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 ……このままリンを生かしておいては、ここに居る全員が犠牲になる。ヴァーチャーの乗組員には申し訳無いが、被害を最小限に抑えるには、こうするしか無い。
「チャン!そちらも全砲台でヴァーチャーを狙え。――他の艦には当てるな」
「了解した」
 チャンの姿がモニターから消えた。
 
 「――で、でも、他の艦が邪魔になって、ここからだと、弾道が狭すぎるんですけど」
 ジョルジュがモゴモゴと言いながら、ディケイルを振り返った。――明らかに目が泳いでいる。分かっている。先程はミサイルが相手だったから、発射ボタンが押せたのだ。今回は、何百人という人の命が相手だ。いくら周囲の空気を意に介さないジョルジュでも、先程までの勢いは跡形も無く消え失せていた。その行為が何を意味するのか、分かっている。……そもそも、ジョルジュは軍人では無い。こんな作業を、任せてはいけない。
 
 ディケイルはテーブルを飛び越え、ジョルジュの席へ向かった。
 重力がほとんど無いから、片足でもこんな行動ができる。
 ジョルジュはディケイルの姿を見て、ギョッとしたように席を空けた。――俺は今、相当ひどい顔をしているのだろう。
 手元のレーダーとモニターの映像を確認する。……確かに、他の艦に当てずにヴァーチャーを狙うのは、難しい状況だった。
 狭いトンネルの中を、8隻もの軍用艦艇が列を成しているのだ。その列の、奥から2番目の位置に、ヴァーチャーは居る。ドミニオンと標的との間には、アンゲロイの残骸も含め、6隻もの艦船が存在している事になる。
 ディケイルは、隣の通信士からマイクを奪った。
「――敵の全艦に告ぐ。道を開けろ。さもないと、全員死ぬぞ!!」
 ……ヴァーチャーは、こうしている今も、無秩序に射撃を繰り返している。早くしなければ、もっと犠牲は増える。
 
 だが、返って来たのは、意外な言葉だった。
「……私は、宇宙戦艦プリンシパリティの艦長、メイリンだ。――ヴァーチャーは、私が撃つ」
「――あんた、自分の言ってる事が分かってるのか?」
「分かっている。……我々は、投降を希望する。その証として、ヴァーチャーを撃つ。――だから、他の艦には手出しをしないでもらいたい」
「メイリン!貴様ぁ!!」
 リンの怒号が聞こえた。それと同時に、プリンシパリティに向け、ミサイルが発射されるのが見えた。
「元帥!迎撃ミサイル!!」
 ジョルジュが叫んだが、距離的に間に合わず、ミサイルはプリンシパリティの左舷に命中した。……だが、沈没には至らなかったようだ。
「――見ての通り、この艦は、防御システムが搭載されていない。装甲艦を盾に、時間を稼ぐ。その間に、他の艦を避難させたい。だから、道を開けてもらえないか?」
「……分かった。できる限り援護する」
 ディケイルが答えると、エドから通信が入った。
「元帥!あんた、どんだけお人好しなんだ!?あんなヤツの言葉を信じるのか?
 そうやってドミニオンの背後に回って、挟み撃ちにしようとしてるかもしれないじゃないか!」
 ――エドの意見はもっともだ。その可能性は、ディケイルだって考えている。
 だからといって、全滅を黙って見ている事はできない。それに、射撃の障害となる艦をトンネルから退避させるというメイリンの案は、この場において、悪い方法ではないと思う。むしろ、最善策だろう。
「俺たちに射撃許可をくれ!そうすれば……」
「それはできない。そちらの火力じゃ、ヴァーチャーは墜とせない。中途半端にダメージを与えるだけでは、そっちが狙われるだけだ。確実に仕留めなければ……」
「じゃあ、どうすんだよ!?見てらんねぇよ!」
 ディケイルは目を閉じた。
「言っておいたはずだ。俺が間違っていると思ったら、遠慮は要らない。俺を撃て。
 ――でなければ、俺の指示に従え」
 納得いかないような表情を残して、エドは通信を切った。
「ドミニオン、後退しろ。――ヴァーチャーから照準は外すな」
「了解。――ただし、俺たちも艦長の判断が間違っていると思ったら、遠慮なく反抗させてもらいます」
 航宙士が言った。――こいつ、言いたい事を言うヤツだな。
「好きにしろ。――ジョルジュ、プリンシパリティを援護してやれ」
「りょ、了解!」
 ディケイルは爪を噛んだ。強く噛み過ぎて、血の味が混じる。
 ………なぜ、俺の思うような結末になってくれない?
 
