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57.  贖罪
 
 
 あれから、元帥の姿は見ていない。
 
 一部では、また行方不明になっているという噂もあるみたいだ。参謀長は、居場所を知ってるみたいだけど、誰にも言っていないみたいで……。
 レイも、敢えて聞こうとしなかった。聞いたところで、会いに行く気にもなれないし、レイが元帥に対して出来る事など、何もないと思った。
 
 マタルの件があってから、15歳未満の子供は、イザナギに乗っちゃいけないって事になった。だから、レイは再び士官学校へ戻った。
 授業を聞きながら、教室を見渡した。――2つの席が、空席になっている。机の上には、花瓶に活けられた白い百合の花。……マタルとボビーの席だ。彼らの顔を思い出す度に、心臓が締め付けられる。……ふたりとも、僕がもっとしっかりしていれば助けられたんじゃないか、そう思う。
 
 ボビーには、もっと早くにその異変に気付いてあげられていれば、と思った。そうすれば、ひとりにさえならなければ、ボビーは助かった。ルームメイトとして、もっと何かしてあげたかった。――その気持ちは、ケビンもブライアンも同じようだった。
 それから、マタル。
 ………レイは、マタルに言われた「勝負」に乗ってしまった事を、心から後悔していた。あんな事を受けて僕がマタルを煽ったから、マタルも退くに退けなくなったんじゃないか、だから、「イザナギ」のシステムに精神が取り込まれ……。
 
 みんなには、「未発達な精神状態の子供が脳波操縦をすると、自我を異常に刺激して、暴走状態となる場合がある」と説明されていた。だから、15歳未満の子供は乗っちゃいけないというルールができた。
 けれども、レイは参謀長から聞いた。――事の真実を。
 
 「俺も、詳しい事は知らなかったんだが、今回の件を機に、ドクターとジョルジュから説明を受けた」
 ソウは、難しそうな図面やらの資料をレイに見せながら、自分でも確認するように話し出した。
「そもそも、脳波操縦というのは、人間の脳波の動きを、一度、内蔵された人工知能に認識させて、そこで増幅させた上で、イザナギの各部位に信号を送るシステムになっているようだ」
 そうでなければ、いくらトランセンダーの脳波が強力であるとはいえ、あれだけの巨体にあれだけの繊細な動きをさせるのは難しいらしい。
「そして、この人工知能を起動させる数値が『適合率』で、人工知能に脳波を届ける強度が『脳波レベル』」
 この数値については、何となくだが、ジョルジュから聞いていた。
「で、適合率70%以上で起動、脳波レベル80%以上で脳波操縦が可能となる。
 ――そして、なぜ、マタルがあのような行動を起こしたか、という事なんだが……」
 
 ソウは、脳のCT画像が印刷されたページを見せた。
「本来、人間の脳は、この図のように、50%程度しか働いていない。つまり、50%以上の稼働率で働く事に、脳は慣れていないんだ。
 しかし、脳波操縦は、それを長時間強いる。その結果、脳は混乱し、外部にサポートを求める。――そして、ちょうどそこに、それに相応しい存在があるから、困った事になる」
 ……つまり、人工知能に判断を任せる、という事だ。
「それは、本来の人間としての判断力をも、人工知能に任せるという事でもある。だから、本来、自分が持っている基準ではなく、イザナギの基準で、物事を判断するようになる。――自己の過大評価という現象は、こうして起るんだ」
 
 ……しかし、それならば、子供に限った事ではないではないか。そう質問を投げてみると、ソウは答えた。
「子供は成長途中だろ?だから、自分の限界が分かっていないところがある。けれども、成長が完全に止まった俺くらいの年になると、無意識に自分の限界を判断して、それ以上の動きを抑制する性質があるらしい。だから、圧倒的に子供のほうが、あぁいった状態に陥りやすい。
 それに、そもそも大人になると、脳の働きが安定して、脳波操縦に適応する程の脳波を出せるヤツが少なくなるようだ。エトウ少将は、元空軍で鍛えていたから、その適応があったみたいだけど、その他のハイブリッド方式のメンバーって、子供が多くなかったか?」
 ――言われてみれば、確かに……。
「……じゃあ、元帥は……?」
 その名前を出すと、ソウは少しドキッとしたような反応を見せた。けれどもすぐに頭を掻いてごまかして、言った。
「子供みたいな大人なら、いいって事じゃないか?」
「なるほど……」
 ――妙に説得力があるから困る。
 
