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 2211年8月10日。
 イザナミ、アマテラス他、ガニメデ宇宙空軍の艦艇は、ガニメデ要塞へと到着した。
 いずれの艦も、かなり損傷が激しく、火星の動向を見ながら、修理を行っていたから、帰還が予定よりも大幅に遅れてしまった。
 白い大地は、夕日に照らされ、薄赤く染まっている。地平線に沈もうとしている夕陽が、アマテラスから降りようと足を踏み出したソウの目に飛び込んで、光に慣れていない網膜を刺激する。
 ソウはゆっくりと階段を下り、凍て付いた氷の感触を踏みしめ、ようやく、生きているという実感を認識した。
 
 ……今回の会戦は、いろいろあり過ぎた。慣れない宇宙空間での長期間に渡る行動による疲労よりも、精神的な困憊のほうが先に立っていた。
 それでも、副司令官としての立場が、何とかソウの身体を動かしていた。
 
 滑走路の脇に、カメラの列が並んでいる。――しかし、報道陣に対するコメントは、一切厳禁とした。さすがに、言える話じゃない。
 だが、報道陣はそれだけじゃない。……現に、イザナミに乗り、その現場に居合わせた人物が居る。
 念を押すため、ソウはスージーとカムイの姿を探し、イザナミに乗り込んだ。
 多くの人が行き来する間を縫うように進み、ようやく、食堂で呆然としているふたりの姿を見つけた。
「スージー、カムイ。話がある」
「分かってますよ。――あの事でしょ?」
 スージーも疲れ切った顔で、テーブルに体を預けるようにしてソウを見た。
「あの件の後、気が立った元帥に、カメラを壊されたんです。――これで、どう記事にしろっていうんです?」
「…………」
 見ると、カムイの首には、いつものカメラが無い。市販の小型カメラがぶら下がっているだけだった。
「他にもいろいろ使えそうな写真はあったのに。同行した約4週間が水の泡ですよ」
 ……まぁ、気の毒には思うが、こればかりは、ソウも引き下がれない。誰にも言わないように念押しをして、食堂を出た。
 
 すると、エトウ・パルネラと出くわした。エトウはソウの顔を見ると、沈痛な表情を見せ、言った。
「マタルの件は、その……」
「分かってる。俺だって、あの件を納得できるくらいの公私の分別はついている。気にするな」
「私の、力不足です」
「そんな事はない。あれ以上、どうしろと言うんだ?」
 そして、エトウの顔を見ていて、ふと気になった。
「そういえば、レイも怪我をしたとか……。大丈夫なのか?」
「はい。さほど大きな怪我ではなく、医務室で休ませていたのですが……」
 エトウは、思い出したようにキョロキョロしだした。
「先程、迎えに行ってみると、姿が見えなくなっていたのです。参謀長は、どこに行ったのか、ご存知ではありませんか?」
「さぁ………」
 そう言われても、今イザナミに来たばかりだ。ソウが知るはずもない。
 ソウの返事を聞いて、エトウは礼をすると、人混みの中へと去って行った。
 
 ソウも、出口へ向かおうとして、――ふと思いついて足を止めた。
 ディケイルのヤツは、大丈夫なんだろうか?
 そして、思い当った。―――もしかして!!
 
 艦長室に駆け込むと、ソウの予想通りの光景が繰り広げられていた。
 
 レイが、ソファーの上でうずくまるディケイルの頭に、ハンドガンを向けていた。
「――おい!」
 レイの頭と腕には、包帯が巻かれていた。ソウも見ていたが、あの状況でこれほどの怪我で済んだのが奇跡的なくらいだ。
 その、包帯が巻かれた右腕を、真っ直ぐにディケイルに向けている。
「……参謀長は、何も言わないでください。これは、僕たちの問題です」
 レイはそう言いながら、ソウに顔を向けた。――その顔が、怒りに燃えていたり悲しみに暮れていたりすれば、まだいい。……能面のような無表情。それが、ソウをゾッとさせた。
 
 レイは、前に顔を戻した。
「――あなたなら、マタルを助けられたでしょう?あなたは、遠距離から敵機の剣を狙い撃ちできるくらいの腕を持っている。それならば、腕を狙って武器を奪うなり、足を撃ち落として行動を取れなくするなりできたはずです。
 それなのに、敢えて胸を狙い撃った。……どうしてですか?どうして、マタルは殺されなければならなかったんですか?」
 ディケイルは、膝を抱え、顔を伏せたまま、何も言わない。
「それに、僕を助けるように命令は出したのに、ボビーは見捨てた。どうして?僕とボビーの何が違うんですか?」
 レイの構えた銃口は、微動だにしない。その前で、ディケイルはただうな垂れていた。
 
