忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 死にたい。

 こう言うと、大抵の奴は「なぜ?」と聞いてくる。
 その時、俺はこう言い返してやる。
 「死ぬのに理由など必要か?」と。
 それでも、「生きていれば、まだまだ楽しい事があるはずだ」とか、「そんな若いのに死んだら勿体無い」とか、無責任な事を言いやがる。
 
 何を根拠に、そんな事を言えるのだ?
 二流大学に三浪中で、しかも、萌々木ゼミナールに不登校の、俺に向かって。

 頭では分かってるだろう。
 俺の人生、終わってると。
 けれども、知ってる奴が自殺すると、何となく気分が悪いからっていう、どうでもいい理由のために、無責任に止めてくるんだ。
 そんなくだらない理由のために、俺は生きなくちゃならないのか?

 どうでもいい。全てに絶望した。

 俺は、死ぬ方法を考えた。

 まず、オーソドックスな、手首を切るアレ。
 引き出しからカッターナイフを出そうとしたら、親が来た時に慌てて隠したエロゲのポスターの端で指を切った。
 ……予想外に痛かった。
 紙でこんなに痛いんだから、カッターナイフなんて……。
 俺の腕に、無意識に鳥肌が立つのを感じた。
 刃物を使って血を出す様な自殺方法は止めた。

 次に考えられる、メジャーな自殺方法。
 首を吊るアレ。
 そう、絶望先生みたいなヤツ。
 我が敬愛する糸色先生を見習おうと、ビニール紐を手に天井を見回す。
 ……しかし、天井に紐を吊るせるような場所って、どこにある?
 ドラマでよくある自殺シーンって、どうやって首を吊ってるんだ?
 ――もしかして、俺はこれまでの人生、メディアに騙され続けて来ていたのか!?
 俺はその信じがたい事実に直面し、更に絶望した。

 室内を諦め、ベランダに視線を移す。……物干し竿を掛けるアレならいけそうだ。
 ……しかし、ちょっと待てよ?
 この部屋に入居する時、不動産屋のオバサンがこう言った。
「これ、案外弱いから、布団とか重いものを掛けると壊れるから、気を付けてね」
 ……て事は、布団よりも明らかに重量のある俺がぶら下がったら、間違いなく壊れるだろう。
 首を吊るというのは、想像以上に難易度が高い。

 ……となると……。

 俺は、薬局に向かった。
 睡眠薬をガブ飲みしようと思ったのだ。
 すると、白衣を来た綺麗なお姉さんに、
「お薬のご相談キャンペーン中なんですけど、どこがお悪いのか、教えていただけませんか?」
と、眩しいばかりの笑顔で微笑み掛けられた。
 ……この笑顔に、俺は何と答えればいいんだ!?
 考えた末に、俺は言った。
「頭が悪いんです。ごめんなさい、ごめんなさい」
 そして、俺は店を出た。
 リア充を見せ付けられると、自分の存在が著しく不要なものに思えてきた。
 薬局なんかに行くんじゃなかった。

 俺は行き場を見失い、街を彷徨った。

 行き交う人々の目に、俺の姿など映ってはいない。
 人々は、日々の生活の中で、ただ通り過ぎていくだけ。
 そのレールの間を、共に進みもせず、交わりもせず、漂うだけの存在。

 そんな奴、とっとと消えるに限る。

 俺は駅に向かった。
 本当はホームから電車に飛び込もうと思ったのだが、不意に隣の親子の会話が耳に入って来た。

母 : 「まぁくんは、本当に電車が好きなのね」
子 : 「うん!」
母 : 「じゃあ、将来は、電車の運転手さんになるのかな?」
子 : 「それはイヤだなぁ」
母 : 「あら、どうして?」
子 : 「だって、ジンシンジコがあると、電車の人がバラバラになった死体を拾うんでしょ?
     ミンチになった骨とか肉とか血まみれの生首とか、触るのイヤだもん!」
母 : 「…………」

 ――俺は、飛び込むのを止めた。

 しかし、このまま帰るのも不審に思われるだろうと、とりあえず電車に乗り込んだ。
 窓越しに過ぎ去る風景を見送っていて、ふと思い当たった。

 そうだ、少し先に、素晴らしい自殺スポットがあるじゃないか。

 俺は、その駅に降り立った。

 駅を出て数分歩くと、唐突に現れる、巨大な廃墟。
 ――廃病院。
 十年くらい前に、医療事故で患者を死なせ、その損害賠償で経営が傾いて、廃院になったという噂のある、白い巨塔。
 DQNの巣窟であると同時に、有名な心霊スポット、そして、有名な飛び降りスポットでもある。

