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オリジナル小説のダストボックス

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 2211年6月3日。
 フォボスで修理をしていたプリンシパリティ――もとい、『アマテラス』が、ガニメデ要塞に到着した。……損傷がひどかった事と、整備のための設備が十分に整っていないフォボスで、強引に作業を進めていたため、結局、2カ月近くかかってしまった。
 ソウは、マッド・テイラーたちと共に、要塞に併設された軍用滑走路に、アマテラスを出迎えに出ていた。
 ――新設の滑走路とはいえ、ガニメデの超低温の中では、薄っすらと氷を被って、白っぽく見える。そこに、宇宙戦艦の巨体が、ゆっくりと降りて来た。
 滑走路の完成と当時に、ドミニオン改め『イザナミ』も、こちらに居を移している。――それと見比べると、アマテラスはそれでもひとまわり小さい。……イザナミがグレープフルーツだとすると、アマテラスがミカンくらい?……こんな貧相な表現しかできないソウのボキャブラリーの貧しさも、どうかとは思う。
 続いて、装甲艦とミサイル艦、哨戒艦、駆逐艦と、小型の軍艦も次々と上陸する。――だだっ広いだけで殺風景だった軍用空港が、一気に賑やかになった。
 ……それも、全て地球からの「戦利品」という……。――何だか、気が引けるような気がしないでもない。
 
 「――これで、ガニメデ軍も一気に軍事力が上がりましたね」
 急に声を掛けられ、ソウは驚いて振り返った。――すると、そこにはスージーとカムイが居た。
「……な、なんであんたらが居るの?」
「普通に施設見学を申し込んだら、通れました」
「…………」
 確かに、滑走路は、いつの間にか始まった施設見学のコースに入ってはいる。
「――えと、今日は何の用なの?」
 もう、ディケイルへの取材は済んだのだし、今度は何の用だ……?
 すると、スージーは何やらキョロキョロしている。
「………今日は、元帥は……?」
「そういえば、見掛けないなぁ……」
 ――そもそも、宇宙空軍のトップがこの場に居ないで、一体何をしてるんだ?
「そうですか……」
 スージーの声が、若干ガッカリしたような空気をはらんでいて、ソウはあれ?と思った。
「まだ何か用があるの?」
 すると、スージーが慌てたように首を振った。
「い、いえ。……ただ、この前の取材の時、ちょっと失礼な事を言ったかな……、と思って、一応、謝っておこうかと……。
 ――べ、別に、私が悪いと認めたワケじゃないですよ。今でも、元帥が悪いと思ってます。でも、今後の取材がやりにくくなるといけないから、私が引いておいたほうがいいかなって、それだけですから……」
 言われてみれば、この前ディケイルが受けた取材の事について、ソウは何も聞いていない。それが記事になったという話も無い。――「火星から客が来てる」と騙して、強引に応接室へ連れて行き、そのまま逃げた事には、散々ブツブツ言われたが、取材の内容については、一切何も言わなかった。どうやら、何かあったらしい。
「では、また改めて。――まだ、当分ガニメデに居るつもりですので、よろしくお伝えください」
 スージーが去って行った。その後を、ペコペコ頭を下げながらカムイが追い掛けていった。……何だったんだ?
 ――それにしても、ディケイルのヤツ、どこで何をしてるんだ……?
 
 
 
 今日から、本格的な「イザナギ」の操縦訓練に入る。
 この前、パルネラ少将やボスロイ大佐たち、「特別機動部隊」の人たちがやってるデモンストレーションを見せてもらったけれど、巨大なロボットたちが隊列を組み、指示に従って一糸乱れぬ動きを見せる様は、圧巻だった。――レイに、あんな風にこの「巨人」を操れる日が来るんだろうか……?
 
 とりあえず、チームに分かれて、与えられたテスト機に各員が乗り込む。「アナログ方式」チームはエドが、「ハイブリッド方式」と「エレクト方式」の指導は、エトウが担当する。
 コクピットを閉じると、正面の画面にエトウの顔が映った。
「本来、『イザナギ』は、宇宙空間での活動を想定して設計されているが、戦艦の中で、滑走路まで移動するという基本的な動作が出来なければ、話にならない。まず、歩いて建物から出るという訓練をしてもらう」
 エトウの顔の横のモニターに、チームのメンバーの顔が小さく並んでいる。――今の様子なのだろう。不安げにソワソワしているのが伺える。……その中で、マタルだけが、真っ直ぐに前を見据えていた。――何を思って、今、コクピットに居るのだろうか……?
 
