忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 周囲が何となく騒がしくて、桜子は目を覚ました。
 ――何だか頭が重い。普段は寝起きは良い方なのだけれど。やっぱり、慣れない枕で寝たせいかしら。
 起き上がり、玄関の方を見てみる。すると、戸が開いていた。……道理で、蝉が煩い筈だわ。
 でも、誰が開けたのかしら?――枕屏風の仕切りの向こうをそっと覗いてみる。やはり、零の姿は無かった。
 桜子は立ち上がった。――着替えなんて用意していなかったから、シャツにスカートの儘で寝た。皺に為ってしまったけれど、仕方ないわね。桜子は、髪と服装を整えると、玄関を出た。
 
 昨夜の雨は上がって、濃い朝靄が立ち込めている。手入れされた庭園の風景が霞んで、幻想的にすら見えた。
 飛び石の通路を進んで行くと、艶やかな着物の柄が目に入った。――松子だ。
 松子は、何だか所在なさげに、母屋と自分の住む離れへの小道の間に佇んでいた。
「――あの、如何かされましたか?」
 桜子が声を掛けると、松子はギョッとした様に振り返った。
 
 そして桜子に、梅子が何者かに殺された事を告げた。
 
 ――其れから、容疑者として零が捕まったと聞いたものだから、桜子は慌てて、臨時の取調室として使われている応接間へと向かった。
 桜子が姿を見せると、零はがたいの良い、如何にも刑事という雰囲気の中年男と向き合っていた。
「――ど、如何したんですか!?」
 声を掛けると、零は情けない顔で桜子に腕の手錠を見せた。
「如何もこうも、私は何もやましい事はしていませんよ。桜子さんからも、そう言ってください」
 すると、刑事が桜子をギロリと見た。
「あんたが、この男の助手なのか?」
「助手、と云うか、雇われている雑用係です」
「フン。ならば、あんたも容疑者の一人だ。其処へ座れ」
 ――逆らっても良い事は無さそうなので、桜子は零の隣へ腰を下ろした。
 
 其の男は、「百々目警部」と名乗った。如何やら、今回の事件の捜査に来た警察の、一番偉い人らしい。
「……でも、何で、この人、――犬神が、容疑者になるのですか?」
「先ずは余所者を疑う、此れは捜査の鉄則だ」
「………なるほど」
「しかし、私には動機も無いし、アリバイだって有ります。いい加減、手錠を外してもらえませんか?」
「動機など、何とでも為る。貴様、先程からアリバイアリバイと言うが、此の女と一緒に寝て居た程度では、アリバイにはならんからな。恋人同士ならば、話を付けて嘘をつく事だって有り得る」
「ちょっと!私、そんな軽い女じゃありませんから!勘違いしないでください!!」
 桜子はテーブルをドンと叩いて抗議した。――其の剣幕に、百々目警部は目を丸くした。
「――ま、まぁ、分かった。落ち着け。
 ……だが、此の女が幾ら証言した処で、貴様の無実を立証出来る事にはならん。他にもアリバイを証明する証拠があるのか?」
「有りますよ」
 零はだるそうに百々目警部に顔を向けた。
 
 「先程、現場を見た感じだと、梅子さんが亡くなったのは、昨晩、雨が降る前です。
 雨が降り出したのが、午後十時頃。――其の頃、私は松子さんと話をしていました」
「……なぜ、被害者が殺されたのが、雨が降る前だと?」
「衣服が濡れていませんでした。――あの様に繊細なドレスは、水に濡れる事を嫌うものです。雨が降った後に現場に行ったのなら、染みやら皺やらの形で、濡れた跡が必ず残る筈です。しかし、其れが無かった。つまり、梅子さんは、雨が降る前に、天狗堂に中に既に居た」
「しかし、其れだけでは証拠にならん。雨が降る前に被害者が現場に居たとして、犯人がやって来たのが、雨が降り出してからかも知れないだろう」
 すると、零はため息を付いた。
「そうすれば、犯人の着ている物が濡れているでしょう。其れが梅子さんのドレスに浸みれば、同じ事です」
「つまり、殺害されたのは、雨が降り出した午後十時より前で、其の時間に松子と話をしていた貴様は無実である、と」
「そう云う事です」
 百々目警部は忌々しそうに零の顔を睨んだ。しかし、反論も出来ないのか、ガバッと立ち上がった、そして、
「……松子に確認を取る迄は、貴様の容疑は晴れん!」
と言い残し、制服の警官に見張りを託すと、部屋を出て行った。
 
