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 代わりに、取り調べを命じられたのだろう、部下らしい刑事が入って来た。
 香西と名乗った若い刑事は、神妙な顔をして竹子の前へ座った。
 其れを横から見る様に、零と桜子は、昨日と同じ席へと着いた。
「―――えー、先ず、昨晩のアリバイですが……」
「昨日は、此方の探偵さんたちと此処で話をした後、自分の部屋へ参りましたわ」
「其れを証明する人は?」
「部屋に一人で居たのですから、証人は居りません」
「では、あの荒縄は?」
「先程、警部さんにもお話しした通り、――首を括ろうと思ったのです」
「なぜ、其の様な事を……」
 すると、竹子は顔を伏せ、目尻から涙を落した。
「――こんなに怖い思いをする位なら、いっそ、死んだ方がましだと……」
 竹子は嗚咽を漏らし、顔を着物の袖で覆った。
 
 先程の話を知らない香西刑事は、竹子の涙に同情する様な顔を見せたが、零には、其れが演技である様にしか見えなかった。
 桜子も同じ様で、非常に冷めた目で其の様子を見ている。
 
 「………自殺をなさろうとした経緯を、もう少し詳しくお話し頂けませんか?」
 香西刑事が促すが、竹子は泣き声を上げるばかりで、話そうとしない。仕方なく、零が口を出した。
「此の村には伝承が有りまして、双子が産まれた時、其のどちらかを山の天狗に捧げなければ、村に災いが起こると云うものです。
 しかし、竹子さんの父上は、そうはなさらなかった。其の為、彼女たち姉妹は、村の人たちから、良く思われていなかった様です」
「―――貴方は?」
 香西刑事は、初めて零たちの存在に気付いたと云う様子で此方に顔を向けた。
「其の件で、竹子さんから依頼を受けて居ります、探偵の犬神と申します。先程まで、容疑者として捕まっていました」
「あぁ、あの……」
 此の香西刑事と云う人は、心底真面目で人が良い人物の様だ。立ち上がり、零に頭を下げた。
「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳有りませんでした。其れに、捜査に有益な助言をして頂いたと聞いて居ります」
「いえ、其の様な事は……。如何か、頭をお上げください」
 零が逆に恐縮せねばならない様な態度でペコペコした後、香西刑事は続けた。
「具体的には、何を怖れて居られたので?」
「村の人たちが、お父上の目を盗んで、竹子さんたち姉妹に良からぬ事をするのではないかという不安、そして、同じ恐怖に駆られた梅子さんに、殺されるのでは無いかと云う恐怖。――そういった処ですか?」
 零が言うと、竹子はコクリと肯いた。
「其れで、貴方は如何いった依頼で?」
「天狗退治です。迷信の元を断ってしまえば、其れ以上、話はややこしく為りませんのでね」
「しかし、そんな事をしては……」
「更に村の人の反感を買うのではないか、と?」
「まぁ、……そう云う事です」
 香西刑事は、真面目であるが故に、刑事と云う職に有りながら、迷信だと否定出来ないのだろう。――余り出世は見込め無さそうな人だと、零は思った。
 
 「伝承と云うのは、多くは人が都合良く作り上げるものです。
貧しい家に双子が産まれても、残念ながら育て切れない。ですから、理由を付けて口減らしをする。――若しくは、跡目相続の際に、後の禍根と為らぬ様にと、其の存在を抹消する。
 天狗は、其の言い訳にされたに過ぎないと、私は思っています。第一、天狗に人身御供など、此れ程迄に科学が進歩した世にあって、余りにもナンセンスだと思いませんか?
 ですから、村の人たちが言う処の天狗は、木住野家に何らかの悪意を持つ者の嫌がらせだと、私は考えているのですがね」
「はぁ」
 香西刑事は、困惑した様な顔をした。
「……もしかして、刑事さん、此方の村のお生まれで?」
「いえ、そうでは有りません。しかし、昔から霊感の様な物が有って、良く妖怪だの幽霊だのを見るものですから。――誰も信じてはくれませんけどね」
「はぁ、なるほど……」
 やはり、この人は刑事には向いて居ない、零は思った。
 
