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第弐話  壺
 
 
 椎名桜子は、何時もの通り掃除をしていた。
 ――全く、この探偵社ときたら、掃除くらいしか仕事が無いんだから。
 「雑用係」として雇われたものの、桜子が依頼人と関わる様な仕事は、此れまでに片手の指で数える程しか無い。
 殆どは、電話で来る依頼で、暇を持て余したお婆さんの身の上相談やら、居なくなった犬や猫の捜索、庭に現れた蛇の駆除……。
 本人が、探偵とは「何でも屋」だと言っていたが、全くその通りだった。
 
 そんな風だから、事務所に居る桜子は極めて暇なのだが、逆に、此の探偵社の主である犬神零は、何だかんだ忙しそうで、頻繁に留守にしていた。
 この日も、電話を受けて何処へやら出掛けて行った。――どうせまた、庭の柿の木に猫が上がって降りられなくなったとか、そんな事だろう。
 
 此処へ就職して、三ヶ月。
 窓越しに見る空は青く、心地良い日差しが室内へ注ぎ込んでいた。
 ――こんなにいい天気なのだから、子供なら、外で遊ぶべきものじゃないの?
 窓拭きをしながらふと思い、桜子は、事務所の片隅に在る扉に目を向けた。
 
 あの中に、ひとりの子供が居る。
 ハルアキという十歳くらいの少年は、本来なら遊びたい盛りの筈だが、人と関わり合う事を極端に避け、ずっと部屋に籠って、一人で何やらやっている。事務所に依頼人が居る時には、決して顔を出さない。辛うじて、零と桜子にだけは、顔を見せるのだが……。
 
 ――こんな事を続けて居ては、健康上も、精神衛生上も良く無いわ。
 
 桜子は、窓を拭いていた雑巾をバケツへ入れ、そっと扉に近付いた。……いきなり開けると、また、妙な事をされかねない。桜子は、コンコンとノックをした。
「ハルアキぃ~、天気が良いわよ。ちょっとは外に出て遊んで来なさいよぉ」
 しかし、直ぐに予想通りの答えが返って来た。
「嫌じゃ」
 ――全く、素直じゃないんだから!
 桜子は扉をバッと開けた。
「子供は外で遊んでどれだけのものよ!いいから外に行って来なさい!」
 ハルアキは、何時もの通り、本棚の並んだ書斎の奥に座り込んで、何やらやっていた。桜子が中に入るとギョッとした顔でこちらを振り向き、
「嫌じゃと申して居るであろう!しつこい女子は嫌いじゃ!!」
と、手元にあった何かを投げて来た。
 ……それが蛇の抜け殻だというのは、直ぐに分かった。桜子は、
「キャーッ!!」
と悲鳴を上げて、部屋を飛び出て扉を閉めた。
 
 ……あのクソガキ!!
 桜子は、蛇が最も苦手だ。田舎に居た頃は、田んぼ道なんかを歩くと頻繁に出会って、そんなところでも田舎が嫌いだった。
 だから、幾ら腹が立っても、再び扉を開けるのは躊躇われた。……また、蛇の抜け殻を目にしなければならなくなる。
 仕方無く、桜子はお茶でも飲んで落ち着こうと思った。
 
 桜子は、茶箪笥から急須と茶筒を出した。――お客や零には紅茶を出すが、桜子はどうも苦手だ。だから、自分用に煎茶を買ってきていた。お湯を沸かし、急須に茶葉を入れそこへ注ぐ。
 自分用の湯呑へお茶を注ぐと、穏やかな香りが鼻をくすぐる。――やっぱり、お茶はこうでなくちゃ。
 応接の長椅子へ、湯呑と、お客さんに出す様に――という名目で買って来た松露を持って、腰を落ち着けた。さて、松露をひとつ摘もうかしら、と、包み紙を剥がそうとしたら、しっかり箱に貼り付いて、うまく取れない。……困ったわ。
 桜子は、ふと思い付いて、零の机を見た。――確か、あの引き出しに、ペーパーナイフ代わりに丁度良さそうな短刀が入ってたわね。桜子は立ち上がり、引き出しを探ってみた。
 
 短刀は直ぐに見付かった。黒い鞘に入った、一尺程の長さの其れを手に取ってみる。
 ――柄に、変な形の髑髏の根付が付いている。……よく見ると、犬のそれみたいに鼻と口が異様に出ている。……にしても、気味が悪い。
 桜子は、それを見ない様にして、短刀を引き抜いた。――何の変哲も無いが、手入れのされている感じの短刀。その刃を、松露の包み紙へ差し込んだ。
 ……だが、力を入れてグイグイ引いても、一向に包み紙が破れない。
 ―――何、この短刀?どれだけ切れ味が悪いのよ!?
 終いには腹が立ってきて、桜子は諦めて短刀を鞘に納めた。――見た目だけで全然使えないじゃない。研ぎに出した方がいいわ。
 そう思っていたら……。
 
 カタカタカタ。
 
 何やら音がする。
「――何?」
 桜子は、キョロキョロと周囲を見回した。随分と近いところから聞こえる様だけど。
 ……そして、その音が、桜子の手元からしているのに気付いて、ギョッとした。
 