 「――やれやれ、参りましたね」
 零は天井を仰いでカウチの背凭れに身を預けた。
「此れでは、天狗捜索どころでは有りません」
「そんな事を言っている場合では無いでしょう!?しっかりと容疑を晴らして貰わないと、私まで疑われている事になるじゃないの」
 桜子は口を尖らせた。
「大丈夫ですよ。松子さんが証言さえしてくれれば、私たちの無実は直ぐに立証出来ます。
 ――問題は、誰が犯人なのか……。
 早く捕まえなければ、第二の事件が起きないとも限りません」
「………え!?」
 桜子が目を向けると、零は天井を見上げた儘続けた。
「犯人が天狗であるならば、此れで終わりでしょう。
 しかし、犯人が木住野に恨みを持つ何者かの犯行だとすれば……。
 ――其れにしても、妙に頭が重くはありませんか?」
 零は顔を上に向けた儘、目だけを桜子に向けた。
「……言われてみれば、そんな気が……」
「昨日だって、話している最中に、急に眠気に襲われました。おかしいとは思いませんか?」
 ――確かに、零が何か言い掛けて黙ってしまったので、桜子はこれ幸いと、おやすみなさいと告げて其の儘眠ってしまった。……普段から寝入りも良い方なので、あまり気にはしていなかったが……。
「――まぁ、調べてみれば、分かる事でしょう。今は、此れを外して貰えるまで、大人しく待つしか有りませんね」
 零は手首の手錠に、忌々しそうな目を向けた。
 
 ――しかし、百々目警部が戻ってくる迄には、随分と時間が掛かった。
 結局、二時間ほど待たされ、再び百々目警部が姿を見せた時には、傍らに竹子を従えていた。
 
 其の手首には、手錠が巻かれていた。
 
 
 
 「―――私は、犯人なんかじゃ有りません!信じて下さい」
 竹子は、百々目警部と零の顔を見回しながら、必死の形相で訴えた。
 ようやく手錠を外され、擦れた跡を摩りながら、零は言った。
「警部さん、なぜ、竹子さんを捕まえたのです?」
「貴様が犯人で無ければ、他に犯人が居る筈だ。で、貴様の言った通りの時間のアリバイを調べた処、この家の中で唯一、竹子だけにアリバイが無かった」
「……其れだけですか」
「そうじゃない!竹子の部屋から、凶器の荒縄が見付かった」
「あれは凶器なんかじゃ有りません!」
「では、なぜ部屋に荒縄などを隠し持っていた!?」
「あれは、……自分で首を括ろうと思って、用意をしたのです」
 竹子は目を伏せた。
 
 「……なぜ、首吊りをしようと思ったのか、お話し頂けませんか?」
 零が言うと、百々目警部はキッと睨んだ。
「貴様に捜査をする権限など無い!探偵面して煩わしい。さっさと出て行け!」
「先程まで拘束しておきながら、容疑が晴れた途端、今度は出て行けですか。随分と乱暴では有りませんか。こちらとしては、冤罪で捕まえられていたのですよ?一言くらい、謝罪なり何なりあっても良いでしょう?」
 零は抗議してみたが、百々目警部の顔が鬼の様に変化したので、肩を竦めて部屋を出て行こうとした。
 すると、竹子が声を上げた。
「待って!」
 振り向くと、竹子は席から立ち上がり、零に目を向けていた。
「私は未成年者です。大人の方に取り調べに同席して貰うべきなのではありませんか!?」
 百々目警部は苦々しい顔を竹子に向けた。
「では、父上に同席して貰う様に……」
「嫌!父は絶対に嫌!父が居たら、一言も喋らないから。
 ――其れに、警部さん、父とお知り合いなんでしょ?父から、何度か借金をしているそうじゃ有りませんか。だから、父の言う事に逆らえず、其の探偵さんを捕まえた。
 そんな風で、まともな取り調べなんて出来ますの?」
 ……其れを聞いて、零は驚いた。此れまでの印象からは想像も出来ない強かさ。
 先程まで涙ぐんでいた竹子の目には、人を見下す様な色が宿り、其れを見て零はゾッとした。
「では、母上……」
「母が如何云う人だか、貴方なら分かっているでしょう?母に誘惑された事も、一度や二度じゃあ無いでのは有りません?其れを他の方に話せば、都合が悪いのでは無くて?」
 ……完全に形勢は逆転した様子だ。百々目警部は歯ぎしりをして竹子を睨んでいたが、やがて其の目を零に向け、
「貴様の同席を許す!――但し、今聞いた事を他へ漏らしたら、一生牢にぶち込んでやる!」
と言い残し、部屋を出て行った。


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/