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オリジナル小説のダストボックス

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碧井 湊
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 永遠かと思える時間が過ぎた。
 ――どうなったんだろう?僕は死んだのかな?それにしては、痛くも苦しくもなかったけど、あまりに一瞬の出来事で、何も感じなかったのかな?
 レイは、ゆっくりと目を開いてみた。
 
 しかし、そこは現実だった。
 しかも、ごく一瞬の時間しか経過していないようだ。高速艇の機影が、まだそこに見えた。それは、横向きに走る強烈な光に吹き飛ばされるように、その身を翻し、レイの視界から消えた。
 ――何が起きたんだ?どうして、僕は、生きてるんだ?
 
 「……チッ!外したか」
 ジョルジュの声が聞こえた。見ると、イザナミの巨体が、モニターの端に映っていた。こちらに正面を向けている。そして、主砲の長大な砲台を伸ばしていた。そこには、まだ熱が残っているのか、ぼんやりとした光が宿っていた。
 テスト機の収容を終えたイザナミが、応援に駆けつけてくれたようだった。
 
 レイは、身動きもできなかった。助かった……とホッとした気分は、これっぽっちも無かった。極度の恐怖と、それから解放された呆然自失とした感じ、それから、自分の不甲斐なさ……。頭の中が混乱して、何も考えられなかった。
 
 「―――レイ!しっかりしろ!!」
 エトウの怒鳴り声が、ようやくレイの意識を取り戻させた。
「高速艇を追う!援護しろ!」
 エトウの監督機が、彗星のような速さで移動するのが見えた。その前には、高速艇の姿も見える。――イザナミが、レイの視界を塞ぐように、エトウと同じ方向へ動いて行く。……しかし、この巨体では、とてもあのスピードにはついて行けないだろう。
「――高速艇、レーダーから消えました。超光速航行に入った模様」
 航宙士だろうか、誰かの声がそう告げた。
「………取り逃がしたか」
 エトウが悔しそうに言った。
 
 その後、レイはイザナミに戻った。エトウも、エドの脱出カプセルを回収して戻って来た。
 エトウは、レイを見ても、何も言わなかった。ただ、厳しい目を向けただけで、研修合宿の中止を告げるため、艦橋へと向かった。
 エドは、うな垂れるレイの頭を掻き混ぜながら言った。
「レイはよくやったさ。その年でさ、しかもロクに訓練もしてないのに、よくあれだけ逃げ切ったと思うぜ?」
 
 レイは、心身の疲労で、立ち上がる事もままならなかった。ブライアンとボビーに支えられるようにしてようやく部屋に戻ると、だが、ベッドに腰を下ろして、ただうな垂れるしか無かった。
「格納庫のモニターで見てたぜ?おまえ、すげぇよ。よくあんな中で動けたな。俺だったら、ビビッてチビッちまってたと思うぜ」
 ボビーがレイの肩を叩いた。
「ジェイコブ軍曹、君は、軍人になるという自覚があるのか?そんな事で、これからの訓練、やっていけるのか?」
 ケビンが向かいのベッドに足を組んで座り、ボビーに冷たい目を向けた。
「だけどよ、レイの気持ちにもなってみろよ。おまえ、冷たいヤツだな」
 
 ――いや、ケビンの言う事が正しいと思う。……あんな事じゃ、この先、命がいくつあっても足りない。そればかりか、他の仲間にまで迷惑を掛けている。レイは、エトウとエドの足を引っ張っていただけだった。何の役にも立たなかった。
 ……何が覚悟だ。何が勇気だ。そんなモノ、僕の中には、何も無かったじゃないか。単なる虚勢だったのか……。
 レイの脳裏に、爆発するエドの監督機の姿が浮かんだ。
 目の前の仲間も守れないで、何が、大切な人を守る、だ。自惚れるのもいい加減にしろ……!
 
