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 ブライアンが目を覚ますと、時計は3時を回っていた。――ヤバい、寝過ごした。レイは2時頃、「声」が聞こえるとか言っていた。
 念のため、ブライアンはベッドの中から耳を澄ませてみた。……けれども、何も聞こえなかった。聞こえるものは、同室の誰かの寝息のみ。
 ――あれ?いつもは隣のボビーの寝息がうるさいくらいに聞こえるのに、今はそれが無い。どうしたんだろう……?
 ブライアンはそっと起き上がり、隣のベッドを見てみた。――すると、そこには、除けられた布団があるのみで、ボビーの姿は無かった。
 ……もしかして……。
 ブライアンは、そっとベッドから出た。そして、上段のレイのベッドを覗き込んでみる。――しかし、そこにも、レイの姿は無い。
 ――まさか!!
 レイが起きて来て、ブライアンが寝てるものだから、起こすのをやめて、たまたま起きてきたボビーと一緒に探検にでも行ったんじゃないか?……しかし、こんな夜中に廃墟同然の上階の探検に行くなど、正気の沙汰じゃない!
 ……いや待て。たまたまトイレに行ってるだけという事も考えられる。――だが、レイのベッドに手を当ててみて、ブライアンは首を横に振った。……冷え切っている。もう、ずいぶん前にベッドから出たという事だ。
 ――何とかしなきゃ。
 けれども、とてもじゃないが、ひとりであんな場所に向かうなど、考えられない。レイには「お化けなんか居るワケない」と言ったが、怖いからそう言って誤魔化しているだけであって、やはり、夜中の廃墟にひとりで行く勇気など、ブライアンの中のどこを探しても出てこない。
 ブライアンは、ひとりで室内に寝息を響かせているケビンを振り向いた。――よく、2人もの人間が出て行った事に気付きもせずに、平然と寝てるな。……まぁ、それはブライアンも同じだが。
 ブライアンは、少し考えた後、ケビンのベッドのハシゴに足を掛けた。
「――ケビンさん、ケビンさん。起きてください」
 しばらく肩を揺らしていると、ケビンはウーンと呻いて目を開いた。
「……何だよ。――まだこんな時間じゃないか。睡眠の邪魔をするなよ……」
 極めて不機嫌そうな顔でブライアンを睨んで、また寝入ろうとするケビンの肩を、また大きく揺らす。
「大変なんです。起きてくださいよ」
「だから、何なんだよ!」
 イライラした様子でケビンは起き上がり、ガシガシと赤毛を掻き回した。
「レイとボビーさんが居ないんです」
「……何だって?」
「レイ、夜中に上の階からヘンな声が聞こえるとか言ってたから、見に行ったんじゃないかと……」
「マジか……!?」
 ケビンは、驚いたというより、迷惑そうな顔をした。
「そんな勝手な事をして、監督官に見つかれば、連帯責任を取らされるのは、同室のメンバーと、リーダーである俺じゃないか。やめてくれよ……」
「だから、見付かる前に、連れ戻しに行かないと……」
 すると、ケビンはギョッとした顔でブライアンを見た。
「バカか?そんな事をして、俺たちが見つかったら……」
「見つからなきゃいいんでしょ?」
「…………」
 何と言おうが、明らかに嫌そうな顔をしている。――分かってる。建前は「見つかるといけない」だが、本心では、怖いんだ。
 ブライアンは言った。
「もう、出て行ってから、かなり時間が経ってるんです。もし、上で何かあって、朝まで戻らなかったとしたら、その方が問題じゃないですか?」
 ケビンは、顔を歪めて迷惑だという表情を表現すると、仕方なさそうにため息をついた。
「分かったよ。行くよ」
 
 薄暗い照明の廊下には、誰も居なかった。――こんな時間、監督官だって居眠りしてるに違いない。誰に出会う事も無く、ブライアンとケビンは3階に来た。
 ――やはり、4階へ上がる階段を塞いでいる椅子が除けられている。本当に行ったんだ……。
「……ちょっと待て。やっぱり、監督官を呼んで来たほうがいいと思う」
 ケビンが言い出した。
「そんな事をしたら、僕たちだって、何を勝手に出歩いてるんだと、怒られますよ?」
「…………」
 ケビンは渋い顔をして、階段に足を踏み入れた。
 
 ――4階から上は、3階までとは違い、改装も何もされていなくて、本当に廃墟そのものの雰囲気だった。懐中電灯の明かりだけが頼りだが、そんな心許ない光だからこそ、その不気味さは何倍にも増す。……こんなのの下に住んでたんだ……、そう考えると、ゾッとしてきた。
 だが、ケビンが注意を向けていたのは、別の事だった。
「――虫とか、居ないよな?」
 ……どうやら、ケビンは虫が嫌いらしい。ブライアンだって、好きではないが、恐怖に感じる事はさすがに無い。
 しかし、無機物に囲まれたこの空間では、虫が繁殖するような余地も無いだろう。ところどころに、紙切れやら空き缶やらのゴミは落ちていたが、虫が好みそうなモノじゃない。
 5階、6階……。人の気配は無い。念のため、次の階層に進むごとに、奥へ続く廊下に懐中電灯を向けて、「おーい!」と、控えめな声ではあるが呼び掛けてみるのだが、その光や声は、長い廊下の闇に吸い込まれて消えていくだけだった。……その闇の奥へ進む勇気は、さすがに無い。もし、最上階にまで行って、誰も居ないようなら、調べてみなければならないだろうが……。
「……ひょっとして、入れ違いになって、もう帰ってるんじゃないか?」
 ケビンが希望的観測を言い出した。
「その可能性はありますけど……。とりあえず、上まで一通り見ていきましょう。――それとも、怖いんですか?」
 怖いんですか?――このセリフは、ケビンのようなプライドの高い人間には、効果絶大だ。自分もそうだから、よく分かる。案の定、ケビンは、
「バカ言え!――もし虫が出たら、少しビックリするかもしれない、それだけだ」
と、虚勢を張って歩きだした。ブライアンは、吹き出しそうになるのを堪えながら、それに続いた。
 
