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 「――只今戻りました。………桜子さん?」
 零が事務所に戻ると、居る筈の桜子の姿が見えなかった。時折、買い物に出たりしているので、そんな処かも知れない。零は然程気にも留めずに部屋へ入ったのだが……
 
 奥の、書斎への扉が開いているのに気付いて、背筋が凍った。
 ―――まさか。
 
 ハルアキが居るのなら、あの扉が開きっ放しになっている事はあり得ない。と云う事は、あの部屋にハルアキは居ない。その隙に、桜子が掃除のついでにでも入ったとしても、おかしくは無い。そして、もし、「あれ」を見付けて……。
 
 零は、念の為、引き出しから短刀を取り出し、書斎へと足を踏み入れた。
 その瞬間。
 
 チリーン。
 
 髪留めに付けた鈴が、音を鳴らした。――魔の気配の在る時にのみ音を立てる鈴。
 ……どうやら、零の考えた悪いの予感は当たっているようだ。
 
 零は、書棚の並ぶ奥へと足を向けた。そして、一番奥の隙間、普段ハルアキが何やらやっている場所を覗き、その奥に桜子が倒れている姿を見付けた。
 
 その足元に、無残に割れた、茶色の壺。そして、干からびて死んでいる、蛇の死骸。
 
 ―――最悪だ!!
 
 零は、短刀を構えつつ、桜子に近付いた。
 桜子は、壁に凭れ掛かる様にして、意識を失っている様だった。その肩にそっと手を置き、声を掛けてみる。
「桜子さん……?」
 すると、桜子は目を開き、零を見上げた。
 
 大きく開いた其の目は、白目が黒く、瞳には、燃えるような赤が渦を巻いていた。
 
 
 
 ――其の半年程前の事。
 
 零は普段、ラジオを聞く習慣も無く、其の日に限って、新聞も読まずに外出してしまった。
 何時もの様に、柄物の着物を着て高下駄の音を鳴らしながら、内堀通りの方へ歩いていると、憲兵に声を掛けられた。
「――貴様、此の様な日に其の様な姿で出歩くとは、非国民である!」
「………はい?」
 そして、問答無用で警察署へ連れて行かれ……
 
 そこでようやく、天皇陛下がご崩御あそばした事を知った。
 
 「不敬罪」と云う事で、零は取り調べを受ける事になった。
 まず、手持ちの荷物を全部机の上に広げられ、ひとつひとつ確認された。
 ――中でも、やはり短刀が気になるようで……。
「此の様な物を持ち歩いて、何をする気だったのだ!」
「其れは商売道具です。何をする気も無くとも、常に持ち歩いております」
「貴様の職業は?」
「探偵です」
「探偵!?」
 憲兵は零の顔をまじまじと覗き込んだ。
「探偵風情が、刃物など何に使うか?」
「此れは一見刃物の様ですが、紙も切れませんので、人を傷付ける事はおろか、日常生活では何の役にも立ちません」
「……何だと?」
 意味が分からないといった様子で、憲兵は短刀を鞘から抜いた。刃に指を当てて確かめているようだったが、不意にその切先を零の首筋に当てた。
「ならば、此処を突いても構わぬと云う事だな?」
「左様で御座います」
 零が平然としているものだから、しばらくして憲兵も諦めたようで、鞘に納めた。
「――ならば、其の様に役に立たぬ物をなぜ持ち歩いている?」
「ですから、商売道具なのです。常識では役に立たぬ物も、別の角度から見れば、役に立つ事もあるのです」
 憲兵は不審な顔をした儘だったが、仕方無さそうに短刀を机に戻した。
 
 「――では、此れは何だ?」
「護符です」
「そんな事は見れば分かる!なぜ、こんな物を、こうも大量に持ち歩いて居るのだ!?」
「此れも商売道具でして……」
「貴様、先程、職業は探偵だと申したでは無いか。その探偵に、護符などがなぜ必要なのだ?」
「探偵と一言に申しましても、いろいろ御座います。当方が相手をするのは、『目に見えぬもの』であります故……」
「………貴様、ふざけているのか!?」
 憲兵は凄んだ目で零を睨んだ。
「いいえ、残念ながら、正真正銘の大真面目で御座います」
 零が涼しい顔を崩さないのが気に入らないのか、憲兵は机をドンと叩いた。
「じゃあ、この笛やら鏡やらのガラクタも、商売道具と言い張るのか!?」
「その通りです。ついでに言うなら、この煙管も……」
「もういい!」
 
