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オリジナル小説のダストボックス

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 スカルは定位置のソファーに寝そべっていた。――さすがに「仕事」も立て続けだと疲れる。……しかし、そんな疲れを癒すには、やっぱりチョコバニラの甘さが一番だな。スカルはチュッパチャップスのカラフルな包み紙をめくり、口の中へ放り込んだ。
「――キャプテン、収獲品が多過ぎて、倉庫に入り切りません」
「なら、そこらにでも積んどけばいいだろ」
 すると、その男はあからさまにイヤそうな顔をした。
「そんな事したら、麻雀台を片付けなきゃいけなくなるじゃないですか」
 その言葉が終わる直前、テーブルに置いてあったアイスピックが、スカルの手を経由して、宙を飛んだ。アイスピックは、くるくると回転しながら、男の頭に巻いたターバンに突き刺さった。
「――麻雀台を片付けるのと、おまえが俺に片付けられるのと、どっちがいい?」
 男は泡を食って腰を抜かし、アワアワと意味不明の事を呟きながら、這うようにしてその場を離れた。……ちょっとやり過ぎたか。
 
 ――それにしても、たった2回の仕事で、これだけの収獲とは。
 ディケイルの言っていた通り、これは相当な儲けになる。……考えたくもないが、良い仕事をもらったと、感謝しなければならないだろう。
 
 ――その依頼主は、今頃どうしているか。
 スカルはテレビを点けた。火星経由の番組では、画面の端に、常に「ユナイテッド会戦」の模様を、文字情報で表示していた。――少し前、両軍が衝突したようだが、その後、事態は再び膠着しているらしい。
 ……相手は、あの姑息なテオドアだ。妙な罠にでも引っ掛かってなければいいけどな。
 
 ――態度はこんな風だが、スカルは、「ラザレフ研究所」に居た頃、ディケイルには世話になったと、自覚はしている。
 ……まず、アイツが居てくれたおかげで、最下位にはならずに済んだ。――まぁ、科目によっては負ける事もあったが、総合的には、みじめな思いをせずに済んだ。
 それに、スカルが「脱走」するきっかけを作ったのは、他でもない、ディケイルなのだ。
 
 当時、ディケイルはスカルによくこんな話をした。
「――こんな事してて、何になるんだろうな」
 ……しかし、当時のスカル――パパッチノには、その意味がよく分からなかった。
「何になるって?頑張って一番になって、あのオヤジから褒めてもらえれば、嬉しいじゃないか」
「褒めてもらって、それが何になる?一番って言ったって、この狭い施設の中だけの事じゃないか。そんな中でいい成績を取ったって、それが世界では何の役に立つんだ?」
「世界平和を実現するため……?」
「そもそも、世界平和って何だよ?人類の歴史を習ったろ?そのほとんどが、戦争や争いの上に成り立ってるじゃないか。――そんな人類の中に、ひとりやふたり、大天才を送り込んだところで、何も変わりはしないさ」
 ……初めは、落ちこぼれのヒガミかと思って聞いていたが、やがて、その考えはパパッチノの中にある変化をもたらした。
 
 自分が「自由」でなければ、本当の「平和」など、作り出せるハズが無いじゃないか。
 
 力によって強要される平和なんて、そんなモノ、平和なんかじゃない。――今のパパッチノたちと、同じ状況だ。
 それならば、いっそ……
 
 パパッチノは、ディケイルに「脱走」する計画を伝えた。そして、
「一緒に逃げよう!」
と誘った。……だが、ディケイルは断った。
 その理由を聞いた時、パパッチノは天地がひっくり返るかと思うほど驚愕した――。
 
 ――で、「自由」への脱走を果たした末に、宇宙海賊に身を落としてちゃ世話ないわな……。
 珍しく、自虐的にそう思い、スカルは酒に手を伸ばした。――しかし、ブランデーのボトルは空になっていた。
 チッと舌打ちして、スカルは手下を呼んだ。
「誰か!酒持って来い!!」
 
 すると、すぐにひとりの男が木箱を手にやって来た。――ピンクのリボンがしてある。なんでこんな洒落たモンがヘル・ビートルにあるんだ?訝しい視線を向けると、男は答えた。
「2回目の収獲品の中にあったんです。――『親愛なるスカル様』って書いてありますぜ?」
 男はニヤニヤしながらそう告げた。
 ――間違いない。ビアンキからだろう。スカルが言った、「ビアンキとブルーノの関係を黙っていてやる」口止め料のつもりか?
 スカルは箱を受け取り、リボンを解いた。そして、フタを空けると、そこには、年代物のワインが収まっていた。――ボルドー産の2180年モノの赤。確か、近年稀に見る作柄の良かった年に作られたもので、とんでもないプレミアが付いていた気がする。
 しかし、スカルの目はそのラベルではなく、脇に添えられた小さな封筒に向けられていた。それを手に取り、中身を見てみる。――そこには、1枚のメモリーカードが入っていた。
 それをつまみ出し、テレビのモニターに繋がれた端末に差し込んでみた。
 ――すると、画面に現れたのは、航宙図。……普段、スカルが使っているモノとは異なる。それよりも、もっとワープ可能ルートの数が多い。恐らく、地球か、あるいはビアンキが独自に調査して確認された新ルートを、従来の航宙図に書き加えたものだろう。
 その中の、一際長いラインを見て、スカルは眉をひそめた。……これは……!
 