 「……まぁ、要するに、マタルは、自意識までもを人工知能に増幅させられた挙句、精神をイザナギに乗っ取られてしまった。その結果として、あのような行動に出た。全ては、脳波操縦のシステムの不具合なんだ。……公にしたら大変な事になるから、その情報は一部の人しか知らないけどな。
 ――だから、レイが責任を感じる事は、何も無い」
 ソウはそう言いながら、レイの頭を撫でた。
 
 「……それと、もうひとつ、レイに言っておきたい事がある」
 ソウは、先程の脳の画像の横に、もう1枚、写真を並べた。
「――これは、レイが怪我をした時に、検査に病院に行っただろ?あの時撮った、CTの画像だ。
 ……これを普通の人間の脳と比べると、明らかに容量が違うんだ。分かるか?」
 それには、レイも黙って目を向けるしかなかった。
「ディケイルからは薄々聞いていた。――レイ、おまえ、トランセンダーなんだな。しかも、ナチュラルタイプっていう……」
 レイはコクリと頷いた。
 
 ディケイルが、レイがトランセンダーである事を周囲に話したがらないのは知っていた。それは、トランセンダーという存在が、普通の人には受け入れ難いものであるからという事を、レイ自身も自覚していた。
 ――しかし、ソウなら信頼できる、受け入れてくれる、そう思ってディケイルはレイの事を伝えてあったのだろう。それならば、レイも、ソウを信じるしかない。
 
 大丈夫だ、誰にも言わない、そう言って、ソウは再びレイの頭を撫でた。
「――で、この画像にどういう意味があるのかというと、レイは生まれつき脳波が強いという特殊な能力を持っているから、脳波操縦に向いている、という事なんだ。
 そして、そういう環境に脳が慣れているし、脳自体の容量も、普通の人間と比べて圧倒的に大きい。だから、いくら脳波操縦をしたって、マタルのように、精神までもが取り込まれてしまう可能性は、極めて低いんだ」
「つまり……」
 ソウは、レイに向き直った。
「今のガニメデには、『エレクト方式』が必要なんだ。更なる改良・開発に、協力してほしい」
 
 これには、レイも驚いた。元々、ソウはどちらかというとイザナギの開発に賛成していないような節があった。それなのに……。
 ソウは続けた。
「この前の会戦で見ただろ?敵は、あの短期間で、こちらのアナログ方式以上の機体を完成させてきた。――それに対抗できるとしたら、エレクト方式だけなんだ。
 現状、地球にはナチュラルタイプは存在しないと思われる。ナチュラルタイプが、人類がこれまで経験した事のない環境下に於いて進化を遂げた存在と考えるのならば、地球では、そのような事は起こりようがないからな。――強いて考えるならば、ミカエル・アイヒベルガーのような『ラザレフタイプ』だが、そんな人間が、前線に出て剣を持って戦うなんて、考えにくい。
 ――だから、今のガニメデにとって、レイの存在が切り札なんだ」
「だけど……」
「先程も言ったように、いくらパイロットが大人でも、脳の容量に関係なく起動できてしまう『ハイブリッド方式』では、暴走状態になる危険性がある。だから、ハイブリッド方式の開発は、今後一切やめる。――あとは、アナログ方式の改良と、エレクト方式の更なる向上に懸ってるんだ」
「けれど、僕ひとりで、何ができますか?僕が本当に無力なのは、あの会戦で分かったでしょう?」
 すると、ソウは首を振った。
「あの会戦で分かった事は、そんな事じゃない。
 ひとりでも、圧倒的な動きをするヤツが居れば、戦況は簡単にひっくり返る。
 ……皮肉だけれども、マタルが、それを示してくれたと思う」
 そう言って、ソウは寂しそうに資料に印刷された、ダークブルーの「イザナギ」の機体を眺めた。
 
