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オリジナル小説のダストボックス

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※ 年齢制限という訳ではありませんが、若干、グロテスクな表現があります。
   苦手な方はスルーでお願いします。


 
 蝋の様に白い肌に、黒曜の瞳が光った。
「悪魔。そなたの様な者が人の世に関わりを持つ事を、誰が許した?」
 太乙が視線を向けると、悪魔はギョッとした様に動きを止めた。
「……し、死神様のご登場とは、恐れ入った」
「死神とは無礼な。我は世の根源を支配する者。摂理を乱す者は許さぬ」
 太乙は、手にした剣を悪魔に向けた。――紫の幻妖な光を放つ其れは、零の持つ妖刀に似た輝きをしていた。
「ヘッ!摂理だか何だか知らねぇけど、俺だって、呼び出されて人の世に来たんだ。そして、契約通りにそいつの魂を頂こうとしているだけの事。何もやましい事は無いぜ?」
「尚もそう言い張るか。……ならば言おう。そなた、契約者以外の者に手を出そうとしたであろう?言い訳は出来るか?」
「それは……」
 悪魔は何か言おうとしたが、小丸が「ワン!」と吠えたので、結界の端まで追い遣られた。
 太乙は剣先を悪魔に向けた。
「闇へ還れ」
 
 しかし、素直に言う事を聞く悪魔では無かった。
 鋭い爪で剣を薙ぎ払い、太乙の首を狙った。
 ――だが、爪は太乙には届かなかった。一瞬の間に悪魔の背後に回り、その背を剣の柄で打ち付けた。
 不意を突かれた悪魔は、「グッ」と低い呻き声を上げて、結界の反対側まで飛ばされた。
「素直に従えば、其の存在までもは消さぬものを」
 太乙は剣を振った。床に叩き付けられてようやく起き上がろうとしていた悪魔は、咄嗟に切先を避けようと身体を捩った。――しかし、間に合わず、漆黒の翼が一枚、背から斬り飛ばされた。
「ぐがあっっ!!」
 其の苦痛で再び床に倒れる。だが、太乙は容赦しない。再び剣を振るい、今度は刃を受け止めようと前に出した腕を斬り落とす。
 手入れのされた木の床に、悪魔の黒い血で凄惨な模様が描かれた。
 
 ここまで来て、悪魔の顔が変わった。――苦痛と恐怖で、顔が引き攣った。大きく見開いた真っ赤な目で太乙を見据え、腰を抜かした様にジリジリと床を這って後退する。
「………た、助けてくれ。分かった、分かったから。――闇へ還る。それでいいだろ?」
 悪魔は震える声で太乙に許しを請う。しかし、太乙は冷たく言い放った。
「信用できぬ」
 太乙は、剣先を悪魔に向けたまま、剣を振り上げた。
 
 その時、悪魔の手に何かが当たった。――其れが倒れた晴明だと分かった時、悪魔はニヤリとした。
 失われていない片方の腕でその小さな身体を掴み上げ、剣先に突き付ける。
「――その剣を下ろせば、この人間が死ぬぜ?さぁ、どうする?」
 悪魔はクックッと喉を鳴らして笑い声を立てた。――しかし、表情ひとつ変えない太乙を見て、その顔を凍り付かせた。
「其の者は契約者。禁を破った者など、護るに値せず」
 太乙は剣を振り下ろした。
 
 「―――っと待った!!」
 突如として男の声がして、剣が奇妙な方向を向いた。勢い良く振り下ろされた切先は、悪魔の耳元を掠め、床に突き立った。
 ――そして、黒い着物が煙の様に消え、代わりに色鮮やかな柄が現れる。剣を持つ白い腕には、猫に引っ掻かれた様な傷が浮き出し、長い黒髪の間から、鋭い目が覗いた。
「……だから式神は嫌いなのです。自分の都合で平気で人を殺める。――この子供は、私の依頼人なのです。死なせる訳にはまいりません」
 黒い影が完全に消え去った後には、零の姿が残された。
 
 「………馬鹿め!」
 零を見ると、悪魔が反撃した。晴明を再び床に放り出し、長い爪で零の首元を斬り裂こうと狙う。零は刀で其れを受け止めようとするが、床に突き立った剣はビクともしない。慌てて床に身を投げて寸での処でかわすが、そこまでだった。
 
 床に転げた零の上に悪魔が圧し掛かる。そして、鋭い爪を零の胸に突き立てた。
 
 「――――!!」
 零は、目を見開いて、其の様子を見入るしか無い。苦痛と衝撃で、声すらも出ない。
 悪魔は復讐に燃える目を零に向けていた。悪魔の翼と腕を奪ったのは太乙だが、其れを呼び出したのは零だ。悪魔の怒りの全てを受けて、零には為す術も無かった。
 様子を見ていた小丸が、慌てて悪魔に飛び掛かる。しかし、怒りに狂った悪魔は、小丸をいともあっさりと振り払った。床に背中から叩き付けられた小丸は、悲鳴を上げて焔と消え、元の根付に戻り、床に転がった。
 
 零の中で悪魔の手が動いた。何かを掴む様な形で、ゆっくりと手を引き抜く。
 
 血まみれの手に握られていたのは、零の心臓だった。
 
 ―――此れを握り潰されたら、死ぬ。
 ぼんやりと其れを眺めながら、だが零には、抵抗する力も無かった。ただ床に身を投げ、自分の「死」を、眺めているより他に無かった。
 
