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53.  生きる
 
 
 2211年7月28日。
 テオドア・カゼリは、艦橋に居た。
 ここ数日、空調や照明も落としてあるから、ひどく寒い。防護服を着て寒さを凌いでいるが、それもそろそろ限界だろう。
 ――決戦の時が迫っているのを、包帯に包まれた肌で感じていた。
 
 ――やはり、ディケイルは隙を見せない。……ならば、こちらから作り出すまで。
 テオドアは前から考えていた。……この陣形に弱点があるとすれば、――プリンシパリティ。
 ドミニオンを相手にしたところで、高火力と鉄壁の防護で、墜とすのは至難の業だ。ならば、別の角度を切り崩して、ディケイルを動揺させる。――今できる作戦は、それしかない。
 しかし、それもあまり良い策とは思わなかった。
 なぜなら、ドミニオンを無傷で残すという事は、背後に大きな脅威を残すという意味だ。ガニメデまで何とか到着したところで、その後で殲滅されては意味がない。
 
 ――いや、待て。
 プリンシパリティを攻撃すれば、ドミニオンはトンネルの防御を捨ててでも向かってくるのではないか。
 ディケイルが戦艦を任せるほどの人物、腹心中の腹心が、恐らくプリンシパリティには乗っている。しかし、ガニメデに戦艦を操れるような人物が、ディケイルの他に居るとは考えられない。ただ、乗員や他の艦の手前、乗せているだけ。
 ――そんなヤツが集中砲火を浴びたら、ディケイルはどう動くか。
 仲間を見捨てる事ができない、昔からそういうヤツだ。必ず、こちらに向かってくる。
 
 ――それこそが、ヤツの隙になる!
 
 そうなったら、数にモノを言わせて、ドミニオンを取り囲んで殲滅してやればいい。
 ドミニオンさえ片付ければ、この会戦は終わる。……いや、ガニメデはこちらの手に戻る。
 ミカエルの望みが叶う!
 
 テオドアは指示を出した。
「戦闘態勢に入る。全艦、プリンシパリティに一点集中砲火!」
 
 
 
 ――敵に動きが見えたと思ったら、そのターゲットがアマテラスに向いている事を悟って、ソウは焦った。
 この艦の防御力じゃ、とてもじゃないが耐えられない。このまま敵が前進して来れば、大破するのは時間の問題だった。
 その時、通信が入った。
「アマテラス、トンネル内に退避しろ」
 ――ディケイルだ。
「イザナミが敵の攻撃を防ぐ」
 しかし――、それが何を意味するのか、ソウにも分かった。
「そんな事をしたら、イザナミが囲まれるぞ!」
「分かってる」
「イザナミが墜ちたら、何もかも終わるぞ!!」
 その時、アマテラスの艦橋が大きく揺れた。ソウはよろめいて、床に転がった。
「右舷に被弾!!」
「早く行け!バカ!仲間を殺したいか!!」
 ――そう言われては、ソウには何も言い返せなかった。素早く駆け寄って来たフランクが、ソウに手を差し出す。それでようやく起き上がり、ソウは通信に向かって言った。
「アマテラス、ユナイテッド・トンネル内に退避する」
 
 
 
 1週間前と同じように集中砲火を受けながら、しかし今度は退路も塞がれた状態で、イザナミは矢面に立っていた。周囲のミサイル艦や駆逐艦も応戦はしているが、とても対抗できる火力じゃない。
「左舷側面に被弾!」
「上部砲台、破損!!」
 そんな叫びが艦橋を満たしている。――このままでは、墜ちるのは時間の問題だ。
 
 ……なるほど、アマテラスがディケイルの弱点である事を、テオドアは見抜いたか……。
 本当は、この会戦に誰も連れて来たくはなかった。しかし、アス会戦の時のように、ドミニオン1隻で来る事はできなかった。――テオドア相手にそんな事をすれば、ただの自殺行為だ。
 だから、ガニメデの全軍を参加させるのは必須であり、そのために、ソウを連れて来た。――アマテラスの艦長を任せられるのは、他に居なかった。
 強引に連れて来たからこそ、――いや、そうでなくとも、ソウだけは死なせたくなかった。
 ……俺が死んだ後にガニメデを任せられるのはソウだけだ、ディケイルはそう思っていた。
 
 本来なら、アマテラスを見捨てて、トンネルの防御を固めるのが正しい選択だというのは分かっている。しかし、ディケイルにはそれができなかった。
 ――この場にチャンが居たら、また怒鳴られただろうな。
 ディケイルは渋い顔をして、モニターに映し出されているレーダーの図面に目を向けた。
 ――間違いなく、これが、テオドアとの「決戦」になる。
 
 ……こうなったら、「イザナギ」を出すしかない、か……。
 
 ディケイルは、それも極力避けたいと思っていた。レイたち未来ある子供を、大人の都合で戦わせるのは、間違っていると思っている。――全ては、俺の不甲斐なさのせいだ。
 それに、敵は未だに対抗するロボットを出してきてはいない。先に出す事になるのは悔しいが、この際、仕方ない。
 
 ディケイルは艦内に告げた。
「特別機動部隊、出撃準備」
 
 
 
