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 ――弥生に憑いていた蛟が、咄嗟に桜子へと宿主を替えた。
 恐らく、手にした合口が目的だろう。そして、桜子の身体を乗っ取った蛟は、傍に居た晴明を殺さんと、その刃を突き立てた。
 
 零の全身から、血の気が引くのが分かった。
 動けない。あまりの事態に、脳の中からも全ての血が流れ落ち、空っぽになってしまった様だった。
 
 桜子が、狂気に満ちた目を晴明に向けたまま、ゆっくりと合口を引き抜く。
 その切先から血が滴り落ち――ると想像したが、銀色の刀身はひとつの曇りも無く、ランタンの明かりを反射していた。
 
 そこで、晴明が声を出した。
「……おい、お主から預かっているこの鏡は、邪気から身を護るものだと聞いておったが、正確な使い道は、こう云う事なのか?」
 そして、袍衣の襟元から、鎖にぶら下げられた銅鏡を取り出した。――その鏡面に、一筋の傷が見える。
「――使い道としては、間違っては居ないと思いますよ?現に、身を護れた訳ですし」
「もう二度と、お主の言う事など信用せぬわ!」
 晴明は立ち上がり、その場から飛び下がった。
 
 「――とにかく、お主の所為でこの様な事態になったのだ!何とかせい!」
「弟子の失敗の後始末をする事が、師匠の仕事なのでは無いのですか?」
「貴様、後でしっかりと修行を付けてやる!」
 そう言い合っている間も、桜子は爛々と光る目を晴明に据え、合口を構えてその姿を追い掛けていた。
 とにかく、この場から弥生と菊を退避させねば。零はぐったりとしている弥生を抱え上げ、入口で呆然としている菊に預け、母屋へ連れて行く様に指示した。
 そして、扉を閉めた。――こんな物を振り回している桜子の姿を見られ、警察でも呼ばれたら、彼女の人生は狂ってしまう。そもそも、此処に連れて来た事が間違っていた。こうなる事は、予想の範疇だったのでは無いか?
 ……分かっている。この事態を招いたのは、自分の責任だ。
 
 「――しかし、なぜ、お主では無く、拙者だけを狙っているのだ?この女子は」
 晴明は、蔵の中をぐるぐると回っている。それを、蛇が獲物を狙う視線で、桜子が追う。
「晴明様さえ亡き者にしてしまえば、後は容易い。誰だって其の位は分かりますよ」
「千年余りも生きて参ったが、この様な目に遭うのは初めてじゃ。幾人もの蛾眉辨天に追い掛け回された事は有ったがの!」
「桜子さんも、その蛾眉辨天の人数に入れて差し上げたらどうです?素朴で良い方ですよ?」
「断る!拙者は学の無い女子は嫌いじゃ!」
 ――晴明の言葉に桜子が怒ったのか、緊張感の無い会話に桜子の中の者が痺れを切らしたのか、シャーッと云う様な声を上げて、桜子が大きく腕を振った。
「わっ!」
 気を取られた晴明が、床に転がる朽ちた木箱に足を取られた。――危ない!
 
 零は咄嗟に桜子の腕を掴んだ。そして、源三にやったのと同じ様に小手返しをしようとしたのだが、やはり人間の力で敵うものでは無かった。逆に手を振り払われ、その流れで刃が零の腕を斬り裂いた。
 血の滴る腕を押さえ、桜子を見ると、今度は意識が完全にこちらに向いた様だ。真蛇の様相で、容赦無く切先を零の顔に向けて振り下ろした。
 何とかそれを短刀の鞘で受け止め、身をかわして避ける。だが次々と繰り出される無茶苦茶な斬撃を避け切るのは困難だった。傷のある腕が次第に痺れてきて、力が入らない。
 やがて壁際に追い遣られ、桜子と憑く者の全力の殺意を、腕一本で受け止める事になった。目前に刃が迫る。
 
 その時、桜子の向こうに晴明の姿が見えた。晴明は、ニヤリとして零を見た。
「拙者に隙を作ってくれた事には感謝しようぞ。――十二天将の長、天乙貴人よ、出でよ!」
 そう言って人形を投げた。――ちょっと待て?式神を召喚するには、その器が必要だ。猫も亀も、既にこの場には居ない。なら、何が……?
 人形は、真っ直ぐに零の方へと飛んで来た。――もしや?
「ちょっ……!!」
 晴明の意図に気付いて、声を出そうとした時には既に、光に包まれて何も見えなくなっていた。
 
 
 
 半ばやけっぱちで思い付いた策だが、実績が無い訳では無かった。以前――と云ってもおよそ千年も昔になるが、晴明が安倍晴明であった頃に、実験はした事があった。
 ――人間に式神を降ろす。
 怖がって誰も進んで実験台になってくれなかった為、侍らせていた女子の一人を使った。……そして、その時は成功したのだが、後日、其の者は気が触れてしまった。
 それ以来、自分の中で禁忌とし、行った事は無かったのだが……。
 
