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碧井 湊
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 ――とは言え、此処は帝都・東京。蛇やヤモリがそうそう簡単に見付かるものではない。
 零は、とりあえず大家さんの家の庭を捜索する事にした。
 立ち並んだ灌木の陰、天水桶の脇、縁台の下……。
 そして気付いた。――今は冬だ。蛇やヤモリがウロウロしている訳が無いではないか。……ならば、先程のヤモリは何処から持って来たのだ?
 考えても無駄な気がしたので、零は諦めて身を起こした。
 
 とその時。何かと目が合った様な気がした。――見ると、縁の下から金色の目がふたつ、こちらを見詰めている。……猫だ。
 大家さんの飼い猫という訳では無いが、この近辺に居付いている黒猫だ。居心地が良いのか、よくこの庭で日向ぼっこをしている。
 零はニヤリとした。
「――ちょっと、其処から出て来て貰えませんか?手伝って欲しい事があるのですが」
 猫に話し掛けてみたものの、当然ながら猫がはい左様ですかと出て来る訳は無く、じっと零を見たまま、微動だにしない。
「……困りましたね……」
 零は少し考えて、懐から短刀を出した。――こんな事に小丸を使うのは可哀そうな気もするが、致し方無い。零は髑髏の根付に言った。
「犬神、出て参れ」
 すると、根付が焔に包まれ、その焔が犬の形を成した。
 その背中を撫でてやりながら、零は言った。
「悪いですが、あの猫を軒下から追い出して欲しいのです」
 ――小丸は、明らかに不服そうな顔で零を見たが、仕方なさそうに腰を上げて、軒下へ入って行った。
 ……それからは良く見えなかったが、犬の吠える声と猫の「ニャーッ!」と鳴く声がしばらく続いていた。やがて、黒猫が勢い良く庭へ飛び出して来るのが見えた。
 それを零は捕まえたのだが、抵抗する猫にこっ酷く腕を引っ掻かれてしまった。
「大人しくしてください。私だって、好きでこんな事をしている訳では無いのです」
 ――その光景を、小丸が不思議そうに見ていたのだが……。
 
 「――何をしてるの?犬の声がしたけど、野良犬でも迷い込んだのかねぇ」
 気付くと、大家さんが縁側に立っている。零は、そっと小丸の姿を見た。――所々焔に包まれた其の姿は、どう見ても普通の犬では無い。
「え、えぇ。ですが、猫が威嚇したら逃げて行った様ですよ」
「そう。それならいいけど。野良犬なんて物騒だねぇ」
 大家さんは行ってしまった。――目が不自由で居てくれて助かった。零の背中を冷や汗が流れ落ちた。
 
 小丸を宥めて根付へ戻し、零は猫を抱えて事務所に戻った。
 ――すると、晴明が菓子箱の中に蛇と亀を入れ、頭に雀を乗せて座って居た。……全く、何処から連れて来たのだ?そして、此処は動物園か?
 零が猫を見せると、満足そうに手を伸ばし、膝の上に抱えた。――先程まであれ程暴れていた猫が、晴明に掛かると酷く大人しい。……動物と心を通じ合わせる能力でも持っているのだろうか?
「よし。これで四神が揃った。此れだけ居れば、悪魔とて太刀打ち出来ぬであろう」
「――ちょっと待ってください。また、式神を呼ぶのですか?」
「致し方あるまい。そなたの道具では頼り無い事この上ないからの」
「………お願いですから、家だけは、壊さないでください」
「考慮は致すが、保証は出来ぬ」
「…………」
 零はため息をついて、猫に引っ掻かれた傷の手当てをしようと、茶箪笥の救急箱を見に行った。――そして、茶箪笥に入れておいた蜂蜜の入った壺が無くなっている事に気付いた。頂き物で、紅茶に良く合うので少しずつ使って居たのだが……。
 零は晴明に目をやった。――すると案の定、壺を抱えて蜂蜜を舐めている。
 視線に気付いて、晴明は振り向いた。
「万一、悪魔を滅する事が出来なかった場合には、封印する為の器が必要じゃ。丁度良い壺が有った故、中身を処理してやっているのだ」
 ……零は、もう何と言っていいのか分からなくなっていた。
 