 「――そして、其の天狗に怯えた竹子さんが、村人たちの凶行を怖れる余り、妹の梅子さんを殺したと。……筋は通りますね」
「ですから、私は人殺しなどして居りません!」
 竹子がヒステリックに叫んだ。
「私も、竹子さんでは無いと思いますね」
 零が言うと、香西刑事は不可解そうな顔を零に向けた。
「なぜ、そう言い切れると?」
「人間、そう簡単には死なないものです。竹子さんの細い腕に、人一人を締め殺す程の力が有るとは思えません。遺体の様子から、梅子さんも大人しく殺された訳では無く、抵抗もしている様ですから。犯人は、程度はどうであれ、必ず腕か何処かに引っ掻き傷が有る筈です。竹子さんの手に、其れは有りますか?」
「……ならば、犯人は他に居る、と……?」
「私は、犯人は男性では無いかと思いますけどね」
「なぜ?」
「あれだけの跡を残す様な締め方が出来るのは、相当な力の持ち主でしょう。女性には無理だと思いますよ」
 
 すると、香西刑事は渋い顔をした。
「となると、また一から洗い直しですか」
「そうされる事を、私はお勧めしますけどね。――ところで、先程警部さんは、竹子さんにだけアリバイが無かったと仰いました。他の皆さんには、どの様なアリバイが?」
 香西刑事は手帳を眺めた。
「先ず、松子さんは、貴方のご存知の通り。
 ご当主の十四郎さんは、竹子さんと梅子さんの部屋に不審な侵入者が来ないかを見張る為、お二人の部屋の在る二階への階段が見える居間で、下男の貞吉さんと将棋を打っていました」
 ――恐らく、松子が零たちを連れ戻した事に気付き、貞吉を牽制しつつ、零が妙な行動を起こさないか、警戒していたのだろう。
「其れから、奥様の鶴代さんは此処に残り、松子さんのご主人の清弥さんと下女の亀乃さん相手に、趣味の骨董の話をしていた。
 ――つまり、午後十時前には、部屋に一人で居た竹子さんと、被害者の梅子さん以外、誰かと共に行動をしている事になるのです」
「ほほぅ……」
「そして、雨の降り出した午後十時過ぎに、全員、自分の部屋へと引き上げています」
「其れはまた、都合良く出来ていますね」
「えぇ。しかし皆さん、其の位の時間に床に就く習慣だそうで……」
 まぁ、此の様な田舎では不自然な行動では無い。
「つまり、雨の降り出す前にアリバイが無いのは竹子さんだけ、降り出した後には、全員にアリバイが無いと云う事になりますね」
「ですが、犯行時刻は雨が降る前だと云うのは、貴方が言われた事でしょう?」
「確かに、そうですがね……」
 ――此処まで都合良くアリバイを見せ付けられると、逆に怪しく思える。此のアリバイの完璧さが、犯人の意図だとしたら……。
 
 顎に手を置いて考えて居ると、後ろで扉の開く音がした。
 見ると、百々目警部が初老の男を従えていた。――其の男の手にも、手錠。
「第三の容疑者だ。香西、取り調べをしろ」
 
 
 
 其の男は、鈴置熊八と名乗った。――昨夜、松子が話していた、猟師のまとめ役の男だろう。
 熊八は竹子に忌々しい顔を向け、ひとつ空けた隣の席に腰を下ろした。
「……あの、なぜ、貴方が容疑者だと?」
 香西刑事が言うと、熊八は
「知らん!あの、妖怪みたいな名前の警部に聞いてくれ!」
と怒鳴った。
「……恐らく、動機の点で、と云う事ではありませんか?」
 零が言うと、熊八は極めて不機嫌そうな顔を向けた。
「あんたは!?」
「私は探偵です。捜査のお手伝いをしています」
 すると、香西刑事が慌てた様子で手を振った。
「べ、別に、貴方に手伝って貰っているつもりは有りませんから!」
 しかし、零は構わず続けた。
「そして、昨日の晩、貴方にはアリバイが無い。そうでしょう?」
「アリ……、何とかって、何だ?」
「不在証明、と云う意味です。つまり、貴方が事件の起こった時刻、事件の起きた現場に居る事が出来ないと証明出来れば、アリバイとなります」
「フン、俺は昨日の夜は、集会場で仲間と酒を飲んで、九時過ぎには寝ちまったよ!」
「家で、ですか?」
「そうだ。女房と息子に聞けば分かる!」
「残念ながら、ご家族の証言では、証拠にならないのです」
「そんな事、知った事か!」
 