 背後で何かが外れるような音がした。それと同時に、機体が少し揺れた。
「今、バックボードの固定を解除した。それぞれ、起動して、一歩前に出てみてくれ。起動方法は――」
 エトウは説明を始めたが、どうやら、それはハイブリッド方式のものであるらしい。レイが見ている画面に、それに当てはまるものは無かった。
 
 すると突如、エトウの顔が消え、別の人物の顔が現れた。
「――元帥!何やってるんですか?」
 思わずレイが言うと、画面の中でディケイルはニコリをウインクして見せた。
「他に、エレクト方式が使えるヤツが居ないから、ジョルジュに頼まれた。いいか、遅れないようについて行けよ」
 レイは、前やったテストの時の事を思い出し、目を閉じ、呟いた。
「WAKE UP」
 低い振動がレイの身体を揺らす。――すると、前よりも不安定な感覚に、レイは焦った。
「――焦るな。固定されてないから、不安定に感じるかもしれないが、動いてしまえばそれまでだ。……いいか、頭の中で、歩くイメージをするんだ。それだけでいい」
「え……!?」
 何だかよく分からない。が、言われた通りにするしかない。ゆっくりと、足に力を入れて、一歩踏み出すイメージをしてみる。すると、ガクンと大きくシートが揺れて、レイは驚いた。
 ゆっくりと足元を見てみる。透き通った床の下で、巨大な金属製の「足」が、先程とは違う位置に移動しているのが見えた。
「よし。そのまま、前の扉に向かって歩け」
 ――でも、エトウは、一歩前に出ろという指示しかしていないが……。――まぁ、言われた通りにすればいいか。
 何となく、感覚は掴めた気がする。……自分の手足を動かすイメージで、脳波を、もっと先まで送り込む。――自分自身が、ロボットの一部になったような感じで……。
 すると、先程よりも自然に足が前に出た。二歩、三歩……。
 気付くと、扉は目の前にあった。センサーがそれを感知して、ブザーが鳴り、扉が開いた。
 
 目の前に、どこまでも広がる白い大地が広がった。その中に一歩踏み出すと……。
 何かが横から高速でやって来るのが見えた。その赤い影は、レイの前を通り過ぎ、少し行ったところで雪煙を上げながら止まった。――レイたちが乗っているのとは形や色が違うが、間違いなく、「イザナギ」だ。
 脚を開いた状態から体勢を立て直し、背中の「翼」のようなものを開いた。そして、そこから光が迸る。
 すると、氷の上を滑るように、先程とは逆方向に、飛ぶように移動した。――視界に入れようとするだけで一生懸命なくらいのスピードだ。そして、しばらく行ったところで、また雪煙を盛大に上げてブレーキをかけた。
 ――エドたちが見せたデモの時の動きとは、全く違う。とにかく、早い。とんでもないスピードだ。
「……おい、レイもやってみろ。こっちのは実戦仕様で、おまえの乗ってるのはテスト機だから、多少違うかもしれないが、似たような事はできるハズだ」
 ―――まさか、今のに乗ってるのが、元帥、なのか……?
 レイが唖然としていると、またもやモニターにエトウが現れた。
「――元帥、申し訳ありませんが、今は訓練中です。遊ばないでいただけませんか?」
 すると、画面の中で、ディケイルが口を尖らせた。
「別に、遊んでるワケじゃない。性能テストとして……」
「今回の指導員は私です。言う事を聞けないのなら、降りてもらいます」
 エトウにビシッと言われ、ディケイルは首をすくめた。
 
