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 「――私、桜子さんの機嫌を損ねる様な事を言いましたかね?」
 零が言うと、ハルアキが書斎から出て来た。
「お主、重症じゃな」
「何がです?」
「自覚が無いのなら、説明しても仕方が無かろう」
 ハルアキは、窓辺に置いた金魚鉢の脇に椅子を引き摺った。
 
 零は事務机に腰を預けて、煙管を取り出した。
「――しかし、今の話はどう思われますか?晴明様」
「先程、そなたが申しておった通りだと、拙者は思う。人身御供などと云う風習は、人間の身勝手な都合に過ぎぬ」
 ハルアキは椅子に乗り、金魚鉢にパラパラと煮干しの粉を撒いた。金魚がゆらゆらと尾を揺すりながら、水面に浮かぶ其れに群がる。
「お主の好きな人助けじゃ。お主も、今晩から行けば良かったではないか」
 ガラスの金魚鉢の、湾曲した光景を眺めながら、ハルアキが言った。
「子供の面倒を放り出して出掛ける様な、無責任な大人にはなりたくありませんのでね。……今回は、解決するまで戻れそうにない気がしますので」
「――拙者を子供扱いするのか?」
「一人で風呂屋に行って、食事をして、出来ますか?」
「馬鹿にするな!拙者を誰だと思って居る!?」
 ハルアキが睨むが、零は平然と煙草の煙を吐き出した。
「お金の使い方、分かりますか?」
「ぐっ……」
 ハルアキは口を尖らせてそっぽを向いた。
「―――大家さんに頼んでおきます。食事とお風呂は、大家さんに付き合ってもらってください。……ちゃんと子供のフリをするのですよ?」
「分かっておる!」
 ……零は、ハルアキが茶碗片手に「おばちゃん、美味しいね!」などと言っている処を想像して、可笑しくなった。
「……何をニヤニヤしておる?」
「いや、別に」
 零は煙管を口に当て、窓の外に顔を向けた。
 
 「―――其れに、先程出掛けなかったのは、もうひとつ、気に為る事がありましてね」
「ほう、何じゃ?」
「双子と云うのは、完全に同じ星の下に生まれています。其の行動や運命までをも、無意識の内に共有している場合も多い」
「其れが如何した?」
「一人が死の恐怖に怯えて居るのなら、もう片方はどうなのか……。
 ――と考えてみたのですが、どうやら、予想は当たっていた様です」
 
 窓から見下ろす路地に人影が見えた。其れは、建物を見上げて確認した後、此処へと繋がる階段の入口に姿を消した。
 
 間もなくノックの音が聞こえ、慌ててハルアキは書斎へと駆け込んだ。
 零が入口の扉を開けると、其処には梅子と同じ顔をした少女が立っていた。
 
 しかし、違う処が一点だけある。――其れは、衣装。
 梅子が西洋人形なら、此方は日本人形。
 鮮やかな柘榴の柄の着物に塗りの下駄、そして頭には大きな鬼百合の髪飾りを挿している。
 
 応接に案内すると、少女は木住野竹子と名乗った。
 そして、潤んだ目を零に向け、梅子と同じ声で言った。
「助けてくださいませ。此の儘ですと、妹に殺されそうなのです」
 
 
 
 零が木住野家へ赴いたのは、結局、其の日の日が落ちた頃だった。
 
 昔ながらの漆喰壁に囲まれた其の様子は、さながら武家屋敷の様だった。
 竹子の話では、母屋の他に、離れが二棟と茶室、そして山へと繋がる敷地の奥に、天狗を祀る祠があるらしい。
 
 暗いので良くは見えなかったが、木々が立ち並んだ庭園の敷石を進むと、二階建ての豪壮な屋敷が見えた。
 玄関を入り、竹子に伴われ応接室へ入る。すると、桜子が驚いた様子で目を向けた。
「あれ?明日じゃ無かったんですか?」
「予定が変わりました。迷惑ですか?」
「いいえ……」
 そして立ち上がり、零の傍らに来ると、そっと囁いた。
「後はお願いします。もう、私の手には負えませんから」
 そして、殊勝な顔をして背後へ畏まる桜子を見て、零は不審に思った。――しかし、顔を室内へ戻して、何となく状況を察した。
 
 応接室とは云え、二十畳程の広さはあろうか。ゆったりとしたカウチが並び、その中央には、どっしりとした石のテーブルが置かれている。
 そしてそれぞれのカウチに、此処の家人と思わしき人々が座っている。……竹子を含め、計六名。梅子も居る。その誰もが、険しい顔をしていた。
 その原因は……。
 零が、正面奥の席に座る人物に目を向けると、其の人物はガバッと身を起こした。
「何をしに来た!?お前も娘を誑かして、木住野の家に入り込もうと云う魂胆か!」
 
