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オリジナル小説のダストボックス

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 「―――は?」
 まぁ、百歩譲って、こいつが死神だというのは認めよう。
 しかし、取り憑くって……?

 死神に取り憑かれると、どうなるんだ?

 俺は、霊感が無い。てか、幽霊とか信じてない。
 あーいう科学的じゃない事を言ってる奴は、自分がバカだと宣言してるようなモンだと思う。
 けれども、一般的に悪霊に取り憑かれると、体調が悪くなったり、トラブルや事故に巻き込まれたり、貧乏になったり……。
 良い事無いじゃないか。

 俺は慌てた。
「ちょ、ちょっと!何勝手に決めてんの?俺は断る!!」
「勝手な事言ってるのはどっち?俺、これでも『神』だぜ?
 人間ごときに拒否権があると思う?」

 死神はニヤリとした。
 ――俺はゾッとした。……怖ぇ。やっぱ、こいつ、只者じゃない!

 死神は、俺の肩に慣れ慣れしく腕を回した。
「まぁ、そうイヤな顔すんなよ。邪魔しねぇから」
「いや、おまえの存在自体が邪魔……」
「そう言うなよ。
 冥界法第8754条で、死にそうになってる人間を見付けたら、その人間が死ぬまで憑く事が許されてるんだよ。つまり、その間は他の仕事をしなくてもいい!」
「それは、おまえの都合だろ?」
「そうとも限らねぇぜ?
 もし、おまえに命の危険があったら、俺が全力で守ってやる!」
「……いや、それも迷惑だから」
 しかし、死神は聞いていない。
「ボディーガードかぁ。死神の仕事にも飽きてたところなんだ。
 そーいうコトで、宜しく頼むわ」

 ……しかし、どう考えても俺にメリットがある気がしない。
 第一、俺は死にたくてここに来たんだ。なのに、俺が死ぬのを全力で阻止してくる奴なんかに付きまとわれちゃ……。
 しかも、死神って普通、人間の命を奪うのが仕事じゃないのか?

 ――だが、考えれば考えるほど、なんか面倒になってきた。
 俺はとりあえず、家に帰る事にした。

 駅に向かい、電車に乗っても、やっぱり死神は付いて来る。
 平然と網棚の上に横になって、置き忘れてあった少年マガジンを読んでいる。

 けれども、他の乗客も、誰もヤツを意識していない。――本当に、見えていないらしい。

 「そうだ!おまえの家に居候する礼と言うのもなんだけど、いいモノ見せてやるよ!」
 駅を降りて歩きだした時、死神が話し掛けてきた。
 ――他の人にはこいつは見えないから、ヘタに返事したら、俺が独り言を言ってるみたいじゃないか。ヘンな人に見られるのも嫌だったので、俺は無視をする事にした。
「なぁ!無視するなって!!」
 死神があまりにもウザいので、俺は仕方なく立ち止まった。

 そこは、人通りの少ない歩道橋の上だった。眼下には大通りが見えて、たくさんの人が行き来している。
 俺が柵にもたれると、死神は隣に立って、ニヤニヤしながら着ていたマントを脱いで差し出した。

 「死神のコスプレ、してみたくね?」

 「―――いや、別に」
「そう言うなよ!面白いぜ?」
「何が!?俺、そういう趣味ねーし」
「これ、ただのマントじゃねーぜ?
 死神専用の、特殊機能が付いてるんだ」
「どんな?」
「まず、体重を無い事にできる。つまり、宙に浮ける」
「へぇ……」
 そういえば、この死神、歩いていない。微妙に宙にフワフワ浮いている。
「それに、これを着れば人に見られない。――死ぬ寸前の奴以外な」
「つまり、おまえが他の人間に見られていないのは、このマントのおかげ?」
「そう」

 ……いや、確かにそれは面白そうだ。
 ドラえもんの道具顔負けじゃないか!
 これさえあれば、しずかちゃんの入浴シーンだって、見放題じゃないか!!

 ニヤニヤしはじめた俺を横目に、死神は続けた。
「あと、このマスクね」
 死神は、ガイコツのお面を出した。
「これを着けると、異常に視力が上がる。しかも、見る人間が何を考えてるか分かるんだ。
 だから、死にたがってる奴は、遠くから見ただけで分かる」

 そんな事はどうでもいい。
 俺はマントを受け取って、羽織ってみた。
 ――すると、途端に体が軽くなった。足が地面に付いていない気がする。
 見ると、微妙に宙に浮いている。
「おぉ!!」
 俺は腕を広げてみた。すると、体がくるりと回った。どうやら、自分の意志で上下左右、自由に動けるようだ。しかも、人から見られないとなれば、やりたい放題じゃないか!
「ヒャッホーイ!」
 俺は気分が良くなって、歩道橋から飛び出した。本来なら怖いはずの重力が、全く怖くない。
「おい!マント使うんなら、これも持ってけって!こっちの方が面白いんだから!」
 俺はどうでも良かったが、死神が強引に渡してきたから、仕方なくガイコツのマスクも付けてみた。
 ……あと、大きな鎌でもあれば、完璧な死神の完成だな。

 俺は、薄闇に包まれ、代わりに街路灯が照らしだした街を、鳥の様に飛んだ。

 ――き、気持ちイイ!!
 重力に縛られないって、こんなに素晴らしい事だったのか!