 
 
 テッドは、先程から通信を開いたり繋げ替えたり、大忙しだった。だが、ざっと状況を把握するだけの余裕はあった。
 ――一体、何がどう間違ったら、こんな展開になるんだ!?
 一通り通信は見ていたものの、それでも、訳が分からない。なんで、俺たちが敵の救出を助けてるんだ?
 このドミニオンの火力からすれば、袋の鼠たちを一網打尽にする事だって可能ははずだ。何しろ、相手は狭い空間に押し込められていて、攻撃もままならないではないか。ヴァーチャーとドミニオンで挟み撃ちして数を減らせば、ヴァーチャーとの一騎打ちなどワケも無い。
 ――そうは思うが、クリスのようにズケズケと意見を言う度胸は無い。
 テッドは横の席をチラリと見た。ディケイルが、膝を抱えて爪を噛んでいる。その向こうで、ジョルジュが席を奪われてしまったため、中腰になってコンソールパネルを操作していた。……先程のような鼻歌は無い。
 
 ドミニオンの横を、敵の駆逐艦が通過した。艦橋に緊張が走る。
 そんな中、通信が入った。――その駆逐艦からだ。
「ドミニオンに感謝する」
 短い通信だったが、モニターの中で並んで敬礼する姿を見て、テッドはハッとした。
 ――敵とはいえ、元は同じ人間じゃないか。
 中には、涙を流している人も居た。それを見ると、先程まで考えていた事を撤回せざるを得ない気分になった。
 ……俺たちは、正しい事をしている。
 
 「――油断するなよ。裏でどんな通信をしているか分からない。一言も逃さないでくれよ」
 クリスに言われて、テッドはヘッドホンに意識を集中させた。……相変わらず冷静なヤツだ。
 だが、続いて魚雷艇が通ったが、特に通信をやりとりしている様子は無かった。プリンシパリティから指示があって以来、それに従って動いているだけで、陰で何かを企んでいるような様子は見えなかった。
 そんな中、
「我々もプリンシバリティの援護に残りたい」
という、ミサイル艦の通信が聞こえた。ディケイルに伝えたが、
「好きにしろ」
と言っただけで、顔を動かそうともしなかった。
 
 ――レーダーで状況を確認すると、他の艦は全て脱出し、アス・トンネルの一番奥にヴァーチャー、それに向きあうように、装甲艦、プリンシパリティ、ミサイル艦、そしてドミニオンという配置になっている。
 また、トンネルの周囲の、小惑星帯の中に、何やら小さな光点がいくつも見えた。――これは何なんだ?
 ヴァーチャーは、相変わらず周囲に向けて砲撃を続けていた。ジョルジュとミサイル艦が、それに対応している。
 そこに、チャンから通信が入った。
「元帥、射撃許可を」
 だが、ディケイルはそれには応えず、マイクに向かって告げた。
「――リン。もういいだろう。諦めろ」
 しかし、それへの返答は、集中砲火だった。
「……ダメです!あんなに来たら、防ぎきれません!」
 ジョルジュの悲鳴と衝撃が重なった。立った状態で不自然な姿勢をしていたジョルジュが、その揺れで床に転げた。
「――ドミニオン、右舷下方に被弾!」
「元帥!あなたは敵を助けるために、自分の部下を殺す気か!?」
 チャンが珍しく声を荒げた。
「理想が高いのはいい。だが、あなたはツメが甘過ぎる。その甘さが、我々の首をも締める事になる。諦めるのはあなたの方だ」
 ディケイルは苦しそうに目を閉じた。
「――プリンシバリティに連絡してくれ。一斉射撃を行う。俺の指示に従ってくれと」
 その後、開いたその目には、一片の感情すらも無くなっていた。「自動攻撃」のボタンに手を置き、乾いた声で言った。
 
