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 ディケイルの珍しく動揺した叫び声が聞こえて、レイたちは動きを止めた。
「司令官の命令だ。全速退避!!」
 レイは命令通り、ブースターに点火しようとした。すると、再びディケイルの声が飛んだ。
「イザナギ、後退はするな。左右に散れ。火器の使用は厳禁!!」
 ――恐らく、砲撃の方向から見て、前方、つまり、進行方向とは逆側に、可燃性ガスを撒きながら、エクスシアは後退しているのだろう。だから、左右、もしくは進行方向に逃げれば、難を逃れられる。
 
 しかし、そちらに逃げようとすると、すさまじい砲撃がレイたちを襲った。――とにかく、射程距離から離脱するんだ。早く――!!
 レイは交差する光の刃をかい潜って、何とか前に進もうと必死だった。
 
 その時、通信からエトウの声が聞こえた。
「どうした?16号機?退避せよとの命令だぞ?」
 見ると、確かに、1機だけ、エクスシアの前から離れようとしない機体が居る。すると、モニターの端に見覚えのある顔が映し出された。――ボビーだ。
 ボビーは「アナログ方式」チームだったから、指令系統としてはあまり関わりがなかった。だが、頑張っているようだ。……いや、何か様子がおかしい。どうしたんだ?
 
 ボビーは震える声で言った。
「――俺、もう無理です」
 褐色の肌が、涙で濡れている。唇はわなわなと波打ち、奥歯がガチガチと鳴る音まで聞こえて来た。
「こ、怖くて、動けません」
「何を言ってる!?そこから離れなければ死ぬぞ!!」
「死んでもいい!――も、もう、無理なんです!!」
 ボビーはガタガタと震える手で、何かを握っていた。――恐らく、父親の形見の魔除け人形だ。
「頑張ってみたつもりだけど、やっぱ、俺、駄目だ。人も殺せねぇし、俺を殺そうと誰かが来ても、身体が震えて、これっぽっちも動けねぇ。――も、もう、こんなの、イヤだ……」
「ボビー!諦めちゃダメだ!生きる意思を失ったら、本当に生きていられなくなるぞ!」
 レイは通信に向かって叫んでいた。
 
 ――高速艇との戦闘の時、レイは、何度も「生」を諦めた。しかし、あの時は、エトウとエドの強い「生きる意思」に助けられた。……だから、今、こうして生きてる。
 だから、諦めたら、絶対にダメなんだ!――もし、ボビーの心が折れそうになっていても、あの時みたいに、誰かが少しだけ「勇気」を分けてあげられたら、今のボビーだって救えるはずだ!
 レイは言った。
「隊長!ボビーを救助に行く許可をください!」
 しかし、エトウはキッパリと言った。
「駄目だ!既にガスは広がっている。戻れば、おまえも死ぬぞ!!」
「でも……!!」
 
 レイの身体は勝手に動いていた。
 目に見えぬガス帯を避けるように、激しい弾幕の中へ飛び込んでいた。
「――レイ!無茶するな!!」
「マグアドル軍曹!!戻れ!!」
 ブライアンとケビンの声も聞こえた。――けれども、レイの目は後ろを見ていなかった。ただ、前だけ、エクスシアの傍らに漂う、ボビーの乗るイザナギの機影だけを映していた。
「……こ、来ないで……。もういいんだ。俺は……」
 消え入りそうなボビーの声が聞こえた。
「ダメだ!生きて、生きてみんなでガニメデに戻るんだ!!――父さんが、見守ってくれてるんじゃないのか?」
 ボビーの気力を振り起こそうと使った「父さん」という言葉だったが、ボビーは弱々しく微笑んだだけだった。
「――実は、父さんも、人を、殺せない人だったんだ……」
「…………」
「けれども、家族が村八分になっちゃいけないって、無理して戦争に行ったんだ。――でも、戦えないで死んだ」
「ボビー……」
「でも、俺、そんな父さんが大好きだった。みんなには、『弱虫』だって、散々言われてたけれど……。……弱虫だっていいじゃないか。人を殺すくらいなら、俺、自分で死んだほうがマシだ」
 
 ―――その言葉は、レイの心臓に楔を打ち込んだ。
 
 レイは、その場から動けなくなった。
 いつしか、砲撃が止んでいた。――恐ろしいほどの静寂の中に、レイはポツンと浮かんでいた。
 
 ……僕は、何を望んで、ここに居るんだろう?
 何のために、人を殺して……
 何のために、僕は……
 僕は……
 
 「レイ!逃げろ!!」
 ディケイルの鋭い声が飛んだ。
「戻れ!!早く!!」
 エトウの叫び声も響いていた。
 通信の中に、多くの声が満ちた。
 
 けれども、そのどれもが、レイの耳には届いていなかった。
 ぼんやりと前を見つめる目には、宙を横切って光が走るのを捉えていた。その細い光の筋は、虚空に向かい伸び……
 
 やがて、大爆発を起こした。
 
 「レイ!!!」
 悲鳴に似たその叫びは、轟音にかき消された。視界一杯が閃光に満たされ、すさまじい衝撃波がレイのイザナギを吹き飛ばした。
 
 
 
