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 「―――で、どんな話だったのです?」
 桜子が聞くと、零は含みを持たせた笑いを見せた。
「あまり先を焦る事はありませんよ。もうすぐ、ご本人がいらっしゃると思いますので」
「え?」
「依頼人ですよ。――お菊さんの話を聞いて、『開かずの蔵』の謎は解けましたので、今日、御影さんのお宅へ、開ける為の下準備に行って来たのです」
 
 
 
 この日、零は、何時もと違う格好で御影家を訪れた。
 ――狩衣に袴、烏帽子――、要するに、神主の常装だ。……これで鉄道に乗るのははばかられたので、途中で着替えたのだが。
 さすがにこれには、追い帰そうと強張った顔で現れた御影家の奥方も、唖然と目を見開いた。
「私、実は神職を致して居ります。失礼ながら、お宅様には、何やら不穏な気を感じます。蔵の鍵が開かない他にも、何かお困り事があられるのでは?宜しければ、お祓いだけでもさせて頂けないでしょうか?」
 ……さすがに、聖職者を無下に追い払う訳にもいかない。
 奥方は、渋々零を中へ通した。
 
 奥方に従い、玄関を入り、廊下を進んで行き、零は驚いた。――大きな屋敷なのだが、そのほとんどの部屋が、箪笥や、それにも入り切らない衣装で溢れているではないか。鴨居にまでズラリとぶら下げられ、これでは、襖を開けるのにも一苦労だろう。
 しかし、奥方はそれには触れず、真っ直ぐに神棚のある部屋へと零を案内した。……この部屋にも、箪笥が幾つか置かれている。
 
 そこで、零は祝詞をあげる為と称して、家族の名前を尋ねた。――三人家族で、ご当主は御影源三、娘が弥生、そして……
「私は庸子と申します」
 奥方は名乗った。
 それを確認した上で、使用人に塩やら酒やらを用意してもらい、零はお祓いを行った。
 祝詞をあげ、玉串で清め……
 
 その最中、零は突如として倒れた。
「……ど、どうなさいましたか!?」
 庸子と使用人が慌てて零に駆け寄る。――零はその腕を掴み、庸子の顔を見た。
 
 ……その顔は、先程までの零の顔では無かった。
 目を大きく見開き、薄笑いを浮かべた姿を見て、庸子は顔を蒼白にした。
 
 「………開けろ」
 声までもが別人の様だった。しわがれた老婆の様な、……いや、この世のものとも思えない声に、庸子は零の手を振り払おうとした。しかし、その手はガッシリと庸子を掴んで離さない。
「……わた…し……を………出せ……」
「嫌あぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
 今度は、声を上げたのは庸子の方だった。
 力一杯突き飛ばす様にして零の手を逃れ、そのまま腰を抜かして床に尻をついた。
 零もその勢いで床に頭を打ちつける。
 
 零は、その痛みで正気を取り戻した様だった。
 そして、紙の様に白い顔でガクガクと顎を震わせる庸子を見て、慌てて起き上がった。
「あの、――やはり、何かが取り憑きましたか。昔から、憑依され易い体質でして。もしかしたら、と思ってはいたのですが。……蔵の方に、何かありますね?」
 頭を押さえる零に手拭いを渡しながら、使用人が言った。
「あ、あんた!とっとと帰っとくれ!!これ以上余計な事を言ったら、承知しないよ!」
 そうして、手にした箒を振りかざさんばかりの勢いで睨んで来るものだから、零は部屋をお暇をしようと立ち上がった。
 そして、最後に言った。
「――明日、蔵が開きます。そうなりましたら、もう一度、お祓いさせて頂きに参ります」
 
 
 
 「―――だ、大丈夫なんですか?悪霊に乗り移られたりして」
 桜子が目を見張って零の顔を見ると、零はフフフと笑った。
「演技ですよ」
「……え!?」
「私が来た事を、奥方がご当主に黙って居られたら困るものですから、少し大袈裟に驚いてもらって、確実に今晩、伝えて頂きたいと思いまして。それには、あの位しておいて丁度良いのですよ」
「はぁ……」
 ――何だかよく分からないが、桜子は唖然とするしか無かった。
「ところで、話は戻りますが、こういった経緯なのですが、桜子さんには、弥生さんが買い物をしたがる理由は分かりますか?」
「う~ん……」
 少なくとも、桜子の経験して来た物事を遥かに超えた事態ではあるようだ。そんな事など、想像したくても出来る筈が無い。
「分かりません。――先程のオバサンがたが言う通り、竜神様の祟りか何かじゃありませんかね」
「聞くまでも無かろう。裏には、物の怪が潜んでおる」
 
