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 6月16日。
 訓練合宿前の、最後の日曜日。明日の今頃は、もう、宇宙空間に居るだろう。
 宿舎は、閑散としていた。みんな、家に帰っているようだ。家族との時間を過ごしてくるようにと、昨日、エトウ少将も言っていた。
 ブライアンはどうするんだろう……。レイは少し心配になったが、
「――ヒマだから、遊びに行って来る」
と、どこかに出掛けて行った。――レイは思った。いろいろあったけれども、ブライアンは、強い人だ。
 レイは、ベッドの上で、「遺書」の清書をしていた。――結局、自分の心を確かめながら文字にしたレイの気持ちは、レポート用紙30枚以上になってしまった。……これじゃダメだ。
 そして、考えに考えた末、レポート用紙1枚にまとめた。――その中でも、本当のレイの気持ちは、たった一行だった。
 ――その一行を書き終えると、レイはそれを畳んでポケットに入れ、宿舎を出た。
 
 ……ニーナとカティが住むアパートのドアの前。――インターホンを押そうとすると、指が震えた。――このまま、ポストに投げ込んで帰ろうか。……いや、そんなんじゃダメだ。逃げちゃダメだ、逃げちゃ……。
 ――でも、留守かもしれないじゃないか。休日の昼間だ。買い物にでも行っている可能性の方が高い。もし、もしそうだったら、諦めて、ポストに……。
 呼吸を落ちつけて、レイはボタンを押した。
「―――はーい!」
 しかし、間もなくニーナの声が聞こえた。……何て返答していいのか分からない。レイは黙ったまま、ドアを見つめていた。
 
 ドアが開いた。――そこから顔を出したのは、カティだった。
 カティは、驚いたように澄んだ瞳をレイに向けていた。恐らく、ニーナに何も知らされず、対応に出るように言われたのだろう。
 レイも、ニーナが出て来るものだとばかり思っていた。だから、どうやってカティに代わってもらうか、考えていたのに……。
 言葉に窮して、ふたりは、ただ顔を見つめ合った。
 
 しばらくして、レイは心を決め、ポケットから紙を取り出した。
「―――これ………」
 ――それ以上の言葉が出て来ない。
 レイはどうしていいのか分からず、それをカティに押し付けると、その場から走り去った。
 
 ――振り向かずとも、レイの後ろ姿を、カティが見送っているのが分かった。それが見えなくなっても、レイは走り続けた。全力疾走しているので、息が上がって苦しい。それでも、足を止められなかった。
 
 レイの頭の中では、ひたすら、「遺書」の文面が繰り返されていた。
 
 
 
   親愛なるカティへ
 
  これは遺書です。でも、死ぬための遺書ではなく、生きる勇気を生み出すための遺書です。
 
  僕は、明日から、宇宙に研修に行きます。宇宙は危険なところです。怖いです。
  でも、怖いのはそれだけじゃなくて、これから待ち受ける未来のほうが、もっと怖いです。
  僕は、イザナギのパイロットになります。そう決めました。
  それが、僕の生まれた役割だと思うから。
  僕にしか出来ない事があれば、それをやらない事は、罪だと思うからです。
  僕は、僕にしか出来ない事に出会えました。それは、幸せな事だと思います。
  僕は、イザナギのパイロットとして、ガニメデの、大切な人たちを守ります。
  大切な人の未来を守ります。
  そう決めたら、僕は強くなれる気がします。
  こんな、僕の決意を、預かってください。
 
  これから、いろいろあると思います。
  でも、カティは、ただ、前を見ていてください。
  僕は、カティの夢を、応援しています。
 
  そして、10年後、お互いの夢を叶えたら、結婚してください。
 
レイ・マグアドル
 
 
 
 ――冷静になったら、恥ずかしくて、死にたくなるような内容だ。だから、冷静にならないように、走って走って、頭に血が回らないようにしていないと、やってられなかった。すれ違う人たちが、妙な顔をしてレイに目を向けるが、そんな事はどうだっていい。紅潮した頬を、走っているせいだと思わせたいがために、レイはひたすら走った。
 