 エクスシアが砲撃を止め、砲台を収納しだしたのを見て、ディケイルは察した。
 ―――来る!
 自艦へのダメージを考慮して、爆発の衝撃に備えているのだろう。
 ディケイルは叫んだ。
「レイ!逃げろ!!」
 ――しかし、それがレイの心に届いていない事を、ディケイルは察していた。
 ………頭を殴られるような頭痛。先程からひどい。――レイの脳波が、強烈な痛みを伴って、ディケイルに戦慄に似た慙愧の念を伝えているのだ。
 ディケイルは耐えられなくなり、艦長席へ突っ伏した。――いや、頭痛に、というより、現実を見届ける事が耐え難いのかもしれない。
 ディケイルは呻くように声を上げた。
「耐衝撃姿勢!」
 
 ――次の瞬間。
 一筋の光線がエクスシアから放たれた。その直後、イザナミのモニターが白一色に染まった。それとほぼ同時に、艦橋全体が浮き上がるように揺れた。
「レイ!!!」
 その声は、ほとんど悲鳴になっていた。しかし、誰にも聞かれる事は無かっただろう。衝撃波が音となって、艦内の空気を揺らした。
 シートベルトをしていた人は、何とか座席に残っていたが、いつもの調子で座っていたディケイルは、座席から投げ出され、肩から床に叩き付けられた。――といっても、低重力磁場の軽微な重力のため、さほどのダメージは受けていない。すぐに起き上がり、モニターに目を向けた。
 
 光は消え去り、戦闘の残骸が飛散していたはずの宙域には、何も無くなっていた。全てが一瞬で焼き尽くされ、ただの虚空に戻っている。
「――5号機、7号機、10号機、16号機、18号機、反応が消滅!!」
 通信士が震える声を上げた。
「14号機は!?」
 ……自己中心的な質問である事は理解している。しかし、聞かずにいられなかった。
「じゅ、14号機は正常に機能しています。――しかし、パイロットの様子が……」
「どうした?」
「脳波レベルが異常です。本官は詳しい事は分かりませんが、……800という数値は明らかに異常かと。それに、適合率が急激に下がっています」
「…………」
 
 『適合率』と『脳波レベル』という数値。
 これは、「ドクター」から説明を受けている。「エレクト方式」でイザナギを起動、操縦する際の目安になる数値だ。
 『適合率』は、起動に必要な脳の活動領域を示す値。通常、人間の脳は、本来の容量の50%ほどしか活動していない。しかし、エレクト方式を起動させるには、70%以上の活動領域が必要になってくる。――エレクト方式がトランセンダーにしか起動させられない所以だ。そして、これは心因的な要素にも大きく左右され、精神的に動揺がある時などは、その数値が低くなる。
 そして、『脳波レベル』。これは、その人が発する脳波の強度。通常、人間の生活に必要な脳波レベルを50とし、その時の行動や感情によって変化するものだ。エレクト方式を操縦できる強度は80、これは、通常の人間、「ノーマル」でも、集中力のある人物なら十分に出せる数値だ。――ハイブリッド方式をディケイルやレイ以外の人間が操縦できるのは、このためだ。
 
 ――その、脳波レベルが800というのは……。明らかに、レイの身に何かが起きている。先程からの頭痛で、それはディケイルも察していたが……。
 
 「――14号機、応答しろ!14号機!!」
 通信を通して、エトウがレイに呼び掛けている声が聞こえた。しかし、レイからの返答は無かった。
 だが、しばらくして、
「イヤああああああああっっ!!!」
 レイの絶叫が、通信から突き抜けるように艦橋に響いた。――ディケイルには分かった。……発作だ!!
 
 ディケイルにも、この会戦で命を落とした者の無念の思いは伝わっていた。――だが、その能力が数段に高いレイは、もっと生々しく感じ取っているに違いない。
 しかし、戦闘中は、そちらに向ける集中力で、何とかその影響を受けずに済んでいた。
 ……ところが、先程の16号機のパイロットとの会話で、我に返ったレイは、まともにその「意識」を受け取ってしまった。
 ――いや、爆発の光から、「第2コロニー駅爆破テロ事件」や、第3コロニーの爆撃の記憶なども、フラッシュバックしたのかもしれない。レイの激しい苦悶が絶叫と共にディケイルに届き、心臓が締め付けられるような感覚に襲われた。……まずい!
 
 しかし、その感覚を受けているのはディケイルだけではないようだった。程度に差はあれ、艦橋に居る幾人かも、頭を抱えたり胸を押さえたりしだした。
「――な、何だ?これは??」
 クリスも頭を押さえながら、顔を歪めている。その横で、キョトンとして周囲を見回していたテッドが、アラーム音に反応して手元のモニターに顔を向けた。
「……14号機のパイロット、呼吸停止!!脳波レベルも急激に下がっています!!」
 ディケイルは跳ね起きて、通信を開いた。
「イザナギ全機、撤収。――14号機の回収を頼む。至急!!」
 
 ――やはり、レイを戦場に出すのは間違っていた。あのように敏感な感性の持ち主が、殺戮の現場に来れば、このような事態が起きる事は分かっていただろう?それなのに、どうして連れて来た!!
 ディケイルは自責の念に駆られ、頭を抱えた。
 
 しかし、状況は感傷に浸る事すら許さなかった。
「敵艦隊、方向を変え、完全に退却する模様です。どうしますか?」
 未だに頭を押さえながら、クリスが振り返った。
 ――爆発の混乱に乗じて、逃走を図る気だ。さすがテオドア、うまく切り抜けた!
 しかし、こちらとしても、逃がすわけにはいかない。
「追撃する。全艦、全速前進!!」


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