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 イザナミ艦橋では、ディケイルが黙って正面のモニターに視線を送っていた。
 モニターには、超光速航行中に現れる、オーロラのようなグラフィックが映っているだけだった。
 
 ――今回の会戦には、必ず、テオドアが出て来る。……本気でぶつかり合ったら、果たして、勝てるだろうか?
 
 「アス会戦」の時から、……いや、ガニメデに来た時から、いつかこの時が来る事は分かっていた。――そして、それが目前に迫って来ると、どうしようもない罪悪感に襲われた。
 ――俺は、何のために、仲間たちを巻き込んでいるのか?
 「自由を勝ち取るため」。――建前上はそうなっている。誰もがそう信じている。
 ……もし、誰かが俺の中の「真実」を見れば、俺を軽蔑するだろう。裏切り者だと罵るだろう。
 ――しかし、今はそれを明かす事はできない。そうなってしまったら、何もかもが、終わる。
 
 ……そんな心境があるからか、レイに以前のように接する事ができなくなっていた。――心を覗かれるのが、怖かった。
 正直、士官学校へ入ると言ってきた時には、ホッとした。少しでも距離を置ける事がありがたかった。
 その後、レイは特別機動部隊へ志願し、そのメンバーとなった。……「部下」として、再びディケイルの近くに戻って来た。
 ――「部下」として接する。そうすることで、ディケイルは最低限の距離を保とうと思った。
 周囲からは、あまりの態度の変化に、不審に思われるだろうか?現に、ソウはそんな顔で見ている。……しかし、お互いの立場が変わったのだ。不自然ではないだろう。
 
 ――そんな事を考えているディケイルを、激しい自己嫌悪が襲った。
 ………俺は、人間として、最低だ。
 
 「――どうも、こんにちは。……一応、挨拶だけはしておかないと、と思いまして」
 頭を抱えていると、急に女性の声に話し掛けられた。顔を伏せたまま、前髪の間から覗くと、スージーとかいう記者だった。脇には、カムイというカメラマンが、ヘラヘラした顔で従っていた。
「この前は、どうも。……一応、謝っておきます。少し、言い過ぎました」
「――何でここに居る?」
「聞いてないんですか?ナカムラ参謀長との約束で、次に軍事衝突がある時には、ドミニオン……今はイザナミですね、に、従軍記者として同行させてもらう事になってたんです」
「…………」
 ――なぜ、ガニメデを去らなかった?あれほど忠告しておいたのに……!
「同行期間中、お世話になります。よろしくお願いします」
「こんな船の中だ。逃げられないぜ?」
「でしょうね」
「――死ぬかもしれないぜ」
「そうでしょうか?」
 スージーは腕を組んだ。
「艦内でも、いろいろ取材させてもらいました。……あなた、戦争が始まる前、必ず言う事があるらしいですね。――負けそうになったら、自分を差し出して投降しろ、と。
 死ぬ前に、そうしてしまえば、死ぬ事は無いんじゃありませんか?」
 ディケイルはスージーに鋭い視線を向けていたが、しばらくして顔を伏せた。
「……今回は、それは言わない。
 相撃ちしてでも、敵をブッ潰す」
「…………」
 スージーは驚いたように目を丸くした。
「あなたらしくないですね」
 ――その一言が、ディケイルの中の何かを引っ掻いた。
「……俺らしくない?……あんたに俺の何が分かるんだ!!」
 気付けば、大声を上げていた。――艦橋に居た乗務員たちが、一瞬、ギョッとしたように艦長席へ目を向けた。
「――ご、ごめんなさい。も、もう、行きますから。――ね、スージー、お邪魔だよ。だから……」
 カムイが、訝しげな視線を送るスージーを引っ張るようにして、艦橋を出て行った。
 
 ――俺らしくない?
 ディケイルの中の理論では、筋が通っているのだが、やはり、傍から見ると、違和感があるのだろうか、今回の作戦は。
 今回は、ただ勝つ事が目的ではない。
 
 テオドア・カゼリを殺す事、それが目的だった。
 
 
 
 ――ディケイル・ウェイニーが突然大声を出したので、テッド・アーロンは驚いて振り返った。……普段、怒鳴ったりするところを見た事が無かったので、何事かと思った。
 ……すると、傍らにあの女性記者が立っているのを見て、納得した。
 テッドたちも、散々質問攻めにされた。――アス会戦の事とか、ディケイルの事とか。
 正直、ウザい。なかなかの美人なのは認めるが、何と言うか、恋愛対象にはならないタイプだった。……テッドの好みの問題だろうか?テッドは、家庭的で自分に尽くしてくれるような女性が理想だ。――母親みたいに。世の男たちは、何だかんだ言って、そんなものだと思う。
 でも、あのスージーとかいう記者は、家庭的な雰囲気というか、そういうものをこれっぽっちも感じさせない。スタイルの良い脚をやたらアピールしているが、それは単に観賞用のものであって、テッドの心を惹くものではなかった。
 
 「――あの記者に、何か聞かれたか?」
 隣に座る、クリストファー・フリーデン――クリスが聞いてきた。
「あぁ、いろいろな」
「それにしても、世の中にはもの好きが居るモンだな。戦地へ赴く戦艦に同乗したがるとは……」
「それを言ったら、俺たちも似たようなモンじゃないか?」
「……あぁ、言えてるな」
 