 その後、他のテスト機たちも次々とやって来た。それから、エドを先頭に、訓練施設の建物を、隊列を組んでぐるっと1周歩いた。……その横を、ディケイルの乗るイザナギも、退屈そうな感じでついて来た。――何となく、レイは疑問をぶつけてみた。
「―――なんで、赤なんて、目立つ色にしてるんですか、ソレ」
 すると、通信の中でディケイルが答えた。
「目立たないようにするため、だ」
 ……意味不明すぎる回答に、返答に窮していると、ディケイルは補足した。
「背景が白だから、地上では目立つかもしれないが、光の届かない宇宙空間では、赤という色は保護色になる」
「……なるほど」
 レイも、知識としては知っている。――地球の海、それも、深い海に住む魚には、鮮やかな赤い色をしているものが居る。それはなぜか?……光の届かない世界では、「赤」という色は闇と同化するから。
 ……レイは、ガニメデ生まれで、そもそも生きた魚というのを見たこともないが、学校の図書館で、百科事典を見たりするのは好きだったから、それで得た知識だろう。
「テスト機は白だが、実戦機は全部赤だ。――恐らく、地球のヤツらは『白』でくる。……『正義の白』。あいつの考えそうな事だ」
「……地球も、ロボットの開発をしてるんですか?」
 エトウやエドからは、「イザナギ」が行うのは、対軍艦戦だと聞いていた。――話が違うじゃないか。
「いや、まだだ。――と、思いたい。しかし、どちらにしろ、イザナギが有利に戦えるのは、多くても最初の1回だけだ。次からは、必ず、地球も何らかの対策を練って来る。……恐らく、ロボット同士の戦闘になる事は間違いない」
「…………」
 何となく、レイは、以前思い浮かべたイメージを思い出した。――確か、第3コロニーが襲撃されて、マンホールの中へ隠れていた時。元帥が助けに来てくれて、その時、見た、『未来』のイメージ。
 
 ――あの光景が、まさに現実になろうとしている……。
 
 そう思うと、鳥肌が立った。――恐怖というより、「嫌悪」だ。
 ……人が、人としての「死」を認められない、最悪の状況。機械の一部として、跡形も無く、「命」が虚空に消えていく。
 ―――そんな機械に、僕は今、乗っている。
 
 急に、ロボットの足が止まった。動力を失ったように、そのまま前のめりに倒れた。
「……おい、レイ!」
 ディケイルの声がコクピット内に響いた。
「――適合率が急激に下がったぞ。どうした?何かあったのか?」
 横転した景色の中、エトウの乗る監督機がやって来た。
「……だ、大丈夫です。何でもありません」
 レイは慌てて答えたが、何度起動させようと思っても、それからは、テスト機はピクリとも言う事を聞いてくれなかった。
 仕方ないので、ディケイルのイザナギに引きずられて、レイは施設に戻った。バックボードに固定され、ハッチが開くと、ディケイルが心配そうな顔を覗かせた。
「――何考えてた?」
「い、いえ。――すいませんでした」
 そうは答えたものの、ディケイルのグレーの目には全部を見透かされている気がした。少し考えた末に、レイは言った。
「―――怖いんです」
 その一言だけで、ディケイルは全てを察したようだった。レイの髪を撫でながら言った。
「止めたければ、止めればいい。今なら止められる。
 ――だが、これ以上進めば、もう後戻りはできない。……決めるのは、レイ自身だ」
 それだけ言うと、ディケイルはイザナギに戻り、音速で去って行ってしまった。
 
 レイは、ハッチの開いたコクピット内で、膝を抱えた。
 ――こんな覚悟じゃ、どこにも進めないじゃないか。
 ……前会った時のカティの言葉、そして、先程のマタルの表情を思い出した。――同じように生きてきたはずなのに、カティもマタルも、ずっと大人だ。前を見て、自分の進むべき道を見据えている。なのに、僕は、何の覚悟も出来ていやしない。
 結局、誰かに依存しなきゃ、自分の存在意義さえ示せない。
 「何かしたい」と焦ったところで、こんなんじゃ、何にもならない……。
 
