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 そして、翌日も、零は御影家へと出掛けた。
 しかし、当然ながら、昨日よりも手荒に追い出されてしまった。
 
 この日は、それで帰らず、弥生に聞いた『黒が淵』へ寄ってみた。
 道を少し脇へ入ると、竹藪の向こうに、静かな水面が広がっているのが見えた。――その脇の竹藪の中に、小さな祠がある。……これが、「竜神」を祀るという祠なのだろうか?しかし、このところあまり手入れはされていないようで、今にも崩れ落ちんばかりに朽ちていた。
 祠の向こうを見ると、竹藪の向こうに、御影家の蔵が見える。丁度、御影家と沼の間にこの祠がある位置関係になっているのだ。
 
 その時、ふと、蔵の処で何かが動いた気がした。
 ……よく見ると、竹藪に面した蔵の窓の部分、壁と同じ様な漆喰の分厚い外窓が付いているのだが、それが、少し開いているように見える。
「おや……」
 ――弥生の話の通り、中に物の怪の類が居るとするならば、そこから外を覗いていてもおかしくは無い、か。
 しかし、蔵を開くのは、もう少し、「事情」を調べてからでも遅くは無いだろう。
 
 零は、祠に目を戻した。
 枯れた笹の葉に埋もれそうな祠の中を覗き込んでいると、
「あんた、何しとる!?」
と、声を掛けられた。――見ると、近所の人だろう、割烹着を着て手拭いを頭に巻いたおばさんに、見咎められたようだ。
「賽銭泥棒では有りませんよ。郷土研究をしている者でして、黒が淵について、少し調べているのです」
 そう言いながら零が微笑みかけると、おばさんは急に態度を変え、おやまぁとニソニソと笑顔を見せた。そして、家でゆっくり話してやるから来いと言い、零を手招きした。
 
 そのおばさんの家は、少し行った田んぼの中の集落にあった。小作農らしい、粗末な家だ。
「遠慮せんと上がった上がった、ほら」
 零は、おばさんに背を押されるように家に上がり込んだ。
 ――火鉢のある居間に、なぜが道すがら合流したおばさんの知り合いらしい、これまた年配のご婦人がた数人も上がり込み、さながら集会場と化した。
 
 「――あんた、学者さんかい?とてもそうは見えないけど」
 そんなおばさんのひとりが、零に煎茶を勧めながら言った。
「学者と云う程の者では有りません。趣味で、郷土の伝承などを調べているのです。
 ……そこの黒が淵には、竜神にまつわる伝説があるだとか」
「あぁ。あの沼には、昔から竜神様が棲んでるって言い伝えがあってね、祠を作ってお祀りしているんだよ」
「それにしては、失礼ながら、あまり手入れされている様には見えませんでしたが……」
 
 すると、おばさんたちは顔を見合わせた。
 ――零には分かっていた。少し話の道筋をつけてやれば、この面々なら零の知りたい事を全部教えてくれるだろう。
 たまたま、世話好きそうな人に声を掛けられたから、逆に都合が良かった。しかし、例え誰にも出会わなかったとしても、何処かの家にお邪魔して、話を聞こうとは思っていた。
 
 案の定、家主のおばさんが口火を切った。
「そりゃ、ワシたちだって、祠をきちんと掃除して、春と秋のお祭りだってやりたいさ。けどね……」
「あの祠、ほら、あの竹藪の向こうに大きな蔵のある家があっただろ?御影さんっていう、ここらの大地主なんだけどね、そこの持ち物だから、勝手な事をすると怒られるんだよ」
「ほほぅ……」
「前だって、ほら、三年前の干ばつの時だよ、ここの沼が干上がっちまってね、ワシら困って、竜神様に雨乞いをするように、御影さんにお願いに行ったんだよ。そしたら、アンタ……」
「あの蔵に、お祭りの道具とか、全部仕舞ってあるから、道具だけでも貸してくれと言ったんだがね、物凄い剣幕で怒鳴られてね」
「神や仏なんか居る訳が無い、どうしても居ると言い張るんなら、今此処に連れて来いと、こうだ」
「前は、蔵にも出入りさせてくれてたのに、今じゃ見せてもくれないからね」
「昔はあんな人じゃなかったのに、嫁さんを貰ってから変わったねぇ」
 
