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 菊の肩が細かく震えているのが分かった。――それは後悔か、はたまた怒りか。零にはそれを察する術は無かった。
「貴女も苦しかったでしょう。……これで、終わりにします。
 弥生さん、蔵の中へ来てくださいませんか?お祓いを致します。……申し訳御座いませんが、源三さんと絹さんは、屋敷へ下がって頂けませんか?お二人にとっては、見るのも辛い事をせねばなりません。桜子さん、連れて行って差し上げてください」
 呆然と見ていた桜子が、ハッと顔を上げた。そして、顔が涙に濡れている事にようやく気付いて、ハンカチで目を拭うと、地面に這う様にしてやっと身体を支えている二人の腕を取り、屋敷の方へと連れて行った。
 
 零は、菊を抱え起こし、蔵へと導いた。
 そして、蔵の扉を閉め、それぞれの扉に護符を貼った。
 それから朽ちた室内へと顔を向けると、二人の女性が、神妙な面持ちでこちらに目を向けていた。
「――お覚悟は、宜しいですか?」
 二人は互いに顔を見合わせ、コクリと頷いた。
「……その前に、私が謝らなければなりません。――弥生さん、私、貴女にこんな事を……。――自分でも、よく分かって居なかったのです。自分の気持ちすら。
 私は、ずっと、自分が悪かったと思い続けて来たつもりでした。それが、貴女を呪っていたなんて……。
 先日、この探偵さんとお話しをして、ようやく気付きました。――もう、終わりにしなければならないんです。本当に、申し訳ない事をしました」
 菊が、震える声で弥生に頭を下げた。
「生き霊と云うのは、そういうものです。自身に自覚が無い。だから、余計に厄介なのです。――ご本人がこうしてこの場にいらっしゃる、こんな事の方が珍しいのですよ。
 ……少し、お手伝いして頂く事も出て来るかも知れませんが、その時は、宜しくお願いします」
 零はそう言い、弥生に向き直った。
 
 それから零は、懐から塩を入った袋を取り出し、床に撒き出した。筋を描く様に、弥生の回りをぐるっと回る。そして、その中に、等間隔に直線を描いた。
 ――上から見ると、「五芒星」の形に為っている。
「では、弥生さん、塩の線を崩さぬ様に、お座り頂けますか?」
 そう言いながら、弥生の背中にも護符を貼った。
「……では、始めますよ」
 
 
 
 桜子は、源三と絹を母屋の居間へ連れて行き、動揺し切っている絹を落ち着かせようと、零のコートを肩に掛け、背を摩っていた。
 一方、源三は、ひたすら項垂れて畳の目を見ている。
 桜子は、何と声を掛けて良いのか分からなかった。あまりの居心地の悪さに耐え切れず、絹の呼吸が落ち着いたところで、
「少し、蔵の様子を見て来ます……」
と、ソロソロと立ち上がった。
「あの……」
 部屋を出ようとすると、絹に呼び止められ、桜子は振り向いた。
「あの方は、一体、――どう云う御方なので?」
 ――きっと、零の事を言っているのだろう。……しかし、実際、桜子も付き合いが浅く、答えようも無い。桜子は、知っている限りの事を、正直に答えた。
「自称・陰陽師って云う、胡散臭い事この上ない、残念な探偵ですよ」
 
 それから、蔵へ向かってはみたものの……。
 扉がきっちりと閉まっているので、中を覗くのも何だと思うし、だからと言って屋敷に戻るのも気が引けるしで、蔵の前で立ち尽くす羽目になった。
 しかし、立って居ても仕方が無い。桜子は、廊下から庭へ降りる階段に腰を下ろした。
 ――先程よりも、更に冷え込んで来た様に感じる。零のコートを、絹に貸すんじゃ無かった……。
 
 そんな事を考えながら、待つ事数十分。
 ――やっぱり、寒いし、母屋へ戻ろうかしら。そう思って立ち上がった時、蔵の中から鋭い声が聞こえた。……弥生の声の様だ。
 何かあったのだろうか?桜子は、蔵の扉へ近付いてみた。すると、
「ぎゃあああああああ!!!」
 野獣の咆哮の様な叫び声がして、桜子はビクッと足を止めた。――間違い無く弥生のものだが、全く別人の様にも聞こえる。
 それから、何かが倒れる様な音、菊の悲鳴まで聞こえたので、桜子は思わず扉に手を掛けた。……よく分からないが、非常事態である事には違い無さそうだ。
 
 桜子は、扉を引いた。
 その、桜子の目に飛び込んで来たのは……。
 
 般若の様な顔をした弥生と、その手に首を締め上げられ、ぐったりと壁に背を預ける零の姿だった。
 
 
 
 菊の生き霊の「除霊」は、滞り無く済んだ。――それでも、嫌がる弥生が暴れ、涙ながらにそれを菊が取り押さえる場面はあった。
「止めて!もう止めて!!お願い、許してあげて!!」
 菊が、嘗て自分が抱いていた「怨念」に訴え掛けている様子が印象的だった。
 
 零が生き霊を護符に移し、それを燃やすと、弥生は糸の切れた操り人形の様に、床に倒れた。
 その身体を抱え上げ、しばらくすると、弥生は目を覚ました。
「――終わったのね」
 零を見て、弥生が言った。
「……いいえ、残念ながら」
「えっ……?」
 弥生も菊も、驚いた顔をして零を見た。
 
 「あなたの中には、もう一人、――いや、もう一匹、魔物が潜んで居ます。
 ……そうだな、―――蛟」
 
 零は弥生が腕を抜け出すより早く、その額に護符を貼った。
 しかし、そんなものは、弥生の中の者の動きを封じるに足りるものでは無かった。思い切り突き飛ばされ、零は壁に背中を打ちつけた。
 一瞬息が止まるが、何とか身体を支えて体勢を立て直す。
 零の正面で、弥生が、この世のものとは思えぬ表情で、零を見据えていた。
 少し離れて、菊が、目を大きく見開いてその様子を眺めている。
 
 「――お前は、本来、水の神であり、悪さをする者では無い。
 しかし、なぜだ?なぜ、その者に憑いた?……庸子さんの魂に、引かれたのか?」
「……う……る……さ……い……」
 弥生が、絞り出す様に声を出した。低く、潰れた声は、零の肌を総毛立たせるに十分だった。
「庸子さんの無念の思いに同調したお前は、その悲しみを晴らそうと、弥生さんに取り憑いた。……そうなのか?」
「……お主などに……何が分かろう………。……失せろ………!!」
 弥生は額の護符を引き剥がし、獣の様な唸り声を上げて零に向かって来た。咄嗟に腰の短刀を抜こうとするが、間に合わない。
 女性のもの――いや、人間のものとは思えない力で首を押さえ付けられ、為す術も無かった。
 薄れゆく意識の中で、菊の悲鳴、そして、桜子の姿が見えた気がした。
 
 零の身体から、ガクリと力が抜けた。


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