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 「―――何と。あの悪魔を祓ったのか」
 声がして、そちらに顔を向けると、長椅子の背凭れから晴明が顔を覗かせていた。
「……起きていたのですか」
 その顔を見て、零はホッと息をついた。……全身から汗だか冷や汗だか分からぬものが噴き出している。額のそれを手で払い、零は犬神の頭を撫でて根付に戻し、刀を鞘に納めた。
「祓ったと云っても、一時的なものです。すぐに戻って来るでしょう。……そうなると、日も落ちます。『退魔の鏡』は使えなくなります。さて、如何したものか……」
 しかし、晴明は呑気そうに言った。
「拙者は未だ寝足りぬ。結界を張る故、紙と筆、それと塩を用意せよ」
 
 言われる儘に用意をすると、晴明は紙に向かった。
 筆を取り、見事な筆さばきで紙に文様を描いていく。……かなり古い、今では使われていない符印だが、其の内容を見ると、この上なく強力なものだ。
 其れを八枚書き終えると、零に渡した。
「部屋の四隅と壁の中央に、等間隔になる様に貼るのじゃ」
 ――言われた通り、壁際を回ってそれらを貼る。
 その間に、晴明は塩の入った袋を持って、部屋の中央、長椅子を囲む円を描く様に塩を撒いた。そして、その中に均等に、五本の直線を描く。
 
 ――五芒星。
 晴明紋とも桔梗紋とも呼ばれるその印を描き終え、晴明は其れの二辺の間に立ち、印を切った。
「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女!」
 
 そして、満足気に腕を組んだ。
「此れで良い」
 ……だが零には、本格的なのか適当なのか、さっぱり分からない。
 しかし本人は納得しているのだろう。塩の線を踏まない様に長椅子へ戻り、再びゴロリと横になった。
「拙者は寝る。そなたも、死にたく無ければ、此の部屋から出ぬ事だ」
「……あの、腹が減ったのですが。夕食は召し上がらないのです?」
「拙者は、先程牛乳を飲んだ。其れで満足じゃ」
「…………」
 零は頭を掻いた。警察を出てから、何も口にしていない。晴明は、銭湯の女将さんに牛乳を貰って喜んでいたが、さすがに大人にまでは何もくれない。
 しかも、此処は事務所だ。寝具など置いていない。コートは晴明が掛け布団代わりに使っている。寒さを凌ぐ為には、誰かが薪ストーブの番をしていなければならない。
 
 ―――結局、一番損な役回りは、私と云う事か。
 
 零は諦めてため息をつき、ストーブの上で湯気を立てている薬缶の湯をガブ飲みして空腹を誤魔化すと、椅子を火の前に運んで腰を下ろした。
 ――零にしたって、留置場で三日も過ごし、まともに眠れて居ないのだから、疲れ切っている。しかし、引き受けた以上、依頼を果たすのが探偵の役目、か……。
 ……だが、依頼料の前払い金を受け取っていないぞ?
 
 「そうだ!」
 急に声がして顔を上げると、晴明がこちらを向いていた。
「式札を作れ」
「……私が、ですか?」
「ただ火の番をしているのも退屈であろう。数は多いに越した事は無い。明日までに作っておくのじゃ」
「しかし、私は式神を使えません。其の式札と云うものが、どんなものだが、良く知らないのですが……」
「人形(ひとがた)で良い。頼んだぞ」
 ――晴明は再び寝てしまった。
 
 ―――やれやれ。我が儘な依頼人を引き受けてしまったものだ。
 仕方無く、零は紙と物差しと鋏を持って来て、人形を切り抜く作業を始めた。
 しかし、何枚も作らないうちに、睡魔が限界を訴え、零は台に頭を預けて眠りに落ちた。
 
 
 
