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 三日後。
 零ら不敬の罪で捕えられた者たちは、一斉に釈放された。元々、何をした訳でも無く、ただ、大事を知らずに出歩いていただけの者たちだ。其れに、さすがに年の瀬は、留置場を少しでも空けておきたいのだろう。
 零も、促される儘に鉄格子を出ようとしたのだが、未だ少年が座っている事に気付き、警官を見た。
 零を留置場に連れて行った、あの若い警官だ。その時の様子から、悪意は無いが口が軽い人物である事を、零は見抜いていた。零は、その警官に尋ねた。
「――あの子供は、一体、何を仕出かして留置場などに入れられたのです?」
 警官は少々渋い顔をしながらも、案の定、答えた。
「迷子になっていた処を保護しようとしたのだが、暴れて、何人かの警官に怪我をさせたのだ。だから、公務執行妨害で捕まっている」
「おや、まぁ。あんな子供に、立派なお巡りさんがたがしてやられるとは……」
「貴様、無礼を言うと、また牢に入れるぞ!」
「いえいえ、決して其の様なつもりではありません。――普通、其の様な事はあり得ないでしょう。あの子供、只の子供では無いのですか?」
「それが、身元が分からぬのだ。身元を証明する様な物を持っても居なければ、口を開こうともしない。こちらとしても、扱いに困っているところなのだ」
「ほほぅ……」
 
 零は、留置場の中に目を戻した。少年は、相変わらず、部屋の隅で丸くなっていた。
「――不躾な事を申す様ですが、……あの子供を、預からせてはくれませんか?」
 零が言うと、警官は目を丸くした。
「貴様、何を考えている?……ははぁ、善人ぶって子供を預かり、人買いにでも売るつもりだろう?」
「滅相もありません。――ただ、私も身寄りが無いもので、幼い頃から、寂しい思いをして参りました。……特にこの寒い時期は、人恋しくなるものです。せめて、正月くらいは、温かい処で過ごさせてやりたい、そう思っただけですよ」
 そう言うと、人の良さそうな警官は少し考えた末、「上官に相談してくる」と言って、去って行った。そして、しばらくして、
「貴様の身元さえしっかりと証明できれば、あの子供を預けても良いと言われた」
と、得意気な顔で戻って来た。――恐らく、上官にしても、あの子供の処遇に手を焼いていたのだろう。其れを預かろうと云う奇特な奴が居れば、それ幸いという態度を示すに違い無い。そう思った零の予測は当たった。
 
 零は、警官に示された書類に住所などを書き込み、預けていた手荷物を受け取ると、留置場から連れ出されて来た少年の手を引いて、警察署を後にした。
 
 「……お主、何を考えて居る?拙者に関わるなと、あれ程申したでは無いか。それなのに……」
「何となく、気になりましてね。貴方が、何者なのかが」
 少年は、警戒した鋭い視線を、零に投げている。しかし、それ以上は何も言わず、不貞腐れた様に口を噤んだまま、犬神心霊探偵社へとやって来た。
 
 三日間空けて居た部屋は、心底冷え込んでいた。薪ストーブに火を入れ、炎が部屋の中を照らし出すと、ようやく落ち着いて、零はコートを脱いだ。
 少年は、やはり部屋の隅で小さくなっていた。――寒いのだろう。ガタガタと震えている。当然だ。所々穴の開いた粗末な着物を纏っただけの、乞食まがいの格好なのだ。
「其の格好では寒いでしょう。大家さんに頼めば、息子さんのお古でもお借り出来るかも知れません。少し、待っててください」
 零は脱いだコートを少年の肩に掛け、事務所を出た。
 
 大家さんの家――と同時に、零が住居に借りている部屋は、探偵社の建物の直ぐ隣の、山茶花の生け垣のあるお屋敷に在る。目が不自由な老婦人が一人で住んでいるため、物騒だからと空いた部屋を下宿として貸し出しているのだ。其の為、零の様な収入の安定しない仕事をしている者でも払える程度の家賃にしてくれているから、零にとっては非常に在り難い。
 零が居間を覗くと、大家の老婦人は炬燵で寛いでいた。目が悪い為、代わりに耳は良く聞こえる。零の気配を察して、早速話し掛けて来た。
「おやまぁ。三日も留守にしてたから、どうしたのかと心配していたんだよ」
「申し訳御座いません。先の天皇陛下がご崩御なさった日に外を歩いていたら、捕まってしまいまして」
「其れは大変だったねぇ。私はまた、若い殿方の事だから、どこぞやの好い人の処にでも行ってるのかと思ってたよ。若い頃が懐かしいねぇ」
 老婦人は、ズズズと茶を啜った。
「で、私に何か用なのかい?」
「息子さんの古着を、貸しては頂けないでしょうか?」
「これまた、不思議な事を言って来るものだねぇ。あんた、子供でも出来たのかい?」
「い、いや……。――親戚の子供が、急に上京して来まして。しばらく私の部屋に住まわせようと思っているのですが、宜しいでしょうか?」
 老婦人は、零の方へ顔を向けてニヤリとした。
「子供だろうが好い人だろうが、誰でも私は構わないさ。――ちょっと待っとくれ。息子が着てた服は、納戸の長持の中に仕舞ってある筈だ」
 老婦人は、閉じた目のまま、手探りで、しかし器用に障子を探り当て、奥へと消えた。そして間もなく、風呂敷包みを持って現れた。
「――久し振りに出したけれど、懐かしいねぇ。……あの子が亡くなって、もう二十年も経つんだね。あの子の服は、全部取ってあるから、身体に合わなかったら、また見においで」
「辛い事を思い出させてしまい、申し訳ありませんでした。大家さんしか、頼る人が居なかったものですから」
「気にするんじゃないよ。――その子も、また挨拶に来ておくれよ。賑やかなのは大歓迎だからね」
 