 ――其の時、ふと思った。
 木住野家の人々のアリバイが証明されるのに重要な人物、つまり家族以外の人物が、見事に配置されているように思える。家族以外の人物、――下男の貞吉と下女の亀乃、そして、零と桜子。此れも、犯人の意図なのだろうか?
 ……だとすれば、木住野家の人間以外に、此の様な工作は不可能であろう。
 
 「――兎に角、俺は何も知らねぇ!猟の準備で忙しいんだよ!さっさと此れを外してくれよ!」
 熊八は憤慨する様に手錠を示した。
「そうは行きませんよ。此方だって仕事なんですから。潔白が証明される迄、此処に居て貰います」
「ふざけんな!知らねぇっつってるだろう!!」
 熊八が凄むが、さすがに刑事だけあって、こう云う場面では度胸が据わっているらしい。香西刑事は平然と受け流して、質問を返した。
「では、動機については、どう言い訳するんですか?貴方が梅子さん竹子さん姉妹に、執拗に嫌がらせじみた因縁を付けていたのは、確認が取れてるんですから」
 
 「其の件なのですがね……」
 零が言うと、熊八はギロリと此方を睨んだ。
「天狗を、何処で見掛けられたのですか?」
 すると、熊八は少しキョトンとした表情をした。
「何処でって……、アレだよ、俺らの仕事場が山だからさ、山の方へ行った時に……。
 其れに、村ん中でも見たって奴は居るぜ?」
「其の方は、具体的には、どの辺りで見たと?」
「此処、木住野家の近くの、ほら、塀の脇に掘立小屋が有るだろ?あの辺だよ」
「其れは誰ですか?」
「一人じゃねぇ。何人も見たって奴が居るから、誰とは言えねぇなぁ」
「そうですか。――で、其れは本当に天狗でしたか?」
 零の言葉に、熊八は再びギロリと表情を強張らせた。
「……てめぇ、俺を疑ってるのか?根も葉も無い嘘を付いて、旦那に言い掛かりを付けてたと?」
「いいえ、そうは言っていません。しかし、本物の天狗ならば、空を自由自在に飛び回ったり、風を起こして建物を揺らしたり、そんな事をしてもおかしくない筈です。
 そういう事は、有りましたか?」
「……いや、他の奴は知らねぇが、俺は普通に走ってるところしか見てねぇ」
「では、其れが天狗では無く、天狗の格好をした何者かである可能性も否定できない、と?」
「…………」
 そう言うと、熊八は零を睨んだ。
「じゃあ、何か?俺らは誰かの悪戯に騙されて、騒ぎを起こした阿呆だと!?」
「そう云う事になりますかね」
「てめぇ!!」
 熊八は零を殴らんばかりの形相をして立ち上がったが、香西刑事が押さえ込んで座らせた。
「おい!こいつを怒らせてどうする気なんだ!?」
 香西刑事も零を睨む。
 しかし零は平然と答えた。
「根拠も乏しい迷信に惑わされて、うら若き乙女に嫌がらせをするような大人が、阿呆で無ければ何なのです?
 其れに、貴方は殺人事件の容疑者なのです。此れまでの貴方の行動が、其の様な結果に導いたのです。其れは反省すべきではありませんか?」
 すると、熊八は歯軋りをしながらも黙った。そして、竹子をジロリと睨む。
 
 一方、竹子はしてやったりと云う顔で、熊八に視線を向けている。
 隣で、桜子が小声で囁いた。
「こんなに若い女の子の気を引いて、如何する気なんです?」
「気を引くも何も、私は探偵です。依頼人を守る義務がありますから」
「其れが、殺人犯でも?」
「そうでは無いと思っています」
「もし、その予想が違ってても、私は知りませんからね」
 
 桜子に言われて零は思った。
 ――女性の桜子から見て、人をひとり締め殺す事は、不可能ではないと思えるのだろうか?
 もしそうならば……。
 
 再び扉が開いた。
 ――また百々目警部だ。
 そして、傍らに、亀乃。――その手首にも、手錠が掛けられていた。
「おい、こいつにも動機がある。調べろ」


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