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 ――それから、宇宙空間で機体を動かす訓練を少しと、着陸の練習、それを何回か繰り返した後、格納庫に戻り、今度は緊急脱出の訓練をした。
 イザナギは、「G-883」という核エネルギーで動いており、エンジンに損傷を受けた場合、爆発の危険がある。だから、危険な場面に遭遇したら、そうなる前に脱出をしなければならない。
 通常は、胸に当たる部分のハッチを開いて出入りするが、緊急の場合は、背中からコクピットごと放り出されるような形になる。コクピットは、カプセル状の空間になっており、ロボットから離れても、気圧を維持し、パイロットを守ってくれる。――ただし、自立移動は不可能なので、宇宙空間に浮きながら、救助を待つしかない。
 
 そんな感じで、一日は終わった。――慣れない宇宙空間、しかも丸一日、みっちり訓練尽くしだった。しかも、実戦機はクセが強いのか、なかなか言う事を聞いてくれず、エトウに怒られっぱなしだった。……元帥はあんなに颯爽と乗りこなしていたのに。
 そんなこんなで、夕食のために食堂へ行く頃には、疲れてクタクタになっていた。
 部屋ごとに並んで、カウンターに食事を取りに行く。――その時、後ろから声を掛けられた。
「……レイ。おまえ、優等生じゃなかったのか?何だよ、今日の訓練。怒られてばっかりだったじゃないか」
 ――マタルだ。レイを見ながら、挑発的な目でニヤニヤしている。
「――僕は、優等生なんかじゃないよ」
「何言ってるんだよ。おまえはいつも一番だっただろ。こんなところで落ちてどうするんだよ?」
「落ちるも落ちないも、それが僕の実力なんだから……」
「おまえ、カティに遺書、渡したんだってな」
 唐突に話題が変わり、レイは目を丸くしてマタルを見つめた。
「どうして、それを……」
「適当に言ってみただけだよ。どうやら、図星みたいだな」
 ――ヤラれた!レイは、恥ずかしくなって顔を伏せた。
「このままでいいのか?こんなに情けない醜態を晒してたら、カティに嫌われるぜ?」
 ……何でだ?どうして、マタルはこうも変わってしまったんだ?
 レイの心に、どうしようもない感情がいくつも湧きだした。それは、悲しみよりも羞恥心よりも、怒りの方が勝っていた。
「―――うるさいなぁ」
 レイは、マタルを睨んだ。……こんな顔なんて、したくなかった。しかし、マタルはレイの顔を見て、さらにニヤけた。
「何怒っちゃってるの?本当の事を言われたから?僕に負けそうだから?」
「黙れよ」
「あれ?本気?そんなにカティにフラれたくないワケ?」
「黙れって言ってるんだよ!!」
 気付くと、レイはマタルを殴っていた。倒れたマタルの襟元を捕まえて、さらに腕を振り上げた。
「何も分かってないクセに!何もかも無茶苦茶にしたのは、おまえの方だろう!!」
 だが、その腕を振り下ろすことはできなかった。ケビンとボビーが割って入ったのだ。異変を聞き付けた監督官も、すぐにやって来た。レイはすぐに取り押さえられ、食堂から引きずり出された。
 
 レイはそのまま、艦長室へ連れて行かれた。研修中の艦長を務めるエトウが、厳しい顔をしてレイの前に立った。
「――何があった?」
「こいつがいきなり、マタルを殴ったんです。先に手を出したのは、こいつです」
 マタルのルームメイトらしい少年が言った。問題が起これば連帯責任になるから、悪いのは全部レイだという事にしたいのだろう。……けれども、それは事実だから、否定のしようも無い。
「間違いないか?」
 エトウの冷たい声が、うな垂れたレイの頭上に振った。レイは、コクリと肯いた。
「ウェイニー元帥の被保護者だからと、甘えていないか?問題を起こしても、何とかしてもらえると……」
「違います!!」
 ここだけは、ムキになって声を張り上げずにはいられなかった。
「悪いのは、全部僕なんです!元帥には関係ありません!!」
「――そうか。なら、分かっているな?」
 