 
 
 その夜。
 煙草を吸い続けている訳にもいかない為、事務所には香が焚かれていた。淡い煙が棚引きとなって、部屋を満たしている。
 
 昨晩は厳重な結界の為に現れなかったが、今晩は其れでは困るので、若干緩めてある。しかし、今晩現れるとも限らない。根気勝負になりそうだ。
 
 ――しかし、その時は間も無くやって来た。
 
 天井の煙が揺れた。其れを見て、ハッと零は顔を上げた。――だが、その原因が晴明だと知って、ため息をついた。
「―――何をしてるんですか?」
「猫が逃げようとする故。――これ、猫!何処へ参る?」
「そりゃ猫ですから。じっと待ってるのに飽きたのでしょう」
 ――しかし、猫はただ逃げ出したのでは無かった。
 
 チリーン。
 
 零の耳元で澄んだ音が響いた。
「……お主よりも猫の方が頼りになるな」
 晴明に嫌味を言われながらも、零は立ち上がり、身構えた。
 
 部屋の中央に、香の煙を全て集めて、黒い影が現れた。――二本の曲がった角、そして、蝙蝠の様な翼。――間違い無い。昨日見た悪魔だ。
 
 悪魔は、はっきりと姿を現すと、長い爪を零に向けた。
「昨日は、よくもやってくれたな」
「見ず知らずの悪魔に、黙って殺される程、人は良くありませんのでね」
 零は護符を構えた。
「……おい悪魔、お主の目的は誰なのじゃ?拙者では無いのか?」
 晴明は、退屈そうに振り向いた。――その手には、人形が構えられている。
「しかし、遠慮は致さん。――式神・玄武、出でよ!」
 晴明の手から、人形と亀が放たれる。亀は宙で光を放ち、床に着いた時には、大きな甲羅の両端から蛇の頭が伸びた、玄武の姿になっていた。
「玄武よ、其の者を捕らえよ!」
 すると、玄武は二本の蛇の頭を悪魔へ伸ばし、その腕に絡めた。続いて晴明は叫んだ。
「式神・白虎!其の者を薙ぎ払え!」
 次は猫に向かって人形を投げる。人形の燃える光に包まれた猫は、みるみる姿を変え、巨大な白い虎が現れた。
 玄武によって動きを封じられている悪魔に、白虎は飛び掛かった。
「……小癪な……」
 悪魔が燃える様な目で白虎を睨むが、逃げられずにその突進をまともに受け、床に組み伏せられた。
 更に晴明は腕を振る。
「朱雀よ!其の者を焼き払え!」
 其の声に合わせ、頭の上から雀が飛び立つ。そして、人形に導かれる様に宙を舞い、炎に包まれた美しい鳥の姿へと変身した。
 朱雀の放つ眩しい光を受け、悪魔が「グッ」と声を上げた。
 
 「もう一息じゃ。――式神・青りゅ……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
 零が慌てて声を挟むと、晴明は不機嫌そうにギロリと睨んだ。
「何じゃ!?今良い処なのに……」
「だから、家を壊さないでくださいと言ってるでしょう?これ以上式神を呼んだら、確実に天井が抜けますよ。今だって、ほら、朱雀の炎が電灯の笠を焼いてるではありませんか」
「家など、壊れたら直せば良いでは無いか」
「そんなお金など、何処にもありませんよ!」
「………煩いのぉ」
 晴明は渋い顔をしたが、人形を構えたまま、呪文は止めた。
 
