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00.  神の如き者


 ミカエル・アイヒベルガーは、革張りの椅子に座ると、デスクに肘を着き、顔の前で手を組んだ。
 親指に額を預けながら、氷のように冷たい色をした瞳を、正面の壁に向けている。
 
 正面の壁。――いや、部屋の中央の空間、と言ったほうが正しいだろう。そこには、いくつもの画面が映し出されていた。
 それらには、入れ替わり立ち替わり、様々な画像が映り、または消え、他の画像に切り替わり、刻一刻と、同じ表情を見せない。
 正確に数えた事など無いが、感覚的に、大小含めて50~60はある。そのひとつひとつに、目まぐるしく変わるアラビア数字の羅列、グラフのライン、複雑な図面、ニュース映像などが流され、圧倒的な質量の情報を彼に届けていた。
 
 常人なら、そんなものを理解できようはずも無い。
 しかし、ミカエルは、それら全ての画面を認識し、そこから得られる情報を分析、頭の中で整理して、何らかの答えを導き出していた。
 その答えを、何かにメモするような、非生産的な事はしない。覚えておいて、明日、担当者に話をすればよい。
 
 そんな、流れ作業的な頭脳運動をしていたミカエルだったが、あるニュースに目を止めた。組んだ手を開き、テーブルの端のパネルを操作し、その画面を最大化する。
 
 画面の中で、女性アナウンサーが伝えていたのは、ある国家が企業に買収された、というニュースだった。
 続いて、国家代表の演説、混乱する議会の模様、道行く市民へのインタビューが続く。
 ――そんなものは、ミカエルにはどうでもよかった。
 ミカエルが欲しいのは、その国が、「アース・コーポレーション」の傘下に入ったという事実。そして、それを噛みしめる時間だった。
 
 ――とうとう、この時が来たか……。
 
 それを邪魔するように、正面の扉が開き、人が入ってきた。
 ――いや、人ではない。アンドロイドだ。 金属の皮膚を持つ「それ」は、2本の脚で滑らかに歩き、ミカエルのデスクへと近付いてきた。
「CEO、ご報告です。
 アメリカ合衆国の所有する国債、全ての買い取りを完了いたしました」
「ご苦労だった、ケリー」
「ありがとうございます。――他にご用件は?」
「今は、少しひとりになりたいんだ。今日はもういい」
「はい。では、失礼いたします」
 ケリーと呼ばれたアンドロイドは、ミカエルに背を向けると、アナウンサーの顔のど真ん中を通り抜けて、部屋を出て行った。
 
 ――ああいう無神経なところは、まだまだ、改良の余地があるな。
 ケリーの、スーパーモデル並みのシルエットが扉の向こうに消えると、ミカエルはモニターを消し、椅子の背もたれに身を預けた。
 目を閉じ、ふぅと息を吐く。
 
 ――長かった。
 「ラザレフ生体研究機構」の施設を出て4年。
 18歳で社会に出てから、会社を興す資金を集めるのに2年かかった。
 20歳で「アース・コーポレーション」を設立してから、また2年。
 会社を広げ、他の企業、各種機関、そして、国家そのものをしらみ潰しに買収し続け……
 
 世界は、ようやく彼の手に落ちた。
 
 ――これで、あのオヤジの課題が達成できる。
 
 「あのオヤジ」とは、「ラザレフ生体研究機構」の創設者であり、脳科学の第一人者であった、ヴィクトール・ラザレフの事だ。
 彼は、世界中からIQの高い子供を施設に集め、「ラザレフ理論」に基づいて、脳を最大限に活性化させるためのプログラムをやらせていた。
 普通の人間の脳は、通常、その持てる能力の何割かしか活動していない。その「リミッター」を全て外したらどうなるのか――、それがヴィクトール・ラザレフの研究だった。
 しかし、それが彼の最終目的ではなかった。
 ヴィクトール・ラザレフは、卓越した頭脳を開発することによって、これまでの人類には誰も解決し得なかった問題を解き、それを実行できる人間を育成しようとしていたのだ。
 その問題、――それは、「世界平和の実現」だった。
 
 ミカエル他、5名の子供たちが同時に施設を出る事になったのだが、出発する前、ヴィクトール・ラザレフは子供たちを自分の研究室に集め、その課題を出した。
 その後間もなく、彼は亡くなったが、彼の理念は生き続け、「生体科学研究所」は、今も存在している。
 ――ミカエルの援助の元で。
 
 他の4人の子供たちも、結局、ミカエルの依頼を受け、「アース・コーポレーション」の幹部となっていた。
 ミカエルの理想がどこまで彼らに理解されているかは分からないが、彼らは今のところ、ミカエルの期待に沿った仕事をしてくれている。
 
 しかし、――「トランセンダー」である以上、「期待通り」では駄目なのだ。
 「期待以上」でなければ――。
 
 ミカエルは、施設に居た時から、「トランセンダー」候補の子供たちの中でも、卓越した能力を発揮していた。
 何をしても1番。1歩先を行っている。
 そういう子供だった。
 
 「トランセンダー」とは、ヴィクトール・ラザレフが、ミカエルら、「ラザレフ理論」を実証した子供たちに与えた名だ。
 「超越した者」、――それは、人間を超えていなければならない。
 人間を超えた存在。そんなものがこの世界に存在するとするならば、それは……
 
 ―――「神」だ。
 
 ミカエルは、口角を上げて、ニッと笑った。
 ――ミカエル。最も偉大な天使。神の如き存在――。
 普通、こんな名をもらえば、名前負けしてしまう者がほとんどだろう。
 だが、彼は、その名を体現した。
 
 ――こんな素晴らしい名を付けてくれた両親に、感謝をすべきだろう。
 彼らが、自分を捨ててくれたおかげで、今の私があるのだから――。
 
 「さて――。
 世界を買い占めた次は、何を買おうか?」
 
 薄く開いたアイスブルーの瞳は、既に、次の世界を見ていた。


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