 ――急に子供の声がして、桜子はビックリしてそちらを見た。……すると、薪ストーブの前に、あの子供が居た。
 湯気を立てる薬缶の横に干し芋を並べながら、少年は言った。
「その、庸子とかいう女子が、全ての元凶であろう」
「元凶と云うには、少し、可哀そうではありませんか?」
 ――零は、この子供に対しても敬語を使うらしい。何だか妙な気がするが……。
 桜子の不可解な目線を気にするでも無く、零は続けた。
「運命、と云うには、余りにも悲し過ぎる。……どうにか、ならなかったものですかね」
「あの……、私、分かってませんけど」
「この世は無常。運命とは、そう云うものだ」
「そうでしょうかね。私には、些か納得がいきません」
「だから、お主は甘いと申して居るのだ。世の理を肝に銘じておかねば、いつか、その身を滅ぼす事になるぞ」
「だから、私にも分かるように説明してくださいってば!」
 
 堪りかねて声を上げると、零はキョトンとして桜子を見た。
「何を、説明すれば宜しいですか?」
 ――と、まともに聞かれても、何が分からないのかすらも分からない。全く話が掴めていないのだ。……それが自分だけと云うのが、余計に腹が立つ。
「じ、じゃあ、まず、――あんた、一体何者?」
 桜子が指差すと、少年は目を吊り上げた。
「貴様、拙者を『あんた』呼ばわりとは!身の程知らずにも程があろう!」
「まぁまぁ、落ち着いて。――まぁ、私の師匠と云ったところです」
「師匠!?この子供が?」
「だから、子供呼ばわりするでない!」
「子供だから子供って呼んで、何が悪いのよ!……でも、親戚の子を預かってるって……」
「まぁ、大きな意味では、嘘では無いと思います」
「…………」
 更によく分からなくなってきた。
 
 「……でも、人見知りというのは嘘のようね。ちゃんと喋れるじゃない」
 桜子は、干し芋をひっくり返し、「アチッ」と指を耳たぶで冷やしている少年に近付き、その赤い頬を指で突いた。
「よくも、さっきはやってくれたわね」
「な、何の話だ?」
「あんた、妙な術を使うそうじゃないの?その術とやらで、私を眠らせたの?寝てる間に、ヘンな事してないでしょうね?」
「ぶ、無礼者!拙者がお主のような学の無い女子に手を出すとでも思うのか!?……そ、それに、なぜ、『忘却の術』を使ったのに、こやつは覚えて居るのだ!?」
「あなたの霊力が弱まっている、と云う事でしょう」
 零は立ち上がり、窓の外を眺めながら煙草の煙をフゥと吐き出した。
「お、お主のような半人前になど言われたく無いわ!」
 少年はそう言うと、炙った干し芋とストーブの脇で丸くなっていた猫を抱え、書斎に戻ろうとした。
 
 ―――猫!?
 あまりに風景に馴染んでいたので、気付きもしなかった。しかし、少年の腕の中には、確かに真っ黒な毛並みの猫が居る。
 腕の中で居心地悪そうに身をくねらせた猫の金色の目が、桜子の顔で止まった。
 ――お互い、同時に気付いたようだ。
「………あっ!!」
 桜子は思わず声を上げた。猫も同時にビクッとして、少年の腕からするりと抜け出し、部屋の隅へ駆けて行った。
「何だ?知り合いなのか?」
 猫相手に知り合いと云うのも妙だが……。でもあの猫は間違いなく、昨日、桜子が蹴ろうとした猫だ。黒い猫なぞ珍しくも無いが、桜子を見た時の反応からして、間違い無い。
 しかし、「知り合い」になった経緯など、話せるモノじゃない。桜子は慌てて誤魔化した。
「き、昨日、ここに来る途中で見掛けたんです。あらまぁ、此処の飼い猫だったのですか。可愛いわね。名前は何と言うのです?」
 空々しいとは分かっているが、そう言いながら、猫に近付――こうとしたのだが、猫の方が、桜子が向かって来るのを見てタタッと逃げた。……まぁ、憎たらしい!
 すると、少年が答えた。
「名?この場に猫はこやつしか居らぬと云うに、名など必要であろうか?『猫』で十分じゃ」
「―――は?」
 普通、動物を飼う場合、真っ先に名前を付けるものじゃないだろうか?桜子の田舎の家でも、飼っていた牛や鶏にさえ、名前は付いていたのに。
 唖然としていると、少年はあっさりと猫を抱え上げ、扉の向こうへと消えた。
 
 ――何だったんだ?
 
 ボケッと扉を眺めていると、零が言った。
「あまり気にしない方がいいですよ」
「はぁ……」
 しかし……、――とりあえず、これだけは聞いておこう。
「あの子の名前、何と呼べばいいのです?」
 確か先程、アベノ何とかと言っていたが、覚えて居ない。……ここだけは、「忘却の術」が効いたようだ。
「そうですね。……ハルアキ、で、いいでしょう」
「ハルアキ、ですね。覚えておきます」
 いつか、あの部屋から引っ張り出して、あの小生意気な態度を躾けてやるんだから!桜子は心に誓った。
「それはともかく、お客様がいらっしゃいましたよ。お茶の準備をお願いします」


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