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50.  第一次ユナイテッド会戦
 
 
 ソウは、宇宙空軍ビルの廊下を早足に歩きながら思った。
 ―――なんでいつも、戦争が始まるっていう情報は、報道機関から得てるんだ?普通、軍の方が先に掴んでいるのが当然だろう?
 しかし、辺境の地ガニメデよりも、地球の報道機関の方が早く情報を得られるのは、物理上当たり前の事だ。それに、アース・コーポレーション――つまり、地球全てが、ガニメデに情報を与えまいと画策している。
 ――今回は特に、ギリギリまで情報を出して来なかった。こちらに何らかの策を練る時間を与えないためだろう。
 敵は既に月の基地を出発している。……となると、ガニメデ到着までに72時間、――いや、「戦場」到着までには36時間程度しか時間がない。予定はしており、準備は進めていたとはいえ、急がなければ……。
 
 ソウは、突き当たりの「司令長官室」のドアを開けた。――だが、そこには誰も居なかった。
「――副司令官!」
 背後から声を掛けられ、ソウは慌てて振り向いた。……すると、見覚えのないクリーム色の髪の男が立っていた。階級章を見ると、宇宙空軍の所属ではあるらしいが……。
 その男は、ソウに向かってピシッと敬礼をした。
「お迎えに上がりました。本日付で、宇宙空軍副司令官副官を命じられました、フランク・ヤーン少佐です」
 ―――え?聞いてないぞ?
 しかし、そんな事はもう慣れっこだ。ソウはフランクに導かれるまま、『アマテラス』に向かった。
 
 ――実は、アマテラスに足を踏み入れるのは初めてなのだが……。
 さすがに艦橋も、イザナミよりは小ぢんまりとしている。その中で、それぞれモニターやらデスクやらに向かっていた十数人の乗務員たちは、ソウの姿を見ると、一斉に立ち上がり、敬礼をした。
 ……それに敬礼を返すソウの方が、格好が決まっていないというのは情けない。
「――実は、この艦に乗っている全員が、以前、プリンシパリティに乗務していたメンバーです。艦の扱いには慣れていますので、何かございましたら、何でもおっしゃってください」
 ソウの横でフランクが言った。――ずいぶんと思い切った人員構成にしたものだ……。
 しかし、考えてみれば、その方が乗員間のトラブルは無くて済む。……少し前までは敵同士だった間柄だ。元々ガニメデから参加しているメンバーと地球からの投降組を、ヘタに混ぜないほうが、いろいろとやりやすいだろう。――だから、特に「色」を持たない中立的な立場のソウを、その艦長としてもってきたのか……。
 ――まぁ、この考えにひとつだけ憂慮すべき点があるとすれば、艦全員で寝返ること。……そうなってしまったら、ソウにはどうしようもない。
 
 すると、通信士がイザナミからの通信を伝えた。
「――おい、ソウ。やっと来たか」
 ディケイルだ。
「出発するぞ。準備はいいか?」
「えっ……!!聞いてないぞ!?」
「だから今言っただろ!」
 いつもの事ながら、ついて行けない。――しかし、フランクはソウの耳元で囁いた。
「出港の準備は、既に整っております。あとは、ご指示だけです」
 ソウはフランクの明るいグリーンの瞳を見た。――副官なんて役職に、少佐という高い地位の人が来たから、おかしいと思ったんだ。……要するに、ソウのお目付け役、といったところだろう。
「……と、いう事だ。出港の準備は整っている。あとは……」
「じゃあ、イザナミに続け」
「承知しました!」
 艦橋に乗務員たちの声が響いた。――ダメだ。本格的すぎる雰囲気に馴染めない。
 
 ソウは、離陸準備に入るために艦長席へ座った。――少し高くなったこの位置から、正面の巨大モニターを見ると、映画のスクリーンを眺めているような気になる。――不謹慎だが。……こういう視野で見ていると、戦争に行くというのが、別次元の出来事のように感じる。こういう感覚で、代々の戦争指揮官は、人を殺す命令を下していったのか。――そう考えて、ソウは鳥肌の立った腕を押さえた。
 