 「遺書」の文面を考えているうちに、何となく、レイが士官学校に入った「目的」を確認できたような気がした。
 ――元帥の役に立ちたい。それも嘘じゃないけど、そんなの、今のレイからしたら、不可能に近い事だ。
 それよりも、もっと身近な人を守る。大切な人を危険な目に遭わせない事。その方が大事なんじゃないか、と思えてきた。
 そう考えたら、「エレクト方式」のパイロットというのが、レイに与えられた「天命」のように思えた。――この道で、僕は僕の「夢」を叶える。
 
 旧第3コロニーの軍施設前に来て、ようやくレイは足を止めた。……息が切れて、しばらくそこで呼吸を落ち付けないと、歩けそうにもなかった。
 「ガニメデ要塞」が完成するのと同時に、ここにも、厳重なゲートができた。――けれども、まだ居住区画は完成していないので、これまでの仮設住宅へと通じる通路も、そのまま残っている。そちらには、門番の人がふたり、手持ち無沙汰に立っているだけだ。
 何とか息を収めて、レイが歩き出すと、顔見知りのその門番は、ニコリと挨拶をして、レイを通してくれた。
 
 レイは、慣れた通路を進み、少し前まで住んでいた部屋の前に来た。――インターホンを鳴らそうか迷ったが、鍵をまだ持っている事を思い出し、それをセンサーに当て、ノブを回した。
 
 ――部屋の主は、相変わらずソファーでゴロ寝をしていた。
 「……元帥、サインしてほしい書類があるんです」
 レイの声を聞いて、ディケイルは眠そうな目をこちらに向けた。
「―――ん?」
 研修合宿の同意書を渡し、ディケイルがそれに目を通している間、レイは部屋の中を見回した。……案外、片付いてはいるけれども、逆に、生活感が薄い。ちゃんと食べているのかな……?
「――本当にいいのか?」
 声に振り向いて見ると、ディケイルはソファーに起き上がり、レイにグレーの目を向けていた。
「決めました。――もう、迷いません」
 
 ……ブライアンの言葉を聞いて思った。「迷い」があるという事は、それだけディケイルに依存しているという事なんだ。――本来、レイだって、ブライアンと同じ立場だったはずだ。ブライアンとレイとの差なんて、ただの「運」でしか無い。……それに頼るなんて事は、「甘え」以外の、何物でもないだろう。
 ―――僕は、カティに結婚を申し込んだ。もう、子供じゃない。
 
 ディケイルは、暗い目を書類に戻した。
「――本当は、おまえたちに、こんな事をさせるのは、間違っていると思ってる」
「それは違うと思います。僕は、僕自身で自分の未来を決めます。イザナギに乗る事も、自分で決めたんです。だから、元帥にとやかく言われる筋合いはありません」
 レイが言うと、ディケイルは驚いたような顔を見せた。
「何かあったのか?」
「――いえ、別に……」
 しかし、それでもディケイルは何やら考え込んでいる様子だった。
「……俺がこれにサインすれば、レイ、おまえはもう戻れないぞ?――人を殺す覚悟はあるのか?」
 
 ――もちろん、そんな事は想定している。
 特に深くも考えないで、テスト機に乗っていた時は、それに思い当って愕然としたが、心を落ちつけて「遺書」の文面を考えているうちに、思った。
 ――遺書はカティに向けて書いたけれども、大切な人は、カティだけじゃない。……マタルに、手を汚させるくらいなら、僕が、この手で……。
 
 殺戮の連鎖は、もう、止められないところまできている。それは分かっていた。
 誰かがやらなくちゃならないのなら、僕だけ、澄ました顔で傍観しているなんて、できない。――それこそが、「罪」じゃないのか。
 
 レイは答えた。
「あります」
 
 すると、ディケイルはペンを取り出し、書類にサインした。
 それをレイに渡しながら、言った。
「俺がおまえにしてやれる事は、これが最後だ。――あとは、自分で、『答え』を見つけ出せ」


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