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31469eb1.jpg コロニーの屋根は、巨大なドーム状になっており、何枚もの特殊な樹脂を組み合わせてでできている。その1枚1枚が、透明になって外からの光を取り入れたり、不透明になって光を遮ったり、そういう事ができるようになっている。
 だから、ここの「昼」や「夜」は、ガニメデの自転に合わせたものでは無く、地球の時間に合わせている。要するに、12時間置きに「昼」と「夜」が繰り返されるようにコントロールされている、そういったところだ。
 今は「夜」だから、屋根は光を遮断している。――と思うが、実際に、屋根の外が昼なのか夜なのかは知らない。
 遮光状態になった屋根に、星空が映し出される演出もされている。――そんな陳腐な演出になど、誰も気にも止めないが。
 
 しかし、この屋根が無ければ、外は、摂氏マイナス160度の、想像を絶する凍てつく世界なのだ。そう思うと、この屋根のありがたさが身に沁みる。
 
 公園の広場に入ると……
 先程の乱雑とした光景が嘘のように、ゴミは全て片付けられていた。
 先程の男はというと、姿が見えない。広場中央の街灯の下に、大型掃除機と大きなゴミ袋がポツンと置かれていた。
 「あれ……」
 掃除機を開いて中を見ると、吸い取ったゴミまできちんと掃除され、あとは収納場所に片付けるだけになっていた。すると……
「お~い」
と、背後の植え込みから押し殺したような声がした。振り向くと、先程のホームレスが、こちらに向かって手を振っている。
「守衛が回って来たから、隠れてたんだ。……もう行ったか?」
 ソウは、周囲を見渡し、他に人影が無い事を確認すると、腕で大きく「○」を作って見せた。
 そうしたら、男は合図を送るような仕草を見せ、こちらに出てきた。……その後から、もう2人、みすぼらしい身なりの男がついて来る。
「こいつら、俺の仲間。こっちがマックで、こっちがチャン」
 2人の男は、おどおどと警戒するように、ソウを見ている。それに構わず、ホームレス(と言っても3人ともホームレスだが)は、ソウの持つ袋に目を止めた。
「いやぁ、助かるよ。実は、3日食ってない」
 半ば奪い取るようにソウから袋を受け取り、地面に座り込んで、中を覗いた。
「お、ビスケットにポテトチップス。………オレンジもあるじゃないか!」
 それを聞き、マックとチャンと呼ばれた2人も袋を取り囲むように座り、菓子の箱を袋から取り出し、無遠慮に食べだした。
 そんな、3人の食事シーンを眺めていても仕方ないので、ソウはポケットからタバコを取り出し、火を点けた。
 
 ……なぜ、家でタバコを吸わないのか。高性能な火災報知機が「火」と「煙」を感知して、消防に通報してしまうからだ。公園なら、さすがにそんな事はない。
 ――その代わり、見回りの守衛に見つかったら最後。「解雇」だ。
 
 「……兄ちゃん、タバコは身体に悪いから、やめたほうがいいんじゃね?」
 ――「兄ちゃん」などと馴れ馴れしい呼び方をされ、しかも自分の唯一の楽しみを否定され、ソウは再びイラッとした。
「俺の事はほっといてくれ」
「だけどさ、社則で禁止されてるんだろ?タバコ。……じゃあ、もう、タバコって、手に入らなくなるんじゃないのか?」
 
 ――それは事実だった。
 ソウは、どうせ闇ルートが残って、多少の現金取引は可能になるだろう、と、タカを括っていた。しかし、アース・コーポレーションはそういった闇ルートを徹底的に潰した。――自分の管理の届かない経済圏の存在、それが会社にとって、体制を壊す脅威となりかねないのだ。
 ソウは、念のため現金取引が可能なうちに、タバコだけは買いだめしておいた。……しかし、1日の本数を減らすなりしてはいるが、いつか無くなるのは目に見えている。
 ――いつかは喫煙しなければならない。それもまた事実だった。
 
 「しかしさ、兄ちゃん……」
「兄ちゃんという呼び方はやめろ」
「じゃあ、何て呼べばいい?」
「………ソウ、でいい」
「じゃあ、ソウ」
 ……いきなり呼び捨てか!
「なんで、ガニメデになんか来たの?見た感じ、『契約社員』じゃなさそうだし」
 ――ソウは返答に窮した。「喫煙」が原因で左遷させられた、なんて、言えたモンじゃない。
 
 ガニメデに住む人々を大きく分けると、2種類に分けられる。――「正社員」と「契約社員」だ。
 「正社員」は、言うまでも無く、正式に「アース・コーポレーション」の社員として雇われた人間。
 一方、「契約社員」は、「失業者」の中から臨時雇用された者たちの事だ。期限付きの労働契約をし、地球外に派遣される事が多い。――ガニメデのような辺境の地に。そして、劣悪な労働条件の元、過酷な作業を強いられる。
 しかし、それでも、「雇用」されただけマシなのだ。――ホームレスの、悲惨な状況に比べれば。
 とりあえず、食事と寝る場所は与えられる。給料ももらえる。とりあえず、「生きて」いける。
 
 ソウは「正社員」だから、彼らに比べればまともな境遇だ。共同住宅ではなく、個室のアパートがあてがわれている。
 それに、ソウにとっては、この左遷は地球に居た頃よりかえってありがたい事だった。――地球では、たとえトイレの中だろうと建物の影だろうと、街中でタバコを吸ったりすれば、たちまち見つかってしまう。だから、左遷されたのだが。
 ………しかし、さすがに次は無い。
 
 ホームレスはオレンジを口に放り込みながら、グレーの瞳をソウに向けていたが、察したように、それ以上何も言わなかった。
 
 袋の中を空にすると、ホームレスたちはゴミをゴミ袋に片付け、
「これ、どこに捨てればいいんだ」
と聞いてきた。……さすがに、そこまでやってもらおうとは思っていなかったが、
「ゴミの扱いはホームレスに任せろ。少なくとも、あんたよりは『プロ』だ」
と言って、大きな袋を担ぎ上げた。
 処分場所まで一緒に行き、ソウも掃除機を定位置に戻すと、ホームレスたちと別れた。
 
 ソウはアパートに戻りながら、ふと思った。
 ――そういえば、こちらは名乗ったのに、あのリーダー格のホームレスの名前を聞くのを忘れていた。
 妙に、気になるヤツだった。
 
 ………果たして、次に会う事はあるんだろうか?
 
 
 
 だが、その日はすぐにやって来た。
 
 正月休み開け、出勤すると、門番の守衛に声を掛けられた。
 「ナカムラ主任、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「明日の夜、『一斉清掃』があるそうなので、20時以降は外出禁止令が出ます。なので、朝礼で連絡しておいてください」
 
 ―――「一斉清掃」――。
 その言葉だけを聞けば何という事もないが、その何という印象も無いその言葉の真意は……
 
 「ホームレスの一斉排除」だった。


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