 短刀からぶら下がった根付の髑髏が、桜子の方を向いて、カタカタと顎を動かしていた。
 
 「キャッ!!」
 桜子は短刀を机の上へ放り出した。……そして、恐る恐る根付に目をやってみる。
 やはり、髑髏の口が動いている。――その様子は、犬が吠えている様にも見えた。
 ……どんな仕組みになっているのだ?
 気味が悪いが、其の儘置いておく訳にもいかず、桜子はそっと短刀を引き出しに戻した。――引き出しの中からも、カタカタと音が聞こえる。
「……な、何なのよ!?」
 桜子は松露の箱を抱えて、机を離れた。
 
 そして、鋏を探しに茶箪笥に戻った。
 ――その時、ふと思い付いた。
 甘い物を買いに行くって名目で、ハルアキを連れ出せないかしら。
 そう言えば、紅茶が少なくなっていた。零は出掛けているし、特にやるべき仕事も無い。少しくらい出掛けても、罰は当たらないだろう。
 鞭で駄目なら、飴で釣るまでよ。
 桜子は、再び扉に近付いた。……また、蛇の皮を投げられては困るので、慎重に、コンコンと扉を叩く。
「今から、お茶屋まで行くけど、ハルアキも行かない?お団子を買って上げてもいいわよ」
 ……しかし今度は、何の返事も無い。――あれ?
 
 何となく気になって、桜子は、そっと扉を押した。――蛇の皮が無いかを真っ先に確認する。しかし、ハルアキが片付けたのか、其れらしき物は目に入らなかった。
 胸を撫で下ろして、桜子はグイと扉を押し開いた。
「ハルアキぃ~、お団子食べに行こうよぉ~」
 書棚の奥へ行き、ハルアキの定位置を見てみるが、その姿は無かった。
「―――え!?」
 桜子は目を丸くした。
 ……何で居ないの?
 書斎の出入り口は、事務所に通じるあの扉のみ。しかも、事務所は一目で見渡せる程度の広さしか無く、ハルアキが部屋から出て来たら、気付かない筈が無い。
 強いて言えば、――窓。
 書棚の奥の壁に、小さな窓がある。――その窓が、細く開いていた。……まさか!
 
 桜子は、窓を開いて外を覗き込んでみた。――しかし、此処は二階だ。下を見てみるが、足場になりそうな物も無い。どうやら、隣接する大家さんの家の庭に降りられそうだが、下は灌木の並んだ庭園になっていて、あんな上に降りたら、枝が折れてしまうだろう。此処から見る限り、そんな様子は見えなかった。
 まるで、探偵小説によく出て来る密室の様に、ハルアキが、忽然と姿を消してしまった。
 ……何なの?一体何なの!?
 桜子は、頭が混乱してきた。
 
 すると再び、カタカタと云う音が聞こえた。ギョッとして、桜子は音のする方へ顔を向けた。
 音は、どうやら、部屋の奥、古びた大きな金庫の方から聞こえて来るようだ。
 恐る恐るそちらへ近付いてみる。――ハルアキが居るから、あまりこの部屋には入った事が無いが、こんな金庫があったのね。其れは、所々塗装が剥げてはいるが、威風堂々たる風格で、其処へ鎮座していた。
 ……そして、少しだけ、扉が開いている。その中から、音が漏れているようだ。
 桜子は、そっと扉に手を掛けた。細く開けて、そこから中を覗き込んで見る。――只でさえ薄暗い部屋なので、あまり良くは見えないが、ガランとした中に、何かがポツンと置かれているようだった。――其れが、カタカタと、音を立てて揺れている。
 しばらく観察していると、薄暗さに慣れて来た桜子の目が、其れが何なのかを認識した。
 
 ―――壺?
 
 何の変哲も無い茶色の壺だった。梅干しを入れて卓袱台に置くと、丁度良さそうな大きさ。
「……何で壺なんかが、こんな金庫に後生大事に仕舞ってあるのよ」
 しかも、中に何を入れれば、こんなにカタカタ動くのよ?
 桜子は不審に思って、それを取り出してみた。……きっちりと木の蓋がしてあって、そこに……
 
 何やら難しい漢字やら記号だかが所狭しと書き込まれた、お札が貼られていた。
 
 「………え?」
 ――何だか、見てはいけない物を見てしまった気分になった。何が入って居るのかが気にはなるが、さすがにお札を剥がして迄、中身を見る気にはならなかった。
 桜子は、壺を金庫に戻そうと、そっと腕を伸ばした。
 
 その時。
 
 何かと目が合った気がした。
 そちらを見ると……。
 
 真っ黒な小さな目が、桜子を凝視していた。
 ……其れは、箱に入れられた小さな蛇だった。
 金庫の横の棚に菓子箱が置かれ、其の隙間から、蛇が顔を出し、桜子を見上げてペロッと舌を出した。
 
 「……………!!!」
 桜子は無言の悲鳴を上げた。無意識に、両手を口に持って行く。
 当然ながら、手にした壺は、其の重みを支える土台を失い、床へと真っ直ぐに落下した。
 
 ガシャン。
 
 その音でハッと気付いた時には、既に遅かった。桜子の足元で、壺は粉々に砕け散っていた。
 ――すると、其の中から、黒い煙が湧き上がった。それは、桜子の足元を這い上がる様に立ち上り、桜子を包んだ。
 
 何!何なの!?
 
 だが、それ以上は、声を上げる事も出来なかった。
 目の前が黒い煙に覆われた途端、桜子の意識は闇へ落ちた。


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