 ……それから、レイたち207号室のメンバーは、罰として夕食抜きで、艦内全てのトイレ掃除を言い付けられた。
「――どうして殴ったりしたんだ?それだけは聞かなければ、納得できない」
 ケビンが、仁王立ちしてレイを睨んだ。当然だ。レイがケビンの立場だって、そう思うだろう。――けれども、レイは、どうしても言えなかった。言ってはいけないと思った。
「……レイと、殴られたマタルってヤツは、同じ孤児院出身で、幼馴染みなんだよな?ずっと仲良かったし。……それが、殴り合いのケンカをするなんて、よほどな事だと思いますよ。――詳しくは分かりませんけど」
 ブライアンがそう言いながら、レイを見た。――その目を見て気付いた。ブライアンは、全部察している。
「――しかし、これ以上問題を起こされては困る。巻き添えを食うこちらの身にもなってみろ。次に何か問題を起こした時には……」
「元帥に言いつけて、ハンバーガーセットとアイスパフェをおごってもらうからな!」
 ボビーがドンとレイの肩を叩いた。――痛かったけれど、それ以上に温かくて、涙が出てきた。
 
 掃除を終えた頃には、もう消灯時間になっていた。慌てて部屋へ戻り、ベッドに入ろうとしていたら、コンコンと部屋をノックする音がした。そっと開けてみると……。
「――よっ!元気な少年たち。……お腹空いたでしょ?」
 ニーナだった。後ろに、オペレーターのナオミも居る。それぞれトレイを持って、そっと部屋へ入って来た。
「食堂から、コッソリ残り物をいただいてきたの。バレないうちに食べなさい」
 ニーナとナオミは、手近なベッドにトレイを置いて、皿をそれぞれに渡した。――なぜか、ナオミも皿を抱えている。
「ウチ、こう見えて大食いなの。恥ずかしいから、隠れて食べるの」
 そう言いながら、皿に盛られたスパゲティーをパクついていた。
「――レイくんも食べなさいよ、ほら」
 ニーナはレイに皿を渡しながら、レイの横に座った。
「……実はね、マタルくんもね、カティに『遺書』、渡しに来てたの」
 ―――やっぱり。でもなぜ……
「……それを、なんで僕に……?」
「カティがね、すごく悩んじゃっててね。
 自分の気持ちには素直になりたいけれど、マタルくんを傷つけたくもないって。――アタシ、それはワガママよって言うんだけど……」
 ニーナは、レイが持っている皿からトマトを摘むと、自分の口へ放り込んだ。
「でも、その気持ち、分からなくもないから。
 ――だから、レイくんとマタルくんがケンカする事は、カティにとって、一番悲しい事なのよ?……それだけは、分かっておいてね」
 言われて、レイは顔を伏せた。
「今は、お互い複雑な気持ちだろうから、難しいかもしれないけど、いつか、もう少し大人になれば、分かり合える日が、必ず来るわ。――その時まで、カティを追い詰めるような事はしないでね」
 ニーナはそう言うと立ち上がり、さっさと食べないと、監督官が来るわよと、一同を見渡した。
 レイも、好意に甘えて、――しかし、食欲は全く無かったため、無理矢理、ポテトサラダを口へ押し込んだ。
 
 ニーナとナオミが去ってから、慌ててベッドに入ると、監督官が点検をしに来た。――何とかセーフだったようだ。
 身体はクタクタに疲れているのに、やっぱり、眠れない。
 ……人の心って、難しい。どうすべきなのか、何が正解なのか、全然分からない。
 ――分からない事を考えていても仕方ない、とは思う。今できる事をする以外に、どうしようもないのだから。
 今は、明日のために、眠っておくこと。でないと、訓練に集中できずに、また何か失敗をしてしまうかもしれない。
 ……でも、そう思えば思うほど、眠れなくなるのも、また人の心なのだ。
 
 そうして、眠れぬ夜を過ごした翌日。
 ―――事件は起こった。
 
 
 
 この日は、より実戦的な訓練が行われた。武器の取り扱いを習うのだ。
 昨日と同じ要領で宇宙空間に出た後、装備されている武器を実際に使ってみる、というものだった。
「――テスト機には、テスト用のライフル砲が装備されているが、14号機にだけは、実弾入りのものが装着されている。注意してくれ」
 ………ちょ、ちょっと待って!なんで、そんな……!?
 レイは、ジョルジュのニヤニヤした顔を思い出した。――あの人、データを取るだか何だか知らないけれど、何か勘違いしてないか?
 エトウの乗る監督機がまず見本を見せる。――太腿に当たる部分に、ライフル銃が収納されている。取っ手を引き抜くと、それが姿を現した。そして、前に構える。
「射撃モードでは、モニターにターゲットマーカーが現れる。そこに標的が入るようにして発射すれば、自動照準補正で……」
 
