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55.  業火
 
 
 ディケイルの目前で起ころうとしている事は、最もあって欲しくない事態だった。
 ――エクスシアを逃がすために、捨て身で時間稼ぎに出て来た3艦。
 ………なぜ、無駄死にを選ぶ?
 しかし、やらない訳にはいかない。ディケイルは声を上げた。
「全艦、前方の宇宙空母を狙え。――撃て!」
 
 地獄の業火にも似た集中砲火の中、戦闘ロボットたちが飛び出してきた。……それらが活動を始める前に焼き尽くすため、最初に空母を狙ったのだ。
 人間に似た形をした命の器は、すさまじい高温の光の中で、次々に蒸発していった。
 ……こんな事ができる俺は、悪魔でなければ何なんだろうな。
 ディケイルは目を閉じた。
 
 先程、医務室から連絡が入り、レイは一命を取り留めたと知らされた。
 怪我はしているものの、対応が早かったため、過呼吸による呼吸困難の影響もなさそうだった。
 ――こうして、罪の無い命をいくつも奪っている半面で、自分にとって都合の良いひとつの命の無事を喜んでいる。……人間とは、恐ろしくおぞましい生き物だ。
 
 「――敵宇宙空母、撃墜」
 砲手の淡々とした声が、ディケイルの意識を現実に引き戻した。モニターの中で、帰る場所を失ったロボットたちが、狂ったようにこちらに向かってくるのが見えた。
「全機、撃ち落とせ」
 白銀の機影は、容赦無く繰り出される光の刃に飲み込まれ、あっという間にその姿を消した。
「――次はどちらにしますか?」
 砲手が振り返った。その顔があまりにも無表情で、ディケイルはゾッとした。まるで、レストランのオーダーのように、「死」を与える選択を迫る。――いや、それは俺自身の顔を映しているのだろう。
 ディケイルは答えた。
「ミサイル艦、駆逐艦の順に撃ち落とせ。その後、全速でエクスシアを追う」
 レーダーを見ると、この間に、エクスシアはスピードを上げてこの宙域を離脱している。――追いつけないかもしれない。……しかし、あの状態では、月へ帰還する事は難しいだろう。きっと、火星に救援を求める。もし、それならば……。
 ――いや、こんな事を、フォンシェにやらせるべきじゃない。俺が、この手で……。
 
 
 
 「宇宙空母、撃沈!」
「ミサイル艦、駆逐艦共に大破!」
 エクスシアのサブブリッジに、悲痛な叫びが響いた。テオドアは目を閉じた。
「――栄誉ある死に、敬礼」
 サブブリッジが、沈痛な空気に包まれた。
 
 ……しかし、そのおかげで、何とか逃げ切る事ができそうだ。火星の領宙域に入ってしまえば、こちらのものだ。火星の領宙域で戦闘行為を行う事は、ディケイルは避けるだろう。そんなことをしては、地球と火星の関係に溝を深めようとしている今の状況を、振り出しに戻す事になりかねない。
 ――火星には、正式な戦力は無い。逃げ込んでしまえば、何とかなる。
 
 テオドアは通信のボタンを押した。
 しばらくして、赤毛にグリーンの瞳の男がモニターに現れた。
「――久し振りだな、フォンシェ」
「これは、私的な通信なのか?それとも、仕事上のものか?
 私的なものであるのなら、後にしてもらえないか。私は今仕事中だ」
 フォンシェ・アレハンドロはシレッとテオドアの呼び掛けを受け流した。
「……悪い。これは仕事上のものだ。私は、宇宙艦隊司令官としてマーズ開発に要望する。火星への上陸許可をもらいたい。そして、補給をお願いしたい」
「そういう用件でしたら、お断り申し上げます。
 ご存知かと思いますが、火星は、地球及びガニメデ間の紛争には中立の立場で……」
 ――途端にビジネス用の態度に変えてきた。フォンシェがこういうヤツだという事は分かってはいたが、その態度は無性にテオドアを苛立たせた。
「そんな建前はどうだっていい!」
 テオドアは声を荒げた。
「そんな態度を続けていると、どうなるか、分かっているのか?」
「おっしゃる意味が、私には理解でき……」
「地球が反乱分子と見なしているのは、ガニメデだけだと思うな。火星も同じだと、わきまえておくんだな。――頭上からミサイルが降ってきたら、おまえに対応ができるのか?」
 しかし、フォンシェはハハハと軽く笑った。
「冗談を言われては困ります。それができないのは、あなたがたの方でしょう?
 ガニメデと紛争中である以上、ガニメデから直接、G-883を輸入できない。だから、その仲介役を、我々マーズ開発がして差し上げているのではありませんか。それをお断りしたら、――いろいろ、お困りになるのは、そちらではありませんかね?」
 フォンシェの瞳が、挑発的にテオドアを見た。
「あまり、アイヒベルガーCEOのご判断でない事を、勝手にされない方がいいと思いますよ?それだけは、ご忠告申し上げておきます」
「貴様……!!」
 通信は切れた。
 
 テオドアの頭の中は真っ白になった。
 ただ、煮えくりかえるような怒りをどこへ向ければいいかだけを考えていた。
 そして、たまたま目に入った精神安定剤の薬瓶を掴み、それを床に叩きつけた。
 ガラスの割れる大きな音に、周囲の人々がギョッとして振り向くが、そんな様子に目を向ける余裕すら無かった。
 
