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56.  落日
 
 
 エクスシアは、アマゾネス総合空港に降り立った。
 ――結局、ここまでたどり着く事ができたのは、エクスシアとアークエンジェルの戦艦2隻、それから護衛艦と哨戒艦各1隻のみだった。
 そのどれもが傷付き、痛々しい様相を呈していた。
 
 上陸する前、再び、フォンシェに通信を求めたが、今度は通信にすら応じなかった。そのため、管制塔へ緊急着陸を求めた。しかし、
「許可できません」
との返答だったため……
 
 空港へ、何発かミサイルを落とした。
 停泊中だった貨物船を何隻か潰し、その上に着陸するという、非人道的行為を行ったが、そうでもしなければ、火星の重力下、損傷を受けたエンジンでは体勢を保つ事ができず、間違いなく墜落していた。被害を最小限に留めるには、ああするしかなかった。
 
 テオドアはモニターで、周囲の状況を確認した。
 ……すると、四方八方から、次々と武装した兵士たちが現れ、瞬く間に取り囲まれた。――よく見ると、可動式の砲台や、装甲車まである。
 ――こんなハズは……。火星には、武力など無かったはずではないか!?
 
 完全に包囲された後、空港から通信が要求された。
 モニターに現れたのは、マグワイヤ・マーズ開発社長だった。
「テオドア・カゼリ。あなたの行った行為について、そちらのアイヒベルガーCEOに尋ねた。
 ……そうしたら、認知していないとの返答が返って来たのでね。
 そちらの会社では、社の方針に反する行為を行った者がどういう処分を受けるか。あなたほどの方なら、ご存知のはずだ。
 『解雇通知』が、間もなく、あなたの元に届くだろう」
 テオドアは、マグワイヤの丸っこい顔から目を外せなくなった。
「そうなったら、その艦に居座る権利も、あなたには無くなる。――『失業者』になる前に投降した方が、身のためだと思うがね」
 
 テオドアの脳内に、『失業者』という言葉がこだました。
 ……失業者。アース・コーポレーションの支配下に於いては、ゴミくず以下の存在。――いや、その存在すら許されない存在。
 そうなってしまったら、問答無用で殺される。その前に艦を出ろ、と……。
 
 テオドアは、ゆっくりと背後に目を向けた。
 ――そこには、たった今まで、部下として、共に死地を切り抜けてきた人々が居た。――彼らは、ミカエルから『失業者』の排除を命じられたら、どう動くだろうか?……テオドアを殺し、アース・コーポレーションへの忠誠を見せる。それが最も賢い行動だ。――テオドアなら、間違いなくそうする。
 
 テオドアは目を閉じた。
 身体が勝手に震える。空調を最小限に抑えてはいるが、寒いわけではない。――怒り、悔しさ、後悔、自分の不甲斐なさ、そんな感情が一気に押し寄せて、どうしようもなくなった。
 
 ―――ハメられた!!
 
 テオドアは、スカルから逃げる艦内で、なぜこのような状況に陥ったのか、ずっと考えていた。そして、今、マグワイヤの言葉を聞いて、はっきりと分かった。
 
 元々、ミカエルは、さほどテオドアに期待などしていなかった。だから、一度の失敗だけで殺されそうになった。しかし、そこから生き残ってしまったから、仕方なくチャンスを与えた。――それは同時に、テオドアの実力を試すものだった。生き残ればそれでよし、生き残れなければ、それまでだ。……要するに、捨て駒以外の、何物でも無かった。ミカエルにとっては、この戦力さえも、失ってもさほど影響のない程度のものなのだ。――切り札は、まだまだ持っているのだから。
 それから、ビアンキ。ビアンキとブルーノが繋がりを持ち、ミカエルを陥れようとしている事を、もっと早くに察知し、対応しなければならなかった。ただ、証拠が見つからないというだけで、野放しにしたのが間違いだった。ビアンキは、ミカエルの戦力を削ぐため、テオドアを負けさせるように仕組んだ。
 その目的は、ミカエルを陥れるための計画を進めるため。テオドアは、その巻き添えを食ったに過ぎない。
 ――恐らく、スカルの存在は、ビアンキにとってはたまたまだろう。スカルが本当に繋がっているのは、ディケイル、そして、――フォンシェ。
 フォンシェとディケイルの繋がりは、ミカエルから聞いていた。しかし、面と向かってアース・コーポレーション側に刃向かって来る事は無いだろうと、タカを括っていた。
 ――しかし、この会戦自体が、ディケイルとフォンシェの共作だとしたら……。
 
