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54.  本能
 
 
 テオドア・カゼリは、目立たない子供だった。
 施設の中でも、飛び抜けて成績が良い訳では無く、だからといって特別に悪い訳でもなかった。常に、真ん中か、少し上くらい。
 ……で、トータルにすると、いつも5番目だった。
 
 ヴィクトール・ラザレフから、特に専門的な訓練をされたのは、『読心術』。
 しかし、それは、それ単独で何かを為せる能力ではなかった。何かの目的を達成するための、補佐的なもの。それに気付いた時は、ひどく落胆した。
 ……自分は一番にはなれない。そう宣告を受けたような気がした。
 
 ミカエル・アイヒベルガーやディケイル・ウェイニーの事が羨ましかった。
 ミカエルは、誰もが認める優良児。常に一番で、誰からも尊敬の眼差しを向けられていた。
 そして、ディケイルは落ちこぼれだったが、逆に、順位に囚われない自由さがあった。
 ――あんな風に、自分のランクを意識しないで、好きな事をやってみたい。よく、そう思った。
 
 しかしある時、「補佐的な立場」の重要性に気付いた。
 確か、グループで分かれてゲームをした時のこと。テオドアは、ミカエルと同じグループになった。
 その時、相手の表情から、ミカエルの気付かなかった情報を見抜き、それをミカエルに教えた。
 ――そのおかげで、ミカエルのグループが勝利した。
 ヴィクトール・ラザレフに褒められた後、ミカエルはテオドアに言った。
「君のおかげで勝てた。ありがとう」
 
 そして思った。――成績は5番目だけれども、「立場」というのなら、二番目にだってなれる。……それが、テオドアの目指すべき道なんじゃないか。
 
 それから、テオドアは争う事をやめた。5番目という成績に安住しながら、「一番」のミカエルの傍らに居場所を作った。そして、ミカエルのためにミカエルの「心」を読み、ミカエルの望む事、ミカエルをさらに上へ引き立てる行動をした。
 ミカエルがもっと上に行けば、テオドアも一緒に上がっていける、そう思った。
 
 それは、「卒業」してからも同じだった。
 テオドアは、常にミカエルの傍らで、彼の顔色を伺う事に終始した。
 
 しかし、それは間違っていなかったと思う。
 ミカエルは頂点を極めた。それは、テオドアにとって誇りでもあるし、ヴィクトール・ラザレフの「課題」を、テオドアなりに達成したものだと思っている。
 
 ―――そんなテオドアの心の奥底に片付け込まれた「自意識」を、この少年が引きずり出した。
 ……「ナチュラルタイプ」というのが、どの程度の能力を持っているのかというのも気にはなったが、それよりも、自分はこの少年より「上」であるのか「下」であるのかを、テオドアは知りたかった。
 常に5番目。下には、明らかに格下のディケイルしか居ない。……「競り勝つ」快感など、とうの昔に忘れていると思っていた。
 しかし、この少年は、その欲求を満たしてくれそうだ。
 
 テオドアは剣を構えたまま、ブースターを点火した。ジャンヌ・ダルクの白銀の機体は一直線に、赤い機体めがけて飛んだ。
 少年は、両手の剣でその攻撃を受け止めた。――だが、パワーが足りない。テオドアに押され、ズルズルと後退する。
 
 その背後では、エクスシアが退却を始めていた。その弾幕の一部が、こちらにも飛んで来る。赤い機体は身を翻してそれを回避した。テオドアも一歩退いて避ける。ふたりの間の空間を、光弾が貫いた。
 その残像が消えぬうちに、少年は突進してきた。双剣の切っ先が、白銀の装甲を襲う。テオドアはシールドでそれを弾き返した。光を放つ刃とシールドの硬化バリアがぶつかり合い、火花が散る。
 わずかに少年が体勢を崩した隙に、テオドアは思い切り剣を振り下ろした。だがその斬撃は、赤い塗装をかすめて宙を斬っただけだった。
 
 お互い飛び下がり、2機は再び対峙した。
 
 少年の息遣いがそのまま表されているかのように、赤い機体が揺れている。
 やはり、相当緊張しているのだろう。――子供だ。無理もない。
 少年は、それを見抜かれた事に気付いたのか、気持ちを振り払うように、再びテオドアに突撃した。今度は頭上から全力で刃を振り下ろされ、テオドアは剣でそれを受け止めた。――レバーを握る手にその衝撃が伝わり、痺れる。まだ、火傷の傷跡は万全ではない。痛みが走るが、今のテオドアには、それが心地良かった。
 
 ――その痛みが、生きている実感を与えてくれている、そう感じた。
 
 どうかしているのは自覚している。
 本来なら、早急に戦艦に戻り、体勢を立て直した上で、総力で反撃に出るべきだ。そうすれば、この赤い機体などひとたまりもないだろう。それは分かっている。
 だが、テオドアはこの機体を自らの手で仕留めたかった。――いや、戦闘そのものを楽しんでいるのかもしれない。
 ……闘争本能。
 あるいは、「ジャンヌ・ダルク」という、稀代の魔女の持つ魅力に取り憑かれたのか。
 