 レイは、ブライアンたちと一緒に、格納庫脇の詰所で、モニターに見入っていた。
 ……今、イザナミがかなりのピンチなのは分かる。この部屋も、時折被弾の衝撃で揺れた。
 こんな時に、何もせずにただ見守っているしかない立場が、レイにはつらかった。何でもいいから、力になれる事があれば……。
 
 そんな時、特別機動部隊の出撃命令が下った。
「――マジか!?こんなヤバい時に出て行けと!?」
 エドが言うと、エトウが突然エドの頬を引っ叩いた。
「馬鹿野郎!それが我々の任務だろう!指揮官の立場にある者が、そんなモラルの無い発言をしてどうする!!」
 すると、エドは頬を押さえながら、エトウの顔を、怒りを込めた目で見返した。
 ――まずい、こんな時にケンカなんて!
 だが、それ以上発展する事はなかった。エドやエトウよりも年長のパイロットたちが、ふたりを引き離したのだ。
「――全員、至急出撃準備をせよ。3分後には発進できるように!」
 エトウがそう言い、詰所を出て行った。エドもその後ろ姿を鋭い目で見送った後、立ち上がった。
「行くぜ」
 レイたちも、エドの後に続き、更衣室へ向かった。
 
 パイロットスーツに着替えながら、レイたちは無言だった。
 ――実質上、初陣。
 しかも、レイは中途半端に実戦を経験して、その恐怖を、身をもって体感している。
 そんな中で、この先、何が待ち受けているのか、考えられなかった。考えたくもなかった。ただ、心臓を縛り付けるような緊張だけが、レイの身体を支配していた。
 
 着替え終わり、ロッカーを閉めると、すぐ後ろに誰かが立ち、こちらに視線を向けていた。――振り向くと、マタルだった。
「よぉ、レイ。お互い、頑張ろうな」
 ……何を考えてるんだ?その意図が読めずにマタルの顔を見ると、マタルはニヤリとしてレイに顔を近付けた。
「なぁ、この出撃で、少しでも多く活躍した方が、改めて、カティに告白する事にしないか?」
「え――!?」
 何を言い出すかと思えば……!!
「強い男じゃなきゃ、この世の中、カティを守れない。そう思わないか?
 弱い男は、引くべきなんだ。恋なんて、諦めるべきなんだよ」
 その言葉は、刃となってレイの心を突き刺した。――一度、レイが身を引こうとしたあの弱さを、言い当てられているような気がした。
「なぁ、それがお互いに一番いい選択だと思うんだ。……どう?」
 しかし、レイは返事ができなかった。――そんな事をしても、カティが傷付くだけだと、なんで分からないんだ?
「それとも、―――怖いの?負けるのが」
 ――レイには分かった。これまで、長い付き合いだ。マタルは、レイの弱いところを全て知っている。そして、その弱さを認めたくないところも。
 だから、レイを煽るために、カティの名前を出し、カティのためだと念を押す。
 けれども、その中身は、レイに負けたくないライバル心、それだけだ。
 
 それは分かった。分かっているけれども、この時、レイは引き下がれないと思った。
 レイは真っ直ぐにマタルを見た。その瞳に、弱さは無かった。
「その勝負、受けるよ」
 
 格納庫に到着するのと同時に、エトウの怒号が飛んできた。
「マグアドル軍曹!ラーディン軍曹!40秒の遅刻だ!」
「すいません!!」
 レイは慌ててイザナギのコクピットに上がり、ハッチを閉めた。
「WAKE UP!」
 半ば息切れがする中でそう呟くと、ロボットのエンジンだけでなく、自分の中の何かも目覚めるような気がした。
 ――負けられない!
 
 レイは、モニター越しに周囲を見渡した。
 結局、実戦機の色は「ダークブルー」に決まったようだ。元帥は「赤」を主張してたけれど、不評だったみたいで……。
 しかし、レイの乗る「エレクト方式」だけは、真っ赤な塗装を施されている。
「――ヘンに目立つと、戦場では不利になるよ?」
 ジョルジュに散々忠告されたが、レイはそれを突っぱねた。
 ……元帥と同じ状況で、勝負したかった。元帥にだって、負けたくない。
 僕は、「トランセンダー」であり、イザナギのパイロットなんだ。
 
 「――14号機、発進準備を」
 オペレーターのナオミの声も、訓練の時とは打って変わって、緊張で張り詰めている。
 レイは歩を進め、滑走路の前に立った。慎重に発進台に乗り、足元を確認する。
「カウントダウン開始。――5、4、3、2、1、――発進!」
 レイはブースターを点火した。即座に周囲の風景が変わり、星空の虚空へ放り出される。
 ――ただ、訓練と違うのは、すぐ近くで、激しい爆発の光が飛び散っていること。
 
 イザナミの滑走路は可動式で、翼を広げるような形で後ろに向かって開く。これは、このような戦闘中に発進する場合に備えてのものだ。つまり、レイの出た宙域は、イザナミの後背に当たる。ここはまだ、戦場じゃない。
 
 レイは発進の勢いに乗り、宙で弧を描いて方向を変えた。
 レイたちに与えられた指令は、ただひとつ。
「イザナギ全機に告ぐ。エクスシアを撃墜せよ」


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