 モニターに、滑走路を飛び立つイザナミの姿が映し出された。それから間もなく、アマテラスも白い大地を滑り出した。
 
 
 
 レイは、イザナミの自分の部屋で、シートベルトで座席に押し付けられていた。今まさに、重力圏を離れようとしているのだ。――どうにも、この感覚だけは慣れない。
 向かいにはブライアン。横を見ると、ケビンとボビーも居る。……その誰もが、緊張を隠せない面持ちをしていた。――当然だ。今回は訓練では無い。実戦なのだ。
 
 今回の作戦に、レイたち研修生を参加させるか否か。――相当議論があったようだ。
「――『イザナギ』に対し、地球側が何らかの対策を取ってくると考えられる以上、少しでも多くのイザナギを参戦させなければ、勝ち目は無いんじゃないか」
 マッド・テイラー総司令官はそういう意見だったようだ。しかし、意外にも、ディケイルは反対した。
「いや、俺は今回、イザナギは出さないつもりでいる」
 驚いた一同に、ディケイルは言った。
「……出したところで、犠牲になるだけなら、出さない方がマシだ。――それに、これは、子供たちに背負わせる責任じゃない。始めた俺たちが、始末をつけるべきなんだ」
 ――というのは、たまたま会った参謀長から聞いた話だが……。
 
 しかし、念のため、という事で、「特別機動部隊」とその研修生も、参加する事になった。今のところ、実戦に出る予定は無いようだが……。
 それでも、今から戦争に向かうという、この張り詰めた空気が、レイたちにも緊張を強いていた。
 
 イザナミは、重力圏内を抜け、超光速航行に入ったようだ。シートベルト着用サインが消え、全員、モニターの見える位置に集まるように指令を受けた。
 レイたちも、パイロットの集合場所となる、普段は研修を受けている、格納庫脇の会議室へ向かった。
 
 ほどなくして、画面にディケイルが現れた。
 ディケイルは言った。
「――今回は、恐らく持久戦となる。気力の尽きた者が負けだ。全員一丸となって、モチベーションを維持してほしい」
 それから、各艦の配置、作戦の概要など、簡単に説明があった後、
「……今回は、敵を全滅させる覚悟でいる。当然、敵もそのつもりでかかって来るだろう。――心して、任務に当たってくれ」
と締めた。――その目には光がなく、感情の欠片も見えなかった。
 
 何だか、元帥が変わってしまったように思えるのは、レイだけだろうか?
 レイに対する態度が変わったというのは、理解している。――今まで、被保護者として甘え過ぎていたから、軍に所属して、「部下」という立場に対して接して来る元帥を、冷たく感じるのは当然だと思う。
 ……でも、それだけじゃない気がする。
 以前、見てしまったディケイルの異変、――自殺未遂やそのへんの一連の出来事と、関係あるのだろうか?
 
 結局、あの時は、怖くて心を覗く事ができなかった。
 ――今思えば、そんな事をしてディケイルの「闇」を解決しようなどと考えていた事自体が、レイの傲慢だったように思える。
 
 ディケイルの話の後、エトウ・パルネラから訓示があった。
「――今回、我々の部隊には、予定された出撃は無い。しかし、いつ何時、出撃命令が下りても対応できるよう、各員、心して待機するように」
 ………しかし、その後は、特にやるべき事も無く、各自、部屋で待機となった。
 ――重い空気で、会話も続かない。ヒマ潰しに何かやる気も起きない。まだ、雑用でも何でも、仕事があった方がマシだ。
 
 「―――なぁ。なんで、よりによって、特別機動部隊なんかに志願なんてしたんだ?」
 ボビーが沈黙に耐えかねたのか、言った。
「俺は、――ミーハーだと思われるのは悔しいが、『鋼の操縦士』の影響を受けた事は否定できない。自分の本来の力以上の能力を手に入れられる、巨大戦闘ロボットのパイロットというのがどんなものなのか、体験してみたかった。……それだけだ」
 ケビンが言った。――いつもは気難しい事ばかり言ってるケビンが、意外にも「鋼の操縦士」のファンだという事を知って、レイは驚くと同時に、少し可笑しくなった。
「――僕は、行くところがないから士官学校へ入った。……で、どうせなら、一番花形、というか、危険な部隊へ入りたいと思った。――僕が死んだって、悲しむ人なんて、誰ひとり居ない。だから、僕ほどこういう部隊に向いている人間は居ないと思ったんです」
 ブライアンはあっけらかんと答えた。ケビンとボビーは複雑な視線をブライアンに送ったが、それ以上、返す言葉も見つからない様子で、再び目を床に戻した。
 
