狭い隙間から首を出し、ゆっくりと左右を確認する。レイもそれに倣ったが、薄暗い廊下に、人影は見えなかった。
「……もし、誰かに見つかったら、トイレに行って迷った、だぞ?いいな」
 レイに念押しして、ボビーはゆっくりと廊下に出た。その後を、レイも続く。


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