忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 翌日。
 桜子が出勤すると、すぐさま零は出掛けて行った。
 ――出掛け様、
「そこの扉だけは、開けない様にしてください」
と言い残して。
 
 見ると、事務所を入って左側に木の扉が有る。この扉の向こうに部屋があるとすれば、位置からすると、階段の向かい側になると思う。
 やるなと言われればやりたくなるのが人の常。桜子は、掃除をしながら、ついついその前に行ってしまう。
 質素で飾り気の無い只の扉。靴音を忍ばせて、そこに耳を当ててみた。
 ――洋装を貫いているのは、何もモダンガールを気取っている訳じゃあ無い。大した荷物も持たずに出て来たから、まともに着られる服は、上京してすぐに買ったこのスーツしか無いのだ。靴擦れには、ガーゼを貼って手当をしたから、昨日よりはマシだった。
 
 耳を澄ませてみると、――何やらコトコトと音がする。
 ……え!?――何?何なの?
 思わず耳を離して、桜子はキョトンとした。
 ――この中には、一体何が有ると云うのか?
 桜子は、今度は扉の隙間に目を当ててみた。――すると、隙間から僅かに明かりが見える。
 ――この状況で、見るなと言う方が無理!
 バレなきゃいいのよ。桜子は、そっと、ノブに手を掛けた。
 
 ノブは軽く回り、押すと、扉は簡単に開いた。
 中は薄暗いけれども、周囲の状況が分からない程でも無い。
 桜子はそっと足を踏み入れた。
 
 ――どうやら、書斎というか、本棚が並んだ部屋の様だった。本独特の、何とも言えない臭いに満たされている。
 横向きに並んだ本棚の、奥の方から、明かりが漏れていた。音も、そちらから聞こえているが……。
 こんな処に、誰か居るとでも言うの?長時間居るには、あまり居心地は良さそうじゃないけれど。
 桜子は奥へと進み、棚の奥を覗き込んだ。
 
 すると、小さな人影が目に入った。
 ――子供?
 セーターを着た十歳位の子供が、裸電球の下で向こうを向いて座り込み、何かをしている。先程から聞こえているのは、それの音らしかった。
 ……何だか薄気味悪かったが、桜子は、思い切って話し掛けてみた。
「――ねぇ、坊や。こんな処で何をしてるの?」
 すると、その子供はビクッと飛び上がらんばかりの様相で振り返った。――紅顔の、可愛らしい顔をした男の子だ。
 しかし、その口から出たのは、顔からは想像出来ない様な言葉だった。
「そなたこそ、勝手に人の部屋に入るとは不届き千万!成敗してくれようぞ!」
 ―――え?
 
 呆然とする桜子に、少年は腰の辺りから何やら引き抜いて、それを目の前に突き付けた。細長いそれは、電球の明かりを反射して、銀色に光った。
 ――か、刀!?
 桜子は一歩退こうとして、腰を抜かしてしまった。
「斬られたく無ければ、さっさと失せるが良い」
 少年は、桜子を冷たく見下ろし、刀らしきものを納めると、元の場所に戻った。
 
 桜子は慌てふためいて部屋を飛び出した。
 扉を閉め、肩で大きく息をする。
 ―――な、何だったの!?
 冷や汗なのか何なのかが、シャツを背中に貼り付かせて気持ちが悪い。とりあえず、額の汗をハンカチで拭って、桜子は再び扉を見た。
 何なの、あの子供!?
 今度はそれが気になって仕方無くなった。
 こんな部屋に居るから、もしかしたら、誘拐でもされて閉じ込められているんじゃ?とも思ったが、そんな感じでも無い。第一、この扉には鍵など付いていない。考えられるとすれば、あの子供が好き好んで、この部屋に閉じこもって居る、そう思うのが普通だろう。
 それにしても、変な子供だ。やっぱり、関わらない方が良いのかもしれない。
 
 ――しかし、桜子の理性は、好奇心に負けた。
 桜子は再び、今度はもっと慎重に、扉を開いた。
 ……先程と同じ様に、奥の方から明かりが漏れ、コトコトと音がしている。桜子は、そっと靴を脱いでそれを両手に持ち、忍び足で奥へと進んだ。
 少年は、やはり向こうを向いて座り、じっと何かをしている。
 桜子はその背後から、もっと近付いて、その手元を見てみた。
 