 ―――こうして、レイは、呼び出しがある度に、ラボに向かうようになった。
 すっかり、ジョルジュやラボの人たちとも仲良くなった。
 あの会戦後、さすがのジョルジュもしばらく落ち込んでいたが、最近は立ち直ったみたいで、しきりに『鋼の操縦士』のディスクを勧めてくる。
「ねぇ、絶対見たほうがいいって!特に、第8話からちょくちょく出て来るプロメシューム・ゼロってのが、超カッコ良くってさ!機体だけじゃないぜ?パイロットの生き様っていうのかな、それが……」
 毎度、適当に聞き流すのだが、よく、こんなにお勧めポイントが出て来るものだと、ある意味感心する。
 
 ……こうして、ジョルジュたちとは交流を深めつつあるのだが、レイは、どうしても「ドクター」と呼ばれる人物には馴染めなかった。20世紀の古典的なマンガに出て来るなんとか博士ような、モジャモジャ頭に分厚いメガネをしていて、何を考えているのか分からない。レイの脳波も、この虫メガネみたいなレンズは通らないみたいで……。
 しかし、イザナギの開発チームで一番偉い人だから、その実験に参加する以上、レイも関わらないわけにはいかない。
 
 今日も、新しいシステムの実験だという事で、授業後、ジョルジュの迎えでラボに来ていた。
 いつもの散らかり放題の研究室に入ると、早速ドクターがレイを中央の装置へと導いた。
「今回の実験は、遠隔操作の実験だ。対策を尽くしてはいるが、この前の『事故』のような事が起こらないとも限らない。だから、非常時には遠隔操作でイザナギの動力を停止させるというシステムを開発した。
 ――さぁ、座れ」
 問答無用で、装置の中に据えられた座席に押し込まれる。
 
 この装置は、イザナギのコクピットを模したものだ。――というより、コクピットだけを取り出してきた感じだろう。いろいろな色のコードがそこらじゅうを這い回り、とてもそんな風には見えないけど。
 
 ジョルジュがレイの顔の前にゴーグルを下ろし、
「じゃ、起動してみて」
と言った。
「……WAKE UP」
 頭の中で呟くと、いつものように、実験室の風景が全面に見えるようになる。
「――適合率90%、脳波レベル95。問題ありません」
 外のモニターの前で、別の研究員の人が言った。
「うむ。――もう少し適合率、脳波レベル共に上がってくれないと困る。悪いが、少しゲームをしてもらう」
 ドクターが言うと、正面に何やら奇妙な形をしたモンスターが現れた。
「それがおまえさんを襲ってくるから、倒すんだ」
 そう言われ、爪を立ててこっちに向かってきたモンスターを、銃撃するイメージで倒した。――そんな事を何回かした後、研究員の人が言った。
「適合率92%、脳波レベル98。――あまり上がりません」
「うむ。――ならば、これでどうだ?」
 ――次に現れたのは、白銀の光を放つ、戦闘ロボット。
 無意識に、レイの身体が強張った。
「それを倒してみろ」
 ドクターの声と同時に、それはレイに襲いかかってきた。
 
 レイの脳裏に、あの会戦の時の光景が広がった。
 漆黒の宇宙、飛び交う光線、そして、敵機の刃。
 モニターの中のロボットが、レイに刃を振り下ろした。両腕から剣を振り出し、それで受け止める。――弾き飛ばしたいが、力が足りない。仕方なく、後方に飛び下がって、今度はレイが敵機の頭を狙う。だが、それはシールドに弾かれてしまった。
 ガラ空きになったレイの胴に、敵の刃が突き立てられる。
 ―――死ぬ!!
 
 「適合率100%、脳波レベル200!」
「よし、やれ」
 
 その時、レイの身体に衝撃が走った。
 突然、脳と身体が切り離されたような、強い違和感に襲われる。
 身体が、動かない。今まで、当たり前にできて、当たり前に感じていた、一切の感覚が、無い。
 それだけじゃない。呼吸ができない。頭に血が昇り、耳元で感じていた脈動も、何も聞こえなくなった。――何で?どうしたんだ?何が……
 苦しい。……誰か、助けて。誰か………!
 
 レイの意識は暗闇に落ちた。


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