 情けなくて、涙が出てきた。――実は、イザナギに乗っている時から、ずっと泣きたかったのかもしれない。怖くて、怖くて……。一度堰を切った涙は、もう止める事ができなかった。
 ブライアンが、ケビンとボビーに目配せして、ふたりを連れて部屋から出て行った。
 レイは、ベッドに突っ伏して、声を上げて泣いた。
 
 
 
 6月19日。
 敵と遭遇し、戦闘になるというとんでもないトラブルが起こったため、研修合宿は急遽中止になり、イザナミはガニメデ要塞へと戻って来た。
 詳細は、通信で聞いている。――「イザナギ」の存在が、地球側にバレるのは、まず避けられないだろう。これは相当痛い。今後の優位を、大きくひっくり返される事になりかねない。
 
 しかし、それよりも……。
 
 ソウは、滑走路に降り立った宇宙戦艦から降りて来る少年たちを出迎えた。……その中を目で追い、ある顔を探す。――居た!
「マタル!無事だったか?」
 ソウが駆け寄ると、しかし、マタルは迷惑そうな顔をした。
「参謀長!だから、僕だけ特別扱いするの、やめてもらえませんか?危険な目に遭ったのは、僕だけじゃないんです。――むしろ、レイなんです。参謀長という立場をわきまえてください」
 ――まさしく正論だ。だけど……。
 妙に寂しい感じを抱えながら、今度はレイを探した。
 
 レイは、人混みから少し離れて、顔を伏せるようにして立っていた。
「――レイ!大丈夫か?」
 しかし、レイは顔を上げる事もせず、返答もしなかった。
「……昨日から、ずっと、こんな感じなんです」
 振り向くと、――ブライアン・マルコーがソウを見ていた。……ルームメイトとして、そこそこ、仲良くはやっているらしい。
「レイは、やれるだけ精一杯やったと思います。でも、責任を感じてるみたいで……」
「レイ」
 後ろから別の声がして、ソウは振り返った。――ディケイルだ。その声には、さすがにレイも顔を上げた。
 ディケイルは、レイに歩み寄り、声を掛けた。……が、それは、慰めの言葉ではなかった。
「おまえのせいで、軍の最重要機密情報が、地球側に漏れた。今後、戦況は今以上に厳しくなる。どう責任を取る?」
 
 ――ソウは驚いた。10歳そこそこの子供に向ける言葉じゃないだろう?それも、訓練中の研修生だ。レイは精一杯やった。それ以上に、何を求めるんだ?
 
 ディケイルは続けた。
「今回の損失は、それだけじゃない。貴重なイザナギを1機失い、研修の予定も狂わされた。今後の防衛計画に、大きく影響する」
「……おい、ディケイル!」
 思わず、ソウは声を出した。
「いくらなんでも、そんな言い方はないだろう?レイは、できる限りの事はしたんだ。それでもこういう結果に終わってしまったのは、レイの責任じゃないだろ?」
 だが、ディケイルはソウに冷たい目を向けた。
「分かってないのなら、口を出さないでくれ。
 ――レイ、おまえには、今現存する中で、最も高性能のイザナギを預けていた。監督機よりも、だ。あれなら、高速艇やミサイルくらいなら、簡単に撃墜する事が可能だった。俺が実際に乗って、確認している。それなのに、おまえはやらなかった。――やれなかったんじゃない、やらなかったんだ。そうだろ?」
 レイは黙って目を伏せた。
「撃てる場面も、いくつもあったんじゃないか?なのに、撃たなかった。当てなかった。――死ぬのが怖いのか?殺すのが怖いのか?どっちだ」
 ソウは見ていられなくなった。レイの肩に手を置き、反論しようとした。しかし、それを遮るように、レイが言った。
「……ごめんなさい……」
 ――その肩が、細かく震えているのがソウの手に伝わって来た。――伝わって来たのはそれだけじゃない。
 
 ……恐ろしい程に強い、殺気。その中で、レイは足が竦み、立ち尽くしていた。
 ―――しかし、妙だ。なぜ、レイがこんなに強烈な殺意を向けられなければならない?
 