 フォンシェは、ディケイルの実力ではテオドアを倒せないと分かっていた。しかし、窮地に陥れ、火星に追いやるくらいはできると踏んでいた。――いや、そのための策も、フォンシェが与えていたかもしれない。
 そして、ボロボロになったところを、スカルに襲わせる。――火星領域内であのようにハデな事ができるという事は、火星も承知しているとしか考えられない。
 スカルの戦闘に関する能力は、施設に居た当時から、ディケイルやテオドアよりもずっと優れていた。その上、海賊として、ずっと現役で戦闘をしてきている。――あの宇宙船1隻で艦隊をこれほどまでにズタズタにする事など、スカル――ニールでなければ不可能だったに違いない。
 
 ――そうして、削れるところまで戦力を削り、被害を最小限に食いとどめた上で、テオドアに、火星を襲わせる。
 こうする事で、火星の地球に対する反感を煽り、よりガニメデ側につく事を促す。……そして、今後、戦力を持っている事を公にして、地球へ圧力を掛ける気だろう。
 ――いや、正式に地球の支配下から、離脱する気かもしれない。
 
 ここまで、全てがフォンシェの思惑通りに流れた。
 あとは、私という存在を、排除するだけ。
 
 ……テオドアの震えは、いつしか、笑いによるものに代わっていた。
 私は、4人のトランセンダーと、1人のトランセンダーのなり損ないによる、奇遇ではあるが必然的に出来上がった共同戦線相手に、たったひとりで戦っていたのか。――勝てるワケがない。
 
 しかし、このまま「負け犬」という汚名を受け入れて、むざむざ死ぬつもりもない。――せめて、あのいけ好かない男の本性を暴いてやる!
 
 テオドアは、エクスシアを出た。
 
 
 
 空港のVIPルームから、フォンシェはエクスシアの姿を眺めていた。
 ここは、一面の窓ガラスが防弾仕様になっており、しかも核シェルター級の耐久度を誇る構造となっている。戦艦からの攻撃の流れ弾が当たり、ガラスに多少の傷は付いているものの、室内はいつもと変わらず、落ち着き払った雰囲気を保っていた。
 ――それにしても、無数の穴が穿たれ、装甲にはいくつも亀裂が入り、よくこの状況で無事に着陸などできたものだ。火星だからまだ良かったものの、地球の高気圧の中へ突っ込んでいたら、きっと、空中分解していたに違いない。
 傍らでは、マグワイヤも渋い顔でその情景を見ていた。
「――貨物船3隻に、滑走路の舗装、そして空港ビルの修理費。……被害はいくらくらいになるだろうな」
「30億CPもあれば足りるでしょう。――それより、人的被害が無かった事が何よりの幸いです」
 ……いや、人的被害など出ない事は、初めから分かっていた。こうなる事を予見して、いや、計画して、朝から空港は閉鎖していた。潰された貨物船は、ただのカムフラージュに過ぎない。
 
