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 ふと、人の気配に気付いて顔を上げると、元帥が隣の席に来たのに気付いた。レイは、慌てて涙を拭った。
「――どうしたんですか?こんなところに……」
「問題児が休みを取ってひとりで出掛けたモンから、見張りが必要なんだとさ」
 質素なベンチに腰を下ろすと、またいつものように片足を上げて膝を抱えた。――教会という神聖な場所でこんな格好をするのは、どうかと思う。
「ヒマなんですか?」
 なかなか引いてくれない涙を誤魔化すように、憎まれ口を叩いてみる。
「ヒマじゃないさ。だが、俺以外のヤツの方が、もっとヒマじゃない」
「…………」
 名も無きミイラの葬儀は、防衛隊の人がふたりと、無理を言って参加させてもらったレイの3人だけが参列者という、質素なものだった。ひとりでも増えれば、少しは賑やかになったと、あの少女も喜ぶかもしれないが。
 
 司祭による祈祷が終わり、讃美歌を歌った後、防衛隊のふたりが棺を抱えて出て行くのを見送った。――ぬいぐるみとオルゴールも、棺に入れられた。
 ガニメデでは、基本、火葬はしない。そのようなエネルギーを使う余地が無いのだ。それよりは、コロニー外の永久凍土の中へ埋葬した方が、ずっと理に適っている。この棺も、そんな共同墓地に運ばれて行くに違いない。
 
 葬儀が終わり、司祭がディケイルに挨拶して去って行った。
 すると、ディケイルも大きく伸びをひとつして、「さぁ帰るか」と歩きだした。
「――一体、何しに来たんですか?」
 レイが着ているものもそうだが、今度の軍服は、とてもじゃないがこういう式典には向かない。第一、白というのは、結婚式には合うかもしれないけど、葬儀には禁忌の色だろう。一応、レイは喪章を付けているが、それすら無いディケイルの姿は、とても葬儀への参列者には見えなかった。
「何しにって、レイの見張りだよ」
 ……尚も言い張る。
「じゃあ、僕がこのまま真っ直ぐ帰らなかったら、付き合ってくれるんですか?」
 そんなつもりも無かったが、聞くだけ聞いてみた。
「いや、帰る。用事を思い出した」
 ――全く、言ってる事が適当過ぎる。
 何となく、その場に残ったまま、出口へ向かうディケイルの後ろ姿を見送っていた。……少し会わなかっただけなのに、どことなく、距離を感じる気がした。
 すると、ディケイルは不意に足を止め、レイを振り返った。
「――人間、いつ死ぬか分かったモンじゃない。死んでから、後悔しないようにだけはしとけよ」
 そう言い残し、出て行ってしまった。
 
 レイはしばらくそのままポカンと突っ立っていた。
 ―――ディケイルの言葉は、一体、どういう意味だろう?
 
 それから、レイは、何となく、席に戻って聖母子像に向き合った。
 穏やかな顔の母親は、優しさに充ち溢れた眼差しを手元の赤ん坊に注いでいた。
 
 ……なぜ、僕は生まれて来たんだろう?
 その疑問は、いつも心に抱えている。「普通でない」子供に生まれて来たからには、僕にしか出来ない役割があるはずなんだ。――でも、未だにそれを見付けられずにいる。
 ――ならば、レイにとって、ここまま死んだら「後悔する」事って何だろう?
 レイには、思い当る事がたくさんあった。
 まずは、マタルがなぜレイを避けるようになったのか、その原因を知って、解決したい。これだけは、はっきりしておかなければ気が済まない。それから、周囲の人たち、中でもマタルやカティには特に、感謝の気持ちを伝えておきたい。
カティには、心の底から感謝している。どんな言葉を並べ立てても、伝え切れないくらいだ。レイが発作を起こす度に、必死になって介抱してくれた。薄れゆく意識の中で見たその姿は、はっきりと脳裏に焼き付いている。
 ……こう考えてみると、至って普通の事ばかりだ。
 ――もしかしたら、ディケイルは、それをレイに気付かせたいがために、わざわざ来たのだろうか?
 
 レイは、先程まで棺が置かれていた場所に目を向けた。
 ――本当の気持ちを伝えられないまま死ぬって事が、どんなに不幸な事なのか、よく分かった。……と同時に、あのふたりを、羨ましくさえ感じた。あんなに真剣な恋に出会う事が、レイにはできるだろうか?
 ……もし、先程のふたりみたいに、レイに、どうしてもその想いを伝えなければならない、かけがえの無い人が出来たとすれば、それは一体誰なのだろう?
 ――何となく、先程の少女と、カティの姿が重なった。……確かに、カティの事は好きだ。けれども、それは、マタルと3人の絆の中のものであって……。
 
 そう考えていると、レイの心の中に、何か違和感が沸き上がって来た。
 ――まさか。
 
 確かに、レイだって普通の人間だし、そんな年頃ではある。でも、そんな事を考えたら、マタルとカティと、そしてレイという、この家族以上に強く結ばれた絆は、崩れてしまうじゃないか。
 そう思って、ハッとした。と同時に、背筋が凍り付くような戦慄を覚えた。
 
 でも、それはレイだけじゃなくて、マタルにも当てはまる事だ。
 
 もし、マタルがカティを好きになって、その想いを告げていたとしたら……。
 ……そういえば、マタルの態度が変わったのは、サン・ジョルディの日くらいからだ。マックの家のパーティーの時、エドがやってた事を真似して、カティに告白した。――もしそうだったら、カティはどうするだろうか?優しくて真面目なカティの事だ。レイと同じような事を考えて、マタルと個人的に付き合う事は避けるだろう。
 ――それを、マタルは、カティが僕の事を好きだから断ったと思った……。
 
 ……そんな事で……。
 そんな些細な事で、綻んでしまうような絆だったのか。
 
 いや、マタルにとっては些細な事では無いから、こんな事態になってるのだ。――しかし、こんな場合、僕は一体どうすればいいのか?
 
 レイは頭を抱えた。
 何とか、マタルには誤解を解いて欲しい。しかし、レイがマタルに面と向かって何を言ったところで、聞いてくれはしないだろう。
 マタルのした行動は、間違っていたとは思わない。心の中でそんな想いを燻らせていたら、いつかは態度に出るだろう。そうなったら、遅かれ早かれ、3人の関係は壊れていた。好きになってしまったものは、仕方無いんだ。――いつかは、こういう時が来る事は、必然だったんだ。
 
 ――じゃあ……。
 現状を打破する方法として、レイにはひとつしか思い浮かばなかった。
 ……僕が、引くしかない。
 マタルの想いを成就させれば、それで全てがうまくいくんじゃないか。レイが一歩退いて、マタルとカティの恋を見守れば……。
 
 ――それじゃ、僕の気持はどうなるんだ?
 
 いや、僕の気持ちなんかどうだっていい。そんな事よりも、マタルとカティが幸せになってくれたら、その方がずっといい。そもそも、恋なんて、先にその意思を示した方が勝ち、そんなモンだろう。どうせ、僕は負けていたんだ。
 ――こうなったら、あとは、カティの気持ちがマタルに向くのを阻害している、その要因……つまり、「僕」という重荷を、カティの心から外してやれば……。
 「僕はひとりでも大丈夫」。そう伝えれば、分かってくれるんじゃないか。
 
 レイは立ち上がった。――なぜだろう?一旦止まったはずの涙がまた出て来た。
 その涙のカーテン越しに、聖母子像が霞んで見えた。慈愛に満ちた眼差しは、何回見ても、レイでは無い人物に向けられていた。
 レイは何度か深呼吸をして涙を収めると、教会を後にした。


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