 ――計画通り。
 
 しかし、そんな素振りは見せず、お茶を啜りながら零は言った。
「ほう。以前はお祭りをしていたのですか」
「そうそう。ご当主が率先して準備を手伝ってくれてたくらいだ。それなのに……」
「二十年くらい前だったかねぇ、ご当主が嫁さんを貰ったのは。それからは、手の平を返した様に、あの祠に手を掛け無くなってね」
「あの嫁さんが偉いんだようよ。蔵前の老舗の米問屋の娘か何か知らないけど、いっつも顔を白く塗りたくって派手な格好して、まるで女郎じゃないか。ワシは好きじゃないね」
「ちょっと!そんな事、もし本人の耳に入ったら……」
 おばさんのひとりが小声で制するが、言った方も言われた方も、ニヤニヤしている。
 
 「それにあの娘」
「御影さんとこの一人娘なんだけどね、弥生と言ったかな?それが、母親よりも酷いって云うじゃないか。毎週、日本橋に出掛けて行っては、両手に抱える位の服を仕立てて来るんだろ?」
「そのおかげで、身上が傾いたって」
「田畑も売りに出す程だから、余程困ってるんだろうね」
「病気じゃないのかい?買い物依存とかいう」
「ご当主もそれを心配して、何人もの医者に診せたそうなんだよ。けど、未だ治らないみたいだね」
 
 ……どうやら、弥生の依頼の真の目的は、言葉通り「気味の悪い蔵を調べて欲しい」のでは無く、「開かずの蔵に金目の物が無いか調べたい」のだろう。
 財産を使い果たし、それでもまだ買い物がしたい。
 その心理は、零には理解出来そうも無かった。
 しかし、今の話を聞く以上、あの蔵が「開かずの間」である事には違い無いようだ。
 
 そう考えていると、ふと、おばさんのひとりが言った。
「娘さんの病気は、竜神様の祟りなんじゃないのかい?」
 一瞬、おばさんたちは口を閉ざし、お互いを見回した。それから、
「ワシもそう思ってたんだよ!」
「だって、旦那さんが竜神様を世話しなくなった頃と、娘が生まれたのと、同じ時期だったじゃないかい?」
「もっと言えば、祝言してからすぐにあの娘が出来たろ?だから、あの嫁が厄を拾ってきたのかも知れないよ?」
と、口々に言い出した。
 まぁ、それも有り得ると考えた上で、零も黒が淵を調べようと思ったのだが……。
 そんな事をここで憶測していても、何にもならない。
 
 零は話を遮ってみた。
「しかし、蔵前の米問屋の娘さんなんかが、なぜ、田舎――と言っては失礼ですが、街から離れたこの様な場所に、嫁いでいらしたのです?」
 ……既に、「黒が淵の竜神伝説」とは、話は掛け離れている。しかし、もうこうなったらおばさんたちのお喋りは止まらない。
「まぁね、身上が傾いたってのは、娘さんの浪費癖もあるけど、その前から、ちょっとまずかったみたいでね」
「今のご当主が嫁を貰う少し前、先代ご夫婦が亡くなってね」
「先代は、そりゃあやり手の商売人だったもんだから、代が変わって、商売がうまくいかなくなってねぇ」
「取引先の嫁さんを貰って、お金の融通をしてもらおうって魂胆だったらしいよ」
「そこまでは良かったんだけどねぇ」
「何せ、あの嫁入り、そりゃあもう立派なモンだったからねぇ」
「今まで生きて来た中で、あんなに豪勢な花嫁道具を見たのは、あの時だけだったねぇ」
「女中さんまで連れて来てたじゃないか。……そう言えば、あの女中さんて、あれからどうしたの?」
「何?忘れたのかい。嫁に来てすぐにお暇を出されてたじゃないか」
「何かあったのかい?」
「まだ若い女中さんだったから、ヘマでもして追い出されたんだろうよ、可哀そうに」
「あの嫁さんならやりかねないわな」
 