 その時、コクピット内にけたたましいアラームが鳴り響いた。――エトウも一瞬動揺した顔を見せたから、これは予定の内容では無さそうだ。
「――イザナミ艦橋より通達。
 16時方向に所属不明の高速艇が接近中。現在、交信を試みているが、反応なし。引き続き、交信を続けるが、一同、警戒態勢を取るように。これは訓練では無い。
 繰り返す。16時方向に……」
 ナオミの声だが、いつもとは打って変わって、ピリッとした緊張をはらんでいた。――ただ事では無さそうだ。
「訓練中断。全員、イザナミに戻れ」
 エトウの指示で、テスト機たちは、次々と滑走路へ向かった。レイもそれに従おうとしたが……。
 
 ――強烈な脳波を感じて、思わず、振り向いた。……高速艇は、その姿を目視できるところまで来ていた。
 次の瞬間、高速艇の先端から、光が放たれた。――レーザー砲だ!
 その光は、一直線に、レイのイザナギに向かって飛んで来た。
「14号機!!退避せよ!!」
 ――エトウの声が飛んだが、しかし、レイは動く事ができなかった。
 
 レイの感じた脳波。……猛烈な殺意が、レイの身体を縛り付けていた。
 
 
 
 「――チーフ。前方に船舶が見えます」
 操舵士の報告を受けて、アルベルタ・ビアンキは正面モニターに目をやった。
「―――ドミニオンじゃない?アレ」
「形状から、そのようです」
「なんで、こんなとこまで出て来てるのかしら」
 ビアンキは、肩に掛かったワイン色の柔らかい髪を軽く払い、モニターへと近付いた。
 
 ――スレンダーなジャケットにタイトジーンズが似合う、バランスの取れたスタイルで、顔も悪くない。けれども、ビアンキに言い寄る男なんて、皆無だった。――ひとりを除いては。それは、彼女の立場と正体が、男だけでなく、他人を寄せ付けないためだった。
 
 ――アルベルタ・ビアンキ。ラザレフタイプのトランセンダー。
 ラザレフの研究施設に居た当時は、ずっと4番だったが、現在は、月に建設中の軍事プラントの責任者をしている。
 ……そう聞くと、聞こえはいいが、実際は、ミカエルに疎まれて、左遷されているのは自覚している。――信用されていないのだ。
 
 ビアンキは、モニターを操作し、映像を拡大した。――すると、巨大な戦艦の傍に、何やら見慣れない機影が映った。……ライトフライヤーじゃない。
「――何?アレ」
「さぁ……」
「見に行ってみるわ。ちょっと代わって」
 ビアンキが言うと、操舵士は操縦席を空け渡した。レーダーを確認すると、……ドミニオンの周辺に、細かい光点がいくつも見える。
 ビアンキは操舵桿を引いた。高速艇は、ドミニオンに向かって、一直線に虚空を滑った。
 
 ――「それ」が目に入る位置まで来て驚いた。
「……何コレ?……ロボット?」
 まるで、アニメに出て来るみたいな、巨大戦闘ロボット……!?こんなのを、コソコソ作ってたの?アイツ!
 それと同時に、感じた。――強烈な脳波。――ノーマルじゃあり得ない。間違いなく、トランセンダーだ。という事は……!
「チーフ。ドミニオンが交信を求めて来ていますが、どうしますか?」
「そんなの無視無視。それより、全員、シートベルトをしなさい?あの赤いの、墜とすわ」
「な、なぜ?――ここで戦闘行為に及ぶのは、都合が悪いのでは……?」
「今、ヤッておかないと、後で後悔する、そんな気がするの」
「………分かるんですか?」
 乗員のひとりが、微妙に言葉を選んだ感じで聞いて来た。本当は、「トランセンダーだから分かるのか?」と聞きたかったのだろう。みんな、口には出さないが分かっている。だが、「トランセンダー」という言葉を口に出さないのも、「暗黙の了解」みたいなモノなのだ。
「――オンナの勘よ」
 ビアンキは、発言した乗員に、軽くウインクして見せた。
「女の勘、ですか……」
「女の勘を甘く見ると、痛い目見るわよっ」
 ビアンキは、モニター中央の赤いロボットに照準を合わせ、レーザー砲の発射ボタンを押した。
 その目には、強い殺気が宿っていた。


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