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オリジナル小説のダストボックス

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46.  遺書
 
 
 スージーは、パソコンを前に、物思いに耽っていた。
 
 5日ほど前、ディケイル・ウェイニーへの取材が、ようやく達成された。
 ――あれだけ脅しておいたので、あのナカムラとかいう参謀長も、さすがに重い腰を上げたのだろう。……といっても、本人に取材の内容、いや、取材である事すら伝えないまま、半ば騙すようにして連れて来たらしく、ディケイルは極めて不機嫌だった。しかし、キャサリン・ギルバートの疑惑という「餌」に食い付いた以上、逃げるに逃げられず、渋々といった顔で取材に応じた。
 ……アス会戦の際、地球側の指揮官であるリン警備部長が錯乱し、自軍へ砲撃。それに対し、投降したプリンシパリティのメイリン艦長と協力して、旗艦であるヴァーチャーを総攻撃。こうして、会戦は終わった。
 ――確かに、これが事実であるという根拠を得た上でも、『マーズ新聞』のあのタヌキ編集長が取り上げてくれそうな内容では無かった。しかし、根性の末に得られた貴重な情報だ。三流ゴシップ誌でもいいから、記事にして持ち込んでやる!
 ……と、思っていたのだが……。
 
 「――そんな事を世間に公にして、何になる?」
 当のディケイル・ウェイニーが、暗い目をスージーに向けた。
「そんな事って……。我々ジャーナリストは、真実を一般市民に伝えるのが仕事なんです。私は、この仕事に誇りを持ってます」
 ――「誇り」なんてのは出任せだが、でも、これが金になるのなら、誇りでも「埃」でも、何でも持ってやる。
「……『誇り』、ねぇ……」
 明らかにバカにしたような口調でディケイルがそう言うので、スージーは腹が立ってきた。
「自分の好きな仕事に誇りを持つ。いけませんか?」
「リン部長も、『誇り』がどうのこうの言いながら、死んでいったよ」
「…………」
「こんな、個人の不名誉を暴いたところで、誰が幸せになれる?
 ――それよりは、『名誉の戦死』という事にしておいて、遺族が年金で豊かな老後を送るのを見守ってやった方が、世の中、幸せになれると思うけどな」
「しかし、何も知らない一般市民に真実を伝えないで、それが正義と言えるんでしょうか?」
「知らない方が幸せという事もあるだろう?あんたなら分かるはずだ」
 ――あぁ言えばこう言う。話せば話すだけ腹が立ってくる。
「お言葉ですが……」
「それよりも、もっと、報道すべき事はあるだろう?」
「―――は?」
 今度は、強引に話を切り替えて来た。
「アス会戦後、こちらに投降しないで地球へ帰還した人たちはどうなった?――貨物船との衝突事故?……まさか。軍用艦が貨物船とぶつかった程度で、大破すると思うか?――絶対に『裏』がある」
「はぁ……」
「それと、ハイドロ・テラーがガニメデに来た経緯。あんたほどの人なら、すぐに情報が掴めるんじゃないか?
そういう『真実』こそ、市民に知らしめるべきじゃないのか?」
 ……何だか、強引に地球へ興味を持たせるように誘導されているような気がする。
「――とにかく、今後の展望も拓けないような、小さな事をほじくり返しているうちは、一流にはなれないぜ?」
 
 ……これにはさすがに、スージーもキレた。
「あんたに言われる筋合いはねぇよ!」
 横で、カメラを胸にかしこまっていたカムイが、ビクッとするのが分かった。それには構わず、スージーはキッとディケイルを睨んだ。
「オレが一流だろうと二流だろうと、あんたには関係ねぇだろ!
 ――いつか、もっと大物になったら、あんたの葬式を取材してやるよ!!」
「はいはい。その時にはよろしくな」
 あまりに気の無い返事を返されて、スージーは怒りの矛先をどこへ持っていっていいのか分からなくなった。仕方ないので、
「カムイ!帰るぞ!!」
 そう言って、部屋を出ようとした。
 すると、スージーの後ろ姿に向かって、ディケイルが最後に一言を投げてきた。
「――キャサリン・ギルバートには、もうこれ以上関わるな。……あんたの葬式は、まだ見たくないからな」
 
