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 夕方、学校が終わった頃を見計らって、レイは、ニーナとカティが暮らすアパートに向かった。――一度、宿舎に戻ってしまえば、また出掛ける時に書類を書かないといけない。何だがサボっているようで、それもイヤだ。レイは、それまでの時間を、何の意味も無く公園で潰した。
 一度は玄関まで行ってみたが、まだ帰っていないようだった。仕方なく、アパートの入口の階段に腰を下ろし、待つ事にした。
 どのくらい待っていたのか。頭の中が真っ白で、時間の感覚が全く分からなかった。日が陰り、仕事を終えた人々が何人か、レイの前を通り過ぎて行った。
 ――完全に日が落ちた頃になって、ようやく、聞き慣れた声がレイの名を呼ぶのが聞こえた。
「……どうしたの?こんなところに……」
 カティだった。少し驚いた顔で、レイを見ている。
「ちょっと、話したい事があるんだ……」
 レイは立ち上がり、近くの公園へ向かった。カティが後をついてくる。木陰のベンチに座ると、カティも隣に腰を落ちつけた。
「――もしかして、待っててくれた?昨日、連絡をくれれば良かったのに」
「…………」
「実は、今、病院でアルバイトしてるの。――って言っても、そんな、正式なものじゃないけど。まだこんな年でしょ?だから、ほんのお手伝いくらいしかできないけどね。
 ……私、来年から、看護学校に行こうと思ってるの。その勉強のために、ニーナさんの知り合いの人に頼んで、やらせてもらってるの。
 ――遅くなっちゃって、ゴメンね」
 レイは驚いた。――カティはこんなに真剣に、未来を見据えている。……何となく士官学校を目指してみた僕とは大違いだ。
「それ、新しい軍の制服なのよね。ニーナさんのを見てるけど、オシャレじゃない?ニーナさんは、軍服って言っても、いつも作業用のツナギだから、そういう、制服っぽいのを見ると、ちょっと新鮮だわ」
 カティは、いつも以上によくしゃべった。というよりも、何か話題を探そうと必死なようだった。――僕が、何か言い出すのを、少しでも引き延ばしたい、そんな感じがした。
 ……やっぱり、マタルと何かあったんだろう。
「士官学校って、休みとか、どうなってるの?また、3人で……」
「あの、カティ」
 レイが言葉を遮ると、カティは困惑した顔をした。
 レイは、ひとつ大きく息を吐いて、言った。
「僕の事は、心配しないで」
「―――え?」
「マタル、カティの事が好きなんだろ?」
「…………」
 カティは悲しい顔になって、俯いた。そして、しばらく考えている様子だったけれど、やがてゆっくりと話し出した。
「――屋上に呼び出された事があったの。……私、何となく怖くて、まともに話を聞けなかった。そしたら……」
「そしたら?」
「マタル、何も言わずに帰っちゃった。――それから、話してないわ」
「…………」
「――でも、もし、マタルが私を好きになってくれてたとしても、それは、幼馴染みとしてで、そんな……。――だから、あの時、それを分かってくれたから、何も言わずに……」
「もう、いいんだ。僕の事は気にしないで」
 レイはカティを見た。そして、レイを見返すカティに、微笑んで見せた。
「もっと、自分の気持ちに素直になっていいと思うんだ。――大人になるって、そういう事だと思う。いつまでも、3人で居られるはずが無い事は、みんな、口には出さないだけで、分かってたんじゃないか?それは、仕方の無い事だよ」
「…………」
 レイは、カティの顔を見ていられなくなった。目を伏せ、独り言のように呟いた。
「だから、僕は、カティとマタルが幸せになってくれれば、それで……」
「―――私の気持ちは、考えてくれた事あるの?」
 カティが言った。それが、今までに無い強い口調だったので、レイは驚いて顔を上げた。
「私が、どう思ってるのか、レイは考えてくれた事ある?」
 カティの頬を、涙が伝うのが見えた。街路灯の照明が潤んだ瞳に反射して、キラリと輝いた。
「……無いんでしょ?だから、そんな事言えるんでしょ?
 つらいのは、レイやマタルだけじゃないわ。私だって……。
 ――私が、何で看護学校を目指してるのか分かる?私は………」
 カティはじっとレイを見ていた。しかし、そこで言葉を切ると、目を閉じ、立ち上がった。瞼から、涙が溢れた。
 そして、レイに背を向けると、走り去って行った。
 
 レイは、その後ろ姿をただ見送りながら、愕然と立ち尽くすしか無かった。
 ――まさか、カティが好きだったのは、本当に、僕、だったのか……!?
 
 それから、再び眠れぬ日々に突入した。
「――おい、最近元気無いぞ?どうしたんだよ」
 夕食の時、またブライアンが聞いて来た。
「眠れないんだ……」
「おいおい、またかよ。――今度は、どんな声なんだ?」
「いや、そうじゃない」
「じゃあ、何だよ?」
「…………」
 さすがに、言えない。食欲も皆無だったが、食べないと怒られるから、仕方なく、じゃがいものポタージュを喉の奥へと流し込んだ。
 