 ――さすがに此れには、零も渋い顔をせずにはいられなかった。依頼されてわざわざやって来たと云うのに、顔を見るなり怒鳴られては、あった話では無い。
「……お父様、違うの。私がお願いして来て貰ったのよ」
「フン。若い娘に相手をされて、のぼせ上って付いて来たのだろう。そんな輩、送り狼に決まっている!儂の目の黒い内は、竹子と梅子にだけは手出しをさせんわ!」
 
 「……私にさえこの調子だったんですよ」
 後ろで桜子が囁いた。――まだ、男の零なら分からぬ話では無いが、女性の桜子にはどの様に言い掛かりを付けていたのか……?疑問に思ったが、今は其れを確認する様な雰囲気では無い。
 
 「――お父様、頭ごなしに其の様な事を仰ってはいけませんわ。まず、お話をお聞きになっては如何ですの?」
 脇のカウチに座る、艶やかな着物姿の女性が言った。――恐らく、梅子と竹子の姉の、松子だろう。
「此の様な何処の馬の骨とも知れん奴の話など、聞いた処で時間の無駄だ!
 其れに、お前の例が有るから言っているのだ。儂は未だ、清弥との結婚を認めた訳では無いからな!肝に銘じておけ!」
 すると、松子は隣に座る男と顔を見合わせ、首を竦めた。
 
 「ですけれど、あなた、折角遠くからお越し頂いたのですもの、お茶くらいはお出ししたら如何ですの?私は、話がよく分かりませんので、お話はお聞きしたいですし。――これ、亀乃、お茶をご用意して」
 松子の向かいのカウチの女性――多分、正面に座る人物の妻で、梅子たちの母親だろう――が手を叩いた。すると、下女らしい少女が現れ、「はい」と言うと駆け足で立ち去ろうとした。――ハルアキよりも少し上な程度の幼年だ。あの年で下働きとは大変だろうと、零は其の後ろ姿に目を向けた。
 だが、其の行動は此の家の主の憤怒に油を注いだ様だった。
「亀乃!」
 正面の男は激昂し、其の少女を呼び止めた。
「貴様、誰に雇われていると思っている!?儂が出さんでも良いと思っているから敢えて何も言わなかったものを、鶴代の言う事の方を聞くのか!此の家の主を、誰だと思っているのだ!!」
 ――無茶苦茶だ。怒りを向けるとするならば、妻の発言に対してであるべきだろう。なのに、言い付けを聞いただけの下女に当たるとは、八つ当たり以外の何物でも無い。
 しかし、亀乃と呼ばれた少女は、ビクッと飛びずさって、「申し訳御座いません!」と、床に頭を付けて平伏した。
 
 ……其の姿が余りにも可哀そうに思えて、零は亀乃を庇う様に立った。
「分かりました。私としても、ご家庭内のいざこざの種に為るのは本意ではありません。此れで失礼します。
 ――しかし、天狗から娘さんがたをお護り出来るのは、東京中でも私くらいだと、自負しておりますけどね」
 「天狗」という言葉を聞いて、家主の表情が一瞬固まった。其れを見て、零は続けた。
「私、ひとえに探偵と申しましても、主に『目に見えぬもの』を相手として居ります。陰陽道にも、些か造詣が御座います。
 娘さんがたは、天狗を怖れて居られる。お話しをお聞きして、此れは私が解決すべき事件だと確信して、此処までやって参った次第ですが……、残念です」
 
 すると、家主の男は立ち上がった。そして、部屋の隅に置かれた背の高い家具を開き、其処から何やら細長い物を取り出した。
 ――其れを零の方へ向けたので、其れが何なのかが分かった。……猟銃。
 零の後ろで、桜子が「キャッ」と声を上げた。
 男は言った。
「天狗など、此れで撃ち殺してくれるわ!貴様も天狗だと思われたくなければ、無駄口を叩かずにさっさと失せろ!」
 
 「――桜子さん、行きましょう」
 零は銃口に背を向け、桜子を促した。――撃つ気は無いだろうが、念の為、桜子の肩を押して前を歩かせる。
 部屋を出て、来た廊下を戻ると、玄関の脇に下男らしい若い男が立っていた。無言で零たちに履物を差し出し、恭しく礼をして見送ると、戸を閉めた。


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