 零は、至って普通に受け答えをしているつもりなのだが、相手に慇懃無礼だと思われる事が多々ある。この憲兵もその類だった様で、カンカンに怒った挙句、零を留置場に放り込むよう部下に命じた。
 若い警官が零に腰縄を付け、留置場に引っ張って行く途中にブツブツと呟いた。
「……今日は朝から、憲兵のお偉いさんが、次から次へとお前の様な輩を連れて来るものだから、困っている。留置場はもう一杯なのだ。そもそも、こんな時に外を出歩くのが間違っているんだ」
「ならば、こっそりとこの腰縄を解いてくれても構いませんよ?私ひとり居ようが居まいが、誰も気付かないでしょう」
「そ、そんな事、出来る訳ないだろう!どうせ二、三日大人しくしていれば出られるんだ。さっさと入れ!」
 ――零が鉄格子の中に入ると、後ろで鍵を閉める重い音がした。
 
 仕方無く顔を上げ、今からしばらく過ごす部屋を見渡してみて、零は納得した。
 ……なるほど、今日の留置場は大盛況のようだ。
 それ程広くも無いコンクリートの空間に、十名程の男が座って居た。
 沈んだ様子で俯いたり、或いは新入りにギョロリと鋭い目を投げて来たりする男たちをぐるりと見回し、ふと、零はある人物に目を止めた。
 その人物は、一同から少し離れた部屋の隅に、膝を抱えて丸まっていた。だが、誰がどう見ても、此の様な場所には余りにも不釣り合いで、その存在が周囲から浮いている。
 
 ―――子供?
 
 何となく気になって、零はその子供の前に腰を下ろした。
 年の頃十歳ばかりのその子供は、みすぼらしいなりをして、だが、何処と無く近寄り難い雰囲気を醸していた。
「――貴方も、不敬罪で捕まったのですか?」
 零が尋ねるが、子供は何の反応も示さない。
「この年の瀬の忙しい時期に、幾らやんごとなき御方がお亡くなりになったとは云え、外を普通に歩いていただけで片っ端から捕まえるとは、やり過ぎにも程があると思います。そうは思いませんか?」
 すると、子供が声を出した。
「帝がご逝去あそばしたと云うに、其の様な軽薄な格好を致して居るから、罰を受けるとて当然であろう」
 ……子供の癖に、昔の人みたいな言い回しをする。零は奇妙に思った。
「では、貴方はなぜ捕まったのですか?」
「拙者は、其の様な無礼は致しては居らぬ。只、拙者に無礼を働いた者を、懲らしめてやっただけじゃ」
 ――この子供、何様だ?何となくだが、普通じゃない気がする。零は、子供の顔を覗き込む様に姿勢を直した。
「其れにしても、こんな処に入れられるとは、何を仕出かしたのですか?それに、親御さんが迎えに来ないのですか?普通、子供が何か騒ぎを起こせば、保護責任の有る大人がその責めを負うものでしょうに」
 すると、子供がキッと顔を上げた。……紅顔の美少年だ。しかし、子供にしては、余りに鋭い目付きをしている。
「そなた、男の癖にごちゃごちゃ煩い。拙者がどうなろうと、そなたには関わりの無い事であろう?煩わしい故、拙者から離れよ」
 ……どうやら怒らせてしまったようだ。
 しかし、そんな事で諦める零では無かった。――何より、暇なのだ。そして、気になる。他の人相の悪い男たちよりも、この少年に話し相手になって貰おうと、零は決めた。そして、
「他へ行くと言っても、この狭い留置場、行く場所が在りません。此処に居させてください」
と、少年の横の壁に身を預け、腰を落ち着けた。
 
 少年は、煩わしそうな目を零に向けたが、諦めた様に再び顔を伏せた。
「―――何を、恐れているのですか?」
 何となくだが、少年に其の様な気配を感じ、零は尋ねてみた。すると、ギョッとした様に少年は顔を上げた。
「……なぜ、分かる?」
「此れでも探偵ですからね。――貴方は、他の人たちから敢えて離れる様にしている。其れは只煩わしいからですか?それならば、あちらの壁際に居る方の様に、壁を向いて居れば宜しい。けれども、貴方は壁に背を向けている。……何かに対する構え、と、見えなくも有りません」
 何か反論したげだったが、一度認めてしまった以上、何を言っても誤魔化しにしかならない事も分かったのだろう。モジモジと腰を動かし、零から顔を背ける様に体勢を変えた。
「宜しければ、お話し頂けませんか?私でも、少しはお役に立てる事があるかも知れませんよ?」
 しかし、少年は、
「煩いと申しておろう!拙者に関わるな!」
と言って、顔を伏せてしまった。
 
 ――さすがにこうまで頑固に構えられては、零にも為す術は無かった。仕方無く、零も膝を抱えて顔を伏せ、少し休む事にした。


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