 「――こんばんわぁ~!みんな、ちょっと聞いて!」
 聞き覚えがある元気の良い声がして、レイは顔を上げた。――ニーナだ。
「私は、宇宙空軍の整備技師の、パルネラと言います。今日は、新しいテキストを持って来ました。志望部隊に、『特別機動部隊』と書いた人は、取りに来てくださ~い!」
 ……そういえば、来週から、希望する部隊に分かれての、専門的な勉強も始まると聞いている。そのための教材か……。
 「特別機動部隊」は、いわゆる「巨大戦闘ロボット」を操る専門の部隊だ。レイも、3つまで選べる志望部隊のうちのひとつに、書いていた気がする。適性検査が厳しいらしいので、実際に入れるかどうかは分からないが……。
「あ、僕、そう書いた」
 ブライアンが立ち上がった。隣で、ケビンとボビーも席を立った。――いや、食堂に居るほとんどの学生たちが、ニーナのところへテキストをもらいに行っている。……やはり、アニメのイメージの影響で、人気のようだ。
 列に並び、レイの順番が来ると、ニーナが気付いて、
「こんばんはっ」
とウインクしてきた。
「――レイくん、ちょっと後で、時間もらえないかしら?食事が終わったら、ちょっと、食堂に残ってて」
 ……何だろう?よく分からなかったが、食事のトレイを片付けた後、食堂の片隅に座って、ニーナが書類と残った教材を見比べて確認しているのを眺めていた。
 
 「――お待たせ。……ごめんね、時間取らせちゃって」
 作業を終えたニーナは、カップに水をもらって、レイの向かいの席に座った。
「あのね、個人的な話をこんなところでするのも、どうかとは思ったんだけど、やっぱり、言っておかなきゃ、と思って」
 ニーナは、水を一口飲んだ。
「――この前から、カティが何だか落ち込んでてね。で、見るに見かねて、昨日、問い詰めちゃった」
「…………」
「前からね、カティがレイくんの事、好きだってのは知ってたの。――そのレイくんに、あんな事を言われたんじゃ、言っちゃ悪いけど、そりゃ、傷付くわよ」
 レイは顔を伏せるしか無かった。ニーナがこんなにはっきりと物を言う人だとは思っていなかったけれど、今は、その方がありがたかった。
「同じ年でも、男の子よりも女の子の方が、身体的にも精神的にも、成長が早いの。だから、あなたが思ってるよりもずっと前から、カティはあなたの事が好きだったのよ。言えなかっただけで。やっぱり、カティも、あなたと同じように、3人の関係を壊しちゃいけないって、考えてたんだと思うわ。
 ――でも、逆に言えば、そんな深い気持ちだから、少しくらい何かトラブルがあったところで、急に変わるモンじゃないわ。……分かる?」
 レイは、ニーナの言葉の意味がよく分からず、顔を上げた。すると、ニーナはニコリとして、レイの目を見つめた。
「時間はかかると思う。でも、カティの心の傷を癒せるのは、レイくん、あなたしか居ないの。何だかんだ言って、カティはずっと、あなたの事を好きでいると思うわ。だから、ゆっくりでいいから、あなたの気持ちを、カティに伝えてあげて」
 ――言われて、レイはカッと顔が熱くなった。……僕がカティの事を好きなのも、見抜かれてたのか。普段、人の気持ちを先に読む方が普通になっているので、逆に自分の心を見透かされると、必要以上に動揺してしまう。
 レイは慌てて顔を伏せた。そして、ドキドキと激しく脈打つ心臓の音を誤魔化すように、思い付いた事を言ってみた。
「ぼ、僕が悪いんです。もっと、早くに、その、カティの気持ちが分かっていれば……。――あ、いや、べ、別に、そういう意味じゃなくて……」
 明らかに取り乱しているレイを見て、ニーナが楽しそうに微笑んだ。
「そんな事は無いわよ。レイくんが鈍かったというよりも、カティが大人になるのが早過ぎたんだから。――私の知ってる人にね、いい大人のクセに、面と向かって告白されても、それに気付きもしない鈍感な人が居てね……」
 
 
 
 ソウは、宇宙空軍ビルの廊下を歩きながら、盛大にクシャミをした。――風邪でもひいただろうか?さっさと用事を済ませて、早く帰って寝よう。
 ソウは廊下の突き当たり、『司令長官室』を書かれたドアを押し開けた。
 部屋の主は、デスクの脇のソファーにごろんと横になり、居眠りをしていた。……全く、ここで居眠りをするくらいなら、さっさと帰ればいいだろうに。
「おい、ディケイル!ラボから届いた、『イザナギ』のテキストだ。今日、ニーナが士官学校に……」
 そう言いながら、またソウはクシャミをした。その音に驚いたのか、ディケイルが飛び起きた。
「―――な、何だ?」
「……ただのクシャミだよ」
「――風邪なら、俺にうつすなよ?」
「こんなところで寝てるほうが、風邪への近道じゃないか」
 そう言いながら、ソウは手に持った冊子をディケイルに手渡した。
「欲しいって言ってただろ?同じものが、レイたちにも配られてるはずだ」
「…………」
 ディケイルは、ページをペラペラとめくって眺めだした。
 それを見ながら、ソウは、以前から思っていた事を尋ねてみた。
「――レイを、本当に『イザナギ』に乗せて、戦場に出すつもりなのか?」
「本人の意思次第だ」
「なら、本人がそう希望しなかったら、どうする気だ?」
 ディケイルは、一瞬、ページをめくる手を止め、ソウを見上げた。
「代わりに、俺が出る」
「……何考えてる?司令官が前線に出て、じゃあ、あとは誰が指揮するんだ?」
「あんたがやればいいだろ?」
 ディケイルはそう言って、ページに目を戻した。
「あのな、人には向き不向きというモノがあって……」
「元々、俺は現場で動いてる方が合ってるタチだ。あんたは、後方に居て全体を見渡せる。どこに問題があるんだ?それに……」
 ディケイルは親指の爪を口に当てた。
「レイが戦場に出ようが出まいが、必ずいつかは、そんな時が出て来る。あんたにも、心構えはしておいて欲しい」


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