 「………全艦、ヴァーチャーの艦橋を狙え。――発射!!」
 
 アス・トンネルの中が、光線で満たされた。
 その中心で、ひと際大きな爆発が起こった。その光は、ドミニオンの視界を支配し、一瞬、何もかもが白い色に隠された。
 その後、強烈な衝撃波が艦橋を揺らし、テッドはデスクに突っ伏した。そうしなければ、座席から落ちそうだった。
 ――揺れが収まった後、ゆっくりと顔を上げる。メインモニターの中では、かつて宇宙船だったものの残骸が、粉々になって飛び散っていた。
 
 テッドは愕然とした。
 ――これが、戦争というものか。
 先程まで、モニターの中で、リンの背後で恐怖に震えて艦の操作をしていた人間たちが、一瞬にして消え去った。――いや、モニターに映っていた人たちだけでは無い。機関室やシステム室などで働いていた人はもっと居たはずだ。……数百人という人間が、あの瞬間に跡形も無く消えた。
 本当は、メイリンたちと同じように、投降したかっただろう。生きたかっただろう。――なのに、ただ、リンと同じ艦に居たというだけで、その命を奪われた。
 その死に、理由も無い。意義も無い。それなのに……。
 ………何と言う不条理なんだ!?
 
 テッドは隣の席に顔を向けた。
 そこには、誰も座って居なかった。妙な姿勢で座るクセのせいだろう、ディケイルが椅子から転げ落ち、床に倒れていた。――そのまま動かない。
「――艦長……?」
 恐る恐るテッドは声を掛けてみた。すると、ようやく身を起こした。――俯いた顔にかかった髪で表情は伺えないが、ひどく顔色が悪いのは分かった。
「プリンシパリティに伝えてくれ。地球に帰るなり、ついて来るなり、好きにしろ、と」
 テッドがその旨を通信で送ると、すぐさま返答が来た。
「プリンシパリティより返信。――破損がひどいため、自力航行が不能である。可能であるならば、ドミニオンに牽引してもらいたい」
「分かった。整備士に伝えてくれ。――後は任せた」
 ディケイルはそう言って、立ち上がろうとしたが、バランスを崩して再び倒れた。とっさにテッドが手を出したが、体勢を立て直すと、
「ひとりにしてくれ」
と言って、掴まり歩きをしながら艦橋を出て行った。――死人のような顔色をしていたが、大丈夫だろうか?
 そういえば、床には、先程ディケイルが投げた薬袋とその中身が散乱したままになっている。それを集め、袋に戻し、未だに床に座り込んで呆然としているジョルジュに差し出した。
「艦長に持って行ってもらえないか?」
 ――もう、攻撃プログラムの出番は終わった。後は、テッドやクリスたち、航宙のプロの仕事だ。
 それを悟ったのだろう、ジョルジュはコクリと肯いて薬袋を受け取り、去って行った。
 
 「――なぁ、クリス。……俺たちは、正しい事をしてるんだろうか?」
「……何を急に言い出すんだ?」
 クリスは驚いた顔でテッドを眺めた。
「ガニメデを守るために、出撃したのは分かってる。――でも、相手だって、やりたくてやってるんじゃない。……なら、何が正しいんだ?」
 クリスは顔を前に戻し、ボタンを操作しながら言った。
「正しい、正しくないなんていう次元の問題じゃない。――その時に、出来得る限りの事をする。それ以上を望む方が間違ってるんだ」
 ……確かに、クリスの言う事は正論だと思う。しかし……。
 テッドの頭から、モニターの片隅に映っていた、リンの部下たちの姿が離れる事は無かった。


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