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 零は、小丸に命じた。
「此の者の邪気を祓え」
 言葉に従い、焔を纏った白い体躯が、床に横たわる桜子に駆け寄った。
 警戒する様に身を低くして、鼻先を桜子の首元へ擦り付ける。すると、桜子の身体がピクリと動いた。――内部で悪魔が暴れ出そうとしている様だ。
 其れを見て、ハルアキが動いた。
「式神、しっかりせぬか!」
 そう言って、人形を飛ばす。――桜子の上で人形は焔と消え、その光を浴びてある動物の姿を浮かび上がらせた。
 ……獏。鼻が長く、奇妙な姿をした其れは、四つの脚で桜子の身体を押さえ、鼻先で桜子の鼻を舐めていた。――桜子の鼻から白い煙が出て、獏が其れを吸っている。これが桜子の「意識」だ。
 
 獏は、世間では「夢を喰う」と思われているが、夢は無意識下中の意識の記憶であり、つまり、此れを取り去ってしまえば、人間は眠り続ける。
 
 獏が煙を大きく吸うと、再び桜子がガクンと首を揺らした。……悪魔の意識をも押さえ込んだようだ。
 
 その隙に、小丸が桜子の首に噛み付いた。――今度は本気では無い。桜子の身体に入り込む為の儀礼的行為。
 小丸の身体が焔と化した。そして、桜子の身体に吸い込まれる。――が、次の瞬間には、勢い良く放り出され、床に転げて声を上げた。
 
 「……やはり、簡単には出てくれないようですね」
 その様子を見ながら、零が呟いた。
「ならば、どうするのじゃ?」
「―――こうなったら、強硬手段に出るしかありません。が……」
 桜子の横に膝を付き、眠っている様子を確認しながら、零がハルアキを振り返った。
「……私が合図をするまで、目を閉じていて貰えませんか?」
「なぜじゃ?」
「…………」
 零が渋い顔をするので、ハルアキは仕方無く目を閉じて横を向いた。――しかし、やはり気になる。ハルアキは、薄目でチラリと見てみた。
 ……そして、口をポカンと開けたまま、閉じられなくなった。
 
 ―――ハルアキの視線の先で、零が桜子の唇に唇を重ねていた。
 
 ……まぁ、道理としては分かる。口と云うのは、食べ物を体内へ受け入れたり声を発したりする為だけの器官では無い。其れに伴い、禍を呼んだり、逆に身内の災厄を排出する器官でもある。
 だから、口を通して悪魔の魂を自分の身に移そうとしているのは分かった。
 ――だが、この男、案外本気か?
 ハルアキは目を細めて、視線を外した。
 
 其れから間もなくだった。
 桜子の身体が揺れた。悪魔が暴れ出し、獏が抑え切れなくなった様だ。獏が放り投げられ、床の上に背中から落ちて姿を消す。そして、桜子がカッと目を見開き、腕を前に突き出した。
 桜子の手は、零の喉元を鷲掴みにしていた。
「……な、何して……ゴホッ」
 零がハルアキに抗議の視線を送る。抵抗は見せるが、片手しか使えない為、悪魔の力にはとてもじゃないが敵わない。
 ――確かに、接吻を見て、動揺した事は否めない。その為に式神の力が弱まり、今の事態を招いた。
 だが、ハルアキは慌てていなかった。
 ハルアキは、桜子の背後でオロオロしている小丸に言った。
「犬神、今ならいける。やるのじゃ」
 ――悪魔の意識は、獏に吸われて弱っている。しかも、今は零へ意識を集中している。今のうちに背後から押し出せば……。
 小丸も其れを理解した様で、ハルアキを一瞥すると、桜子の背中へ飛び込んだ。
 
 犬神の焔が桜子の中に消えた後、即座に変化が見られた。
 桜子が零から手を離し、自分の首元へ手を当てた。……そのまま、何かを押さえようとするかの様に床でのたうつ。
 だが、間もなく、口を大きく開き、野獣の様な咆哮を上げると、其処から何かが飛び出した。
 