 「……で、レイは?」
 ボビーに促され、レイは返答に窮した。――なぜだろう?自分でも、志願した理由がよく分からなかったから。
 元帥の役に立てる事はないか、と思って士官学校に入ったのは事実だけど、何も、特別機動部隊じゃなくても良かったんじゃないか、という気もする。今になってみれば、「自分にしか出来ない事」に出会えたから、これでいい、とは思っているけど……。
 考えた挙句、
「――何となく」
という、あまりにいい加減な返答しかできなかった。
 
 それでも、ボビーは真っ黒な目をレイに向けて、
「そうか……」
と頷いた。
「―――じゃあ、ボビーはどうして?」
 レイが聞き返してみた。ボビーは顔を前に戻し、暗い表情で俯いた。
「今になってみれば、くだらねぇ理由なんだけどな」
 
 ――地球に居た頃、ボビーの住む村は、街から離れ、森の中でひっそりと暮らしていた。だから、当時起こっていた内戦など、他人事だと思っていた。
 ところが、ゲリラ部隊が村を掌握しようとやって来た。村を、基地か何かにしたいらしい。そこで、村の若者たちは、武器を手にして抵抗しようという事になったのだが……。
「―――俺、どうしても、人を殺せなかったんだ」
 村の若者、といっても、大人たちは村から離れて戦争をしている。だから、村が攻撃を受けた時に守るのは、まだ「子供」と呼ばれる年齢の少年たち……。
「10歳にもなれば、みんな、マシンガンを持って敵を撃ち殺してるのに、俺、どうしてもできなかったんだ。怖くて、怖くて……」
 ――そんな風だったから、周囲の子供たち、果ては大人たちにまで差別を受けた。……村を守る気があるのか?と。
 やがて、頼りだった父親が戦死し、その後、村に居られなくなり、家族共々、逃げるように村を出て、ガニメデにやって来た。
 
 「――でも、俺、ずっとそれが情けなくて、恥ずかしくて、どうしようもなかったんだ。
 ……だから、軍に入って、人を殺して、活躍できるヤツになりたいんだ。
 思い切り活躍して、あの時、俺らを村から追い出したヤツらを、見返してやりたいんだ」
 
 レイは、何と返事を返していいのか、分からなかった。――「ボビーならきっとできるさ!」と励ますのも違うと思う。だからといって、ボビーの考えを否定する事は、今の自分の立場をも否定する事になる。
 ケビンとブライアンも同じようだった。複雑な表情で、ただボビーを見つめていた。
 
 レイは、ボビーが俯きながら、手に「魔除け人形」を握り締めているのを見た。――それが、父親の形見なのだろう。……以前、宿舎の上層階に探検に行った時もらった人形は、レイも大切に持っている。制服のポケットに入れて、肌身離さず……。
 ――何だか可笑しいが、特に決まった宗教を持たない、宗教に縁など無い人生を送って来たレイだが、よく分からない宗教のお守りを、後生大事にしている。……何となく、守ってくれているような気がする、そんなボビーの感覚が分かる気がした。正直、訓練中に敵の高速艇と戦闘になった時も、この人形が守ってくれたから、無事で済んだように思った。そう思うと、見えないモノに依存するって事は、心を支える上で、大事なことなのかもしれない。
 
 そう思って、レイは言った。
「――大丈夫だよ。……お父さんが、見守っててくれるから」
 すると、ボビーは顔を上げた。
「そ、そうだよな。俺には、父さんがついててくれる……」
 ボビーは、さらに強く人形を握り締めた。


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