 俺は、錆びた有刺鉄線の柵の間を抜け、病院の建物に向かった。
 手の届く範囲一面に、スプレーで落書きがしてある。
 そのカラフルで奇抜な前衛芸術を見ていると、妙に心が落ち着く。
 ガラスが割られ、半ば取れかかった扉から、建物の中に入る。

 ――すると、そこは異世界だった。

 まだ真昼間だというのに薄暗く奥へ伸びる廊下には、剥がれ落ちた天井やら割れた瓶、昔のカルテなどが散らばっている。気を付けて歩かないと、足を取られそうだ。
 そう、今、ゆっくり歩いているのは、足元に気を付けているからであって、別に……。

 廊下の突き当たりは、広いロビーになっていた。ちょっとした吹き抜けになっていて、二階の窓があった場所から、木漏れ日が降り注いでいる。
 ……その窓の向こうに見える、上階の病室の窓に、チラッと白い影が見えたのは、気のせいだ、そうに違いない。

 俺は非常階段を探した。それで最上階の屋上に上がれば、誰にも邪魔される事なく、自らの意志の赴くままに、自殺ができる。
 先程来た方向とは別の方角に伸びている廊下の奥に、緑色の看板が見えた。非常口マーク、イコール非常階段への入り口に違いない。俺はそれを目指した。

 塗装が剥がれ、錆びた鉄の扉は閉まっていた。俺はそれにそっと手を掛けようとした。
 ……が、触る前に、扉が勝手に開いた。
 さすがに俺はギョッとした。
 すると、背後で、イヤぁ~な感じがした。背筋に冷たい汗が流れ、鳥肌が止まらない。
 ま、さ、か……。

 ゆっくりと振り向くと、そのまさかだった。
 白い服を着た少女が、俺を見上げてニコリとした。
「おにいさんも、屋上に行くの?」
 見ると、少女の後ろに、もう一人立っている。……今度は、手術着を着た老人?
「ねぇ、おにいさん、一緒に行こうよ。――あの世に」
 少女が俺に手を伸ばした。――ニコリとした口が、耳まで裂けている。
 気付くと、少女の後ろに、何十人もの霊が集まっていた。体中から血を流している者、取れた頭を手で抱えている者、避けた腹から腸を引きずっている者……。
 彼らが一斉に声を揃えた。
「行こうよ、あの世に」

 「―――い、イヤああああああ!!!!!」
 俺は恐怖に駆られて走りだした。無茶苦茶に腕を振り、追いすがる青白い手を振りほどき、必死に走った。
 しかし、白い迷宮は、簡単に俺を逃がしてくれはしなかった。
 何度も同じ場所を通り過ぎ、階段を上っているはずが地下に迷い込み、それならばと階段を下りてみたら地上に出た。
 目の前に窓がある。そこから入る光が、俺には希望の光に見えた。
 俺は割れたガラスに飛び込んだ。

 そこは三階ほどの高さだった。キラキラと反射するガラスの破片を、顔の間で十字に組んだ腕で避け、俺は宙を飛んだ。
 ずいぶんと長い時間、飛んでいた気がするが、実は、一瞬だっただろう。
 下は、草の茂った地面だった。その上に、片ひざを立てた状態で降り立つ。
 ……着地成功。怪我も無いようだ。

 俺は、後ろを振り返ってみた。
 すると、割れた三階の窓から、いくつもの顔が俺に悔しそうな視線を向けているのが見えた。
 ざまぁ見ろ。
 と思ったが、まだ油断はできない。俺はサッと立ち上がり、一目散に柵の外へ出た。

 それからも、街中を全力疾走し、ここまで来れば大丈夫だろうと足を止めると、全身から汗が流れ出て、息切れがひどい。普段の引きこもりによる運動不足のせいだろう。

 そんな火照った肌に、風が心地よい。
 見ると、そこは橋の上だった。川面を吹く風が、汗を冷ましてくれる。
 俺は欄干に身を預け、静かに流れる水面に目をやった。

 ――そういえば、俺、死のうとしてたんだ。
 この橋から飛び降りても、死ねるだろうか?

 そんな事を考えていると、隣に人が立っているのに気付いた。
 さっきの亡霊が付いてきたのか!?と一瞬ビビッたが、そうではないようだ。
 病院の幽霊たちは、みんな白っぽい服を着ていたけれど、こいつは真っ黒な服を着ている。――しかも、深くフードを被って、顔も見えないじゃないか。

 そいつは、俺と同じように川面を眺めながら呟いた。

 「―――あぁ疲れた。
 簡単に死ぬ奴が多いけど、死ねるモンなら俺が死にたいぜ。
 人間には、過労死ってのがあるそうじゃないか。憧れる限りだ。
 死神は死なないからって、コキ使い過ぎだぜ、全く」


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2





Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/