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 ――目を覚ますと、桜子は応接の長椅子で寝ていた。
 ハッと起き上がり、……一瞬、此処は何処だと周囲を見回した。しかし、すぐに思い出した。――あの子供に、何か妙な事をされて、それで……。
「――お目覚めですか」
 零の声が聞こえて、桜子は椅子から飛び起きた。――仕事初日から、居眠りをしていると思われては大変だ!
「あ、あの、ちょっと……。――い、何時、お戻りになってたんですか?」
「半時程前ですかね」
 ――時計を見ると、昼を過ぎている。……軽く二時は眠っていた事になる。
「な、何で、起こしてくれなかったんです!?」
「余りにも気持ち良さそうに眠っていらしたもので。――目覚めに茶でもどうですか?」
 零はそう言って、桜子にティーカップを差し出した。……渋くて好きでは無いが、目覚ましにはいいかもしれない。桜子は、紅茶を一気に飲み干した。
 
 そして、何とか言い訳をしなければと思った。――しかし、なぜ眠ってしまったのかしら?それに、私はあの部屋の中に居た筈。なのに、なぜ長椅子で……?
 とりあえず、あの小生意気な子供の話はしておかなければ。
「あの子供、一体何なんです?なぜ、あんな処に居るのですか?」
「……開けましたか、あの扉を」
 零に言われて、桜子はハッとした。……そういえば、開けてはいけないと言われていた。
「――す、すみません……。掃除してたら、中から物音がするもので、気になって……」
 こればかりは、頭を下げるより他無い。
「仕方有りませんね。……親戚の子供を預かっているのです。極端に人見知りなので、あぁして部屋に閉じ籠って居るのです」
「はぁ……」
「時折、妙な術を使ったりしますので、あまり関わらない方が宜しいですよ?」
 ――妙な術?確かに、桜子が眠らされたのがその妙な術だとすれば、納得は出来る。
 にしても、「妙な術」って……!?あの子供は普通じゃない。何者なのだ?
 
 「――ところで、桜子さんにひとつ、聞きたい事が有るのです」
 零に言われて、桜子は身構えた。――仕事をやる気があるのか?と聞かれたら、どう答えて良いのか分からない。
 しかし、零の口から出た言葉はそんな事では無かった。
「女の方の気持ちは良く分からないので、確かめてみたかったのですが、身近に若い女性の知り合いが居ませんので。大家さんは還暦過ぎのお婆さんですし、市電の車掌に突然声を掛けるのも変だと思いますし」
「はぁ……」
「桜子さんは、どの様な時に、着る物を新調したいと思いますか?和服でも洋服でも構いませんよ」
 
 ――一体何が言いたいのだ?よく分からなかったが、とりあえず、素直に答えてみた。
「何か行事がある時とか、――例えば身近に結婚式がある時とか、他には、生活の転機。学校に入る時とか、引っ越す時とか、好きな人が出来た時とか……。
 ……そんな事を私に聞いて、どうするんです?」
「いえね、今の依頼人というのが、新しい着物に対して非常に執着心を持っていまして。週に一度は日本橋の百貨店に顔を出して、新しい服を仕立てるそうです」
「え!?――ひょっとして、物凄いお金持ちなんです?」
 そういう客が居るから、こんなに暇そうでも、ここの探偵社はやっていけるのだろうか?
「えぇ、先代までは大変な資産家で、その近辺じゃ知らぬ者は無い程の名家だったのです。しかし、今の代になってから、家業が傾き、今では持っていた工場や田畑も手放さねばならぬ程になっているそうなのです」
「でも、そんな人がよく、毎週も百貨店に通えますね」
「そこなのです」
 零は、懐から煙管を取り出し、薪ストーブで火を点けると、机の向こうに座った。
「その、家業が傾いた原因というのが、娘さんの浪費癖、という事なのですよ」
「え……!?」
「実際に彼女の衣裳部屋を見せてもらいましたが、部屋じゅうに置かれた箪笥という箪笥、果ては鴨居にまで、ビッシリと服が掛けられているのです。しかも、そのような部屋が四部屋も」
「衣裳部屋が四部屋!?」
「えぇ。それも、八畳間程の部屋がですよ?――そして、買い物をする金が底を尽いて来たから、開かずの間となっている蔵を開けて欲しい、あそこには金になる物が入って居る筈、……というのが、娘さん――依頼人の希望なのです」
 
 
 