 ――「死」は、決定した。
 これまで、散々人を蹴落とし、陥れ、築き上げてきた今のテオドアも、これで終わる。
 あとは、月に帰ってミカエルからの死刑宣告を待つだけ……。
 
 ――いや、待て。そうならない方法だってあるのではないか?
 テオドアはサブモニターに目を向けた。背後から迫るドミニオンの艦影が見える。
 ……ここで、ドミニオンともうひと勝負して、全員で散るというのも手だ。――バカ言え。自分が死ぬのに、これ以上犠牲を積み重ねる必要があるのか?
 それよりも……。
 
 テオドアの目は、正面に見える画像に固定された。――そこには、前方に小さく浮かぶ火星の姿が映し出されていた。
 ……勝負を挑む先を、火星にするというのはどうだ?
 大きく削られたとはいえ、裸も同然の火星にこれだけの戦力を向ければ、ひとたまりもないだろう。火星を掌握し、戦力を立て直した後、再びガニメデに挑む。
 ――そうすれば、ミカエルの望む、完全な太陽系世界の統一が完成するのではないか?
 いや、そんな事はこの際どうだっていい。今、テオドアが生き残るには、それしか方法が無い。これまでの犠牲のためにも、今生きている乗員たちのためにも、それしか……。
 
 テオドアは通信士に告げた。
「各艦に連絡してくれ。――これより、火星を攻撃対象とする。全艦、火星に向かう」
 
 
 
 「――敵艦隊、火星の領宙域に入りました」
 クリスが告げた。
 それを聞いたディケイルは、
「了解した。――全艦、停止しろ」
と言って、艦長席でガックリとうな垂れた。
 ――その様子が、テッドには奇妙に見えた。
 ……敵が逃げてくれたんなら、それで良かったんじゃないか?これで戦争は終わったわけだし、むしろ、ここまで追いかけて来る必要すら無かったんじゃないだろうか?
 確かに、あの女記者が言う通り、ディケイルは少し変だ。何かに固執しているというか……。
 
 「――終わりましたね」
 戦闘の間じゅう、壁にもたれて様子を見ていたスージーが声を上げた。――途中、衝撃を受けたりいろいろあったから、ずっと立っている訳にはいかなかったようだが。
「これで帰還するんでしょ?」
 スージーが聞くと、ディケイルは首を横に振った。
「いや、まだだ。――火星がどう出るか、それだけは確認したい」
「そうですか」
「帰りたければ、帰ればいい。救難ボートは貸す。損傷のひどいアマテラスを先に帰らせるから、それに……」
「いや、最後まで見届けます。――まだ何か、あると思ってるんですよね?」
 ディケイルはそれには答えず、目を閉じて、膝に顔を埋めていた。
 
 その時、格納庫のエトウから通信が入った。
「――司令官は居るか?……11号機が未だにエクスシアを追っているようだ。私が言っても聞く耳を持たない。司令官から帰還命令を出してもらいたい」
 ……手元のモニターを見ると、「整備中」もしくは「消失」という文字が並んでいる中、11号機だけに、現在も活動を続けている表示がされている。レーダーを見ると、エクスシアの背後を、火星に向かって移動中のようだ。
 テッドはディケイルにその旨を伝え、11号機との通信を開いた。
 
 「――マタル、何やってる?そこは既に火星の領宙内だ。戦闘行為は許可できない。至急、帰還しろ」
 ディケイルが疲れ切った声を絞り出すように言った。しかし、11号機から返ってきたのは舌打ちの音だった。
「……何だって、みんなで寄ってたかって邪魔するんだよ?もうすぐで墜とせるってのにさ!」
 テッドの背中を冷たい汗が流れた。――何を考えてるんだ?こいつ……!?
 案の定、ディケイルの目が厳しいものに変化した。
「マタル、言ったはずだ。命令を聞かない者は射殺する。年齢や立場など関係ない。至急、帰還しろ」
「イヤだね。わざわざ殺されに帰るバカが居ると思う?――まぁ、元帥は、そんな事言っておきながら、俺を撃てないだろうけどね」
「マタル、おまえ……」
「それに、分かってるんだ。そんな事言いながら、みんな、俺の活躍を妬んでるんだ。俺、レイよりもずっと活躍しただろ?だから……」
「マタル、黙れ!!」
 ディケイルの声が、低く、鋭いものに変わった。一気に、艦橋内の空気が冷え込み、寒気がテッドの背中を覆った。
「おまえの行動に、どれだけ他の人たちが振り回されたか、分かるか?これはゲームじゃない、命懸けの戦争だ。自分の立場をわきまえろ!」
「そんな偉そうな事言っちゃってさ、一番自分勝手なのは元帥だろ?他の人が死ぬのは見捨てておいてさ、レイだけは助けようと、必死になっちゃって。見てて見苦しいよ?」
 ディケイルは立ち上がった。怒りのためか羞恥心のためか、肩が細かく震えている。
「殺すんなら殺せばいいさ。――何なら、戻ってあげるよ?……ほら」
 
 イザナミのモニターに、こちらに向かって飛んでくるイザナギの姿が映し出された。そして、はっきりと目視できる位置まで来ると、動きを止めた。
 その右腕は、引きちぎられたように無くなっていた。そして、左腕には……
 
 ライフル砲が構えられ、その銃口は、真っ直ぐにこちらへ向けられていた。


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