 そのうち、訓練を終えたテスト機たちが帰ってきた。
 彼らと合流し、教室へ戻り、まとめの講習があった。
 その最後に、ある書類が配られた。
「2週間後に、実際に宇宙に出ての訓練合宿を行う。その際の同意書だ。よく目を通して、署名するように」
 ……内容を見て、レイは愕然とした。
 ――「いかなるトラブルに遭い、それがいかなる結果をもたらしたとしても、一切の責任は、自らにある事を同意した上で、参加するものとする」。
 ………つまり、訓練中に死んでも、その責任は自分にある、という事だ。
 こんな事、考えた事が無かった。――士官学校なんだから、軍と同じようなモノなのだ。このくらいの事、当然なんだ。……そんな覚悟すら無かった自分が、間違ってた。
「あと、15歳以下の学生については、保護者の同意も必要となる。合宿までにはまだ2回休暇がある。家に戻って、親御さんにサインしてもらってくるように。
 ……それから、これは個人的な意見だが……」
 エトウが一同を見渡した。
「私は、守衛出身だが、守衛になる前は、空軍に所属していた。その際、いかなる事があろうとも、後悔のないように、『遺書』を家族に預けていた」
 ――『遺書』という重い言葉に、一同はシンとなった。
「『特別機動部隊』とは、常に最前線で戦う部隊だ。つまり、いつ、『死』と直面してもおかしくない。そういう立場だと、私は考えている。
 ――『遺書』とまでは言わない。だが、この際、自分を養ってくれた両親に、あるいは大切な人に、感謝の気持ちを伝えておいてはどうだろうか?……日常のそんな小さな行動でも、いざという時には、心の支えになるものだ」
 
 ――夕食時、さすがに会話は無かった。みんな、それぞれ、トレイの上の食事と自分の心と、向き合っているようだった。
 けれども、ブライアンだけは、そんな雰囲気を意に介さず、レイに話し掛けてきた。
「おまえ、エレクト方式に乗れるの、ひとりだけなんだろ?すごいな」
「……すごくも何もないよ」
「なんか、エレクト方式とハイブリッド方式って、違うよな。――僕たちがやってたアナログ方式なんて、見た目もゴリアテそのまんまだもんな。エドさんの話だと、まだテスト機が間に合ってないから、ゴリアテを少し改造しただけのを持って来てたみたいだし、なんか、手抜きっつーか、ガッカリしたぜ」
「そんな事よりも、……遺書、とか、どうするの?」
 レイが言うと、ブライアンはハハハと笑った。
「僕、身内なんて居ないじゃないか。遺書を預ける人もいないし、感謝の気持ちを伝える相手すらいない。気楽なモンさ」
 ――確かに。天涯孤独のブライアンにとっては、そのような事に思いを煩わせる必要など無いのだ。
「―――死ぬのは、怖くないの?」
 すると、ブライアンはまた笑った。――けれども、先程より少し弱々しい笑いだった。
「怖いも怖くないも、他に選択肢が無いじゃないか」
 ……言われてみれば、ブライアンは、行き場が無くて士官学校に来ている。死ぬのが嫌だとか考えたところで、逃げ場すら無いのだ。――いろいろ思い悩んでいるレイは、それだけ幸せな立場だという事か。
「できるだけ、死なないように頑張る。僕に出来る事は、それだけだよ」
 そう言いながら、ブライアンは寂しそうに笑った。
 
 その夜。
 消灯時間を過ぎても、レイは枕元のレポート用紙に向き合っていた。――本当は便箋が欲しいところだが、そんな物は持ち合わせていない。
 ……毛布で覆った懐中電灯の明かりに照らされた、罫線の並んだ白い紙の表面を見ていたら、何となく、あのミイラになった男性がどんな気持ちあれだけの手紙を書いていたのか、分かるような気がした。……自分の気持ちを、相手に伝わるような言葉に変換する。この作業は、想像以上に難しい。
 ――ただ、一番上の行に、一言だけ書いたきり、全然進まない。
 その一言は――
 
 『親愛なるカティへ』。
 
 ――「遺書」を書こうと考えた時、どうしても、カティの事しか頭に浮かばなかった。
 ……あれから、会ってない。ニーナさんに言われた後は、何とかカティに謝らなければと考えていたけれども、じゃあどうすればいいのか、何を言えばいいのか、全然分からなかった。それを、これまでずっと思い悩んでいたところに、今日のエトウ少将の話だ。
 ――「遺書」に、僕の気持ちを綴って、カティに託そう。
 そう決めたはいいけれども、それから、全くペンが進まない。
 ……まぁいいや。まだ時間はある。じっくり考えてから、また明日書こう。
 諦めて、レイは、レポート用紙を片付けた。


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