 ――しかし、それが結果として悪魔に隙を与えてしまう事になったと気付いた時には、時既に遅かった。
 
 突如として、悪魔の姿が煙と化し、玄武の呪縛から逃れ出た。そして雲散霧消したと思われた煙が晴明の背後に集まり、悪魔の姿をとった。
「晴明様!後ろを!!」
 零は叫んだが、晴明は何の返答も返せなかった。振り向く間も与えられずに黒い腕で首を締め上げられ、小さな身体が宙に浮いた。
 零は咄嗟に護符を投げた。護符は宙を飛び、悪魔を囲んで動きを封じようとするが、辿り着く前に、炎に包まれて燃え尽きた。
「――無駄な事をするな。人間には、俺は倒せない」
 悪魔が腕に力を入れた。晴明は黒い腕に爪を立て、必死の抵抗を見せたが、やがて声も無くガクリと力を抜いた。――その瞬間、三体の式神も姿を消す。
 
 ……とんでもない事態になった。何とか、晴明を助けなければ……!!
 零は妖刀を抜いた。――効果が無い事は分かっている。しかし、少しでもこちらに注意を向けられないか。零は床を蹴り、悪魔の首に刃を突き立てた。
 しかし、案の定、切先は何の感触も無く宙を斬った。その代わりに、悪魔の手が零の腕を掴んだ。そのまま振り回され、その勢いで壁に叩き付けられる。
 息が止まって、目の前が暗くなった。薄れる視界の中で、晴明も床に放り出されているのを見て、少し安心した。……恐らく、意識を失っているだけだろう。悪魔の手から離れれば、とりあえずの危険は避けられる。
 
 悪魔は、零の期待通り、こちらに意識を向けてくれたようだ。ただ、予定外なのは、背中を強かに打ち付けた衝撃で、零が動けない事……。
 しかし、切り札は失った訳では無い。
 悪魔が零に腕を伸ばそうとした刹那、妖刀から炎が湧き出た。――犬神・小丸だ。
 小丸は、悪魔に向かって吠え立て、その腕に噛み付こうとした。
「わっ!!」
 意外にも、小丸の姿を見て、悪魔はよろめいた。――其の慌てた様子を見て、零は悟った。
 
 ――悪魔の姿を見ると、曲がった二本の角に尖った顎、其処に生えた髭と、何処となく山羊の姿に似ている。見た目が其の本質を表している事は良くある事。だとすれば、悪魔の本質は山羊で、そうすれば、天敵たる犬が苦手……!!
 考えてみれば、昨日現れた時も、小丸が噛み付いたら慌てていた。これは、良い事を発見したのかもしれない。
 
 零は痛む背に顔を歪めつつも、何とか起き上がった。……小丸の力を借りて、何とか追い払えないものだろうか?
 しかし、悪魔の動きを見て気付いた。――晴明が張った結界の内側に湧いたため、外に出る事が出来ない。つまり、この場で封印もしくは滅却するしか、方策が無い。
「……全く、困った事をしてくれたものです」
 零は苦々しい目を晴明に向けるが、床に伏せたまま、死んだ様に動かない。
 とりあえず、悪魔を消耗させ、こちらの手の内に乗せられる程度には弱らせなければならない。
 小丸は、果敢に悪魔に挑んでいる。悪魔は防戦一方で逃げ回っているが、このままでは、先に小丸が疲れ果てるのは目に見えていた。悪魔も其れを待っているに違いない。
 ――やはり、あれを呼び出すしか無いのか。
 零はしばらく考えた末、晴明の手から人形を取り上げた。
 
 ――晴明には式神は使えないと言っていたが、あれは正確では無い。……式神はひとつしか使えない、それが正しい。
 零は、其れを使う処を、誰にも見られたく無かった。――特に晴明には。
 其れを見れば、零が「禁忌」を犯している事がバレてしまう。――其の式神自体が、禁忌なのだから。
 
 晴明が目を覚ます様子が無い事を確かめた上で、零は人形を構えた。
「―――式神・太乙、我が身に降り立て!」
 零の顔を前で、人形が焔となって消えた。――その焔は、光を放つ事無く床に落ち、零の足元に黒く丸い染みを作った。其れは陰となり、質量を持って零の身体を這い上っていく。やがて其れが零の姿を呑み込むと……
 
 其処には、漆黒の衣を纏った女神の姿があった。


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