 このルートを通れば、アルビック・トンネルから月まで、ノンストップで航行可能じゃないか!!
 
 ――こんな戦略的にも重要なモノを、なんで俺なんかに渡したんだ?俺に、月を襲撃させようという意味か?――まさか。さすがのヘル・ビートルでも、史上空前の要塞と化している月を攻めるのは、とてもじゃないが不可能だ。
 ……何せ、月には「十二使徒」が居る。
 
 ―――「十二使徒」。
 それは、月を護るように配置された人工衛星群だ。――厳密に言うと、月自体が衛星だから、衛星の衛星だから、子衛星になるのか?――そのそれぞれに、強力な反物質粒子砲を備えたそれらは、敵を感知すると、連携し合いながら軌道上を縦横無尽に動き回り、目標を迎撃するシステムを取っている。それは、小惑星クラスの隕石までもを消滅させる能力を持っているらしい。
 いくら「地獄の幽霊船」と言えども、見つかったら最後、蒸発するのは目に見えている。
 
 ……ならば、ビアンキは何をしたいんだ?
 
 ――考えられるのは、ただひとつ。
 スカルがこれをディケイルに流し、ディケイルが月を襲撃するのを期待している。
 ……あの化けモノ戦艦のドミニオンなら、「十二使徒」を破る事は可能だろうか?――いや、無理だ。そもそも、自軍が不利になるような情報をビアンキが流すハズが無い。ならば、ディケイルがこれに乗せられて、月に攻め込んで来たら、「十二使徒」を使って撃滅できる。そうなるといいな……という、期待?
 
 いや待て。ビアンキがそんな適当な事をするワケがない。
 ビアンキが目指すものを考えれば、おのずと答えが出るはずだ。
 ――ビアンキは、ラザレフの施設に居た当時から、やたらブルーノと仲が良かった。――というより、あのふたり、付き合ってた。それに気付いてなかったのは、そういう方面に全く無関心なミカエルと、一歩退いたところに居たディケイルくらいだろう。
 そして、ブルーノは、ミカエルを常にライバル視し、二番目の地位に満足せず、一番を狙っていた。
 そのブルーノとビアンキが現在も繋がりを持っているというのは、こんなモノを贈ってきた時点で明らかだ。とすれば……
 
 ビアンキが狙っているのは、地球側の軍事力を削る事。
 つまり、ビアンキにとっての「自軍」とは、ミカエルとアース・コーポレーションではなく、それに反意を持つブルーノ・レオン。
 ミカエルとディケイルを衝突させ、お互いの体力を削り、衰弱したところで、アース・コーポレーションを乗っ取る。
 そのためのフラグか!
 
 ……初めに補給艦を襲った時、あまりにもあっさりと退避の指示を出していたから、薄々は地球側に反意があるだろう事は気付いていた。しかし、これはあまりにもはっきりとした意思表示をしてきたものだ。
 ――俺が、これをミカエルに売るというような事は考えなかったのか?
 ……いや、考えた上でなお、大丈夫だと踏んだから、渡してきたのだろう。俺が「海賊」として、ミカエルを避けている事を知った上で……。
 
 ――しかし、そうなると、素直にディケイルに渡すのもどうかと思う。ディケイルだって、そんな簡単に動きはしないだろうと思うが。
 ………とりあえず、フォンシェにでも渡しておこう。その方が、確実に金になる。
 
 スカルは、メモリーカードを封筒に戻し、コートのポケットに入れた。
 その後、グラスにワインを注ぎ、その中へ、チュッパチャップスを突っ込んだ。――ワイン愛好家から見たら、怒鳴り付けたくなるような味わい方だろう。だが、本人が満足しているのだから、それでいいだろ。
 スカルは、ワイン色に色付いたチュッパチャップスを口へ入れた。――ワインの渋さと飴の甘さが混ざって、何ともいえない味がする。
 
 ――あんまり、こういうゴタゴタには巻き込まれたくなかったんだがな。
 スカルは伸びをした。――まぁ、こうなってしまったからには仕方ない。この「運命」の行方、見届けてやるか……。
 
 
 
 ――再び、事態は膠着した。
 ソウは艦長席から前面のモニターを眺めながら、肩を叩いた。……こうも動きがないというのも、正直、キツい。だからといって、油断するわけにはいかない。現に一度は、総攻撃を仕掛けてきた。……今度はいつ動きを見せるのか。そうなった場合、即座に対応できるように、出来る限り艦長席で構えているのだが……。
 