 すると、サイコロが幾つか転がっているのが見えた。それを積み上げようとしている様だが、最後まで積めない内に崩れ、また積むという作業を、延々と繰り返していた。
 ――何してんの?
 訳が分からず、じっとそれを眺めていたら、ようやく気配に気付いたのか、少年が振り向き、「わっ!」と声を上げた。
「ま、また来るとは、そなた、何を考えておる!身の程知らずにも程が有るというものであろう!」
と、再び腰のものを抜き放ち、今度は桜子の頭上を襲った。
 思わず、桜子は靴底で顔を庇ったのだが……
 
 刀だと思っていたのは、そんな物では無く、ただの、細長い筒状の物。
 ――笛?
 銀で出来た横笛の様だった。フルートの様な西洋風のものでは無い。形としては、お祭りのお囃子なんかで使う、神楽笛みたいな感じの……。
 ……こんなのに脅されて、さっきは慌てさせられたのね。
 桜子は馬鹿馬鹿しくなって、その笛を手に取ろうとした。すると、
「その汚らわしい手で触るでない!」
と少年は言い、サッと笛を引っ込めた。
 
 さすがに桜子もカチンと来た。
「――黙って聞いてりゃ、汚らわしいとは何よ!子供のクセに、偉そうな口を叩くんじゃないわよ!」
 桜子は腰に手を当て、少年を睨み付けた。
「そなたの様な不節操な女子を汚らわしいと言わずして、何を汚らわしいと呼ぶのじゃ!」
 少年も言い返す。
「まぁ……!」
 桜子は腹が立って、少年の頬をつねってやった。
「い、痛い!離せ、離さぬか!拙者を子供扱いするでないぞ!」
「はぁ?あんたが子供で無ければ、何を子供と呼ぶのかしら?」
「こ、こう見えて、拙者は、お主よりも、986年は永く生きておるのだぞ!?無礼をすると、今度こそ許さぬぞ!」
 そう威勢の良い事を言ってはいるが、涙目になってきたので、桜子は仕方なく少年を離した。
「適当な事を言って、大人を騙そうとしても無駄よ。そんな下手な嘘、誰が信じるものですか」
「ならば、名を名乗ろう。我の名は安倍晴明と申す。これでも信じぬと申すか!?」
 少年はそう言い、笛を横に握って顔の前で構えた。
「残念ながら、そんな名前、聞いた事もありませんよーだ!そんな事で誤魔化されないんだから!」
「だから、無学な女子は扱いに困るのだ。なぜ、あの男はこの様な者を入れたのか」
 少年は首を横に振ってため息をついた。
「……あんたね、いい加減になさいよ?人を汚らわしいとか無学だとか。そんなに私を怒らせたい訳?これでも、田舎じゃ、剣道と柔道じゃあ、誰にも負けた事が無いんだからねっ!!」
 桜子は、指をポキポキ鳴らして見せた。しかし、少年に臆する様子は無い。そればかりか、呆れた様な目を桜子に向けて言った。
「後悔するのはそなたの方だ。――煩い故、始末させてもらう」
 
 少年はそう言うと、ニッカーポッカーのポケットから何やら取り出して、桜子の方へ向かって投げた。それは、真っ直ぐに宙を飛んで、桜子の目の前に、頭を取り囲むように整列してピタリと止まった。十程は有るだろうか。
 ――何これ!?
 それは、薄い半紙を人型に切り抜いたもの。……そう云えば、村の神社の茅の輪くぐりの時に渡される人型に似ている。
 けれども、それならば、宙を真っ直ぐに飛んで来られるような代物では無い。何せ、ペラペラの紙切れなのだ。ヒラヒラと宙を舞うのが精一杯だろう。――そして、こんな風に、ピタリと宙に留まるなんて、考えられない。
 
 それらに向かい、少年は言った。
「式神よ、その者の穢れを焼き清めよ」
 すると、人型の紙切れたちは一斉に燃え上がった。桜子の視界全てが一瞬火で覆われ、その眩しさを遮ろうと、手を前に出した。――しかし、なぜか熱く無い。
 何なの!?
 
 しかし、それ以上詮索する事は出来なかった。
 次の瞬間には、桜子の目の前は真っ暗になり、ゆっくりと床に崩れ落ちた。


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/