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 晴明は、死を前にした時、どうしても試してみたい事があった。
 それは、陰陽師と云う、道を究めようとした者の探究心の極みでもあり、同時に、死への恐怖でもあった。
 
 晴明は、様々な占いを行い、其の結果導き出された場所に、生まれたばかりの赤ん坊が居ると知り、これは天命だと思った。
 
 晴明は、其の赤子を引き取り、そして、転生の術を行った。
 
 赤子はだが、其れに気付いた嫡子の吉平によって極秘に里子へ出された。――禁忌を犯したとあれば、安倍家の繁栄が危うくなる。その為、其の存在を何としても隠し通す必要があったのだ。
 
 晴明は、貧しい農民の子として育てられ、やがて、養親を捨て京へ上り、――力尽きて、再び転生を行った。
 
 こうして、京の都で再び栄華を手に入れようという執念で、転生を繰り返していたのだが、時は流れ、時代は移ろい、都は京から江戸へ、そして東京へと移り……。
 
 その間に、明らかに、自身の持つ力が失われて来ているのを晴明は感じていた。
 転生には、莫大な霊力を必要とする。その為、繰り返す程にその力は弱まっていく。
 それが許せなかった晴明は、再び禁忌を犯した。
 
 ――其れとの出会いは、神田の古本屋だった。
 一人暮らしの伊太利人が死に、その荷物を整理している場面に、たまたま出くわしたのだ。
 興味本位で、外国語の本を眺めていると、「売れないからゴミに出すだけだし、持って行ってもいいぞ」と、その古本屋の店主が、転生して十年ばかり経った姿の晴明に言った。
 その特異な表装に目を奪われていた晴明は、其れを遠慮なく頂いて帰った。
 
 ……が、後でよく調べてみると、それは外国の魔術に関する本だった。
 そして、その内容に、悪魔と契約して、如何なる願いをも叶える方法が書かれていた。
 
 
 
 「――で、拙者は、悪魔を呼び出した。そして、願いを叶える様に申した」
「……何を、願ったのですか?」
「不老不死じゃ。さすれば、転生をせずとも良く、拙者の力も、これ以上失われる事は無い」
「…………」
「しかし、悪魔はこう申すではないか。――願いを叶えた見返りとして、拙者の魂を頂く、と」
 
 ――外国語の本なので、余り詳しいところまでは調べず、図を参考にしてやってしまったのだ。
 晴明は断ったが、悪魔は聞き入れない。
 晴明は、悪魔の手を逃れようと、式神を囮にして、その場から逃げ出した……。
 
 「不老不死にしておきながら魂を奪うとは、まるっきり詐欺では無いか。――しかし、悪魔が拙者を見付ければ、間違い無く殺そうとするであろう。だから、拙者に関わるなと申したのだ。お主を巻き込みたくは無い故」
 ――だから、留置場に居ても、人から離れる様にしていたのか。
「其れならば、初めからそう言うべきではありませんか?」
「だから、今申したでは無いか。――今からでも遅くは無い。拙者の事は、忘れる事だ」
「そうもいきませんよ。……今、貴方の仰った事が真実なら、私の先祖に当たるではありませんか。先祖を敬えと云うのは、我が国に伝わる教えです。
 そうで無くとも、貴方の様な子供を見捨てたとあれば、大家さんに追い出されかねません」
「…………」
 
 晴明は少し考えている様子だったが、やがて、顔を上げた。
「では、子孫を頼んでみるとするかの。――悪魔を封じるのを、手伝って貰いたい」
 
 
 
 それから、嫌がる晴明の頭をゴシゴシと石鹸で洗ってやり、大家さんから借りた洋服に着替えさせると、随分と雰囲気が変わった。
 火照った頬をして足をぶらぶらさせながら縁台に座り、牛乳の瓶を抱えてグビグビと飲んでいる姿は、何処にでも居そうな少年そのものだった。……先程の話が嘘の様な、在り来たりの光景。セーターにニッカーボッカーという、少々古風だが洒落た雰囲気の衣装も良く似合っている。
 腹が減っていたのか、一気に牛乳を飲み干すと、晴明は大きく欠伸をした。
「そなたが早く支度をせぬから、眠くなってきたではないか……」
 そう言って、ゴロンと縁台に横になり、……すぐに寝息を立て出した。
 ――あの様な態度を見せてはいるが、内心、恐怖に震えて眠れぬ日々を送っていたのだろう。零に話した事で少し緊張が解れ、その疲れが一気に出たに違いない。
 長い髪の水気を拭き、零は晴明を背負い上げた。
 