 ……首の痛さに目を覚ましたら、窓の外は白んでいた。――身体の節々が痛い。妙な姿勢で寝入ったツケが回ったようだ。
 
 目の前では薪ストーブが火を焚いていた。身体を起こそうとすると、背にコートが掛けられているのが分かった。
 ぼんやりする頭で部屋を見回してみる。すると、壁という壁にに護符が貼られているのが見えた。――晴明が、背伸びをして貼って回っているのだ。
「――何をしているのですか?」
「悪魔を封じる為の作戦を立てるのじゃ。そなたも手伝え」
 ……朝から元気がよろしい事で。
 零は重い身体を何とか動かし、晴明の処へ行って、並んだ護符を見てみた。――此れも、零が使っている物とは違う。晴明が自分で書いたのか?
 並んで護符を貼りながら、零はふと疑問に思った事を尋ねてみた。
「――悪魔を呼び出す時に使った魔術書には、悪魔を封じる方法は書かれていなかったのですか?」
「読んでおらぬ。……そして、本は無くした」
「…………」
「其れよりも、そなたが使って居る道具を見せよ」
「はい?」
「そなたが陰陽師として使っている道具じゃ。拙者が使えるものがあるのか、見てみたい」
 
 言われて、零は応接のテーブルに道具を並べた。
「………これだけか?」
 テーブルの上を見て、晴明が目を細めた。
「はい。私の家に代々伝わる『七つ道具』です」
「――ガラクタではないか」
「そうは言わないでください。此れで商売をしているのですから」
 晴明は先ず鏡を手に取った。
「そなた、此れを『退魔の鏡』と申したな?」
「はい。陽の光を魔物の嫌う光へと変換するものです。其れを当てられれば、大抵の妖魔は逃げ出します」
「ほほぅ。――では、拙者が預かっておこう。拙者が持っていた方が役に立ちそうな故」
「…………」
「で、この短刀は?」
「犬神を召喚する時に使います。――それと、邪気を浄化する時に」
「そなた、陰陽師ともあろう者が、犬神の様な下等な術を使うのか?」
「術に上等も下等も無いと思いますが。……それに、私の使う犬神は、只の犬神とは違います。人に取り憑いて悪さをするのでは無く、物の怪に取り憑かれた者の邪気を祓います」
 そう言うと、晴明は興味を持ったようで、手に取り鞘から抜き放った。――だが、ごく普通の短刀の刀身を見て、ガッカリしたように言った。
「お主が抜いた時は、もっと長くて、何やら幻妖に光っていたでは無いか。なぜ、拙者が抜いても光らぬ?」
 そして、護符を一枚宙に投げ、其れを斬る様に刃を動かした。――だが、護符は刃に絡みついただけで、破れもしなかった。
「――それに、紙も斬れぬとは。使えぬな」
 晴明は短刀を鞘に納め、零に投げて寄越した。
「此れは、斬るべきものしか斬れぬ刀です。下手に使うと、小丸が機嫌を損ねますから、あまり触らないでください」
 零が言うと、晴明はギロリと零を一瞥して、再びテーブルに目を戻した。
 
 「……この笛は何じゃ?」
 晴明が次に手にしたものは、銀製の神楽笛だった。
「呼妖笛と申します。妖魔が好む音色を出す為、吹けば寄ってまいります」
「面白そうじゃな。暇潰しに良い」
 晴明は、其れをニッカーボッカーのベルトに、刀を差す様に差し込んだ。
「他のガラクタは、何に使う?」
「――この鈴は、普段は鳴りませんが、近くに物の怪が居ると音を立てます。それから、煙管は、煙で物の怪の居る場所を把握するのに使います」
「あとは、この紙切れと……」
「紙切れとは失礼な。此れでも魔を封じる効果のある護符です」
「封じて、何の意味がある?魔は其の場で滅せねば、後の禍に為る。式神に退治させるべきじゃ。其れには、護符などよりも、人形の方が有効じゃ」
 