 「――僕には分かります。
 あなたは、僕を特別な存在だと思ってる。自分の都合よく動く、自分にとって有益な存在だと考えている。
 しかし、ボビーは同じパイロットでも、数居るアナログ方式のひとりに過ぎない。替えが効く。だから見捨てた。そしてマタルは、今の僕を悩ませている有害な存在だと判断した。だから、殺した。
 ……それがエゴでないとしたら、何なんですか?説明してください」
 しかし、ディケイルは何も言わない。レイの言葉を、ただひたすら受け入れているように見えた。
 レイは続けた。
「そもそも、なぜ僕が士官学校を目指し、特別機動部隊を選んだのか。
 ――それ自体も、あなたが誘導していたのではありませんか?
 さり気なく、家に士官学校の募集要項を置いておいたり、特別機動部隊やイザナギに関する資料を、わざと目に付く場所に忘れて行ったり。
 僕を、何としてもエレクト方式のパイロットに仕立てたかった。違いますか?」
 
 そこで、ようやくディケイルは声を出した。俯いたまま、くぐもったような小声だったが、ソウにも何とか聞き取れた。
「――殺したければ殺せ。おまえには、その資格がある」
「な、何を……!」
 ソウは驚いて声を上げた。そして、レイに目をやった。
 しかし、レイは動こうとはしなかった。
「あなたを殺しはしません。それでは、あなたの本当の贖罪にはならない。
 ――僕が死ぬ。それでこそ、あなたは、本当に後悔する」
 そして、腕をゆっくりと動かし、銃口を自分の頭に当てた。
「馬鹿な!レイ!やめろ!!」
「僕は、もう嫌です。あなたの操り人形で居る事が。……もう、嫌なんです。何もかも……」
 レイの指に、力が入るのが分かった。――本気だ!!
 
 ソウはとっさに飛び出していた。
 レイの腕を掴み、ねじるようにして押さえつける。しかし、レイも抵抗を見せた。銃を奪われまいと、腕を伸ばしてソウから逃れようとする。
 だが、大人と子供だ。圧倒的な体格差がある。それに、レイは怪我をしていて本調子ではない。すぐに床に押さえ込まれた。
「ああああああああっっ!!」
 レイは身体の底から絞り出すような声を上げた。そして、最後の抵抗の証として、引き金を引いた。
 銃弾は、壁に穴を穿っただけだった。
 
 ソウは、ガクンと力を抜いたレイの手から、ハンドガンを取り上げた。そして、細かく震えるレイの肩を抱き締めた。
「――マタルを失って、その上、レイまで失ったら、俺は、どうすればいいんだ!?」
 ソウの目から、涙が溢れた。小さな身体を抱き寄せ、その柔らかい髪をそっと撫でた。
 レイも泣いているのが分かった。ソウの腕に顔を押し付けるようにして、嗚咽を漏らしていた。
 
 騒ぎを聞きつけて、エトウとエドがやって来た。
 打ちのめされぐったりとするレイをふたりに預け、部屋から出て行くのを見送った後、ソウは立ち上がった。――しばらく、涙が止まらなさそうだ。
 自分でも分かっていた。ずっと、泣きたかった。だが、艦長として、副司令官としての自覚が、それを許さなかった。
 ……どうしてこんな事になった?そう泣き喚きたいのは、ソウも同じだった。
 
 無理矢理涙を収め、ソウはディケイルに目を向けた。
 相変わらず顔を伏せたまま、微動だにしない。その姿に向けて、ソウは言った。
「行くぞ。司令官がそんな風でどうする?」
 しかし、ディケイルの返答は、力のない呟きだった。
「ソウ。その銃で俺を殺してくれないか?――もう、俺、無理だ……」
「馬鹿言え!!」
 ソウは感情に任せるままに、ディケイルの肩を揺すった。
「もう逃げないと言ったのは誰だ!?逃げ場など、もうどこにもないんだよ!
 立て!立てよ!!自分の役割を果たせよ!!」
 ディケイルの頭が揺れ、肩の上を転がるように、力なく上を見上げた。
 
 ソウに向けられたグレーの目は、乾ききっていた。光もなく、力もなく、意思もなく……。
 ただ、ガラス玉のように、ソウの顔を映していた。
 
 その目を見て、ソウは気付いた。
 ――泣く事さえ許されずに、ただひとり、罪の意識と戦っていたのか。
 
 ソウは見ていられなくなり、目を閉じ、手を離した。
 しかし、だからといって、ディケイルの行動を受け入れられた訳じゃない。
 
 ソウも、レイと同じ事を考えたから、レイの行動を予測して、そして、ここへ来た。
 
 ……マタルの死は、必然だったのか?
 
 アマテラスからマタルの乗る11号機を撃つ命令を下した時も、「当てるな」という言葉を付け加えていた。――こちらの本気を見れば、マタルだって反省するだろう、そう思った。
 ……結果として、その考えは甘かった。それは分かった。しかし……!!
 
 ソウは黙ってディケイルに手を差し出した。
「立て。ひとりで立てなければ、俺が付き合う」
 その時、ディケイルがどんな顔をソウに向けていたのか、見てはいない。しかし、差し出された震える指先の感触で、ディケイルの心を察した。
 
 ソウはその手を引き、歩き出した。
 
 ひとりにはしておけない。また、前みたいに、衝動的に自殺だとか自傷行為だとかされたら、その方が、ソウにはつらい。
 安全で目が届き、しかも、今のディケイルにとって居心地の良い場所。
 
 ――ソウは、その場所へと彼を導いた。


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