 零は風呂敷を抱えて、事務所に戻った。
 すると、少年がコートを引きずって薪ストーブの横に立っていた。――逃げはしなかった様だ。
 少年は、ストーブの横の台に置いておいた、零の手荷物を眺めているようだった。そして、零に鋭い目を向けて言った。
「お主、―――陰陽師か?」
「はい、一応は。……しかしなぜ、其れが分かったのです?」
「この鏡じゃ」
 少年は、鏡を手に取り、顔の前に掲げた。――が、その鏡面では無く、裏を眺めている。
「六壬式盤に晴明紋。此の様な物、陰陽師以外の者が持って居っても、何の役にも立たぬ」
「其れをご存知の貴方は、一体何者なのですか?」
 零が言うと、少年は護符を数枚手に取り、こちらに向かって投げた。
「式神よ、其の者を黙らせよ」
 護符は、意思ある者の様に一直線に宙を飛び、零の目前に迫った。しかし、零が手を前に出すと、急に推力を無くし、ハラハラと床に舞い落ちた。
「――其の護符では、式札には為りませんよ。……其れにしても、式神が使えるとは、畏れ入ります」
 少年は、不機嫌そうに零を睨んで、フンと鼻を鳴らして再び部屋の隅へ座り込んだ。
「それよりも、服を借りて来ました。――そのまま着替えるのも何ですので、風呂屋にでも参りましょう」
 
 嫌じゃ嫌じゃと駄々を捏ねた少年だったが、零が強引に腕を引っ張ると、さすがに力では敵わないと諦めたのか、渋々付いて来た。
 しかし、風呂屋に着いてからがまた大変だった。
 着物を脱ぐのを嫌がり、それでも強引に脱がせてみると……。
 
 懐や袖口から、バラバラといろいろな物が出て来た。それが、蜥蜴の死骸だったり干からびた蛾の羽だったりするから、零は慌てた。
「だから、着物を脱ぐのは嫌じゃと申したではないか!」
 そう言いながらも、少年はさっさと浴室へ行ってしまい……。
 零は仕方無く、店主に頭を下げてそれらの残骸を片付け、それから風呂へ向かった。
 
 「――全く、あんな物を着物に隠しておくなんて、冗談じゃありませんよ」
 零が少年を睨むと、少年は顎まで湯に浸かり、ブクブクと泡を吹きながら言った。
「お主がやった事じゃ。拙者は嫌だと申したではないか」
 ……そう言われれば、言い返しようも無い。
 
 ――そうして、しばらく並んで湯に浸かっていたのだが、やがて、少年が口を開いた。
「そなた、名を何と申す?」
「犬神零と云います」
「偽名じゃな?」
「…………」
 あっさりと看破され、零は閉口した。
「そなた、土御門の系統を継ぐ者であろう?鏡の文様と護符の意匠を見れば分かる」
「……そう言う、貴方は何者なのですか?」
 また暴れるだろうか、と思ったが、少年は今度は素直に答えた。
「拙者、安倍晴明と申す」
「………え?」
 零は唖然と少年を見詰めた。
 
 安倍晴明という名は、零の様な生業をしている者で、知らぬ者は居ない。それどころか、様々な芝居やら浄瑠璃やらで出てくる人物であるから、その方面に造詣が深い人なら、ピンと来るであろう。
 平安時代の有力な陰陽師の一人で、独自の陰陽道を築き上げ、其の強力な呪術で他の追随を許さなかった、この道ではカリスマ的な存在。土御門家の祖先にも当たる。
 と同時に、憶測まがいの伝説も多く、謎の多い人物でもある。
 ――しかし、千年も昔に生きた人だ。そんな人が、目の前に、しかも子供の姿となって現れるとは、一体どう云う事なのだ?
 
 「―――信じて居らぬ様だな」
「当然ではありませんか。私に信じさせようと云うのであれば、信じられるなりの理由を説明すべきではありませんか?」
「面倒じゃな」
 少年はまたブクブクと泡を立て、そう言いながらも話し出した。
 
 「――転生の術、と云うのを、存じておるか?」
「はぁ……」
 話には聞いた事がある。仏教で云うところの「輪廻転生」とは違い、命が尽きる前に、他の人間を「器」として魂を宿らせ、延命を図る術。
 しかし、其れは太古より「禁忌」とされ、記録にのみ残されているに過ぎず、現在では、其の方策も伝わっていない。
「この千年間、転生を繰り返しておった。この身体は、四十九代目じゃ」
「…………」
 ――何処まで信じて良いものか、全く分からない。いや、信じないのが普通だろう。
 しかし、此れまでの様子を見ている零は、あながち嘘とも言い切れない、何かを感じていた。
「信じる信じないは、お主の勝手じゃ。しかし、拙者は嘘は申して居らぬ。
 ……そして、これから話す事は、信じねば、お主の命が無くなる話じゃ。心して聞け」


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