 ――そもそも、宇宙空港に居座っていれば、今頃、こんなところには居なかった。きっと、管制塔で、貨物船相手に誘導でもしていただろう。
 しかし、軍が隊員募集をしたのを機に、多くの職員が、軍に移った。整備士のニーナやテッドの同僚のナオミまでもが志願したと聞いて、何となく志願せざるを得ない、テッドはそう思った。結局、家族持ちではない独身者のほとんどが、軍に移ったようだ。
 家族持ちとはいえ、クリスが志願するのは予測のうちだった。こいつは、こういうヤツだ。――そして、こうして再び、宇宙戦艦の艦橋で、ふたり並んでモニターに向き合っている。
 
 「――イザナミ、ユナイテッド・トンネルに接近。超光速航行を終了します」
 クリスが館内放送をかけ、いくつかのレバーやらボタンやらを操作した。急激にスピードを落とす感覚で、耳がキーンとなる。すると、モニターに映し出されていたオーロラのような光の帯が消え、暗い星空に入れ替わった。
「……レーダー確認。――ユナイテッド・トンネル前方1000Mmの地点に、多数の光点」
 クリスが報告するのとほぼ同時に、偵察に出ていた哨戒艦から通信が入った。
「――敵の戦力は、戦艦2隻。形状から、エクスシア、アークエンジェルと思われます。
 それから、駆逐艦、宇宙空母等12隻。計14隻の艦隊です」
「……やはり、宇宙空母が出て来たか……」
 ディケイル・ウェイニーがため息交じりに呟いた。
「イザナミを先頭に、トンネルを抜ける。出たところに、予定通り布陣しろ」
「了解」
 テッドは、各艦に指令を伝えた。――その中でも、やはり気になったのが、「アマテラス」の艦長。
 ――あのナカムラとかいう人、参謀本部長という役職には就いているが、実際、事務方のまとめ役みたいな人だろ?そんな人、戦場で役に立つのか?
 案の定、モニターに現れた姿は、過度に緊張して、顔が引きつっていた。
 
 「――敵艦隊、前方5000kmの位置に接近」
 クリスの言葉を聞いて、ディケイルが通信を促した。
「……全艦に告ぐ。――今回は、これまでとは比べようも無い、厳しい戦いになる。
 だが、俺の指示さえ聞いてくれれば、必ず勝てる。
 ただし、前回のように、指示に従わない者が出れば、軍規に基づき、射殺する」
 ―――艦橋内の空気が凍り付いた。そればかりか、通信を通して、他の艦からも、同じような空気が伝わって来た。
 「……第一級臨戦態勢。――各員、配置に着け」
 
 
 
 テオドア・カゼリは、エクスシアの艦橋に立ち、前面のモニターを眺めていた。
 高感度光学カメラが取り込んだ映像は、本来の明るさを、数万倍に増幅してモニターに伝える。だから、星空の向こうに見える敵艦の明かりは、実際には見えてはいない。しかし、それは、確かにそこに存在する。
 
 テオドアは、仮面の下で口元を歪めた。――こうすると、皮膚が引きつって痛みを感じるが、笑わずにはいられなかった。
 ――なんだ?あの配置は?小惑星帯を背後に、横一列に並んだ薄い陣形。しかも、肝心の死守するべきトンネルの入口が、ガラ空きではないか。
 脚を広げて待つ娼婦のように、我々を誘い込もうというのか?……罠だというのが見え透いている。
 つまり、罠を張って待っているという事は、敵は短期決戦を望んでいるという意味だ。――という事は、補給体制が整っていない、あるいは、資源に限界がある、そういう事だろう。
 ならば、こちらはじっくりと構えよう。最初から、その予定だ。そして、じわじわと体力を削り取って、なぶり殺しにしてやる。
 
 テオドアは通信士に告げた。
「全艦に伝えてくれ。敵艦隊より手前500kmの地点で、全艦停止。様子を見る」
 
 
 
 ソウは、モニターに映し出された敵艦の列を見て、気が気じゃなかった。――敵はいつ仕掛けて来るだろう?その時は、どういう対応をすればよいのやら?
 おどおどと落ちつかないソウの様子を見て、副官のフランクが声を掛けてきた。
「艦長、そんなに緊張してたら、持ちませんよ?司令官は持久戦になるとおっしゃってたじゃありませんか。もう少し、肩の力を抜いてください」
「あ、あぁ……」
 ――全く、どちらが上司だ?ソウは自分が情けなくなってきた。
 
 ……それにしても、敵は動かない。ディケイルからも、あの問題発言以来、通信は無い。
 「指示に従わない者は射殺する。」――あんな言葉が、ディケイルの口から出るとは思わなかった。……しかし、命を張った戦場では、それは当り前の事だ。今までが慣れ合い過ぎだったのだ。
 
 ディケイルから、作戦の内容を聞いた時、同時に敵の指揮官の事も聞いた。
「――恐らく、トランセンダーが来る」
「………な、何!?」
「今までのように、敵を追いこんで、降伏を待つようなやり方では、絶対に勝てない。――敵を全滅させる覚悟が無ければ、全滅するのはこっちだ」
「…………」
 
 ――出港した後、全艦に向けた通信でも言っていたが、だが、その覚悟が一番必要なのは、ディケイル自身だろう。あぁして厳しい事を言いながら、自分を追い込んでいる、ソウにはそう見えた。
 
 ………だが、こうして向き合ってから既に数時間が経過するが、敵に全く動きは見えない。一体いつ、戦争は始まるのか……?
 
 2211年7月15日。
 こうして、ソウの自覚の無い間に、『第一次ユナイテッド会戦』は、静かに幕を上げていた。
 

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