 「――やらなかったのなら、反省しろ。やれなかったのなら、他の人に迷惑が掛かる。軍を去れ」
 ディケイルはそう言って、その場を去った。
 
 ソウは、レイに何と声を掛けていいのか分からなかった。
 だが、その沈黙も、間もなく破られた。
「レイ・マグアドル軍曹!何をしている。早く行かないと、集合に遅れるぞ!」
 エトウが通り過ぎざまに声を掛けていった。
「――は、はい!」
 レイは慌てたように顔を上げ、荷物を持ち直した。
「レイ、行くぜ」
 黒人の少年が、レイの背中をひょろ長い手でポンと叩いた。
「――遅れたからと、またペナルティを受けるのは御免だ」
 赤毛にそばかすの少年が、レイを振り返った。
「さぁ、早く」
 ブライアンがレイの肩に腕を回し、背中を押すように促した。
 そして、レイは、ソウを振り返って、ようやく、返事を返した。
「僕は、大丈夫です」
 それから4人は、駆け足でエトウを追い掛けて行った。
 
 ――仲間、か。
 ソウは何となく思い出した。……子供の頃、サッカーをしていた当時の事を。
 弱小チームだったけれど、負けても負けても、心許せる仲間が居れば、それで何とかなってきた。
 ――レイも、いい仲間を見つけたみたいだな。
 ソウは、ポケットに手を突っ込み、その後ろ姿を見送った。
 
 
 
 アルベルタ・ビアンキは、椅子に座って足を組みながら、モニターの録画映像を見ていた。そこには、真っ赤なロボットが銃を構える姿が映し出されていた。
 ――何か、違う気がする。でも、あれは確かに、トランセンダーの気配。……もしかして……。――いや、まさか、ね。
 
 ビアンキは、パネルを操作して、ある人物を通信を繋いだ。――その人物が通信に応じると、モニターの端に見知った顔が現れた。
「――お久しぶりね、ミカエル」
 アイスブルーの瞳は、無表情にビアンキを見ていた。
「何の用だ?」
「いつもソレね。他に言うセリフは無いの?」
「余計な事はいい。用件を言え」
「何よ、冷たいわね。今日はいいお土産を用意したのに」
「――何だ?」
「データをそちらに送っておいたわ。確認してちょうだい」
 ミカエルは画面の外に視線を送った。そして、すぐに顔を戻した。
「……これは何だ?」
「ちょっと散歩に行ったら、面白そうなモノ見つけちゃったの」
「――今、どこに居る?」
「アルビック・トンネルの中」
「………ガニメデに行ってきたのか?」
「正確には、ガニメデの近くまで、ね」
 ビアンキは、ポケットから口紅を取り出し、唇に当てた。
「何をしに……」
「それより、この赤いの、トランセンダーが乗ってるわよ」
「…………」
 表情には出さないが、何か思うところがあるように、ミカエルは一瞬口を閉ざした。
「――殺したのか?」
「それが、殺そうと思ったんだけどね。いろいろ邪魔されて、できなかったわ。――本人サンは、何だか動きがヘンだったけどね」
「……本当に、ディケイルが乗っていたのか?」
「それ以外に、考えられないでしょ?」
 再び、ミカエルは沈黙した。
「ねぇ、ガニメデ討伐、私にヤラせてよ。テオドアの坊やよりは、うまくやれるわよ」
「…………」
「そんなに私の事が信用できないの?」
「――いや、そういう訳じゃない」
 分かってる。ビアンキが信用できないというよりも、ビアンキと「あの男」の繋がりを警戒しているのだ。
「……まぁいいわ。でも、コレ、対応できるようにしとかないと、ちょっと、ヤバいかもよ?」
 ビアンキは、唇を軽く動かして口紅を馴染ませながら、コンパクトの鏡を覗き込んだ。
「多分、鉱山で使ってる『ゴリアテ』を改造したんだと思うわ。ゴリアテの設計図さえあれば、1ヶ月以内に量産するわよ」
「――分かった。取りに来い」
「嬉しいわ。久々の地球上陸許可ね。ついでに買い物でもして行こうかしら」
 通信は切れた。
 
 ビアンキは、手元の鏡を見た。その中で、ローズピンクに色付いた唇が、ニッと笑った。――鏡はそれから目元を映したが、その目は、笑ってはいなかった。
 殺気に燃えた目は、右手の口紅を見た。――その金属製のケースが、親指と人差し指の間でぐにゃりとへこみ、中の口紅が粉砕するように飛び出した。
 その指は、生身のものではなく、青黒い金属の色をしていた。
 
 ―――あいつだけは、絶対に許さない。次に会った時は、必ず仕留めてやる。
 ……ディケイル・ウェイニー!!


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