 ―――その時は、頭に血が昇って、それが嫌味としか聞こえなかった。
 だが、こうして落ちついて考えてみると、ディケイルの真意は別にある気がした。
 
 ……わざとスージーを怒らせた事からして、ガニメデを追い出そうという意図なのではないか、と思えるのだ。そのために、地球とアース・コーポレーションに関する疑惑のネタを提供し、地球に興味を向けるように仕向けた。怒りに任せ、このままガニメデを出て行ってくれればいい。
 そして、最後の一言。
 ――あれは、スージーに対する「警鐘」のつもりなのか。
 これ以上、ガニメデに居る事は危険だ、という。
 
 ……しかし、そう考えれば、なおさら出て行く気は失せた。それがスージーの性分なのだ。
 ――キャサリン・ギルバートには、何かがある。
 根拠はないが、確信めいたものが、スージーの中に固まりつつあった。
 ……もう少し、ガニメデに居ようか。
 
 結局、アス会戦に関する事よりも、こちらの方が気になって、全く記事はまとまっていなかった。
 そんなスージーのパソコンを、カムイが後ろから覗き込んだ。
「―――あれ?スージー、恋してる?」
 突然、素っ頓狂な事を言われ、スージーは後ろを振り返った。
「……はぁ?おまえ、バカか?」
 ――と言いつつ、なぜか、耳のあたりが熱くなっているのに気付いた。
「だって、ここのところ、ずっと考え込んでるし……。いつものスージーらしくないよ」
 どうやらカムイは、スージーの微妙な動揺に感づくほどの敏感さは、持ち合わせていないようだ。
「うるせぇなぁ、このタコ!!そんなどうでもいい戯言ホザいているヒマがあったら、何か金になるネタを持って来い!」
 スージーは、椅子から立ち上がりざまに、ブーツのヒールでカムイのみぞおちを狙った。――だが、あっさりとかわされてしまった。……おかしい、確かに、キレが無い。
 しかし、カムイはニヤニヤしている。
「それがさ、いい写真が撮れたんだよ。――ほら、見て。ガニメデ要塞の宇宙空軍基地だよ。コロニーの外に出ないと、これは見えないからね」
 カムイは得意気にカメラのモニターを見せたが、スージーは上の空だった。
 
 ――先程感じた、あの動揺は、何だったんだ?まさか、オレ……!?
 
 
 
 その日、レイは、『イザナギ』の操縦実習に挑んでいた。
 1週間ほど前から、テキストで基礎を習っていた。基本は、作業用ロボットの「ゴリアテ」と一緒なようで、……だが、エドがどんなに熱弁しても、ゴリアテにすら馴染みがないレイたちに、伝わるハズも無かった。
 
 しかし、こうして実物を目の前にすると、テキストを眺めていた十数時間分以上の情報が、一気に脳に入ってくる。
「じゃあ、まず、適正検査的なモノをさせてもらうよ」
 ラボから出張講習に来ているジョルジュが、張り切った様子でレイたちに向き合っていた。
「『イザナギ』には、大きく2種類の起動方法があって、それのどちらが向いているか、まずテストさせてもらうね」
と言って、順番に「エレクト方式」と呼ばれる機体の操縦席へ案内した。
「これを起動させるには、70%以上の『適合率』が必要なんだ。これは、脳波の強度と大きく関わっていて……」
 ……何やら小難しい事をブツブツ言いながらテストを進めているが、少年たちの耳にそんな言葉は届いていなかった。実際に実物を見る興奮で、それどころじゃないのだ。
「―――じゃ、次は、えーと……、あ、レイ・マグアドルくんね」
 レイの順番が来た。ハシゴを上り、「胸」の位置にある操縦席へ来ると、ジョルジュがニヤニヤした顔でレイの手を引いた。
「レイくんなら、元帥の推薦もあるし、きっと起動できるハズ!」
 ――よく分からなかったが、引きずり込まれるように操縦席へ導かれ、ハッチが閉められた。
 中は、思った以上に狭く、シートに座っているレイはともかく、横でナビゲート役を務めるジョルジュは中腰にならなければいけないくらいだ。それでも、何だかジョルジュは楽しそうだった。
「いい?このゴーグルが脳波をキャッチする端子になってるんだ。――リラックスして。それで、自分がこのマシンの一部になったみたいに、イメージしてみて」
 