 依頼人の御影弥生が訪れたのは、一週間ほど前の事だった。
 今流行りのモダンガールといった風情の、パーマネントを当てた短髪に、ワンピース姿の若い女性だった。その様な人が依頼に訪れる事は珍しいので、零も少し驚いた。
 そして、零が依頼を受ける前に必ず言う台詞、
「真実をお知りになる覚悟がおありでしたら、ご依頼をお受け致しますが、如何なさいますか?」
と言うと、
「真実を知りたいから来たの。宜しく」
と言って、長椅子へドカリと腰掛けた。
 
 「――で、ご依頼の内容とは?」
「鍵を開けて欲しいの」
 それには零も眉をひそめた。
「鍵でしたら、私なんかより、鍵師をお呼びになった方が宜しいのでは?」
「それが出来ないから、わざわざこんな胡散臭いところにまで来たの」
「そうですか」
 胡散臭いだとか怪しいだとかと云う言葉は、聞き慣れ過ぎて何とも思わない。零は気にも止めずに紅茶を差し出した。
「で、どの様な鍵なのです?」
「蔵の鍵よ。私が生まれてから此の方、開いている処を見た事が無いから、開かずの間みたいなものね」
「その様な物を、なぜ、今になって――」
「そんな事どうだっていいでしょ?お金ならあるの。早く開けて頂戴」
 弥生はそう言って、零の前に札束をポンと投げた。
「お言葉ですが、詳しい状況をお教え頂けなければ、お受け致しかねます」
 零が向かいの椅子に掛けると、ようやく弥生はまともに零の顔を見た。――色白のなかなかの美人だ。だが、ツンと鼻につく印象がある為、あまり人から好かれる方では無いという気がした。
 しかし、弥生の方は、零の顔を見ると、急にしおらしく姿勢を改め、カップに手を伸ばした。
 
 「……理由を言わなければ受けてくれないと言うのなら、仕方ないわ。
 ――あの蔵、絶対におかしいの。両親が何か隠してるに違いないわ」
「ほほぅ」
「見れば分かるけど、頑丈な錠前が五つも付けられて、その上、扉じゅうに、お札がビッシリと貼られているの。
 それに……」
「それに?」
「夜中になると、コトコトと、中から物音がする事があるのよ。……時には、内側から扉を叩く様な音まで。私、子供の頃から怖くて近寄れなかった」
「なるほど……」
「でも、気になって仕方無くなったから、鍵師を呼んだの。でも、両親に見付かって、門前払いされたわ」
「そうまでして何を隠しているのかが、どうしても気になる、と。
 ――ご両親には、開かずの間となっている理由を、お伺いはされたのですか?」
「えぇ、聞いたわ。でも、鍵を無くしたから開けられないとはぐらかされただけで、教えてくれなかった」
「左様ですか」
「さぁ、話したわ。――この依頼、受けるの?受けないの?どっち?」
 
 ――まさしく、零の得意とする分野の依頼であるからには、引き受けざるを得ない。
 零はその翌日、早速御影家へと赴いた。

 御影家は、東京の街中から離れ、京王線に乗ってしばらく行った、武蔵野の静かな田園風景の中にあった。
 その中でも、一際大きなお屋敷なので、すぐに分かった。高い塀に囲まれ、門構えも、このところの東京の街中では見掛けないような、立派なものだ。
 ……しかし、零が来訪の目的を告げると、他の鍵師と同じ様に、門前払いされてしまった。
 
 その日は諦めて事務所に戻ると、すぐさま弥生がやって来た。
「――どうしてそそくさと帰っちゃうのよ!?この意気地無し!」
「意気地無しに見えたかもしれませんが、いろいろ収穫は有りました」
「………え?どう云う事?」
 弥生を長椅子へ案内して、零は机に凭れ掛かった。
「まず、蔵の位置ですね。通りに面した竹藪の脇に有るのが、そうじゃあありませんか?」
「そう!」
「それから、元は大変な資産家であったにも関わらず、現在は、失礼ですが生活に困窮しておられる」
「――な、何でそんな事が分かったの?」
「簡単な事です。門の奥に見えた牛小屋が、今は使われている様子は有りませんでした。お持ちだった田畑も、手放されたのでしょう」
「…………」
「それから、――近くに沼がありますね。あれはどういったものなのでしょうか?」
「そんな事が関係あるの?」
「無いとは言い切れません。水というものは、昔から物の怪を引き寄せやすいと申します」
「……あれは、『黒が淵』と呼ばれて居るわ。昔から、近くの田んぼに水を引いてる。……それに、竜神が棲むという伝説もあるわ」
「ほほぅ」
「――分かった事は、それだけ?」
「はい、今日のところは。また明日、お伺いします」


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