 「……こんな物では足りないが、仕方が無い。後であの子供のものも貰うから、まぁ、良しとしよう」
 悪魔が指に力を込めた。
 
 その時。
 金色の物体が、悪魔の手元をすり抜けた。――すると、悪魔の手が腕から離れた。
 あまりに一瞬の出来事で、何が起きたのか分からなかった。悪魔も其れは同じようだったが、やがて、バッサリと斬り落とされた腕から血が流れ出るのを見て、絶叫した。
 ようやく悪魔が零から離れた。視界から悪魔が消え、ぼんやりと目を向ける零の視線の先には……
 
 晴明と、金色に輝く麒麟の姿があった。その鋭い角から、黒い血が滴っている。
「――愚か者が。身の程を弁えて行動せねば、命を落とすぞ」
 晴明は、長椅子の背に座り、麒麟の首筋を摩っていた。
「遅いですよ。もっと早く助けてくれても、良かったではありませんか」
 零はそう言ったつもりだが、声にはならなかった。視界が霞み、意識は闇へと落ちた。
 
 
 
 両手を失った悪魔は、燃えたぎる目を晴明に向けていた。
 ――意識を失い、悪魔に放り出されて目が覚めると、零が死にそうになっていた。慌てて式神・勾陳を召喚し、とりあえずは助けた。……しかし、あの儘にしておけば、間違い無く死ぬだろう。早く始末を付けねば……。
 
 晴明は勾陳に命じた。
「其の者をこの中へ封じよ」
 ――晴明の腕には、蜂蜜の壺が抱えられていた。
 
 勾陳は、鋭い牙で悪魔に喰らい付いた。――翼も無く、腕も無い。抵抗する手段を失った悪魔は、足を踏ん張って最後の抵抗を見せたが、勾陳の強靭な脚には敵わない。ズルズルと床を引き摺られ、晴明の方へと近付く。
「―――貴様!!一体何者だ!?」
 悪魔が唸るような声を上げた。其れに、晴明は護符を構えて答えた。
「拙者は陰陽師じゃ。――契約した相手が悪かったと諦めよ」
 そして、護符の束を宙へと放つ。護符は、意思があるかの様な動きで悪魔を取り囲んだ。
 しかし、先程の様に燃やそうとはしなかった。悪魔も確実に弱っている、その証拠だ。
 悪魔は、煙に化して其れを逃れようとした。だが、隙間無く囲んだ護符が逃さない。徐々に囲む範囲を狭め、やがて、手の平で掴める程度の大きさになった。
 晴明は其れを手で掴み取り、壺へと押し込んだ。――壺の中で、尚も悪魔は暴れている。
「――勾陳、悪いが此の者が外に出ぬ様、見張りをしてくれぬか?」
 晴明が言うと、勾陳はひとつ首を振り、壺の中へ飛び込んだ。巨体がスルスルと小さな壺へと納まると、晴明は蓋をし、その上に護符を貼った。
「………やれやれ。これで大丈夫じゃろう」
 晴明はテーブルの上に壺を置いた。――だが、カタカタと揺れている。未だ悪魔が暴れている様だ。
 
 ……しかし、カタカタと云う音は、壺からだけでは無かった。
 見ると、少し離れた床の上で、髑髏の根付が、カタカタと顎を動かしていた。――犬神が、主人を助けてくれと訴えている様だった。
 視線を移すと、普段から色の白い零の肌が、更に蒼白になっている。……やれやれ。
 晴明は部屋を見回し、薪ストーブの陰で小さくなっている猫を見付け、捕まえようとした。――が、パニックになった猫に引っ掻かれ、あっさりと逃げられた。
「………拙者も堕ちたものじゃ」
 そう呟きながら、晴明は捕まえる事を諦め、人形を投げた。
「十二天将の一・天后、出でよ」
 すると、猫がビクリと足を止め、……立ち上がる様に身体を伸ばし、青い衣を纏った天女の姿になった。
「天后、あの者の傷を癒せ」
「ニャー」
「……猫を器とすると、言葉が話せぬのか?」
「ニャー」
「―――拙者の力が足らぬと申すか」
 しかし、晴明の言葉を理解はしている様だ。天后は零へと歩み寄り、其の身体に羽衣を掛けると、床に吸い込まれる様に消えた。――すると、零の胸の傷は跡形も無く消えていた。
 だが、意識を戻す様子は無い。傷自体は治っても、傷に伴う出血までは治せない。貧血が治まるまで、しばらく休ませた方がいいだろう。
 
 晴明は零を長椅子まで運ぼうとしたが、十歳の少年の体力では無理な事だった。仕方無く、人形をもう一枚取り出し、胸に当てて呪文を唱えた。
 ――すると、光の粒が身体を包み、其れが消えた頃には、束帯姿の青年が現れていた。
「………なぜ拙者が、此の様な事をせねばならぬのじゃ!」
 青年――安倍晴明はブツブツ言いながら、零を担ぎ上げ、長椅子まで運んだ。寝かせた上にコートを掛けてやる。
 其の顔を見て、晴明は呟いた。
「――自らの身を顧みず、敵わぬ相手に挑むとは。……祖先に当たる者として、見て居れぬわ。もっと教育してやらねばの」
 
 それから、部屋中の護符を剥がし、ストーブにくべて、ついでに薪を足して部屋を暖めた。
 ――昨日と逆の立場では無いか。……不本意であるが、仕方無かろう。
 そして、椅子に座ると、気が緩んだのか、どっと疲れが襲って来た。
少しだけ……。そう思って目を閉じる。すると、晴明の意識はいともあっさりと眠りへ落ちた。
 
 椅子の背凭れに身を預けるその姿は、少年のものに戻っていた。


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