 レイは、言われた通り、目を閉じ、深呼吸をした。――すると、パッと視界が開けたような感覚がして、ビックリした。見ると、それまで壁だったはずの場所が透明になり、外の風景が見える。――ハシゴの下で、期待半分不安半分の表情で、巨大なマシンを見上げる少年たちの姿。その向こうに、他の機体が並んだ巨大な空間が広がる。
 ……床も壁も天井も、全てが風景になり、まるでシートごと宙に浮いてるみたいだ。――いや、「イザナギ」の視点から、風景を見下ろしている、のかもしれない。狭い操縦席から突然広い空間に放り出されたような気分で、レイは戸惑った。
 
 「――適合率85%!……やっぱりすごいよ、レイくん!」
「……そ、そうなんですか?」
 初めての体験に、緊張と動揺を隠せない。
「今まで、もう何十人もテストしてきたけど、『適合率』の壁を突破したのは、元帥とレイくん、ふたりだけなんだ」
「え………!?」
 レイは、その理由が何となく分かった気がした。――この機体は、脳波で起動するとか言っていた。という事は、脳波があるレベルよりも高い人間、……トランセンダーでなければ、起動できない。
 
 ――しかし、ジョルジュにそこまでは分からないようで、ただ、すごいすごいと、興奮した様子で手元のモニターを見入っている。
「じゃ、じゃあ、起動してみるよ?――頭の中でイメージしてみるんだ。『目を覚ます』って感じなんだけど……。慣れないうちは、『wake up』って単語を思い浮かべるんだ」
 ジョルジュの言葉の意味がよく分からなかったため、とりあえず、レイは心の中で呟いてみた。
「……W…A…K…E……、U…P………」
 ―――すると、すぐ足元で、機械が起動するような振動が起こった。静かだが、モーターが回るような音もする。
 それと同時に、周囲の風景の中に、何かのメーターかパネルだかのモニターが、半透明の感じで現れた。数字やら文字列やらが、目まぐるしく動いている。
「す、すごい!動いた!動いた!!」
 ジョルジュが興奮して、レイの肩を揺らした。それが痛くて、反射的に払い除けようとすると……
 風景が、一気に赤い色に変わった。そして、警報アラームが鳴り、
「――現在、バックボードに固定中です。解放できません」
という無機質な声が聞こえた。
「……まだ動かそうとしちゃダメだよ!テスト中なんだから」
 ジョルジュが言ったが、レイは訳が分からない。僕が、一体何をしたんだ……?
 
 しかし、何とか、テストは終わったようで……
 
 結局、「エレクト方式」に適正があったのは、レイだけのようだった。
 他にも、いくつかのテストを受け、その結果で、少年たちは3つのグループに分けられた。――「アナログ方式」のグループと、「ハイブリッド方式」のグループと、そして、レイ。……ひとりだけのグループになった時は、少々不安になったが、今後は、ハイブリッド方式のグループと一緒に訓練を受けると聞いて、ホッとした。
 
 だが、そのメンバーを見て、レイの心は再び不安に包まれた。
 ハイブリッド方式のグループの中に、マタルが居た。


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