 しかし、それにも少し飽きたので、街灯の上に座って、人間観察をする事にした。
 可愛い子を見掛けたら、家までストーキングしてやろう。

 ………けれども、悲しいかな、可愛い女の子よりも、どんよりとしたオーラを放って街角に佇むオッサンに目が行ってしまう、ネガティブ男の悲しい習性。
 しかも、ガイコツマスクは、そのオッサンが何を考えているのかを、しっかりと見せてくれる。

 なになに?
 1年前にリストラに遭い、失業保険をもらいながら再就職先を探すも見付からず、貯蓄を使い果たし、家のローンは払えず、借金は膨らむばかり。妻と幼い子供たちを養うためにどうしたものか、途方に暮れている……。

 ……見てはいけないものを見てしまった気がする。

 俺は目を移した。
 ビルのテナントのオープンカフェで、コーヒーカップを前にうつむいているあの学生。
 ――ついさっき、付き合っていた彼女に、実は男だと告白された。
 ………キツいな。

 それに、その脇の看板の脇に立ってるOL。
 出会い系サイトのサクラに騙されてる事に気付かないで、もう3時間も待っている。
 その様子を、電柱の陰からそっと覗いているあの男。
 そのOLに、サイト使用料に消える金をふんだくられてる哀れなヒモ男。

 ――世の中、絶望に満ち溢れている。

 俺の心のどこかに、安堵感のようなものが湧き上がるのを感じた。
 俺の人生、最低だと思ってたけど、俺よりももっと最悪な状況の奴が、こうもウヨウヨしていようとは。

 ……しかし、待てよ?
 予備校不登校、しかも未だに彼女ナシというドン底の俺に待っているのは、こいつらと同じか、それ以上に絶望に満ちた人生じゃないのか。

 俺みたいな奴が、あいつら以上に幸せになれる保証なんて、どこにもない。

 俺は絶望した。
 一瞬たりとも安堵感に浸った己の心に失望した。

 やっぱり、俺は死ぬべきなんだ。

 俺は、死神の方を見た。そして、目を疑った。
 先程まで人気もまばらだった歩道橋の上に、人だかりができている。――しかも、その全員が、若い女性。女子高生もたくさんいる。
 その視線の中央に、あいつ。
 マントを脱いだ奴は、銀髪のビジュアル系ハードロッカーみたいな感じで、超カッコいい。
 傍らに置いた棺桶だって、ギターケースに見えるんだろう。
 女の子に囲まれた奴は、楽しそうに何やら話していた。

 ――死神のクセに、なんであんなにモテるんだ!?
 人間の俺よりも……!!畜生!!
 俺は更に絶望した。

 俺は、発作的にマントを脱いだ。
 すると、体は急に重くなり、背中から地面に向かって落下した。
 その下は、交通量の多い幹線道路。
 大型トラックが近付いてくる。
 はねられれば、一巻の終わり。これでいい。

 俺は目を閉じた。

 ―――しかし、俺の体が地面に着く事は無かった。

 突然、抱え上げられるような感覚がして、フワリと浮くのが分かった。
 目を開けると……、死神の横顔が目に入った。
 背中に、黒い大きな翼が、風を切って動いている。

 「……あのさ、勝手に死なないでくれる?」
 死神が俺に言った。
「おまえが死んだら、俺の休暇が無くなるじゃんか」

 俺は思った。
 疫病神よりも貧乏神よりも、死神に憑かれる事は最悪だ!!



 翌日。
 駅前の歩道橋で女子高生たちが集団幻覚を見たというのと、遺失物で西洋風の棺桶が交番に届けられたニュースを、昼のワイドショーでやっていた。

おわり。
 


 お付き合いいただきまして、誠にありがとうございます。
 思い切り絶望的な話を書きたかったんです。
 意外にも、アイデアは絶望先生ではないのです。
 「聖☆おにいさん」というw
 自殺志願者×仕事したくない死神。
 考えればネタはいろいろ出てきそうですが、続きは未定。
 また、どうしようもなく病んだら、更新するかもです。
 それまで、皆さまにはお元気で~(*´ω`)ノシ


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