 「――社長、『エクスシア』という名は、どういう意味かご存知ですか?」
 何となく、マグワイヤに話し掛けてみた。
「どうせ、天使の名前か何かだろう。ミカエルCEOは、そういう趣味だと聞いている」
「はい、天使には間違いありません。――エクスシアとは、『能天使』という、天に背いた悪魔を滅ぼすという任務を与えられた天使の総称です。
 ……しかし、能天使は、その役目柄、悪魔と関わり合う機会が多いために、堕天使へと陥りやすいそうです」
「堕天使、か……」
 マグワイヤは呟いた。
「そう考えると、この船が最も似合っているのは、ミカエルCEO自身という気もしてくるな」
 フォンシェは前に顔を戻した。
 
 ――マグワイヤの言う通り、今のミカエルに、正義など無い。しかし、その圧倒的支配力のため、誰もがその事実から目を背けている。
 ……しかし、私が動くには、まだ早い。
 確実な結果が見通せない限り、決して動かない。フォンシェは常にそういう態度を取ってきた。
 だが、今回の件はやり過ぎた。――ディケイルに乗せられたとはいえ、これでは、地球を敵に回すも同然になってしまうではないか。
 ……まぁ、そう見せ掛けるのも、目的のひとつには違いないが。
 
 入口の扉が開き、第2秘書が顔を出した。――事実上、マグワイヤの秘書業務は、この人物が行っている。
「社長。打ち合わせのお時間が近付いております。どうか、本社に戻られますよう……」
「分かった」
 マグワイヤは、「後はよろしく頼んだ」と言って、部屋を出て行った。
 その後ろ姿を恭しく見送りながら、フォンシェは思った。
 ――初めは、ただの傀儡にするつもりだったが、徐々に、本人もその気になってきたようだ。それはそれでいい。……後は、「最後の仕事」のために、今の地位を安泰にしていてくれさえいれば……。
 
 それからしばらくして、再び扉がノックされた。
 次に入って来たのは、武装した兵士たちと、――彼らに取り囲まれ、両手を拘束されたテオドアだった。
 ひどい火傷を負ったと聞いてはいたが、皮膚を全て隠さなければならない程度なのか。顔全体を覆う白い仮面は、かつてミカエルの右腕として働いていた人物の、過去の栄光までもを消し去っているようだった。だが、仮面の隙間から垂れるクセのない髪と、目の部分に開いた孔から光を放つヘーゼルの瞳は、紛れも無くテオドアのものだった。
 
 「……もう、抵抗もしないだろう。拘束を解いてやれ」
 フォンシェの指示に従い、兵士たちはテオドアの腕を解放した。それから、ふたりを残し、部屋を後にした。
 
 「改めて挨拶する。――久し振りだな、テオドア・カゼリ」
 フォンシェが言うと、テオドアは怒りを抑えているのだろう、震える低い声で答えた。
「『失業者』に、何の用だ?」
「失業者?何の話だ?――あぁ、先程マグワイヤ社長がおっしゃっていた件か。
 あれは、ハッタリだ。……いや、おまえの名誉を守るためにご配慮された、社長の機転だ。堕ちるところまで堕ちたら、遺族年金も出ないだろうからな。……おまえにだって、遺族年金を渡したい人のひとりやふたり、居るだろう?」
「貴様―――!!」
 テオドアはフォンシェに歩み寄ろうとするが、1歩足を前に出したところで膝を折った。――テオドア自身も満身創痍なのに違いない。
 
