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 ―――そして、半年後。
 
 零は、再び悪魔と対峙していた。
 ……ただ、今度は前回よりも数段厄介だ。――なぜなら、桜子の身体を乗っ取っているから。
 恐らく、弱められた上で壺に封印され、更に力を失った悪魔は、自らの形を為す事が出来なくなり、桜子を器に使っているのだろう。
 
 ――しかし、そもそも、なぜ此の様な事態になったのか?
 割れた壺を見れば一目瞭然だ。桜子が、壺を落として割ったからだ。――なぜ?
 悪魔に呼ばれたのか?……いや、護符で封印がしてある以上、其れは無い。
 恐らく、ハルアキが壺を保管していた金庫を開けっ放しで出掛けた為、掃除に入った桜子が興味を持って覗いた。そして、壷を手に取り、手を滑らせて落とした。そんな処だろう。
 ――と云う事は、元凶はやはりハルアキではないか!
 
 何かの役に立つと思っていた、桜子の驚異的な憑依体質も、此の時は事態をより悪い方向へ導いていた。――桜子を傷付ける訳にはいかないから、妖刀も使えなければ、式神も使えない。
 桜子の燃えたぎる目に睨まれながら、零はじりじりと後退するしか無かった。
 
 「―――よくも、俺を、此の様な目に遭わせてくれたな」
 桜子は、この世の者とは思えぬ低く掠れた声で唸った。
 共に封印してあった筈の勾陳を払い除けているからには、其れなりの力がまだ残っているのだろう。攻撃を受ければ、零も只では済まない。
 ……一度、殺され掛けている。其の心的外傷も、零を恐怖に陥れていた。
 
 「――今度こそ、貴様の命は貰う」
 桜子が零へ腕を伸ばした。……咄嗟に一歩退くが、背に本棚が当たった。――追い詰められた!
 桜子の爪が、零の目前に迫った。――有り得ない程に、長く、尖っている。手にした短刀でそれを払い除けようと振る。しかし、逆に鞘に収まったままの其れを掴まれてしまった。抵抗するがあっさりと突き飛ばされ、短刀を奪われる。
「………此れが太乙の剣か」
 桜子は短刀を抜いた。――しかし、其れはごく普通の鋼の色をしているだけで、何の変哲も無い短刀の姿をしていた。
「フン。俺には使わせぬと云う訳か。――だが、こうすればどうかな?」
 桜子は零の身体に圧し掛かった。そして、短刀の先を零の目の前に持って来る。
「幾ら切れぬ刃でも、目から脳髄程度は突けるだろう」
 ――桜子がニヤリとした。……其の狂気の表情が、零を凍り付かせ、瞬きすらも封じた。
 
 しかし、辛うじて刃先が零の目を貫く事は無かった。
 短刀の柄から根付が落ち、瞬時に犬神の姿に変わった。一瞬、桜子が「わっ!」とよろめく。――が、直ぐに体勢を立て直し、小丸に向き合った。
「……と、また慌てて逃げ出すとでも思ったか?何度も其の手に乗ると思うな」
 そう言って、飛び掛からんとしている小丸を腕で払った。
 顎を拳で強かに殴り付けられ、小丸は床に転げた。
 
 ――半年間もの間、狭く暗い壺の中で増幅された怨讐の念が、本能的な恐怖をも克服させたのだろうか?もしくは、桜子の身体に入った事で、本質そのものが変化したのか……。
 しかし、小丸のおかげで、桜子の手から逃れられるだけの隙は出来た。だが、その隙をいつまででも見せてくれるものでは無い。次の瞬間には、再び短刀で零を殴り付けようと腕を振る。
 
 手当たり次第に本棚の本を投げ、部屋中を逃げ惑う。
 ――そうしながら、零は考えていた。……この事態を、どの様にすれば収拾できるのか?
 やがて、ひとつの案が頭に浮かんだ。――しかし、こんな無茶な事、やった事も無いし、実際に出来るものなのかも分からない。そして何より、一人では不可能だ。
 ……全く、ハルアキは何処へ行ったのだ!?
 