 テオドアは、脳内物質の趣くままに、剣を振り上げた。
 パワーではさすがに敵わないようだ。少年は剣を弾き返され、よろめいた。――今だ!
 テオドアは、深紅の頭上に、剣を振り下ろした。
 
 しかし、その刃が少年に届く事はなかった。
 横からの鋭い光線が、テオドアの剣を折り飛ばしたのだ。この衝撃にはさすがに耐えられず、テオドアはコクピット内で痺れる手を押さえた。
 そして、光線が発せられた方向に目を向ける。――そこには、ドミニオンの巨体があった。エクスシアの退却に合わせて、前進してきていたのだ。
 勝負の邪魔をしやがって……!テオドアは舌打ちした。
 ――それにしても、剣を狙い撃ちするとは、どんな集中力の持ち主だ……!?
 しかし、考えている余裕は無かった。次の光弾がテオドアめがけて降ってきた。反射的に飛び下がり、難を逃れる。
 
 が、勝負を中断された事に憤りを感じているのは、少年も同じようだった。
 体勢を崩したテオドアに向けて、飛び掛かろうと双剣を構えた。――だが、それも脇からの光弾に邪魔された。
 今度は、他のジャンヌ・ダルクのレーザーガンだった。
 そのパイロットはテオドアに告げた。
「司令官、至急艦にお戻りください!エクスシアは現在、敵のロボットに取り囲まれ、非常に危険な状態です!何とぞ、ご指示を」
 ――仕方ない。テオドアは名残惜しさを込めて赤い機体を一瞥し、エクスシアへと飛び去った。
 
 
 
 「………逃げられたか」
 ディケイルは、砲台のレバーから手を離し、通信を開いた。
「14号機、隊列に戻れ!」
「……は、はい!」
 レイの乗る赤い機体は、すぐさま飛び去った。
 
 レイの乗る14号機が、明らかに動きが違う敵機と交戦中と聞き、ディケイルは確信した。
 ――レイは、テオドアと戦っている。
 脳波でお互いを察知したのだろう。テオドアの挑発を受け、レイはエトウの命令も聞かずに飛び掛かっていった。
 たまたま、狙撃が当たったから良かったものの、あの調子では、命がいくつあっても足りない。
 ……全く、昔の俺と似ている。
 
 席を砲手に返し、ディケイルは艦長席に戻った。
 それを、クリスが冷ややかな目で見ていた。
「艦長、イザナギの援護はイザナギが行うべきだと思います」
「……分かった。次からは気をつける」
 ディケイルは膝を抱えた。
 
 ――現状、戦況は逆転し、こちら側が優勢になっている。
 敵のあのピカピカした機体は、恐らく「アナログ方式」以上の性能は持っていると思われる。しかし、脳波操縦は組み込まれていないようだ。「ハイブリッド方式」や「エレクト方式」に比べると、明らかに動きが劣る。そのおかげで、かなりの数がイザナギに撃墜されている。
 パイロットの能力というのは、今の時点では関係ないだろう。敵は、どうせ熟練の元空軍の兵士などを連れて来ている。ロボットの操縦技術という面では、こちらが若干有利かもしれないが、戦場での動き方という点では、地球側が圧倒的に優勢だ。
 
 しかし、ロボットの性能に助けられたエトウら特別機動部隊の面々は、現在、エクスシアを取り囲んでいる。エクスシアはそれに押される形で、撤退を続ける。
 このまま押し切れるか……。
 
 しかし、テオドアはそうはさせてくれないようだった。
 しばらくすると、猛烈な反撃が始まった。
 撤退を続けている事には変わりないが、陣形を徐々に立て直し、他の艦でエクスシアを取り囲み、援護するような形を取った。
 これで、かなりやりにくくなったのだろう。エトウたちは徐々にエクスシアの艦体を離れ、前方へと退いた。
 
 ――だが、1機だけ、エクスシアの後背に取り付いて、離れようとしない。
 ………11号機。マタルの乗る機体だ。
 何やってるんだ?先程から、エトウの指示も聞かず、勝手な行動をしているようだ。
 ……何となく、ディケイルの胸にイヤな予感が燻り始めていた。
 
 しかし、今は、1機の動向に気を回している時ではない。いかにテオドアを墜とすか……。
 満身創痍となりながらも、なおその威容を示しているエクスシアを眺めるディケイルの目に、微かだが、だが確実に起こっている変化が見て取れた。
 ……先程から、弾幕の張り方がおかしい。
 イザナミたちは前方に集まっているはずなのに、なぜか、前方の砲撃がイヤに薄い。――いや、皆無といっていいかもしれない。だから、エトウたちは、まるで導かれるようにエクスシアに近付き、艦橋あたりを中心に破壊を行っている。
 ……なぜだ?テオドアは何をしようとしている?
 
 「――通信士、妨害電波の状況は?」
「先程から変わりありません。……けれど、何か妙なんです。波形に不自然な乱れがあります」
 ……という事は……!!
 
 ディケイルは叫んだ。
「全艦、前進停止!全速でもってこの宙域を離脱せよ。イザナギも、全速退避!!」
 その声に、驚いたようにクリスが振り返った。
「何が起きたんですか?」
「可燃性ガスがバラ撒かれた可能性が高い。火を点けられたら最後だ!至急退がれ!!」


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