 確証は無いが、この男なら、何とかなるだろうと思った。
 
 一瞬、蔵の中全体を照らす程の眩い光が現れ、その後、零の居た場所に、美しい姿をした神将が現れた。
 金の冠に純白の衣を纏い、黄金の剣を持ったその姿は、晴明も思わず見惚れる程に秀麗だ。
 
 「式神よ、其の者の穢れを斬り捨てよ」
 晴明が言うと、天乙貴人はチラリと此方に目を向けて答えた。
「そなたなどの指図は受けぬ」
 ――全く、式神の癖に、扱い難い奴だ。弟子を名乗る癖に小生意気な口を聞く、あの男にも似ている。
 しかし、まぁそう言うのならと、晴明は、朽ちかけた箱が積み重ねられた上に腰を下ろし、様子を伺う事にした。
 
 天乙貴人は、手にした剣で桜子の合口を薙ぎ払った。合口は宙を飛び、晴明の脇を飛び過ぎて天井に突き刺さった。
「……あ、危ないであろう!もう少し気を配らぬか!」
 晴明の抗議に、天乙貴人はキッと此方を睨んだ。
「煩い事を申すと、此の者の次に、そなたを斬り捨ててくれようぞ」
「――ほほぅ、式神風情が。やれるものならやってみるが良いわ」
「余は偽りは申さぬ。――この千年、そなたの霊力が弱まるのを待って居った。其の内、そなたを斬ってこの呪縛から逃れて見せるわ。其れ迄、首を洗って待って居れ」
 
 ――晴明の肌が粟立った。
 天乙貴人の言葉に、嘘は無いだろう。
 元来、式神とは、本来人になど従わぬ高貴な存在を、呪術によって使役するものである。その呪縛の力が弱まれば、隙を伺って術者を殺し、自由の身と為る事を望んでいるに違いない。
 そして、昨日零が言っていた通り、千年の時を経て、晴明の霊力は確実に落ちている。
 ……何時、寝首を掻かれてもおかしくは無い。
 これまで、感じた事の無い恐怖を、この時、初めて晴明は感じた。
 
 一方、天乙貴人はその剣捌きで桜子を追い詰めていた。
 桜子は、壁に背を預け、肩で大きく息をしている。しかし、その眼は油断無く、反撃の隙を伺っていた。
 天乙貴人は剣を構えた。それを桜子めがけて振り下ろす。しかし寸でのところでかわされて、反撃に出られた。
 桜子の腕が蛇の様に伸び、天乙貴人の腕に絡み付いた。そして、手にする剣を奪おうと、鎌首をもたげる。
「――偉そうな口を叩いて、何をしておる!?」
 晴明は、天井の合口を抜き取り、桜子めがけて投げ付けた。
 合口は切先を前に、一直線に桜子の顔に向けて飛んだ。
 この時ばかりは、腕を蛇にして巻き付かせていた事が災いした。避けられない。
 
 ――刃が桜子に届く直前、天乙貴人が反対側の手でその合口を掴み取った。
「……幾ら晴明様でも、罪の無い者の弄ばれるのは、如何なものかと思いますが?」
 晴明は驚いた。……その声は、紛れも無く零のものだった。
 天乙貴人は振り向いた。
 
 晴明を見るその目は、氷のように冷たく、怒りに満ちていた。
 そして、蛇に巻き付かれた腕を大きく振り、振り向きざまに身を伏せた。
 
 すると、蛇が桜子の腕から抜き落ちる様に出て来た。強かに床に叩き付けられ、蛇は身をくねらせて天乙貴人の腕を離れた。――いや、振り向くと同時に、天乙貴人は姿を消し、元の零の姿に戻っていた。
「………お主、自分で式神の呪術を解いたのか!?」
「何時も申し上げて居るでしょう?ご自分の今の力を見極めて、呪術は使うと宜しい。あのままにしていたら、晴明様の命も有りませんでしたよ」
 
 零の後ろで、桜子の身体が抜け殻の様に揺れた。それを抱き支えてゆっくりと床に寝かせ、零は、床にとぐろを巻く二間はあろうかという大蛇――蛟に向き合った。
「邪気は弱まっています。何も、宿主の命まで奪う事は有りません」
 零は目の前に短刀を構えた。鞘に収まったそれから下がった髑髏の根付が、ぶらぶらと揺れている。――よく見ると、ただ揺れているのでは無い。蛟に顔を向け、顎の部分を上下にカタカタと動かしている。
「無下に殺生をする式神は好みません。小丸も申して居ります。……此処は我に任せよ、と。
 ――犬神よ、参れ!」


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