 「おまえの事だ。全て分かっただろう?――もう、アース・コーポレーションは終わりだ」
 フォンシェは後ろで手を組んで、ゆっくりと窓の方へ身体を向けた。
「しかし、おまえが私に協力してくれるとも思ってはいない。――だから、せめて、遺言だけでも預かってやる。何か望みがあれば、何でも言うがいい。私にでき得る限り、叶えてやろう」
「ふざけるな……!!」
 テオドアは床のカーペットに爪を立て、手負いの猛獣のような視線でフォンシェを見上げた。
「貴様の魂胆は分かっている。――それがミカエル様に知られたらどうなる?ディケイルと共謀し、アース・コーポレーションを潰そうと……!
 そんな事をしてどうなる?世界の平和を壊すだけでないか。再び、世界を混乱に陥れ、何を目指そうとしている!?」
「何だ?おまえともあろう者が、それだけしか分かっていないのか」
「――何?」
 テオドアが仮面の下で目を丸くするのが分かった。
「………まさか、貴様、ブルーノとも……!?」
「それだけは否定しておこう。ブルーノのように、アース・コーポレーションを乗っ取ろうというような、陳腐な野望は抱いていない。
 ――私が目指しているのは、絶対に壊されない、恒久的な平和だ」
 フォンシェが見下ろすと、テオドアは仮面の下から、大きく見開いた目で見返していた。
「それには、人々ひとりひとりの心に、『戦争』というものの醜悪さを、実感として周知させなければならない。――今、ミカエルがやってくれているのは、そのための作業だ」
「何だと……!?」
「そうして、戦争の愚かさを浸透させてくれた地盤に、私は新しい世界を築く。――『過去の過ち』という枷があれば、人々はその流れに向かないようなシステムを構築する。
 それこそが、本当の平和だと、私は思っている」
 テオドアは、言葉を失ったように、フォンシェを見返した。
 しばらくそうしていた後、テオドアは呟いた。
 
 「―――その事は、ディケイルも知っているのか?」
「いや、知らないだろう。――もし知っていれば、こんな戦争など起こさず、私を殺しに来るだろう」
 
 その後、テオドアはガックリと俯いた。
 考えている事は分かる。――自分が命懸けで行った行為が、自分の意思とは正反対の意味しか持たなかったとしたら、どれほど落胆することだろうか。
 
 フォンシェは、スーツの内ポケットからあるものを取り出し、テオドアの前へそっと置いた。
 ――それは、小型のハンドガンだった。
 
 「かつての同志としての情けだ。使え」
 テオドアの視線は、黒光りする金属の塊に固定された。
 
 フォンシェは、その顛末を見届けようとはせずに、窓の外へ目を向けた。――指揮官が投降した事で、部下たちも次々と艦から降りてきている。……休息を取らせた後で、旅客船何機かに分乗させて、地球へ送り返そう。彼らには罪は無い。そして、私の影の『協力者』でもあるのだ。
 
 背後でカチッという金属音が聞こえた。――安全装置を外す音。
 フォンシェは、横目で様子を伺った。
 
 ……すると、銃口はピタリと、フォンシェの心臓を狙っていた。
 
 「――バカが。妙な同情心は、自分の首を絞めるだけという事も分からないで、あんな偉そうな事をホザいてたのか?」
 テオドアは、殺気立った目でハンドガンを構えていた。
「おまえの計画は、これで終わりだ。あの世で後悔するがいい!」
 
 テオドアは引き金を引いた。
 
 ………銃声の後、だが、床に倒れたのはテオドアだった。
 仮面の額に当たる部分に穴が穿たれ、そこから細く血が流れ出していた。
 
 銃声を聞きつけた兵士が、すぐさま部屋に入って来た。
「――ご無事ですか!?」
 兵士のひとりに問い掛けられ、フォンシェは両手を上げて見せた。
「私はこの通り無事だ。
 ――どうやら、自殺用に渡してやったハンドガンが、不良品だったらしい。引き金を引いた本人を撃つ不具合とは……。これは、製造元のアース・コーポレーションに苦情の電話を入れておかなくてはな」
 フォンシェは、後を兵士たちに任せ、部屋を出た。
 
 ――もちろん、あの銃はフォンシェが細工した。
 本当に自殺しようと自分に銃口を向けていたら、フォンシェが危なかっただろう。しかし、テオドアがそうはしない事も、フォンシェは見通していた。
 ……自業自得だ。同情を懸ける余地も無い。
 
 フォンシェは腕時計を確認し、足を早めた。――もうすぐ、定例会の時間だ。ビジネスマンとして、遅刻だけはタブーだ。


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