 ――事情が事情だけに、一人で部屋に寝かせておく訳にもいかない。零は、事務所の応接の長椅子に晴明を寝かせ、布団代わりにコートを掛けた。
 その寝顔を見ながら、零はため息をついた。
「――安易に引き受けたはいいが、さて、如何したものか……」
 零はストーブの脇の台に置きっ放しになっている包みから煙管を取り出し、煙草を詰めて火を点けた。
 時刻は夕刻。窓越しに見える東の空が、ほの暗くなり掛けている。
 晴明を一人にする事は危険だ。寝ている様な無防備な場面では尚の事。悪魔が現れたら、ひとたまりも無いだろう。
 だからといって、零が一人で悪魔に対したとて、何が出来るとも思えなかった。零は、台の上から短刀を手に取った。
 ――私が使えるのは、此の妖刀のみ……。
 しかし、其れすら、悪魔と云う未知の妖怪に対して通用するのか、零には分からない。
 
 零は、煙草の煙をふぅと吐き出した。――それは、天井へと上がって行き、渦を巻く。
 
 ……それを見て、零は身構えた。――煙の流れがおかしい。扉も窓も閉まっているし、ストーブの熱が上がるにしても、あの様な渦にはならない。
 
 ―――チリーン。
 
 零の耳元で鈴が鳴った。――来る!
 
 零の目の前で、次第に渦は濃くなっていく。其れは徐々に形を成しながら下へと降り、床に着く頃には、角の生えた異形の姿を成していた。
 
 ―――これが、悪魔、か。
 
 二本の曲がった角を頭に生やし、背には蝙蝠の様な翼が生えている。体躯は真っ黒で、見上げる程に背が高い。
 其れは、こちらに背を向けている。と同時に、長椅子で眠る晴明を見下ろしていた。
「―――貴様、よくも俺を騙したな……」
 悪魔は、低く唸る様な声を出した。其の響きは、零の肌を粟立たせた。
 しかし、悪魔は零の存在には気付いていないのだろうか?無視する様に晴明へと歩み寄り、手を伸ばそうとする。
 
 零は、短刀を抜き放った。――一尺程の鞘に納められている筈のその刀身は、二尺を裕に超え、紫色の幻妖な光を放っていた。
 ――妖刀・小丸。
 其れを構え、零は悪魔の背へと振り下ろした。
 
 ……しかし、其の切先は、何も無い空間を切り裂いた様に、何の抵抗も無く宙を走った。
 
 悪魔が、ゆっくりと振り向いた。
 その目は、白目が無く、赤い瞳が渦を巻いて光っていた。
「――お前、俺が見えるのか?」
 悪魔は零に言った。――だが零は、声も出せない。その目を見た瞬間、金縛りに遭った様に、身体が動かなくなっていた。
「お前もこいつと同じなのか。――ならば、お前の命も頂こう」
 悪魔が、零に手を伸ばす。その黒く歪な指には、鋭く尖った爪が生えていた。それが、零の首筋を掴もうと動いた。
 
 その刹那。
 鋭い唸り声が足元から聞こえた。辛うじて目だけをそちらに向けると、焔に包まれた白い犬が、今まさに悪魔に飛び掛からんとしている。
「―――小丸!」
 主の危機を察して、短剣から飛び出てきたようだ。気付けば、短剣の柄にぶら下げている根付が無くなっている。小丸という名の「犬神」は、悪魔の脚に牙を突き立てた。
「――――!!」
 悪魔は思わぬ攻撃に驚いた様だ。慌てて小丸を振り払おうと、脚を蹴り上げるが、小丸は離さない。
 
 気付けば、零の金縛りが解けていた。――恐らく、あの目を見ると、身体を支配されるのだろう。だから、悪魔の意識が他へ移った今なら、動ける。
 
 零は咄嗟に台の上の鏡を掴んだ。そして、書斎への扉を開けた。――東は日が陰っているが、西ならば、まだ間に合うかもしれない。
 案の定、書斎は、小窓から入る西日の紅い光に満たされていた。……これが通用するとは限らないが、試してみなければ分からない。それに何より、妖刀が通用せぬ以上、魔を祓うには、この方法しか無い。
 
 零は、鏡面を太陽に当てた。一日の終わりの残光を集め、鏡は眩しく光を放った。
 その角度を動かし、鏡を悪魔の顔へ向けた。
 
 太陽の光が反射し、其れは真っ直ぐに悪魔の顔を照らした。
「ウッ……!!」
 悪魔は顔を庇う様に手を上げたが、遅かった。
 途端に悪魔の身体は黒い霧となり、空気に溶け込む様に消え散った。


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