 ―――黒い煙。
 其れは、腕の形をしていた。
 そして、真っ直ぐに零の顔に向かって伸びる。
 
 「……晴明様!」
 未だに呼吸を整えようと咳き込んでいた零がハルアキを見た。
「分かっておる」
 ハルアキは人形を構えた。
 
 黒い煙は、大きく指を開き、零の顔を覆う様にすると、零の中へ侵入しようとする。
 其れと同時に、晴明は叫んだ。
 「式神・天乙貴人、此の者へ降りよ!」
 
 すると、零の身体が光と闇に包まれた。其れは渦を巻く様に零の上を漂ったが、しばらくして、零の中へと吸い込まれて消えた。
 ――そして、零は意識を手放した。
 
 ………其の様子を見下ろしながら、ハルアキは動けなかった。
 
 ――悪魔と式神を同時に受け入れる。
 その作戦を聞いて、ハルアキは「無茶苦茶だ」と反論した。
 
 第一、其の様な事が可能かどうかも分からない。互いに押し遣り合い、弾かれたどちらかがハルアキに取り憑こうとしたかも知れない。……そうなったら最悪だ。打つ手が無い。
 第二に、二体の憑き物を受け入れた場合の零の状態がどの様なものなのか、ハルアキには知識が無かった。――さすがに、試した事すら無い。悪魔が表に出るのか、式神が姿を現すのか……。もし、悪魔が零を乗っ取り、暴走しだした場合、……ハルアキは零を殺す事になるだろう。今のところは、力が拮抗しているのか、どちらも零を支配し切れていない様だが、この先、どうなるのか……。
 そして第三に、二体もの強力な憑き物を受け入れた、「器」そのものの負担。特に、式神と云うのは、物の怪や悪霊などとは訳が違う。通常、精神の程度の高い人間に降ろす事自体が危険な行為だ。精神を破壊されてもおかしくない。――其れを、自分の中で式神と悪魔を対峙させようとは、常軌を逸している。
 ……しかし、始めてしまったものは仕方が無い。ハルアキには、経過を見守る事しか出来ない。――其れに、この男、「式神を使えぬ」などと嘯いてはいるが、実際には、何らかの式神を使えるのではないか、と思っている。……半年前、悪魔を封じた時に、ハルアキは意識を失っていたが、式神の気配は感じていた。それも、ハルアキが使う式神とは全く異質の、もっと強力な……。だから、成功する算段があるのでは、と思い、この作戦に乗ってみたという事もある。
 
 「―――うーん」
 声がして、ハルアキはハッと視線を動かした。
 見ると、桜子が起き上がろうとしている。――意識が戻ったのか。
 桜子は、薄目を開けて周囲を見回していた。
「……あれ?私、どうしたのかしら……?」
 そして、目の前で零が倒れているのを見て、慌てた様子で駆け寄ろうとした。
 其れを見て、ハルアキは本棚から飛び降り、その手を掴んだ。そこでやっとハルアキの存在に気付いたらしく、桜子は声を上げた。
「――ちょっと、あんた!どうやってこの部屋から居なくなったの!?」
 ………言うに事かいて其の様な事か。ハルアキはため息をついた。
「そんな事はどうでも良い。――今はこの男は寝かせておかねばならぬ。邪魔をするでない」
「……は?」
「いいから、外へ出て居れ!」
 ハルアキは桜子の腕を引っ張り、何とか部屋から追い出すと、扉を閉めた。……だが、
「何なの?何が起きたの?ちゃんと説明しなさいよ!」
と、外からドンドンと扉を叩く。―――煩い。
 ハルアキはチッと舌打ちをして、扉を開いた。そして、何か言おうとする桜子の顔へ人形を投げた。
「獏よ。もう一度、此の者を眠らせるのじゃ」
 ――すると、桜子の背後に獏が現れ、抱き付く様にしてその耳に息をフッと吐き掛けた。その後、桜子はむにゃむにゃ言いながら、再び床へ崩れ落ちた。
 ………これで良い。
 ハルアキは扉を閉めた。――そして、念の為、扉や窓に護符を貼って結界を作る。
 それから、零の傍らに立ち、その姿を見下ろした。……近くに控えている犬神が、不安そうにハルアキを見上げる。
 その首筋を撫でてやりながら、ハルアキは言った。
「大丈夫だ。死なせはせぬ。――此の者に死んで貰っては、千年もの時を生き永らえて来た意味が無い故」


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