 ――それから、流れで話題は零の身の上に移行し……。
 独り者だと聞くと、「うちの娘をどうだ?」という話になって来たので、零は早々に退散した。
 
 
 
 次の日。
 零は蔵前に居た。
 老舗の米問屋と云うのはそう数も無く、御影家へ嫁を出した「大隅米穀店」は、すぐに見付かった。
 近所の人を捕まえて、話を聞いてみたのだが……。
 
 「――あぁ、庸子さんの事だね?」
 初老のその女性は、すぐに思い当ったようだ。
「そりゃあ綺麗で気立ての良い子でね、あんな田舎に嫁がせる事は無かっただろうに、可哀そうだったよ」
 ――あれ?昨日のおばさんたちの話と少し違う。
「その庸子さんというのは、顎が尖っていて眉の細い方でしたか?」
 昨日の話で、零を門前払いしたのが、御影家の奥方である事は察していた。念の為に聞いてみただけなのだが、しかし、そのおばあさんは首を横に振った。
「いやいや、どちらかというと丸顔の、あまり飾りっ気の無い娘だったよ」
 ……まぁ、特に女性は、年を重ねれば容姿も変わると云うが……。
 何となく嫌な予感がして、零は確認してみた。
「その、庸子さんを、最近見掛けた事はありますか?」
「それがさぁ、嫁に行ったっきり、盆や正月にも顔を出さなくなってしまってね。大隅の旦那さんも寂しがってたよ」
 
 ――零の中で、何やら暗くて黒い靄が、底の見えない深淵となって広がっていくように感じた。
 
 それから、嫁入りに付き添った女中の事も尋ねてみた。
「あぁ、お菊ちゃんだね。庸子さんが嫁に行ってすぐに、お暇を出されたと挨拶に来てたけど、それからどうしたのかねぇ」
 
 ……その後、近辺に住む何人かにお菊の事を尋ねてみたが、暇を出されて以降の事は、誰も知らない様だった。以前はお菊と親しくしていたという者も居たが、現在は、全く居所も分からない様子で……。
 零は思った。――意図的に行方を眩ましたのではないか。
 もしそうならば……。
 零の予感は、更に確定的となる。
 
 それから数日、零は蔵前近辺と、かつての女中仲間やらを回り、お菊の消息を探った。
 すると、ようやく、最近お菊らしい人を見掛けたという人物に行き当たった。
 
 「――えぇ、確かに、似てる人は見たわよ。声掛けてみたけど、違うって言われたわ。……でも、その声まで似てたから、ビックリしたわ」
 元、大隅米穀店で女中奉公をしていて、今は水商売をしているという女で、
「半年くらい前だったかしら。新宿で客と一緒に飲み屋に入ったら、そこの女給が凄く似てたの。でも、違うって言ってるんだから、それ以上は聞かなかったわ」
と、興味無さそうに煙草を吹かしながら言った。
 
 それから、零は新宿に向かった。
 教えられた通りの店に入ると、――お菊に似た女性は、未だ働いていた。
 客として席に着き、注文をしようと、その女性を呼び、言った。
「熱燗と奴と、――御影庸子さんの事を、少しお伺いしたいのですが」
 すると、明らかに動揺した様子を見せたので、零は確信した。
 
 ―――この女性が、全ての謎を解く鍵を握っている。
 
 「お仕事のお邪魔をするつもりは有りません。――明日、お話を伺わせて頂けませんか?」
 そう言い、名刺を渡すと、お銚子一本だけ飲んで、零は店を後にした。
 
 その翌日。
 犬神心霊探偵社に、お菊はやって来た。
「――庸子様の事をご存知なのなら、もう、隠す必要も無いのですね。
 ……全て、お話しします」
 お菊は語り出した。


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