 ……晴明の横柄過ぎる態度に、さすがの零も苛立ちを隠せなくなってきた。
「――其処まで仰るのなら、ご自分で悪魔を退治なさってください。人形も、ほらこの通り、ご用意致しましたので」
「何じゃ?五枚しか無いではないか。とても足りぬわ。せめて、百枚くらいは欲しい」
「………言っておきますが、私は商売でこう云う仕事をやっているのです。口ばかりで金の払えぬ依頼人の仕事は、お引き受け致しかねます」
 ……すると、さすがに零を怒らせるのはまずいと思ったのか、晴明は鋏を手にして、自分で人形を切り出した。しかし、納得いかない様子で、口を尖らせている。
「――だから、拙者に関わるなとあれ程申したのじゃ。其れでも関わって来たお主に、非は無いと申すか?」
「そうは申しません。ですが、人に物を頼むのなら、それなりの礼儀というものがあるでしょう?」
「礼儀、か。それならば、お主の態度こそ、朝臣であり従四位である拙者に対しての礼儀と申せるのか?」
「今は平安時代では無いのです。貴方は身寄りの無い只の子供。それなりの態度を取らねば、私に限らず、世間は受け入れてくれませんよ?」
「―――ははぁ、拙者の話を信じて居らぬ様だな」
「信じて居ないとは申しません。現に、悪魔を見たのですから。しかし……」
「拙者が安倍晴明であるとは信じ難い、と。――ならばよい、見せてやろう」
 そう言って、晴明はニッカーポッカーのポケットから何やら取り出し、床へ投げた。
 ……それがヤモリだと気付いて、零は飛び上がった。
「こ、このようなものを、何時の間に……」
「昨日、湯屋に行った時、階段の処で拾ったのじゃ。――十二天将が一・青竜、出でよ!」
 晴明は人形を手に取り、宙に放った。
 
 人形は宙を舞い、ヤモリの上で停止した。
 そして、眩しい光を放って燃え上がり、ヤモリを包み込む。――すると、光が途端に膨張し、部屋じゅうを満たした。
 ――その光が収まった時には、零の前に、巨大な神獣が鎮座していた。
 ………式神・青竜。四神の一角を担う神聖なる守護者。其の長大な肢体を緩やかに巻き、威風堂々たる雄姿で、零を見下ろしている。
 そして、身を起こそうとしたのだろう、首を動かすと、角が天井に当たり、ドスンと埃が舞い落ちた。
「……ちょ、ちょっと、何でもいいですから、家を壊さないでください!借家なんですから」
 晴明は、青竜の背に腰を下ろし、目を丸くする零を見下ろしながらニヤリとした。
「ならば、拙者の言う事を信じるのだな?」
「し、信じますよ」
「では、これからは拙者を師匠と仰ぎ、言う事を聞くのだな?」
「分かりましたよ。聞きますよ。聞けばいいんでしょう」
 すると、晴明は満足したのか、腕を振って術を解いた。その刹那に竜の姿は消え、ヤモリが床を這って逃げ出した。
「―――ちょっと!ヤモリを野放しにしないでください!私はあぁいうのが苦手なのですから」
「知らぬわ。其れよりも、式神の器になりそうなものを、もっと集めて参れ。さすがに悪魔も真昼間からは現れぬであろう。日が落ちるまでに準備をせねばならぬ故」
 ――零も、知識としては知っている。式神を召喚するには、其れを降ろす為の「器」が必要である。其の「器」に為り得るのは、魂を持ったもの。――つまり、生き物だ。しかも、召喚する式神と似た姿をしていた方が、よりその力を発揮できる。
 だから、青竜を降ろす際、晴明はその器にヤモリを使った。――しかし、そう考えると、十二天将にはやたら蛇に近い姿のものが多い。
 零は閉口した。
 ――別に、ヤモリや蛇が苦手という訳なのでは無い。油断している時にそういった小動物に脅されるのが嫌いなのだ。あぁいった輩は、予測出来ない動きをする。いっそ、何処に居ても分かる程の大きさをしていれば良いのだが……。
 恨めしい目を晴明に向けるが、だが、平然と無視された。
 仕方なく、零は事務所を出た。


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