 が、やがて、投げる本も無くなると、零は腕を捉えられ、奇妙な方向へ捻じ曲げられた。
「グッ……!!」
 痛みで目の前に火花が飛んだ。骨が折れたか、関節が外れたか、そんな処だろう。何とか身を捩って桜子の手を逃れるが、床に倒れ込んだら、痛みの為に動けなくなった。
 ………万事休す。零は目を閉じた。
 
 其の時。
 急に桜子が「わっ!」と声を上げた。――見ると、小丸が桜子の脚に本気で噛み付いていた。ふくらはぎから血が流れ落ちる。……何の意識も無い桜子本人には可哀そうだが、その隙を使わせてもらうしか無かった。零は足を振り上げ、桜子の腹を思い切り蹴飛ばした。
 桜子はバランスを崩し、仰向けにひっくり返る。其の儘、床に背中と頭を強かに打ち付け、動かなくなった。
 
 ――零の背筋に冷や汗が流れた。……憑依された人間が気絶するという事などあるのか?――それとも、桜子が「器」として、用を為さなくなった、――つまり、「死んだ」のか……?
 
 何とか身体を起こし、桜子の様子を見てみる。――目を閉じ、床にぐったりと身を投げている。
 しかし、横に控えた小丸が、未だ警戒を解いていないのを見て、とりあえずまだ悪魔が桜子の中に居る事は分かった。
 
 ―――一体、如何すればいいんだ!?
 零は腕を抑えながら唇を噛んだ。
 
 「………また、派手にやらかしたものじゃ」
 声が聞こえ、細く開いた窓から一羽の雀が入って来た。そして、部屋の中をぐるっと飛び回ると、本棚の上に降り立ち、――ハルアキの姿に変化した。
 ハルアキは、本棚の上にあぐらをかいて、零を見下ろした。
「何が起きたのじゃ?説明せよ」
「聞きたいのは此方の方ですよ!何で、金庫を開きっ放しで出掛けたりしたのですか?」
 零が言うと、ハルアキはハッとして金庫へ目を向けた。そして、割れた壺の残骸を見て、全てを察したのだろう。ハルアキは頭を掻いた。
「……閉め忘れた。其れだけじゃ」
「ならば、なぜ開けたのですか?」
「……此れを取り出す為じゃ」
 ハルアキはシャツの中から1冊の本を取り出した。――其の本自体が妖気を放つかの様な、異様な雰囲気を醸した表装の本。
 零は察した。……此れが、例の魔術書。
「しかし、其れは無くしたと聞いていましたが」
「あの後、自分の行動をよく振り返って、何処で無くしたのか調べて回ったのじゃ。……そして、見付けた」
「それなら、早く言ってくださいよ!悪魔への対処法が書いてあるのでしょう?」
「と、思う」
 ハルアキは目を逸らし、再び頭を掻いた。
「読めぬのじゃ」
「…………」
「国立図書館やら帝都大学やらを回って、いろいろ調べてみたのだが、さっぱり分からぬ。何処の国の言葉で書かれているのかすら分からぬのじゃ。――如何すれば良い?」
 ハルアキに聞かれた処で、零に答えられる筈が無い。
 只、ハルアキ――安倍晴明程の頭脳を以ってして解けぬ暗号として、考えられるとすれば……。
 
 「……恐らく、晴明様は悪魔に騙されたのです」
「何じゃと?」
「其の本は、何語で書かれている訳でも無く、意味の無い記号が並んでいるだけなのでしょう。――そして、其の中で、悪魔と契約を結ぶ方法だけが、図解で分かり易く示されている。
 つまり、其の本は、魔術書などでは無く、悪魔が人の世に現れる口実を作る為だけの本」
「…………」
「其の様な物、早い処、燃やしてしまった方が宜しい」
「………怒っているのか?」
「――此れ以上私を怒らせたくなければ、協力をしてください」
 零は、痛む腕を押さえながら、何とか立ち上がった。
「まず、桜子さんは……」
「眠っているだけじゃ。拙者が眠らせた。悪魔には効かぬが、人間の器に入れば、術が効くのでな」
 ……道理で。あの程度でやられる悪魔では無いと思った。
「ならば、動けぬ桜子さんの身体よりも、他の器を欲していてもおかしくは無いですね」
「―――何をする気じゃ?」
 
 零はハルアキを見上げ、声を落として先程思い付いた作戦を説明した。悪魔に聞かれぬ様に、口に手を当ててヒソヒソ話をすると、耳をそばだてていたハルアキが目を見開いた。
「――相変わらず、計画性の無い無茶苦茶な案じゃな」
「ならば、他に良い策はありますか?」
「………無い。しかし、その策が成功する保証も無い」
「やってみなければ分からないでしょう。――宜しくお願いしますよ」
「――その前に、念の為に確認をしておくが、………失敗すれば、拙者がそなたを殺す事になるが、良いか?」
「そうなった時には諦めます。―――行きますよ」
 
 零は、桜子に向き合った。
 其の手には、護符が握られていた。


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