 その時、ソウの前にそっとコーヒーが差し出された。……見ると、フランクが立っている。――ちょうど飲みたいと思っていたところだ。全く、気が利き過ぎる……。
「艦長は、司令官が何をお考えなのか、ご存知なんですよね?」
 さりげなく、ソウに探りを入れてきた。けれども、ディケイルに作戦の概要を説明する事は禁じられている。……しかし、何も分からずただ命令を待つ身分というのも、つらいモノだろう。ソウにも分かる。――第一、ソウだって、一応作戦の説明は受けるには受けたが、それは、「スカルを使って補給路を断つ」程度の内容だった。……で、補給路を絶って敵を追い込んだ後、どうするのか?そうなると、ソウにだってサッパリだ。
 ――いや、案外、ディケイル自身も、その場限りのところがあって、分かっていないのかもしれない。
 
 「……要するに、持久戦というのは、こういう事なんですね」
 フランクも肩を回しながら言った。
「まるで、先に仕掛けた方が負けという、根性試しをしてるみたいな感じがします」
 ――まぁ、確かに、そんな感じがしないでもない。ソウはコーヒーに口をつけながら思った。
「まぁ、こちらは補給の心配は無い。ガニメデに待機してるチャン大将が、その辺はしっかりやってくれてる。……それが無い敵が先に痺れを切らすのは、目に見えてるけどな」
「……つまり、今、敵をこちらに引き付けながら、裏で別動隊が動いて、敵の補給路を断っている、という事ですか」
 ―――あ。
 ソウは慌ててフランクを見上げた。――すると、フランクはニヤリとして言った。
「その、別動隊ってのが、正式なものではないから、元帥はあまり言いたくなかった。……そうですよね?
 大丈夫。誰にも言いませんよ」
 ――全く、少し気を抜くとこうなる。ヘタな事も言えないじゃないか。
 
 しかし、スカルからも何も連絡が無いところを見ると、きっと、うまくやっているのだろう。――ということは、敵が焦り出すのも、そろそろかもしれない。
 
 ――そう思っていたら、アマテラスの艦橋に通信のアラームが響いた。
「敵艦隊、撤退を開始。全艦、戦闘準備」
 それを聞いて驚いた。――撤退してくれるのなら、放っておけばいいじゃないか。なんで、追撃なんか?
 だが、同時に悟った。――ディケイルが言っていた、「敵を全滅させる覚悟」というのは、こういう事か。
 しばらくして、通信が告げた。ディケイルの声だ。
「敵艦が旋回しようとしている横っ腹を狙え。逃げる体勢に持っていかせるな」
 ――要するに、まだ敵をこの宙域に引き留めておくつもりなのか。……徹底的に困窮させるまで。
 ある意味、最も残酷な手段かもしれない。
 
 通信は告げた。
「全艦、撃て!」
 
 
 
 ――テオドアは、本気で逃げる気などは無かった。ただ、こちらが動きを見せたら、どういう反応をするか、確認してみたかっただけだ。
 こちらの「撤退する」というアクションに対し、ディケイルは「撤退させないように攻撃する」というリアクションに出た。――勢いに乗って追撃してくる気もなさそうだ。
 
 ……これは厄介かもしれない。
 
 ディケイルは、まだ決戦の「時期」ではないと見ている。――つまり、本当にテオドア側が困窮するのを見計らっている。
 これでは、ヘタに動いてもエネルギーを無駄に消費するだけだ。これまで通り、手を出さずに睨み合うしかないのか。
 
 ――会戦開始から10日目。
 そろそろ、物資やエネルギーの残量が気になってきた。ここから、月まで帰還するのに、最低2日はかかる。それだけのエネルギーを保持した上で、ディケイルに決戦を挑むとなると、――正直、あと3日が限界だった。できれば、余裕を持った戦いをしたい。だから、少しでも早く、ディケイルの「隙」を見つけたいのだが……。
 
 ディケイルは、全く隙を見せない。それに、他の艦が、痺れを切らして動いてくれれば、そこから突破口を作り出す事も可能だが、そんな動きもない。
 さて、どうするか……。
 
 艦橋に通信のアラームが響いた。
「――補給艦第6陣も、か、海賊に……」
「もう連絡して来なくていい」
 テオドアが言うと、モニターから通信士がギョッとした顔を残して消えた。――表情の無い仮面からも、今のテオドアの憤怒は伝わったのだろうか?
 
 ビアンキは、海賊対策のために、いろいろ策を練っているようだ。――一見は。
 しかし、旧航路図に無い新航路を使ったり、複数の艦を寄越したり、輸送艦ではなくもっと戦闘力の高い哨戒艦を使ったりと、誰が見ても不自然のない内容の対策だから、これを理由にビアンキを追い詰める事はできない。
 ……しかし、そのどれもが、宇宙海賊「スカル」には通用しなかった。
 ――一体、どうなってる?スカルとは何者だ?
 
 テオドアは包帯の巻かれた手を組んだ。未だに、指はうまく曲がらない。一生、このままかもしれない。
 しかし、今は生きている。しかし、今はまだ「息をしている」程度の実感しかない。――このまま、勝利を勝ち取って、自分の地位を取り戻し、完全なる「新世界」の盟主の一員となる。
 
 それでこそ、生き返ったという事だ。
 
 テオドアはモニター越しにドミニオンを見た。
 ――それには、まず、ディケイルの首だ。
 そこからが、本当の始まりになる――。


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