 7階、8階……。黙って歩いているのが怖くなってきたのだろう、ケビンが「おーい、誰か居るか?ジェイコブ、マグアドル!迎えに来てやったぞ!」とブツブツ呟き続けている。まぁ、その気分は分からないでもない。
 しかし、何の反応も無いまま、最上階の9階へとたどり着いてしまった。6階分も階段を歩いて上って来たワケだから、かなり疲れていても良さそうだが、この時ばかりは、そんな事など気にもならなかった。まぁ、ゆっくり上がって来たからというのもあるが……。それよりも、レイたちは本当にどこに行ってしまったのか――。その方が問題だった。
「――お、おい。まだ、上に階段が続いてるぞ?」
 ケビンが言った。その声は、隠そうとはしているが、明らかに震えていた。――ビビッてる。確かに、この建物は9階建だから、その上に上がる階段があるのはおかしい。……可能性があるとすれば……。
「――屋上があるんじゃないですか?」
 すると、ケビンはしばらくポカンとブライアンの顔を眺めた後、ケラケラと笑い出した。
「……そ、そうだよな。普通、そう考えるよな……」
 ――ブライアンには、その笑い声の方が気味悪く感じた。もう、精神的に限界なのだろう。さっさと屋上だけ確認して、戻ったほうがよさそうだ。もし、それでもレイたちを見付けられなければ、今度こそ、監督官に連絡したほうがいい。
 ブライアンは、屋上へ続く階段を覗き込んだ。――すると、踊り場の辺りに薄明かりが見えた。思わず声を上げる。
「ケ、ケビンさん!何かが光ってます!」
 ブライアンは階段を駆け上がった。
 ――すると、その光の正体は懐中電灯だった。見ると、そのすぐ脇に、ボビーがヘタり込んでいた。
「……ボビーさん!!」
 明かりを向けると、ボビーは、血の気を失った顔をこちらに向けた。
「あ、あ、あ、あ、あ………」
 何かを言いたいのだろうが、顎がガクガクと震えて、言葉にならない。
「ボビーさん落ち付いて!もう大丈夫だから」
 ブライアンはボビーの肩に手を置き、しゃがみ込んで視線を合わせた。すると、ボビーが唾をゴクリと飲み込んで、ようやく理解できる言葉を口にした。
「あ、あいつ、……レイのやつ、お、屋上に………」
「マグアドルが、屋上に行ったのか?」
 ボビーが見つかって、少し気分が落ち着いたらしい。ケビンが階段を上りだした。すると、ボビーが声を上げた。
「気を付けろ!あいつ、何かに取り憑かれてる!」
 ……ブライアンとケビンは、まさか、と顔を見合わせた。しかし、それっきり、ボビーは黙ってしまった。両手に何やら人形のようなものを握り締めて、ガタガタ震えている。
「行くぜ、マルコー」
 ケビンに促されて、ブライアンも屋上へ向かった。ボビーはどうするかと思ったが、腰を抜かしているのか、立ち上がる気配も無かったので、そのまま置いて行く事にした。
 
 屋上へのガラス扉は開いていた。――その周囲に、おびただしい数の紙切れが落ちている。それは、階段の途中にもあったが、屋上に近付くほど、数が増えているようだ。
 屋上へ足を踏み入れると、意外にも明るかった。――といっても、コロニーの天井の、星空の照明の明かりだけだから、薄暗い事には変わりは無いが、建物の中の閉鎖的な暗さとは、比較にならない。
 屋上のコンクリート床の上にも、紙切れは散らばっていた。これは一体何だろう……?それを追うように、視線を奥に向けると、フェンスに囲まれた片隅に、物置小屋のような、粗末な建物が見えた。――その前に、レイが立っている。手に、何か白いものを持っているようだ。
「――レイ!」
 ブライアンは声を上げた。すると、レイはゆっくりと振り向いた。……ボビーはあんな事を言ってたけど、普通じゃないか。
「どうしたんだ?レイ」
 そう言いながら、ブライアンはレイに近付いて行った。すると、レイは顔を小屋へ向けた。
 小屋の扉もまた開いていた。やはり物置小屋のようだ。掃除道具やら雑多な雑貨が、所狭しと積み上げられている。
 その中央に、山の谷間のような空間があって、そこには、粗末な毛布が敷かれていた。
 
 その上に、1体のミイラが横たわっていた。
 
 その時、突然、小屋の中から、澄んだ音が響き始めた。――オルゴールだ。今時、こんなレトロなものが存在するのか。しかも、こんなところに……。
 雑多な荷物の中、朽ちて崩れそうな木箱の上に、それは存在していた。ワルツのリズムに合わせて、小さなメリーゴーランドの笠が、くるくると回っていた。


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